*A部門入選作発表*

当季雑詠*全60投句(入選44句)


【特選】

一席
●さへづりの空へ干さるる産衣かな=ぼくる


◎雪、香◯ラ、秋、水、メ、入△久、ま、五=19点
(雪:幸せのお裾分けをしてもらったような気分になりました。 香:産衣を干す嬉しさ。さへづりが、赤ん坊の泣き声を連想させます。 ラ:祝意のこもった句。 秋:囀りは雲雀でしょうか。 水:囀りと産衣の両方に生命力と未来を感じます。 久:これから広がる未来に乾杯! ま:幸せがいっぱい訪れますように。 五:産衣を祝福するかのような、さへづりの空。春の命を感じる。)


二席
●航跡の島まで伸びる暮春かな=雪絵


◎十、ま、ス◯葱、ぼ、香△砂、資、水=18点
(十:まさに春風駘蕩の大景です。作者が乗船している景では「伸びる」とはならない。岸から遠ざかる船を眺めていると解釈。 ま:白髪鴨さんへの深い想いが感じられます。 香:穏やかな海が暖かそうです。 葱:穏やかな春の海の夕景が美しい、過ごして来たさまざまな人生がその航跡に曳航されてしみじみと深く心に蘇ります。 ぼ:詩情があり、格調高い句。 資:ついつい能古渡船をイメージしてしまう。)


二席
●チューリップ喋りつづけて散りにけり=十志夫


◎久、紅、秋◯砂、ぼ、五△白、雪、喋=18点
(久:たくさんの人と出会い語ったのでしょう。そして散る定め。このように生きたいですね。 紅:中七が独創的ですが、とても共感できました。 ぼ:いかにもそんな感じあり、面白い! 秋:チューリップの元気と潔さがよく伝わる勢いのある句。 五:チューリップの花は、我々にひたすら語りかけて散っていった。 白:そうか!ずっとおしゃべりしていたのか。 雪:なるほど!確かにそう感じます。)


【入選】

●のらくろのやうな仔猫を貰ひけり=あかね
◎ラ、入◯紅、雪△砂、修、ま=13点
(ラ:のらくろ! 懐かしいです〜。 紅:別の句会でも頂きましたが、やはり具体性がいいですね。 雪:のらくろとはおもしろいたとえですね。確か犬ですよね。 修:わたしはね、犬はおすで、猫はみんなめすと幼き日思っていたのです。 ま:ユーーモラスで可愛い。見てみたいです!)

●一つだけ開かぬ貝や春惜しむ=まさこ
◎あ、水◯雪、ス△久、ラ、淳=13点
(あ:頑固な貝、なんだか自分に似ているようでもあり・・。 雪:何かやり残した事があるけれども、季節だけは過ぎてゆく、そんな思いになりました。 水:充実した春にやり残したことに想いがいく。開かない貝はその象徴か。 久:食べられぬこの貝をどう思うか。哲学的でもあります。 ラ:「一つだけ」というパターンはありますが、「春惜しむ」がよく利いています。)

●藤棚の地球に降りてゆく重さ=十志夫
◎砂、メ◯久、資△葱、香=12点
(久:重力に逆らわない藤棚を私も詠んで見たかったです。 資:藤房の下に向かって一直線の姿をニュートンの目で捉えていて面白い。 葱:「藤の重さ」一点に視点を特化して、それを如何に言葉に移しかえるか、池田澄子さんの句の骨法に近いものを感じました。 香:地球に降りるという表現が、独特ですね。)

●マヨネーズのせて食べたし春の山=スライトリ・マッド
◎喋◯白、修、五△久、葱=11点
(白:これは豪快だ。 修:なんて楽しい想像、ほんと美味しそうですね。 五:マヨネーズに春を感じる。春の山の柔らかさを上手く表現している。 久:まるで緑色が一定でない、ブロッコリーの集まりのようで。私も新緑の山をそう感じていました。 葱:まるで「小学生俳句大会」の特選のようなこの句、その純粋さと大胆さにびっくり!)

●ほろ酔ひの春満月がついて来る=ラスカル
◎阿◯十△砂、ぼ、紅、雪、入=10点
(阿:酔っぱらいの感覚がよくわかる。 十:自分の酔った千鳥足を月が酔ってゐるとすり替えた俳諧味。 ぼ:月を酔わせたのがいい。とぼけた味あり。 紅:春ならではの、楽しいお句です。 雪:あくまでも私は酔ってない!?)

●曲芸の猿のドレスや春の風=紅椿
◯十、ラ、修△ぼ、水、ス=9点
(十:今や猿曳きも祭のアトラクションで見るくらい。春の風の中、ドレスを翻しながら猿の宙返りがピタリと決まった。 ラ:ドレスが風になびく様子が見えます。 ぼ:子猿のドレスが微笑を誘う。 修:けなげな猿の姿、女の子なんだ。 葱:佳作に戴きたい句、ペーソスもユーモアも人生もあります。)

●たかんなのすつくと谷の右左=砂太
◎五◯紅、喋△ス、入=9点
(五:たかんなという古語が決まってます。すつくもうまいです。 紅:「筍」だけで、大きな景を詠まれたのはお見事です。)

●エロスてふ小惑星あり春の闇=スライトリ・マッド
◎葱、ぼ△雪=7点
(葱:地球を「エロス=生命力」の星ととらえたところがいいと思いました。「春の闇」には清濁合わせのんだ色んな意味がかぶさってきます。 ぼ:原初の生命・エネルギーを感じます。 雪:まさに宇宙は闇の中。)

●遠足や亀の如くに園児来る=砂太
◯淳、水、香=6点
(水:さっきあそこにいたのに、今まだあそこって。微笑ましい光景です。 香:勝手勝手にしゃべりながら歩いてくる声が聞こえてきそう。 葱:リュックサックがちょうど亀の甲羅みたい。)

●豌豆の花うつむける思案かな=雪絵
◯白、久、メ=6点
(白:美しく、小さいものに向ける静かな視線。 久:うつ向き加減がしおらしさを感じさせますね。)

●来ぬバスをゆうくりと待つ花の夜=秋波
◯阿、ま△淳=5点
(阿:ずっとたたずんでいたいバス停。 ま:ゆったりと楽しんで待っていらっしゃるのですね。)

●森閑と座しこでまりの花明り=まさこ
◎資◯喋=5点
(資:森閑という難しい言葉を使ってうまくこでまりの姿を描写していると思う。)

●丸めたる軍手のやうな落椿=ラスカル
◯あ、淳△修=5点
(あ:量感あり、真っ赤なカラー軍手なのでしょう。 修:黄色混じりの八重の白椿?凝視を感じます。)

●暮の春道具箱にはうすぼこり=水音
◎修△秋=4点
(修:ほこりが目に見えるよう。季語が効いてる。)

●五月雨に長靴鳴きて傘が行く=久郎兎
◎淳△資=4点
(資:耳と目で春の雨の風景をうまくとらえている。)

●昭和の日笑顔の白黒写真展=資料官
△ぼ、ラ、喋、メ=4点
(ぼ:昭和には白黒のよさがあった。カラーの「カサブランカ」「第三の男」は考えられない。 ラ:即き過ぎかもしれませんが、やっぱり「昭和の日」ですね。 葱:昭和も初期のころの写真でしょうか、いかにも。)

●審判の動体視力花吹雪=水音
△十、白、修、香=4点
(十:今や、野球、サッカー、相撲、いずれもビデオ判定の時代。もはや自慢の動体視力もメカには敵わない。 白:花吹雪に目をやられたか、それとも老眼か。 葱:6月のワールドカップに選ばれた審判の判定は本当に「命がけ」ですね。 修:わっ!スポーツみたい。 香:ビデオ導入。今まで何も文句を言わなかったイチローはえらい!)

●這い這いの速さでゴール花便り=スライトリ・マッド
◯砂、葱=4点
(葱:「這い這いの速さ」という表現が楽しい。)

●潔き熊谷草にある悟り=五六二三斎
◎白=3点
(白: 野にありて哲学を。上五が佳いですね。)

●咲き満ちて翳ゆたかなる桜かな=ぼくる
◯資△十=3点
(資:桜の翳の色はなかなか美しいと思う。 十:晴れやかな表でなく、裏側に視点を当てている。「陰」や「影」でもなく、「翳」の文字にドラマを感じる。 葱:満開の桜も夕闇が近づくとその明るい色彩を弱めます、しかし、その圧倒的な存在は地に落ちる「翳」に投影されていて、なを情緒的な「量感」を残しています。)

●桜しべ降るや薬缶が沸騰し=あかね
◯ス△ま=3点

●田植え待つ張り糸に風星の海=久郎兎
◯入△香=3点
(香:こんな夜景は見たことがないです。) (ま:農作業のような外での作業中でしょうか、珍しい視点ですね。)

●降りしきる枝垂桜やにはたづみ=まさこ
◯秋△紅=3点
(秋:映画のワンシーンを見るような。 紅:動きのある、やさしい色の景が浮かびます。)

●京の寺こんな大きな花水木=白馬
◯ま=2点
(ま:口語で表現したところに余計感動が伝わってきます。)

●尻尾より崩るる飛行機雲の夏=十志夫
△あ、入=2点
(あ:うーん尻尾より崩るるねえーいかにも夏の感じ。)

●鐘楼の脇に第三牡丹園=資料官
△十、紅=2点
(十:我が地元の西新井大師の牡丹園を詠まれたことに敬意を。 紅:別名「ぼたん寺」とか言われているのでしょうね。「脇に」を「脇や」にしてもよかったのではと思いました。)

●席替へのファムファタールや春の虹=葱男
△資、五=2点
(五:ファムファタールは運命の女。中学生の思い出?)

●掃除機のすぐにまろぶや蝶の昼=紅椿
△葱、秋=2点
(葱:同じような経験をよくするので実感があります、でも、よくそれが見事に「俳句的」な光景に仕立てられるようなあ〜、すぎょい! 秋:日常の何気ない事を詠み込む姿勢に好感が持てます。)

●大学はビルでありけりチューリップ=水音
◯あ=2点
(あ:何とこれが大学?いかめしい正門もなく・・らしくなさに一票。 葱:面白い視点、そこから先きの感慨は如何なものだったのでしょう、作者に聞いてみたい。)

●タンポポの根強かに石畳=久郎兎
△喋、秋=2点
(秋:藤棚の…の句と迷ったけど、素直な観察眼でこちらを採りました。ほんとタンポポって冠毛はあんなに軽いのに根っこは強い!)

●初蝶のごとく眺むるヨットかな=修治
△メ、五=2点
(五:ヨットは夏の季語だが、今回は、白鴨忌だ。初蝶が季語だ。ヨットから、白髪鴨さんが初蝶となって帰って来た。 葱:二枚の帆の動きに春光が輝く様子がみえます。)

●春あらしちらほらちらと散りにけり=淳
◯阿=2点
(阿:散り方がリアル。)

●放課後の白線眩し初夏の風=阿Q
△あ、メ=2点
(あ:眩しいのは白線も勿論だが憧れの彼女だったりして・・。)

●湖と空のあはひを行くヨット=修治
△あ、阿=2点
(あ:そんなもんでしょう、ヨットの帆が爽やか。 阿:きれいな句。)

●さくらさくら青い屋根した新幹線=資料官
△水=1点
(水:新幹線の名は「さくら」じゃなくて北陸新幹線ね。来春の金沢開業が楽しみです。先日金沢港から車両基地まで道路を走ってました。 葱:桜も富士も新幹線もある意味、日本の象徴的なものですね。) 



●ジプシーのタップ高らか月おぼろ=ぼくる
△ス=1点
(葱:これも佳作に戴きたかった句、中七のリズム感が月夜の幻想と相まってエキゾチックな映像を浮き上がらせてくれました。)

●新緑や峠を越えて懺悔道=喋九厘
△白=1点
(白:全てを告白してすっきりしました。)

●春の昼コーヒー店にひとりかな=修治
△阿=1点
(阿:こういう喫茶店が少なくなった。)

●はるばるとピンク十色の吉野山=秋波
△阿=1点
(阿:桃源郷みたいです。)

●藤なびくテニスコートに声上がり=雪絵
△ラ=1点
(ラ:明るく、健康的な句。)

●行く春や千鳥ヶ淵に浮くボート=白馬
△淳=1点



【無選】

●畦青む駆けずり回った頃のこと
(葱:体を動かす事自体が無性に、理由も無く楽しかったころ、今ではちょっとしたことでも動くのが面倒です、この落差、「動物」の資格免許の期限が切れかかっているみたい、今年の夏は友人に教わって保津川でカヌーを漕ぐぞおー!)


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