*A部門入選作発表*

当季雑詠*全36投句(入選30句)

【特選】

一席
●蛇行せし川の行く手や秋の夕=スライトリ・マッド


◎君○喋、木、久△澄、五、入=12点
(君:B部門で固まっていた頭にこの広がり感。ほっとさせられて。 久:広い平野に住む人の句だろうか。懐かしく、またちょっぴり悲しい風景。 澄:目に見えるようです。 五:蛇行する川と言えば、和歌山の熊野川などを思い出す。アメリカから関空に帰る飛行機の中から見たことあり。蛇行せし川を人生に例えると、その行く手やいかに? 入:もっと、蛇行と秋の夕に必然が感じられたらいいのだけど。)


二席
●黙とうの祖父の背中や敗戦日=資料官


◎砂、五○ス△二、久、入=11点
(五:お祖父さんが生きておられるのは不思議のような気もするが、もしそうならば戦争体験者であられるのだろう。敗戦日としたところもよい。しかし、日本人はこのお祖父 さんの背中をよく見て平和に暮らしてほしいな! ス:何ともいえない光景で、こういうの弱い! 久:かがむ背に 嘆くも虚し 高日差し。)


三席
●残照は 地の塩になれ 傘になれ=久郎兎


○砂、喋、君、五△月=9点
(五:意味するところはよくわからないのだけど、海辺の情景?地の塩になれがよい。残照やの方がよかったかも?月:これって季語、「残照」なのかどうか分んないんだけど、ついでに意味も分んないんがけど、なんか知らん熱い心だけは感じる。)


【入選】
●盆の灯のゆらゆら照らす爪先や=入鈴
◎月○資△喋、里、久=8点
(月:川を下ってゆっくり流れて行く灯籠、作者の視線の確かさに共感! 資:顔は見えねど手先のみ光る。お盆ですね。 久:爪の先の意味がよくわからないが、先祖の霊との交わりなのかとも思える。)

●夢うつつ午睡にひびく法師蝉=君不去
◎メ○里△砂、二、前=8点
(メ:木陰の午睡いいよね。)

●行く人も薄暮になじむ盆提灯=入鈴
○メ、ス△君、里、二、久=8点
(メ:田舎の盆を思い出します。 ス:お盆の情緒的風景をうまく切り取ってくれました。 久:あの世とこの世が交じる風景がいいですね。)

●漱石の全集赤し盆の風=五六二三斎
○砂、二、前△ス=7点
(ス:夏の日の夕方って感じが出ていて、漱石も効いている。)

●峠道上る下るも鶏頭花=スライトリ・マッド
◎喋○五、入=7点
(五:峠道を上るのか下るのかの選択を迫られている。鶏頭花には強い意志が感じられる。上るもたいへん、下るもたいへんみたいな気持ちなのか?前門の虎、後門の狼みたいにとれたが? 入:情景がくっきり、潔し。)

●chewと食む皮さへ甘し秋なすび=入鈴
○里△澄、木、君、ス=6点
(澄:chewがいいです。 君:初句にまいった! ス:おもしろ!)

●祈る目の路面電車や長崎忌=資料官
◎久△砂、五、入=6点
(久:「祈る目」は電車のヘッドライトか、前面の窓か、それとも運転手の眼差しか、ひょっとしたら、お客が前を見つめる視線かもしれませんね。 五:祈る目の路面電車なのでしょうか?確かに、路面電車の正面って顔みたいにも見えます。原爆の時にも路面電車が走っていたことでしょう。長崎の街から路面電車をなくすな! 入:その車両に乗り合わせた人々の一体感がひしひしと。)

●海坊主恐れし子等や島の盆=五六二三斎
◎前△里、ス=5点
(ス:海坊主に足引っ張られるんでしょう?昔の人の知恵だなあ。)

●蚊帳の果てふたつ名残りの赤き斑=月下村
◎二△喋、前=5点
(五:●蚊帳の果てふたり名残りの赤き斑=「つ」を「り」に変えるだけで、何とも言えない色っぽい句に!お戯れごめんなさい!)

●ねこじゃらし風の中なり思うまま=木笛
◎資○君=5点
(資:えのころ草の揺れる様が涼しげに感じました。)

●星尽きる海に吹いたか銀河風=五里
◎澄○前=5点
(澄:なんかスケールが大きくていいです!)

●水澄みて漆黒宇宙遊泳す=月下村
◎入○澄=5点
(入:表現が若々しくて、憧れます。坪内捻典俳句王国を見て、偶然{飛び込のもう真っ白な泡の中}20代初め女性の句と好対照だと。)

●天の川夜空の底に流れ行く=澄響
○久△月、木=4点
(久:夜空を見上げれば、見かけは平面なのに「底に流れる」との発想は、いいですね。 月:都会では見えない天の川、外灯のない地方でもやっと夜空の底の方にうっすらと、あれが天の川かなあ〜って。これぞ天の川!ってくっきり、堂々と見えたのはタイのコサムイっていう島に行った時、1987年の夏か。)

●送り火やしじまに煩の熱を消す=月下村
○資△二、前=4点
(資:五山の送り火の句なのでしょうかわかりませんが良い句ですね。一度は同時に五つ見たいと思っています。)

●観覧車秋の風切り過ぎし日々=スライトリ・マッド
○二△メ、資=4点
(メ:高い所から涼しくなるんですね。)

●つかの間の茜色なり鰯雲=澄響
◎木△メ=4点
(メ:季節の移り変わりを感じるね。)

●上着持つ 「氷」暖簾の消える頃=前鰤
○メ△資=3点
(メ:今年はまだかき氷食べてない。 資:最近この氷の暖簾が少なくなりましね。昔の涼しい思い出です。)

●草高く夫と汗す盆の墓=君不去
○月△喋=3点
(月:冠婚葬祭で思い返す、連れ合いの有り難さ!)

●尻痛く青春18きっぷ夏去りぬ=喋九厘
○木△資=3点
(資:最近北陸路までこのキップで出かけた御仁の作と見た。敬意を表してあえて採った。尻痛し夏の青春18きっぷ。腰痛し心は18夏の旅なんてどう。)

●若者らはずみりんどう海に映ゆ=五六二三斎
◎ス=3点
(ス:明るくはつらつとした感じがいい。)

●鐘の音も巡り還りし長崎忌=資料官
△木、君=2点

●鎮魂に 線香花火 捧ぐ愛=久郎兎
○澄=2点
(澄:線香花火で鎮魂、ステキです。)

●松虫の闇より清し声我に=木笛
○月=2点
(月:闇が清いっていう感性に打たれました!)

●朝顔の二期作挑みしいと楽し=喋九厘
△月=1点
(月:楽しそう!)

●初秋かな松虫なくや耳澄ます=澄響
△メ=1点
(メ:まだ聞いてないけどね。)

●ツバ紅を必死で追うは開聞岳=五里
△澄=1点
(澄:なつかしいです。)

●爆心の地中空ぞさす赤かんな=君不去
△砂=1点


A部門入選作

創刊号 第二号 第三号 第四号 第五号 第六号・新年号 第七号 第八号 第九号 第十号 第十一号 第十二号