*A部門入選作発表*


当季雑詠*全49投句(入選42句)

【特選】

一席
●空蝉や高さほどなるこころざし=水音


◎里○葱、五、夏△白、君、ス=12点
(葱:木を登ることが努力であるとすれば、高きに殻を脱いだ蝉の一生は高潔で尊い。 五:高さほどなるこころざしという言い方が気に入りました。 夏:そう!時々思いがけなく高い所に抜け殻が・・・。 白:本当は何の関係もないんだけど、そのように見ること、その姿勢がこの句を選ばせた大きな理由です。 入:空蝉も少し見えをはったほうがいいかな? ス:高くも低くもなく かな?)


一席
●風抱きヨット小島を傾がせる=葱男


◎夏、水○二、ス△里、前=12点
(夏:夏らしい景、「小島を傾がせる」良いですね!! 入:傾いでいるのはヨットのはずだが、大きな景でこれも迷いました。 ス:楽しい錯覚! 前:傾ぐのは小島の方でありましたか。)


三席
●夏嶺よりかなしみ投げて池の底=スライトリ・マッド


◎二、喋○白、里△君=11点
(白:かなり強い印象を感じた句ですが、終句の「池の底」が少しかなしみを増幅させすぎた感じで◎にできませんでした。)



【入選】

●乙女らのくるぶしまぶし祭りの灯=スライトリ・マッド
◎君○里、二、水△夏=10点
(夏:納得のお祭り風景。 葱:前に祭りの句で、どなたかが若衆のお尻を詠んでいたような記憶が・・・。男と女、違うようで、同じようで? 入:くるぶしまぶし、は一昔前の祭の灯のほの暗さでは見えないかもしれませんね。)

●合歓の花雨の別れの傍にいて=五六二三斎
◎資○夏、喋、陰△葱=10点
(夏:合歓は華やかなのに憂い顔の花です。 陰:合歓の花は、こういう風情があるよね。 葱:歓び合える時は束の間。)

●甚平の父八十にして禁煙す=資料官
◎葱、香△入、喋、百=9点
(葱:八十にして新たな挑戦とは、お爺ちゃん、偉い! 入:甚平と禁煙の妙。息災にお過ごし下さい。 百:そのお年でえらい。)

●宅急便置き場所たずねし人や汗=入鈴
◎男○白、前△香=8点
(男:その汗にご苦労さんと心から言いたくなります。 白:本当はいちばん印象に残った句なんです。人間のありようはいちばん訴えるものがありますから…。でも、何度か迷っているうちに○になっちゃいました。 前:お中元季節の風物詩?)

●夏の月今宵飾りの山の上=五六二三斎
○二、資、ス△メ、香=8点
(ス:きっと満月でしょう。)

●炎暑かな氷含みてジャズを聴く=白髪鴨
○葱、君、陰△前=7点
(葱:炎暑に対処するに氷とジャズとは、なんとダンディなことか! 前:このような余裕にあこがれます。 入:残暑とジャズ、なら。氷はカクテルか何かの氷だったら聴きたいです。)

●網膜に片蔭を灼きグッドバイ=葱男
◎白、百△水=7点
(白:意味はよく分からないんですが、印象的でした。いろいろな受け止め方のできる句ですね。 百:くっきりした陰影が目を閉じても残る。 入:なんか熱き別れがあったとでしょ。)

●みずくらげゆうるりゆららブルースや=スライトリ・マッド
○入、メ△二、前=6点
(入:暑さに負けそうなときは、これを歌にしてみよう。 メ:くらげとブルース、新感覚。 前:ら行が入るとハイカラになるんですね。)

●炎帝を振りきりおほせて秋芳洞=夏海
◎入△白、水=5点
(入:秋芳洞は秋、芳しくそのためなら、炎天の試練も悪くありません。 白:よくまとまった感じがします。それだけに全体的に印象が薄かったんですが、ただ初句の炎帝の2文字が際立たせているように感じました。 葱:やっとこさ辿り着いた夏場の鍾乳洞、格別の冷気でええ感じやね!)

●大雨の去りし夕べの蝉しぐれ=木陰
◎メ△五、里=5点
(陰:昨日の実写です。 メ:今年は蝉も大変でしたね。 五:大雨のあとの蝉しぐれ、夏ですね。 入:とても風格があって、迷いました。)

●気合もて行者は滝と切り結ぶ=夏海
○君、百△二=5点
(百:「切り結ぶ」の言葉選び。)

●遭遇の蛇や強気の演技する=入鈴
◎前△男、陰=5点
(前:沖縄にいたとき、演技だけではなく、ガブッと来たことがありました。 男:強気の演技よりも、出くわした瞬間にこちらが負けてます。 葱:向こうかて怖いんやろうけど・・・。)

●青芒呆けるまでは潔く=君不去
○資△入、里=4点
(入:黒澤映画の乱で、リア王役の頭がほうけたようにボサボサで、あたり一面が薄野原だったシーンがありましたよね。)

●熊鈴が微かに響く夏の山=五里 
◎五△水=4点
(五:北海道の夏山か?熊鈴がいいですね。)

●百日紅梢の先の青い空=メゴチ
◎陰△喋=4点
(陰:首の動きが、あっていい。情景が浮かぶ。 入:そのとうりです、百日紅の花の透明感まで想像させてくれます、が、23のほうを。)

●白き雲もくもく、もくと午後三時=喋九厘
◎ス△葱=4点
(ス:童心に帰った感じで楽しそう、おやつの時間やし! 葱:入道雲に「もくもくもくと午後三時」とは楽しい形容ですね! 「みんなの歌」で歌いたい!)

●段半ば待ち構へたる熱帯夜=夏海
○入△白、陰=4点
(入:相撲の取り組みのようで面白いです。 白:段半ばの意味は何でしょうか? 私は勝手に「2階の寝室へあがる階段」とか「エレベータのない団地で、帰宅のために階段を上っている途中」とか解釈して共感してました。 陰:作者は、高台にお住まいか。 葱:「段」とは夏の段? いよいよ夏本番ってこと?)

●西日さすコートの隅に玉ひとつ=メゴチ
○男、水=4点
(男:拾うのを忘れるほどに疲れ果て・・・気持ち分かります。 水:遠い遠い昔のことを思い出しました。)

●向日葵の背ばかり眺む網戸越し=水音
△五、百、陰、香=4点
(五:向日葵の背の高さ確かに異常に高い! 入:ぎらぎらしていて、種など採る気になれません。 百:うちでは時計草が外向いてます。)

●美容院へ田へおみなの鳳仙花=入鈴
○香△二、ス=4点
(ス:なんとも取り合わせがユニーク! 葱:鳳仙花って、爪紅のおばちゃんの形容なの、ん?)

●海開き磯ヤドカリも避暑の旅=喋九厘
○男△メ=3点
(男:ヤドカリとて暑さにゃ勝てません。 メ:海の中は涼しいだろうなあ。)

●炎昼や駅前ひとりバスを待つ=資料官
○百△男=3点
(百:いかにも暑い感じ、そういう記憶あり。 男:日傘をさした御婦人でしょうか。)

●風の庭落ちるな愛しい青林檎=木陰
○喋△君=3点
(陰:苗木を育てて大きくなり、花も一杯咲いたのに、実は4個、大風が心配です。 入:ほのぼのとして、迷いました。)

●炎暑かな海空大地に満つ怒り=白髪鴨
△夏、資=2点
(夏:天災・人災・戦災の7月でした!)

●線香の煙立ちたり夏の夕=水音
○メ=2点
(メ:しめやかに迎えたいものです。)

●たそかれて客呼びよする打ち水や=君不去
○香=2点

●月見草訪ねてみたき俳句町=葱男
○五=2点
(五:何か風情がありますね。)

●山の手に潮の香運ぶいなさ風=メゴチ
△夏、喋=2点
(夏:潮の香がするんですね?! 葱:「いなさ」=主として関東で言い、梅雨の前後に海の方から吹いてくる東南風の強風。辰巳風。)

●浴衣娘に真珠ピアスの一粒や=君不去
○前=2点
(君:最近の浴衣っ娘、自由で魅力的です。 前:最近は、浴衣柄の甚平が流行っているようですね。 入:取り合わせが程よくていいのですが、真珠をほめてしまっているかもしれない。)

●愛してる?俺だけに出る冷や奴=前鰤
△葱=1点
(葱:田中裕明は詩情があれば無季でも採る、と云った。口語体でもいいじゃないか、詩情があれば。)

●アメリカンカムパネルラの夏響く=ひら百合
△二=1点
(葱:アメリカで銀河鉄道? よく意味が分りませんでした。)

●台風(あらし)過ぎ故宮の路に傘の花=前鰤
△メ=1点
(前:【注】台風4号通過の台北にて。 メ:干した傘の花?)

●片蔭の歓喜の声や今朝の道=五六二三斎
△ス=1点
(ス:すがすがしい一日の始まり発見!)

●雲白しシーツ干す朝蝉の鳴く=香久夜
△百=1点
(百:さわやかな暑そうな朝。)

●座す庭のアゲハ近くに翻る=ひら百合
△資=1点

●さるすべり紫かろし陽の高く=香久夜
△入=1点
(入:歌うようで、しかも花の透明感もばっちり。)

●蝉起きてじっとり汗ばむ朝顔や=喋九厘
△男=1点
(男:朝からウルサイって言いたくなる時が・・・。)

●大雪渓意気地を払う第一歩=五里
△五=1点
(五:北アルプスの登山を想像!夏を感じる!)

●まぶたとじ故郷にたつ蝉の声=ひら百合
△資=1点


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