*A部門入選作発表*


当季雑詠*全50投句(入選41句)

【特選】

一席
●南風(はえ)白し海児の汗を弾かせる=白髪鴨


◎月、入、香○メ、水△前=14点
(月:「海児」のニ文字に痺れました。 香:風を色で表現。太陽の輝きも情景の広さも一気に伝わりました。 メ:日焼け肌に玉の汗、飛び散る汗が気持ちいい。 入:言葉一つ一つが夏そのもの、松ケンサンバ。)


二席
●新しきスケッチブック梅雨晴間=入鈴


◎ス、夏○資、砂△月、二=12点
(ス:句帖持ってくのもいいよね。 夏:やっとの晴れ間に浮き立つ気持ちが上5・中7にすっきりと表現されて! 資:まぶしい句です。夏を思わせるような青い空のもとで開くスケッチブックの白。月:夏へと向かふ爽やかなエネルギー!)


二席
●鮎の香をそっとたしかむ老釣り師=水音


◎男、メ○澄△月、入、白、香=12点
(男:釣れたんやなぁ・・そんな光景見たことがあります。 メ:川の水はまだ冷たくて。 月:ベテラン釣り師ともなると香りを嗅いだだけでその年の鮎のなにがしかが分かるのだ。漁を得て、静かに立ち上がる喜びもまた、その香りに確かめる。 入:息子の肩入れが強く、私も将来こんな釣りをしてみたいです。 白:ちょっと技巧的な感じがしましたが、そんな人もいるんでしょうね…。 香:静かな渓谷が目に浮かびます。)



【入選】

●湯あがりの芸妓ゆく路地立葵=水音
◎喋○里、ス△資、男、夏=10点
(ス:下駄に浴衣の立葵だね〜! 資:背丈が高い立葵の横を芸妓さんが行くって夏の京都。 男:なんとなく艶やかな中の路地が何とも言えません。 夏:立葵には粋な風情がありますね、「芸妓」の粋にピッタリ。 月:旅の番組、京都叙情篇か。)

●羅を畳みて幾何の涼風や=スライトリ・マッド
◎二○五、香△月、水=9点
(五:幾何の涼風が新鮮! 香:誰が着るどんな「きもの」も同じ形に収まる、合理的な着物です。 月:絽や紗の生地を重ねると、裏地に透けて不思議な幾何文様が生まれては消えて・・・。 入:うーん、こんな妙なる時が梅雨間に齎さるれば、幾何か嬉しからましー。)

●団塊に横へ並ぶや花菖蒲=五里
◎五、君○百△砂=9点
(五:団塊の世代のサラリーマンの悲哀が感じとれる句。 君:捉え方が面白いですね。 百:ホント横一列。「団塊」と比べたところがマル。 入:花菖蒲がちとかわいそう。あやめでもそうですかね?)

●ねぢれ花二重らせんの罠に落ち=水音
○里、前、五、夏△砂=9点
(五:二重らせんの罠が気に入りました! 夏:捩花の螺旋は本当に不思議、DNAの螺旋も連想できる?!)

●山開く千人の声山開く=五六二三斎
○ス、夏、喋△里、二、澄=9点
(ス:上五、下五の繰り返しが山びこみたいでおもしろい。千人って? 夏:山好きの人には待望の山開きですね。)

●影踏みや佇む子ども夏至の昼=男剣士
○資、白、水△メ、百=8点
(資:短い影の影踏み,ぶつからないように。 白:一番気に入った句ですが、ちょっとストレートすぎるような気がして◎がつけられませんでした。でも、一番影ができないときの影踏みですから、それもおもしろさかな…。 メ:こういう情景はとんと見かけませんねえ。 百:なるほど、影が短すぎ〈ちょっと作為的にも感じるが・・・〉。 月:△に採るか迷ったんだけど「影踏み」と「佇む」の繋がりになんだかひっかかって。 入:影が無いから余計に子供の立ち尽くしてる様子げ浮かんできて緊張感あります。)

●古地図なるあまたの島よ梅雨夕焼け(つゆゆやけ)=夏海
○月、君△五、水=8点
(月;古地図の意味がよく分からないまま、南の島の夏のシーンがあまりに美しいので。 五:あまたの島は沖縄のこと?先日、九州国博で沖縄の古地図を見たもので!すると、詠み手は博多の人?)

●南瓜の蔓が迷いし道の端=五里
○喋、砂、香△水、百=8点
(香:蔓が手探りで延びていく様子がおもしろい。 百:「ぼうぶら」って読むんでしょうか。 入:迷い出で、を初句にしたほうが、サスペンス。 月:写生句の佳句ですよねえ。△に採るかどうか最後まで迷ひましたが・・・。)

●夕焼け雲筑紫次郎の腕のなか=夏海
◎砂○入△資、二=7点
(入:筑後川を家人に筑紫川って言ってる私は、少し悲しい。 資:腕のなかが良いですね。遠くには天山背振が見て,広大な平野の雰囲気が伝わってきます。)

●仰向けになりて安らぐ草いきれ=男剣士
◎澄○百△君=6点
(百:やはり安らぐ。)

●やるせなき憂さに屈みて岩魚食う=白髪鴨
◎百○月△君=6点
(百:「屈みて」が「やるせない」。 月:やるせないのだから、ここは休日の食事風景ではない。おそらく仕事を引きずったままの街の居酒屋での岩魚だろう。それが「和民」や「笑々」のような店のマズイ岩魚だったら、間違いなく鬱です。)

●雨あがる厨の窓に額の花=スライトリ・マッド
△前、二、砂、メ、百=5点
(百:厠にはあじさいがよく似合う。)

●荒梅雨に吹かれて新芽の竹とんぼ=香久夜
○白△里、喋、君=5点
(白:情景を感じさせてくれるので選びましたが、私なら「…」としたろうなと思って、◎がつけられませんでした。 入:新芽の竹とんぼ?竹が撓ってこんな情景を、だったら点を入れたはずですが、、、。)

●短夜をボールひとつに明けにけり=君不去
◎水○入=5点
(君:今年の6月はこれしかないよね。 入:グチョーって状態を、こうやって句にできればすっきり終われます。 月:タフな男達の戦いをリアルタイムで見届けるのは、これまたタフな野郎達だけだろう。あかん、意に反して瞼がくっつく(*_*))

●安曇野の空染めゆくや山あじさい=君不去
○澄、メ=4点
(君:安曇野穂高の”そば処時遊庵あさかわ”俳句もおしゃべりも好きなご主人が、庭いっぱいにたくさんの種類の山あじさいを育てています。もちろんおそばも美味しかった! メ:最近群生しているのを見ていません。 入:49と迷いました。明け方の山あじさいを描きたくなります。)

●だめもとのじゃがいもの花果報なり=ひら百合
◎前△喋=4点
(月:じゃがいもは安くて簡単に手に入る食材だけど、どんな料理に使っても美味いんだよなあ〜!)

●ねぢれ花好いとお好かん含羞みて=スライトリ・マッド
○君△入、二=4点
(君:上手いな〜。私もねじれ花詠みたかったのですが、詠めなくて・・。 入:あのちっこい花弁をつまむ度に、いやいやをするとか、、、かわいい。)

●黒南風にざわめき立ちて雨模様=メゴチ
○前△里=3点

●サボテンの花中心に三日暮れ=ひら百合
◎里=3点
(入:月下美人のこと?夢中になりますよね。)

●七変化雨から慈雨にぬくもりぬ=月下村
◎資=3点
(資:私も七変化を使ってみたが味がある言葉と思いました。)

●麦秋のゆるりと落日がばい佐賀=喋九厘
△入、男、夏=3点
(入:がばいってわからないけど、落日がばいぴたーって合っとらすもん。 男:「がばい」に参りました。さるく長崎とどっちにしようかとも。 夏:広い佐賀平野の落日が見えるようです。 月:「がばい」は佐賀の方言でしょうか? ん、どんな意味?)

●芭蕉布に聞くは風の詩(うた)波の詩=夏海
○二△ス=3点
(ス:三線と島唄が聞こえてきさう! 月:JAL沖縄キャンペーンのキャッチコピーみたい!美しい語感で素敵なんだけどなあ・・・。)

●青東風(あおごち)やサボンのかおりして五階=入鈴
△ス、白=2点
(ス:五階まで歩く?でも石鹸の香りがしてきたらいい気分ね、きっと! 白:サボテンの香りってどんな香りなんでしょうか? 最後の「五階」の語感が気に入り ました。 月:サボンはシャボン?高層マンションにも一陣舞い上がる風の涼感!) 

●胡瓜苗こころもとなく冷える朝=ひら百合
△五、香=2点
(五:こころもとなくということは、胡瓜が育つか心配なのか?うまいです! 香:親心ですね。)

●五七五綴りつつ暮れる水無月か=白髪鴨
○男=2点
(男:綴りつつ暮れるの語に参りました。)

●滴りて両手に余る紫陽花や=君不去
△男、メ=2点
(男:雨に濡れた紫陽花の美しさは格別。 メ:いわゆるアジサイ色が好きです。 入:嵐明け、活けたる紫陽花と同じ作者?)

●新型の白ロマンスカーのソーダ水=資料官
△二、白=2点
(白:これといったこともない句だと思うんですが、ちょっと心に引っかかったので選びました。)

●箱根登山電車の窓の七変化=資料官
○男=2点
(男:箱根の車窓は自然が素直に訴えてきますね。)

●花とべらマリナタウンと黄昏れる=五六二三斎
△前、二=2点

●踏みよけし紅い実薄暑のわすれもの=香久夜
△二、澄=2点
(月:赤い実がサクランボなら僕もそうします。)

●紫陽花のさるく長崎そぞろ坂=喋九厘
△資=1点
(資:石畳,雨傘,皿うどん何もかももう一度。 月:「さくる」とは長崎の方言で、ぶらぶらするとか歩くと言う意味だそうで・・・。是非さだまさしに歌ってほしい!)

●雨森土泉に依りて環となりて=月下村
△喋=1点
(入:梅雨のもたらす被害に疎む気持ちもあるが、このような光景を私達に見せてくれることも。)

●嵐明け朝生けられし紫陽花(あじさいか)=五六二三斎
△香=1点
(香:25滴りて とどちらも好き、滴をたっぷり含んでるけどしっかりした様子。 入:紫陽花を倒すほどの嵐だったのか、生き返っていよいよ美しい?)

●幼子の手に束なりし白詰草=男剣士
△澄=1点

●おんふるーる遠き蛍や老婦人=入鈴
△夏=1点
(夏:蛍の儚さと、遠い記憶の覚束なさが呼応していますね。 月:雰囲気良さそうなんだけど「おんふるーる」が分かりませんでした。フランス語忘れました・・・(>_<)。)

●さつきがわながされてあくたとなりし=月下村
△ス=1点
(ス:句またがりはNGか?でもおもしろい句でつい・・。 入:ひらがなで、あくたの流れもさらさらと。)

●梅雨の宵ローズマリーの道たどる=香久夜
△二=1点

●踏青の跡にて知るや獣道=五里
△五=1点
(五:踏青とは?芭翁のこと? 月:「踏青」は晩春の季語ですが、写生句、という事でしょうか。)


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