*A部門入選作発表*
当季雑詠=全93投句(入選67句)
【特選】
一席
●薫風やリズム正しき庭鋏=紅椿
◎や、水、メ○ラ、遊、入△清、修、智=18点
(や:どの枝先も新しき風生む。 水:リズミカルな音が心地よい。 ラ:手際のよい庭師の所作が見えてきます。 遊:季語が効いていると思いました。 清一:庭師が薫風の中で仕事が捗っている様子が良く分かる。 修:鋏の音が心地よい。 智:リズム正しきが楽しい。)
二席
●苗札の終の一字は土の中=ラスカル
◎茶、入、五、紅○葱、香△砂=17点
(茶:庭仕事の一幕。見えないものを見せている点が良いと思います。 五:観察の効いた句。「終」の一字は何だろう?ミステリーな句だ。 紅:これはよく目にしますね。句にしたところがさすがだと思います。 葱:俳句的観察眼ですね! 香:細かい観察で、おもしろいです。)
三席
●開拓の大地波打つラベンダー=ぼくる
◎裕、喋○紅△ラ、子、葱、し=12点
(裕:富良野の見渡す限りのラベンダーが浮かびます。 紅:一読、爽やかな風が目に浮かびます。 ラ:「開拓」という一語が利いていると思います。 葱:北の国から〜。 し:北海道の雄大な大地を覆うラベンダーが壮大ですね。)
【入選】
●髪洗ふ毎日老いてゆく覚悟=秀子
◎秋○智△清、砂、水、修、資、ぼ=11点
(秋:日々気持ちを新たにして前を向こうとする作者の心意気が感じられます。季語も効いています。上手に年をとりたいものです。 智:私にはまだそんな切実な思いはありませんが‥ 清一:特に女性は髪を洗う度に感じるのでしょう。 修:老いの意識がひしひしと。 水:やはり覚悟が必要だと。 資:きっぱりとした決意が伝わって来る。 ぼ:女性は特にそうなんだろうなあ。せめて心は若くね!)
●新茶汲む百年はさう遠くない=まさこ
◎十、秀○朱△始、雪、紅=11点
(秀:納得。季語もいい感じについてると思います。 十:これから先の100歳を迎えるにあたっての覚悟と心意気が見てとれる。 紅:共感します。 朱:湯呑みの新茶から大きな景色に思いが広がる、面白さ。)
●羽音して先客ゐたり朝の薔薇=智雪
○砂、ス、入、メ△資、裕、ぼ=11点
(資:嬉しい朝の出会い。 ぼ:清々しい句。ミツバチですね。)
●箱庭に割箸ほどの大河かな=ラスカル
○清、十、ス、紅△水、裕、し=11点
(清一:日本列島を俯瞰したような句、大河は詠者の心情か。 紅: 比喩が効いています。 し:例えがとても面白いと思いました。 十:「割箸」の比喩が巧み。)
●わたつみに呼ばれし友や青岬=葱男
◎修○資、喋、五△ス、香=11点
(修:「青岬」が胸にせまる。皆泡沫のごと! 五:白髪鴨さんを失って何年になる? 香:白髪鴨さんを思いました。 資:游俳最後の五月の句として。)
●ワンピースくるりと初夏の五歳かな=朱河
◎雪、智○砂、喋△葱=11点
(葱:子は宝、神様の贈り物! 智:初夏の5歳が秀逸)
●ひとりもの同士の電話走り梅雨=朱河
◎資○ぼ△ラ、十、雪、秋、五=10点
(資:上野千鶴子さんの本を読んだ者同士かな。ついつい長電話。 ぼ:私自身は違いますが、気持はよく分かります。 ラ:身につまされます(苦笑) 十:哀感とユーモアを感じる。 秋:ついつい長引いてしまう。わかります。リズムもよくてすんなり読めました。 五:走り梅雨の老人の嘆きが伝わる。コロナ禍の会えない寂しさも加わってのことか?身につまされる。)
●一瞬の隙に籠手あり夏に入る=秋波
○ラ、秀、雪、葱△朱=9点
(秀:決まりました。 ラ:友岡子郷さんの句「跳び箱の突き手一瞬冬がくる」を思い出しました。 朱:夏に入るという季語がハマっているように思う。 葱:剣道に打ち込む若者達が得ることのできる大切なさまざまな体験と時間。)
●回文の文字折り返す涼しさよ=十志夫
◎朱、葱○水△秀=9点
(朱:下五の意外な季語がとても良い。取合せの妙。 葱:素晴らしい感覚表現! 秀:上手く折り返したらよほどスッキリするんでしょうね。 水:涼しいですね。)
●柔らかく抓む硬さや天道虫=十志夫
◎砂○雪、裕、し=9点
(裕:柔らか、硬さ 両方の対比が絶妙です。 し:柔らかく抓む硬さが面白い。分かります。天道虫硬いですよね。)
●片恋は補助線を引けさくらんぼ=水音
○茶、資、ぼ△朱、十=8点
(茶:勝利のV字になるか。「引け」がさくらんぼの叱咤激励のようです。 ぼ:そうだねえ、早く教えて欲しかった(笑) 。純情なんだ、さくらんぼ だから。 資:補助線が良い。キラキラ輝く下五が効いている。 朱:正直言うと意味はわからないがもうひとつの道も想定しておく?ということか。さくらんぼの二股に掛けているのか。 十:「補助線」の意味するものは、「きっかけ」「協力者」など人それぞれ。 )
●紫陽花や写真の母は割烹着=ラスカル
◎し○始△葱、メ=7点
(し:紫陽花がとても良く効いていると思います。働きものの素敵なお母様だったのでしょうね。
葱:割烹着と紫陽花はともに優しさを含む言霊ですね。)
●糸とんぼ川の流れに見失ふ=雪絵
○修、智△清、や、入=7点
(修:川の流れも糸とんぼも目の当たりです。 智:そんな経験があります。 清一:身体も翅も細く小形の糸とんぼ哀愁を感じさせる。 や:小さきものの儚さを知る。)
●野茨の花のすれすれ島のバス=雪絵
△や、修、資、遊、香、秋、智=7点
(や:旅の続きを夢路に辿る。 修:ひやひやしながら、海も見える。 資:狭い道を行く島のバス。 遊:旅心をくすぐられます。 香:初夏を走り抜く田舎のバスが軽快です。 秋:狭い道を走るバス。運転手さんの腕前には脱帽です。 智:離合困難な峠の道の様子が目の前に見えるようです。)
●卯の花くたし無人の教会堂=裕
○や、秀△ま、紅=6点
(や: 静かに祈る男が一人。 秀:切れがよく効いています。 紅:静かな感じが好きです。)
●オセロ盤一転黒へ蟻地獄=水音
◎遊○久△始=6点
(遊:興奮の醍醐味と恐怖ですね)
●客待ちの盆に固まる柏餅=久郎兎
○茶、裕△朱=5点
(茶:あるあるですね。柏餅以上にホストの憂いが固まってしまいそう。 朱:固くなる柏餅を詠む面白さ。 裕:固まっているのは柏餅なのか、それを運ぶ人なのか?)
●青天を懐く泰山木の花=五六二三斎
◎香△子、し=5点
(香:泰山木の花、好きです。懐く がいいですね。 し:泰山木の花のイメージにとても合っていますね。青と白の色合わせも美しいです。)
●貫きしバンカラ人生泥鰌汁=ぼくる
○ま△茶、香、秋=5点
(茶:取り合せがいいです。柳川のような卵のマイルドさも不要ですね。 秋:泥臭くを貫けたなら、それもカッコイイ。素敵な人生です。)
●ででむしに小さきみづうみたふたふと=茶輪子
◎ま○久=5点
●かたつむり明るき雨を進みけり=修一
◎久△ス=4点
●草矢打つだけに終りし幼な恋=やんま
○秋△茶、秀=4点
(秋:何も言えずに終わった少年の日の恋。悔しさの滲むほろ苦い思い出? 秀:下5が、言葉としてちょっと嫌なんですけどね。 茶:草矢ではハートを射貫くことは到底適いませんが、その分、純粋でほのぼのとします。)
●白砂のさざなみ模様苔の花=紅椿
○遊、メ=4点
(遊:禅寺)
●人類は進化損ねし蛇の衣=清一
○朱△十、紅=4点
(朱:進化し損ねたんだろうな、常に過ちを犯してるんだろうな。蛇のように脱皮出来たら違う選択が生まれるのだろうか。 紅:そうかもしれませんね。 十:アイロニーをふくむ一句。季語の取り合わせもいい。)
●納豆の糸ひく今日は溝浚へ=秀子
○水△茶、ま=4点
(水:関係のない取り合わせで面白い。 茶:納豆嫌いの自分としては、納豆も溝に捨ててしまいたいところです。そういうインパクトを感じました。)
●朴咲くやいま月蝕の微電流=朱河
◎ス△メ=4点
●青梅雨や鳥じゅんじゅんと樹々の中=入鈴
△朱、や、喋=3点
(や:大自然なる命の営み。 朱:オノマトペが効果的。青梅雨の勢いを美しく引き立てている。)
●川音に溢るる運気夏つばめ=葱男
○や△メ=3点
(や: 煌めき放ちつばくろは行く。)
●空欄の多き答案五月闇=茶輪子
○清△始=3点
(清一:今はコロナ禍で対面授業も覚束ない、暗い気持ちの生徒の様子。)
●さみどりは安らぎの色雨蛙=やんま
○子△喋=3点
●十薬や白衣姿のボランティア=資料官
○や△清=3点
(や:十薬の花の色と「薬」の字面が「白衣」の看護士(?)と巧く合っている。 清一:ワクチンの接種会場に駆り出されたボランティア、十薬の季語との相性が良い。)
●植樹祭巨大画面に風五月=スライトリ・マッド
○始△ま=3点
●竹落葉ひらりひらひら散歩道=資料官
◎子=3点
●淡々と今日散る花や沙羅の花=智雪
○秋△ス=3点
(秋:散る花に寂しさやはかなさを感じるのは人間の勝手な思い。花には花の摂理があって彼らは悲しんでいるわけではない。なのにそこにまた無常を感じてしまうのが人間の性。)
●梅雨入には赤きサルビア二つ買い=入鈴
◎始=3点
●梅雨雲に隠れし月の宴かな=香久夜
◎ラ=3点
(ラ:とても楽しい空想。)
●梅雨冷や間延びしているドビュッシー=裕
○し△ぼ=3点
(し:ドビュッシーの曲は独特の音の長さがあって弾くのがとても難しそう。そのあたりがまだちゃんと弾けていないドビュッシーを想像しました。 ぼ:籠り居の感慨か。クラシックは弱いけど何となく共感。)
●入念に歯を磨きたる蛍の夜=紅椿
◎ぼ=3点
(ぼ:もちろん逢い引きに備えて。このリアリティ、いとおかし。)
●真ん丸の妊婦のおなか若葉風=修一
△十、水、喋=3点
(十:おなかの児を若葉風が祝福しているかのよう。 水:希望、未来、爽やかな風)
●緑蔭やスコンにジャムをたつぷりと=秋波
◎清=3点
(清一:緑陰で食べるジャム付きスコンの味も一入。)
●五月雨や猫まるまると籠の中=清一
○子=2点
●シウマイ弁当車窓に五月富士=資料官
△ラ、十=2点
(ラ:横浜市民ですので、頂きます♪ 十:「シューマイ弁当」に旅の楽しさが出ている。)
●誰彼の区別もなくて朴の花=遊歩
△十、五=2点
(五:朴の花は高くから我々を見つめている。人間より一段と高い所にある。確かに超越した存在だ。十:全員がマスク姿(朴の花に象徴される)なので区別がつかないという諧謔の一句。)
●毒消の定價壹圓セピア色=しゃが
○五=2点
(五:毒消の季語は死語になりつつある。旧漢字を使った工夫に1票。)
●葉隠れの実桜の濃き蘇芳色=智雪
○修=2点
(修:堂々たる実在感。)
●走茶や呉服卸の内覧会=裕
△遊、智=2点
(遊:さぞかし豪華な着服・打掛が… 智:走茶と呉服の内覧会が良く合っています。)
●人逝きし島山畑よ蜜柑咲く=秋波
○ま=2点
●青鷺の飛び立つ後の静寂(しじま)かな=清一
△久=1点
●紫陽花を揺らす下校の児に疲れ=砂太
△葱=1点
(葱:マスクをさせられている子供達のことを本当に憂慮します。 細菌やウイルスは手に付きやすいし、血液に十分な酸素が供給できません。)
●息の根を止めて見られよ蛇の衣=遊歩
△香=1点
(香:大きな蛇を想像し迫力あります。)
●お揃いのスコート眩し夏来たる=メゴチ
△裕=1点
●風渡るベンチにひとり樟若葉=白馬
△入=1点
●歳時記の誤植のページ走り梅雨=香久夜
△久=1点
●酒出せぬなんてマジかよ旅五月=ぼくる
△葱=1点
(葱:マジっすか! 勘弁してよ! どうかしてるよこの世の中!)
●白き帆の河口を過る夏はじめ=秀子
△朱=1点
(朱:類想ありな気がするが素直な初夏の清々しさ。)
●夏帽を取つて挨拶部活の子=雪絵
△十=1点
(十:頻出する句材(表現)ではあるが、改めて景が浮かぶ。)
●野を渡る麦の秋風部活終え=白馬
△砂=1点
●裸子の尾骨にひそむ進化論=十志夫
△五=1点
(五:上手い。ダーウィンの進化論に潜む誤りのことを暗に提起しているのか?)
●花の束掲ぐ男の白マスク=砂太
△久=1点
●万緑を映す大濠浮御堂=五六二三斎
△子=1点
●ミステリーサークル生るる麦熟るる=葱男
△秀=1点
(秀:「るる」のリフレインがリズムをうみました)
●麦笛に応たふ口笛畦長し=やんま
△遊=1点
(遊:郷愁に誘われます。)
●山並の見えぬ淋しさ土降る日=砂太
△入=1点
●ラベンダーの香り漂ふ立ち話=まさこ
△雪=1点
A部門入選作〈back number〉
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