*A部門入選作発表*


当季雑詠=全86投句(入選64句)

【特選】

一席
●石くれのみな菩薩なる春の風=葱男


◎秀、ま、雪、茶〇五、し、智、喋△久、ぶ、ぼ、弧=24点
(秀:石くれが菩薩にみえてくるという作者の気持ちに打たれました。 ま:そのように感じられる気持ちがなんと穏やかなのだろうと感心しています。 雪:春の風がそんな思いにさせてしまうのでしょうか。 茶:「春の魔法」によりどんなちっぽけな存在も自身を解き放て。 五:石くれとは石ころのこと?その石ころを仏に例えた。春だからの景だ。 し:里山歩きをするとこのような光景分かります。 智:暖かい春風は路傍の石すら菩薩に変えてしまう程のありがたさなのでしょうね。 ぶ:(山川草木悉皆成仏をやさしく春風がほめたたえる。ぼ:衆生本来仏なりとかや、春風がいい。)


二席
●切りそろふ前髪のそこここに春=弧七


◎玻、智○砂、喋△入、香=12点
(智:散髪したての前髪に初々しい新入生の決意が溢れています。 入:遠い昔を思い出しました。 香:一年生の喜び?変調で、17文字に収まってますね。)


二席
●保母さんのお尻に八人新樹光=やんま


◎入○清、ラ、茶△葱、砂、ぼ=12点
(清:初夏に八人の園児が保母さんの回りを飛び回っている様子が可愛らしい。 茶:ユニークでほのぼのとした光景が目に浮かぶようです。 葱:保母さんのお尻にくっついて並んで歩く幼児たちの可愛いこと。  ラ:「八人」という具体的な人数を示したところがお手柄。 入:お見事なお句とお尻です。 ぼ:ユーモラスで、ほのぼのする景。)


【入選】

●コンパスをくるりと廻しつばくらめ=清一
◎久、ラ○秀、ま△裕=11点
(秀:「コンパス」と「つばくらめ」が絶妙。  ラ:コンパスの軽快な動きが、燕の飛ぶ様子と通い合っています。 ま:コンパスの動きと形が良く現れていますが、ちょっとつきすぎかとも。 裕:燕の飛び方は図形のようですよね。)

●のどかさを切り裂いて行く漁船かな=雪絵
◎し、淳○や、五△メ=11点
(し:のどかさを切り裂くにドキッとしました。映像がはっきり見えます。 淳:「切り裂いて行く」という表現が良いですね。 や: 突如威勢の良い音が耳を驚かす。 五:長閑な海を漁船が切り裂いて行く。緊張感と安堵感の対比。)

●あどけない母とあの日の春に居り=智雪
◎ぼ○十△葱、玻、入、淳、裕=10点
(ぼ:厳しい現実に、暖かく対応。ア音が効果的。 十:認知症の母親だろうか。介護の現実。「あの日」という遠い記憶が切ない。 葱:あの日は自分の方があどけない子どもがだったのかもしれません、その逆転の構図に慕情を感じます。 入:何か涙ぐんでしまいました。 裕:子供帰りされているのでしょうか。)

●飛花落花その数秒の主旋律=葱男
◎メ、砂○雪△入、資=10点
(雪:あっという間の落花。「ヒト」もそうなのかも知れません。 入:目に浮かぶようです。 資:数秒の主旋律と言い切ったところが旨い。)

●カタカナにひらがなのルビ桃の花=ラスカル
○久、資、ぼ△メ、喋=8点
(久:例、南アルプス市→みなみ○○○○し、か、みなみあるぷすし。全部つけるのは変質的でもある。 資:何か面白い発見があるようで採りました。 ぼ:可愛い女の子が浮かんで来る。)

●花種蒔く等しからざる世を生きて=ぼくる
◎香○し△玻、ラ、入=8点
(香:どれも同じような種との対比、そして作者の花種を蒔く優しさ、人生の奥深さを感じました。 し:ミレーの種まく人を思い出しました。 ラ:「等しからざる世」が、身につまされます。 入:花種と人生の取り合わせが凄い。)

●薔薇の門くぐる一輪車の少女=まさこ
◎清○弧△秀、五、香=8点
(清:薔薇の門と来るとジャンジュネを思うが、詠者は一輪車の少女なる全く正反対のものを持って来た。おかしみがある秀句である。 弧:あえて少女と言わなくてもよかったのかもしれませんが、妙に艶かしい景です。 秀:「一輪車」でくぐることで、オリジナルになったような。 五:薔薇のアーチに一輪車の造形の妙。 香:嬉しそうな少女、明るい日が差す公園が浮かびます。)

●骨盤に背骨つらなる卯月かな=ぶせふ
◎修○清△十、智=7点
(修:よく説明できないけど田植のイメージ。思い切りのよさに脱帽! 清:腰骨を骨折した私に取っても背骨の繋がり具合がよく分かった。卯月との陰暦四月の異称も生きて来る。 十:当たり前の理屈を少しすらした面白さ。季語の「卯月」は動くような気がする。 智:何となくそういう感じがします。面白いです。)

●小手毬の後ろめたくもなく咲けり=玻璃
◎裕○葱△智、雪=7点
(裕:後ろめたくもなくという小手毬に粋を感じます。 葱:小手鞠の花は自分をひけらかすようにのびのびと花を連ねて行きます。それを「後ろめたくないのか?」と問う作者の、自分を表現することへの小さな怖れを感じました。 智:小手毬の真っ白は何の屈託も無いのです。 雪:確かに!小手毬には影がない、できない、そんな思いがします。)

●菜の花を仏花に足して墓参り=久郎兎
◎資○茶、裕=7点
(資:故人の好みに合わせたのだろう。墓前に春の賑わいが出ている。納得感あり。 茶:今風ならトッピングサービス。その精神性に。 裕:作者の暖かさを感じます。)

●やはらかく寝息を撫でる春の月=五六二三斎
◎紅○メ△玻、喋=7点
(紅:「寝息を撫でる」で、頂きました。季語もぴったりです。)

●苺煮る香り少女の忌の近し=まさこ
◎葱○秀△弧=6点
(葱:「少女」が作者にとってどんな存在だったのか、身内ではなく、我が娘の仲の良い友達だったのかと想像します。二人のために苺ジャムのお菓子を作った記憶が蘇ったのでしょうか。 秀:どなたの忌か、わかりませんが、とてもかわいい少女だったんですね。 弧:むせるような苺の匂いが迫って苦しい景です。)

●牛冷やす眼下に大き都市を見て=砂太
◎五〇入△雪=6点
(五:牛冷やすは三夏の季語。東京の郊外の高台の里山か?景が大きい。 入:牛の大きな眼と長いまつ毛は心にいつも刻んで。 雪:日本の景ではないように感じるのですが。気になった句。)

●液晶の焼け焦げさうな躑躅かな=五六二三斎
◎喋○葱△紅=6点
(葱:躑躅の赤はただ美しいだけではなく、何か不穏な過剰さを秘めている感じがします。 紅:鮮やかな躑躅の色が見えてきます。)

●鴨川の水の音散る花の声=秋波
◎子〇資△清=6点
(資:音と声の組み合わせが良い。まさに京の春。 清:水音に花が散る様子を描いたものだが花の声と擬人化したところが面白い。)

●鳥交る電話回線工事中=清一
○十、修△ま、資=6点
(十:季語との取り合わせが巧み。 修:工事中で現実感あり。コミュニケーションの微妙さを感じます。 ま:春の鳥の様子がユーモラスに表現されています。)

●な忘れそあの日あの時飛花落花=白馬
○玻、ぶ△茶、弧=6点
(ぶ:言葉のもつリズム・魔術を楽しく活かして成功していると思う。 茶:「忘るるな」としなかった思いの強さに。)

●蛙子の無限集合黒黒と=しゃが
○砂△秀、メ、入=5点
(秀: どこまでも増え続けるような、ちょっと怖いような 私の好みですが、「黒黒と」はいるのかなあ。 入:無限記号に似てますよね?)



●暗闇に吸われし紫煙春愁い=白馬
○メ、裕△久=5点
(裕:スモーカーの悲哀を感じます。)

●囀や柱時計のうす埃=清一
◎や△茶、修=5点
(や:古い時間に旬の季節が飛び込む。 茶:柱時計が詠み手ご自身なのでしょう。囀と埃のまとわりつく感じの共通点に。 修:うすで完成、うまいです。)

●大都市をはるかに島の猫の恋=砂太
○弧△紅、雪、ぼ=5点
(弧:あえて大都会を配することで島の様子が強調されて、季語も島の営みをよく表していると感じました。 紅:構図が面白いです。 雪:都市はより大きく、島は変わることなく日常が脈々と。 ぼ:おお、幸せな猫たちよ。)

●飛び入りのブレイクダンス花吹雪=ラスカル
△葱、清、や、十、五=5点
(葱:花見をしていたら他のグループの若者が酔いにまかせてブレークダンスを披露してくれたのでしょうか、それは拍手喝采!花吹雪との相性抜群ですね。 清:目立ちたがり屋君のブレークダンス、花吹雪での舞台が相応しい。 や:花に浮かれついつい調子に乗ってしまう。 十:景が見える。季語「花吹雪」とブレイクダンスが合っている。 五:花吹雪を現代風に詠んだ。)

●初蝶を追ひし童の髪は宙=智雪
○久、淳△子=5点

●繧繝の層つまびらか木の芽山=入鈴
○や、香=4点
(や:何もかも新鮮。 香:香:うんげん の言葉を知りました。まさに、いろんな緑を表す言葉として印象深いです。)

●靴底の花屑ならむゆくえなり=玻璃
◎弧△智=4点
(弧:無常を穏やかに肯定していて、しかも美しい情景です。 智:飛花の後の花屑は、誰かの靴底にくっ付いて何処まで旅するのでしょうか?)

●自転車の別れてゆける夕桜=紅椿
○ぼ△葱、五=4点
(ぼ:ドラマのラストシーンだ。 葱:自転車だからおそらくノンアルコールの花見でしょうね、おそらく学校で仲の良い友達と帰校途中の寄り道程度のことかもしれません。「またあした!」というお互いの爽やかな声が聞こえてきそうです。 五:自転車が郊外の住宅地で別れ別れになる。青春を切り取る。)

●旅の果て一人静の白き糸=智雪
○ま△子、し=4点
(ま:一人静はよく見ると糸のようでうつくしいですね、そこに感じ入っている作者がみえます。 し:旅の果てと一人静が不思議ととても合うと思います。)

●霾るや寺の柱に天狗面=やんま
◎ぶ△ま=4点
(ぶ:参りましたというべき写実、ユーモアと不思議、エネルギー。 ま:お寺の景がみえてきます。)

●罪咎を匿ふてをり小手毬の=玻璃
○智、香=4点
(智:小手毬の丸く集まった花の中には何かが隠れているようです。 香:鋭い感覚、発想です。)

●入学式大きく走る鞄の子=茶輪子
◎十△雪=4点
(十:難しい言葉を使わずに一読鮮明の句。中7の「大きく走る」が秀逸。一年生の喜びを見る。 雪:小学校の入学は、子供が大きく成長したことを実感できる最初だったかもしれません。)

●チューリップ頭採られて列乱る=メゴチ
○淳△久=3点

●花筏お堀に映る天守閣=喋九厘
○子△資=3点
(資:花の盛りは過ぎても楽しめる風景。句材でもあるが良い写材。)

●春落葉霧吹ほどの雨が降り=秀子
○紅△ラ=3点
(紅:中七が秀逸です。 ラ:「霧吹ほどの」という比喩は、ありそうで無かったような気がします。)

●春灯母の日記の途絶えけり=裕
○入△砂=3点
(入:春灯の頃というのは少し残念な気ががします。もう少しで芽吹くのに。)

●もう一度撫づる墓標や鳥雲に=紅椿
○雪△淳=3点
(雪:「もう一度」にその方への愛情を感じます。)

●朝ドラにゆるむ涙腺昭和の日=ぼくる
△清、紅=2点
(清:朝ドラ「ひよっこ」の主人公みね子は私と同学年、あの青春時代の昭和の日々が懐かしい。 紅:私もちょいちょい緩んでいます。)

●一日中雨の中なる桜かな=修一
○ラ=2点
(ラ:自分自身が桜になってしまったような、錯覚を覚えます。)

●一片のすあまやさしき復活祭=弧七
△秀、入=2点
(秀:キリスト教のことはあまり詳しくはないんですが、大きく括って西洋のものに、「すあま」をもってこられたのが、手柄。 入:ジャパニーズすあまと欧米のイースターの取り合わせが素敵。)

●朧月ワゴンはラップ響かせて=白馬
△修、裕=2点
(修:春の夜はわくわくします。 裕:朧月とラップのアンバランスが良い。)

●顔合わすだけの出張春時雨=裕
△や、ま=2点
(や:平凡な日常の手順、平和なり。 ま:微妙な心持があらわれていますね。)

●残雪に青沼の風心地よし=香久夜
△し、入=2点
(し:残雪の白と青沼の青緑色と色合わせが美しい。 入:お岩木さんの四月早春ですかね?)

●昭和の日秘密を語る胡瓜草=ぶせふ
○修=2点
(修:季語が効いていると思います。)

●千年の空見守りぬ滝桜=香久夜
○ぶ=2点
(ぶ:時間と命の競演・伝統美の脈づいているのを感じる。)

●タンポポの絮も螺旋のDNA=ぶせふ
△十、ラ=2点
(十:自然の景を形而上学的に表現している。「も」は外したほうが良いような気がする。 ラ:「DNA」という言葉を使った俳句は、初めて見ました。)

●菜の花や愛でて食して酔いしれて=子白
○玻=2点

●南無不動明王の幟はためく春嵐=修一
○子=2点

●花は葉に家訓ある家出でてより=葱男
△砂、雪=2点
(雪:どんな人生を過ごされたのでしょうか。)

●故郷の浜辺は遠し汐干狩り=メゴチ
○紅=2点
(紅:子供の頃を思い出しながらの潮干狩でしょうか。)

●アカシアの花まめまめと白くあり=入鈴
△茶=1点
(茶:「まめまめと白」の言い回しに惹かれました。)

●遅れる子振り返る母花の雨=五六二三斎
△香=1点
(香:保育園行きたくないのか?)

●古都の春喧騒の後暮れ泥む=秋波
△淳=1点

●湖北なり土手にも田にも桜咲く=香久夜
△修=1点
(修:私もよく湖北に行きます。)

●山水の詩画書三絶春の雨=子白
△喋=1点

●澄み渡る四方八方囀れり=やんま
△し=1点
(し:いいですね〜山に行きたくなります。)

●菜の花や岸の漣打ち消しぬ=久郎兎
△ぶ=1点
(ぶ:菜の花の黄色が打ち消しぬという断定によってみごとに浮きだしていると思う。)

●奈良漬を試食してをり花の雲=修一
△や=1点
(や: 桜咲く観光地では必ず試食する性癖あり。)

●バゲツトの端の堅さや暮の春=茶輪子
△入=1点
(入:堅いと?暮の春って。面白かね。)

●葉桜の揺れてをみなの笑ひ声=雪絵
△子=1点

●春の日に散歩がてらに菓子を買ひ=淳一
△入=1点
(入:私はピスタチオのコーンアイスでした。)

●目尻より零るる春の夕焼かな=秀子
△ぶ=1点
(ぶ:涙腺を刺激するほどの美しさ・切なさ。)

●夜桜やしじまにベール掛けるごと=秋波
△し=1点
(し:月明かりに照らされうっすらと見える桜を想像します。)


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