*A部門入選作発表*

当季雑詠*全44投句(入選37句)

【特選】

一席
●山の湯の肌もすべりし落ち葉かな=スライトリ・マッド


◎里、資○木、五、喋、久、前、水△月、メ=20点
(資:滑らかなもち肌に紅葉がすべる様は実に色っぽい。しわしわだとぺたっと濡れ落ち葉。 五:山の湯につかりながら、ふと伸ばした腕に落葉がすべる。静かな雰囲気の中にありながら、快活さが伝わってきました。 久:「肌がすべすべ」と「落ち葉がすべり落ちる」が絡まって、なかなかいいですね。 月:温泉に入ってしまえば、みんなみんなすべすべお肌よね! メ:温泉行きたい!)


二席
●潰れ寺石に還りて冬麗(うらら)=入鈴


◎月、木、君、前△久=13点
(月:上五に多少違和感があるが、この「崩れ」がかえって整った中七、下五に好感度をもたらしたのだと思う。 木:六甲山中腹の火災にあった天上寺が日が経ち石と野原になり景色も良く 登山客の昼食スポットになっています。生命は土から生まれ土に戻りますが石は石のまま。輪廻転生のうららな世界ですね。 前:「冬うらら」って、初めて聞きました。どんな状態なのでしょう? 久:もはや寺を守る人がいなくなって、雪が降っている光景を思い浮かべた。なぜか加賀を思い出させるのだが。)


二席
●初冬の雨や火宅の人となる=五六二三斎


◎砂、ス○月、木、二△資=13点
(五:壇一雄没後30年を迎えるにあたり。 ス:壇一雄に敬意を表して!私の好きな作家です。 月:時々私もなっております。 資:我がご近所檀家にちなみ採る。家宅の妻は健在です。娘も犬連れて散歩している。)



【入選】

●炭の香にちち・はは・あにと筆を措く=月下村
◎入、喋○久、ス△五、二=12点
(五:詠み手はわかっていますが、天涯孤独の句はじーんときますね。 久:漢字で「父母兄」としないのは、逝ってしまったからかとも思うけど、どうだろう。幼い子が書いたとは取りませんでした。 ス:しみじみとした感じ。平仮名書きがいい!)

●朝凍(あさじみ)や波動のリレー寺の鐘=スライトリ・マッド
○里、資、百△入、君、前、水=10点
(資:凍てつくような朝,遠くの鐘の音が聞こえるきりりとした雰囲気が身にしみました。 百:寒さが伝わるなんて・・・)

●白き蝶 小春日和に 〆の舞=五里
◎水○メ、百△月、君、久=10点
(メ:健気に頑張っています。 百:「〆の舞」が面白い。 月:「冬の蝶」とせずに穏やかな〆の舞いでした。 久:晩秋の蝶は弱々しく日向を小さく飛ぶ、見たことがある光景で作ってみたい題材でした。) 

●父の背を思ひ出し行く十夜かな=五六二三斎
◎百○砂、ス△二=8点
(百:共感するもの。 ス:そんな父、母になりたいものです。)

●鈍色の空を押しのけ冬紅葉=水音
◎メ○澄△入、二、砂=8点
(メ:情景が浮かびます。 入:鈍色の空を背景にしたら、桜も紅葉も映えます。)

●美紅とふ絵の具求めて冬揺らす=入鈴
◎二○喋、君=7点

●銀杏を使うべく蒸す茶碗かな=ひら百合
○月△五、君、ス=5点
(月:旬の食財で旬の料理を頂きましょうね、味わえるうちに味わっておかないと、もう、しっかりとした奥歯の寿命に限りありです。 五:使うべく蒸すという言い方が面白い。銀杏を買ったから茶わん蒸しということか?茶わん蒸しって面倒な料理なのかな? ス:今思い出しました。去年拾った銀杏、土に埋めたままだったってこと! )

●うなじ透く山茶花の女(ひと)頬染まり=喋九厘
○前△里、資=4点

●落ち葉満ち煙(けぶ)る里から冬支度=喋九厘
○里△月、久=4点
(月:広い原っぱで落ち葉を焚く匂いのする里は次第に消えて行くのだろうか?国道沿いに極彩色の赤や黄色や青の看板が立ち並び、神経がささくれていくばかりの里になってしまうのか。 久:冬枯れの神社森を包む夕餉の煙か、昔懐かしい光景ですね。)

●亡き兄の三十一文字(みそひともじ)や夢十夜=月下村
○五△木、砂=4点
(五:同じ十夜句を詠んだ者としてどうしても採りたくなります。夢十夜!いい言葉です。お兄さんもきっと弟さんを天国から見守ってくれているはずです。)

●冬の朝ポケットの中新世界=五六二三斎
◎久△入=4点
(久:今冬はじめて両手をズボンのポケットに入れたときの様子を、うまく表現できていますね。去年忘れて入れて残してたものとか、太りすぎてパンパンになっているとか、想像を膨らませる作品です。)

●冬晴れやふはりふはりとツェッペリン=スライトリ・マッド
◎五△二=4点
(五:昔見た映画の白黒画面が思い出されました。詠み手もきっと冬晴れに昔を思い出していたのでは?)

●病葉の 隠れし露に 足捕らる=久郎兎
○君△木、百=4点
(百:「わくらば」ってことばもわすれてたな。)

●朝光(あかり)輝き射すや冬の海=木笛
◎澄=3点
(澄:きらりと輝く海が目にみえるよう!)

●カラン手に 気合い覚悟の 雪の朝=久郎兎
△里、喋、前=3点

●銀杏の黄に染められしボンネット=前鰤
○二△メ=3点
(メ:匂いも強いんだよなあ。)

●空を裂きガラス震わす鰤起し=水音
△五、喋、ス=3点
(五:鰤起しの寒々とした空気が伝わってきます。 ス:鰤起しって言うんですね。覚えました。)

●ノラ猫もマフラー欲しかろ凍てる朝=喋九厘
△澄、前、水=3点

●日溜りや障子の影揺れ吹かれけり=木笛
○資△里=3点

●紅葉散りまた紅葉散り冷えし朝=君不去
△資、喋、百=3点
(資:遅れて遅れてようやく紅葉。朝の寒さが身にしみます。 百:繰り返しが効いてる。)

●雪兆す忘れじ川の雫より=月下村
△木、二、ス=3点
(ス:北国の風景でしょうか?)

●風に揺れしだれて桜紅葉かな=資料官
○入=2点

●枯葉敷く糺の森や小宇宙=君不去
○メ=2点
(メ:一度散策してみたいところです。)

●客澄まし 葡萄盗り喰う 奈良の鹿=久郎兎
○入=2点
(入:使われている漢字の取り合わせがとても新鮮でした。)

●くりでんの最後の走り雁渡る=資料官
○砂=2点
(資:くりでん=くりはら田園鉄道のこと。詳しくはC部門参照願います。)

●木枯らしに負けるものかと襟を絞め=前鰤
○水=2点

●サッカーの脚や見惚れるピラカンサ=入鈴
○二=2点

●雪まじりふわりかろやぐつむじ風=ひら百合
○澄=2点

●一陣の風ゆく谷や枯葉わたる=君不去
△澄=1点

●落葉踏み通りの窓からジャズ響く=五里
△メ=1点
(メ:ピアノのジャズが似合う?)

●風花やこがらしの中舞い上がり=澄響
△百=1点
(百:私も同じものを詠んだので・・・・)

●冬日和沢の音魅せて歩をしたむ=木笛
△水=1点

●振りむけばすずかけの実にあふるる光=ひら百合
△澄=1点

●ゆふいんの森待つをとこ櫨紅葉=資料官
△砂=1点


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