*A部門入選作発表*

当季雑詠*全46投句(入選40句)

【特選】

一席
●白南風や屋号の桝の藍しぼり=葱男


◎夏、水、香○雪、ス、二△資=16点
(夏:藍染めの色が鮮やかで涼しげ。 水:白と藍の対比、大きな高い視点から小さいものへとズームしていく心地よさ。 香:粋な夏風情。 雪:藍と白、色の取り合わせの妙! ス:言葉が洒脱で白と藍の対比もうまいなあ。)


二席
●六の字は雨だれ形や桜桃忌=夏海


◎入、五、二、メ△香、資=14点
(入:奇想だけでなく、しっくりくるのが不思議な句です。それともう一つの入水に思いが行きます。 五:太宰治の忌日ですか。6月19日に入水自殺ですか?その日は雨だったのでしょうか? メ:う〜むこの発想はすばらしい。 資:6月19日満月雨降らず,寝台特急を撮る。 葱:中七が決まれば好きな句です。)


三席
●荒梅雨や白き碍子の町を過ぐ=入鈴


◎葱、雪○ス、前△水=11点
(葱:「碍子の町」が具体的には何処なのか分からないが、「三丁目の夕日」の頃にタイムスリップしたような「昭和」の匂いがまだ残っている古い町なのだろう。荒梅雨で土砂崩れのような二次災害がその町に起こらないように祈ります。 雪:町外れの光景でしょうか?白い碍子、近頃見なくなりました。 ス:雨で煙って見えるのでしょうか? 水:視界が白くなるほどに降る雨と、碍子の白もその中に溶け込んでしまうという風景でしょうか。)


三席
●初めてのひと居て酔ひし半夏生=葱男


◎ス、君○メ、百△前=11点
(ス:緊張と弛緩の感じが、半夏生の不思議な色と形にぴったり。 君:何やらストーリーがありそう・・・。)


【入選】

●再会の師は畑にあり合歓の花=五六二三斎
○葱、久、夏、君△砂、資=10点
(葱:「合歓の花」が付き過ぎかもしれないが、佳いものは佳い! 久:お元気なのかな? 夏:恩師の健在を喜ぶ気持ちが伝わります。合歓の花の色が見えるよう。 君:師にお会いした懐かしさ「合歓の花」できまり!)

●黴の香や水産経済論文集=資料官
◎喋○君△葱、夏、五、ス、百=10点
(葱:「水産」が頭に付いてる分、余計に黴臭い感じ! 夏:なるほど、書棚に長く置かれていたのか・・・。 五:どなたの句かすぐに分かりました。父君が亡くなられたら、もう開かれることのないかもしれない論文集。でも、大切に残して下さい。 ス:字余りでも取り合わせがいいなあと思いました。)

●花栗の匂ふ坂道部活の子=スライトリ・マッド
○入、喋、水△雪、砂、二=9点
(入:花栗の香りは息をきらして走る子にはわかるのかしら? 水:部活を終えて帰る夕刻は視覚よりも嗅覚が鋭敏になる感じがよく分かります。 雪:花栗と部活の子の取り合わせが、とても清々しい感じ。)

●霊山の水滔々と植田かな=五六二三斎
○入、資△澄、喋、ス、香、君=9点
(資:今年の豊穣を期待している姿。 ス:一滴の水の命が流れ流れておいしいお米になってと、日本の原風景ですねえ。)

●児の足裏(あうら)仕掛け噴水追い駆ける=夏海
◎前、百○雪=8点
(雪:子供たちのはしゃぐ姿が目に浮かびます。仕掛け噴水、って言うんですねぇ。  葱:情景はよく分かります。「仕掛け花火」という言葉があるんだから「仕掛け噴水」もあるんだろうけど、なんだかすっきり来ないなあ〜。)

●生まれたかまだいるのかと燕の巣=香久夜
◎砂△入、男、君、百=7点
(入:春の落花より、こちらのほうが断然気になります。 男:気になるものです。)

●子の心知る由もなく青胡桃=水音
○砂、前、資△入=7点
(入る:後悔と中途半端な固さの青胡桃。 葱:夭折の俳人、田中裕明氏がのちの夫人である森賀まりさんに捧げた句が「逢ふときはいつも雨なる青胡桃」。今でも彼女がもっとも好きな句だそうです。)

●紫陽花の毬数えしが色に酔う=久郎兎
◎資○男=5点
(資:あぢさゐを眺めていると微妙に違う色に酔うし、同じ色でもひかりの具合でまた違う、悔しいけど箱根登山電車のあぢさゐ見に行けなかった。男:色酔いですか。)

●カタツムリ紫陽花傘に雨宿り=喋九厘
○澄、男△久=5点
(澄:かわゆいですね〜。 葱:いわさきちひろ、永田萌、中島潔さん達の絵本の世界を想い起こしました。)

●霧雨や滴も甘き蛍草=久郎兎
○水、香△澄=5点
(水:なるほど、滴も甘いとは本当にそんな感じ。 香:♪こっちのみーずはあーまいぞ、ですね。 葱:あまりにも美しすぎて・・・)

●夏あざみ手話して歌ふ声の透く=スライトリ・マッド
○砂、二△喋=5点

●分校の山椒魚の棲むプール=水音
○五△葱、夏、ス=5点
(五:分校は廃校になったのか?一抹の寂しさが売りの句ですね。 葱:ストーリーとしては良くできていますが、これ、本当なら実際にプールとして使っているんだろうか、と疑問も少し。 夏:面白い!ステキな分校ですが、水泳の授業はどうするのかなあ。 ス:山椒魚をプールで飼ってるんですか?!)

●謀反ゆえ夏草哀し鴨川原=久郎兎
○五△男、喋、香=5点
(五:鴨川で処刑された謀反人?誰のことを作者は思ったのか?興味あります。 男:兵どもが…の感。)

●道真の詠みし梵鐘青葉闇=雪絵
○夏△砂、二=4点
(夏:観世音寺の鐘、歴史の重みと青葉闇が呼応して。 葱:大宰府に左遷された道真が「不出門」を誓って詠んだ歌は「都府楼はわずかに瓦の色をみる 観音寺はただ鐘の音をきく」というものだそうだ。なるほど、青葉にも哀愁の闇が見える。)

●へびいちご片足の鳥まどろみぬ=スライトリ・マッド
○喋△五、君=4点
(五:へびと鳥の取り合わせがたまたまですが、天敵関係みたいで面白い句でした。 入:片足立ちしてるということなら、鳥片足に?で、かなあ。 君:絵画を見ているようです。)

●紫陽花のひとつひとつに光あり=男剣士
○澄△メ=3点

●紫陽花や一雨ごとの艶やかさ=メゴチ
◎澄=3点

●さつき刈る鋏の音の重なりて=君不去
◎久=3点
(久:身近なことなのに巧を感じます。 入:面白いのですが、詳し過ぎ?)

●菖蒲池ときをり水輪生まれけり=雪絵
◎男=3点
(男:静かな中に何かが生きてますね。)

●白きうねり機は梅雨雲を渡りけり=入鈴
○葱△夏=3点
(夏:飛行機の窓から見た梅雨雲の様子が伝わってきます。 葱:上の句の字余りがよく「うねって」いる。)

●枇杷の実や学校帰りのよその家=メゴチ
○久△男=3点
(久:昔よくあった光景、ビワの葉に土ぼこりがついてた。 男:盗みたくなるんです。)

●朝涼や褐色の笑みCoffee please.=香久夜
△二、メ=2点
(メ:「褐色の笑み」がいい。 葱:「褐色の笑み」、座五の措辞から察するに黒人ウェイターでしょうか?)

●さくらんぼアメリカからの果たし状=メゴチ
○香=2点
(香:素敵なプレゼントがあったようですね。 葱:面白い!、アメリカンチェリーと佐藤錦の決闘ですか!)

●さくらんぼエンドロールのエキストラ=水音
△葱、メ=2点
(葱:取り合わせの妙で一票! メ:&ってさくらんぼに似てネ? 入:さくらんぼとの取り合わせが意外で似合ってる?)

●さびしさを指に添わせてレース編む=君不去
○百=2点

●瀬戸の海 島越え薫る 初夏の風=澄響
△久、入=2点
(入:島を越えてくる風に吹かれてみたいものです。)

●嫋やかに傾ぐ色房あじさい花=君不去
○メ=2点
(メ:たおやかってこんな漢字だったんだ。)

●梅雨曇り見上げて今日の遠出かな=男剣士
△五、雪=2点
(五:よくある梅雨の光景か?梅雨時は、家を離れるのは、奥様にとっては、いろいろ気乗りしないこともあるのかな? 雪:傘を持って出ようか、どうしようか?悩むところです。)

●石畳タイヤ響きて初夏の空=ひら百合
△水=1点
(水:ヨーロッパの古い町の様ですね。狭い石畳の路地から見上げた細い夏空?)

●海霧や今始まりしサスペンス=雪絵
△水=1点
(水:いかにもサスペンス! 資:ここに無人駅があり,一輌編成のディーゼルが止まっている。こういう風景が良い)

●オレガノの花に気づけり夕間暮れ=入鈴
△前=1点
(葱:ハーブ畑に咲く花は本来が脇役であるためか、他の花より余計に愛らしく思えます。)

●梅雨の朝ニャーゴと笑ふまゆげ猫=喋九厘
△百=1点
(葱:朝の連ドラの「瞳」かな?)

●時計台しづかに烟る梅雨の入=葱男
△雪=1点
(雪:季節は確かに移り変わる。この静寂がいいですねぇ。)

●午睡(ひるね)より覚めれば母の居らぬ部屋=夏海
△久=1点
(葱:これは亡き母を詠んだ句なのかどうか、迷ってしまいました。)

●未解決糸口たぐる草いきれ=香久夜
△前=1点
(葱:悲惨な事件が続きますね・・・。)

●むらさきも白もいろいろ花菖蒲=資料官
△澄=1点


【無選】

●使節団下り立ちしとか夏の駅
(葱:「使節団」とは「岩倉使節団」の事か? 句の背景が分かれば佳句だと思います。「**にて」のような脚注が欲しい気持ち。 資:何の使節団でどの駅かと思わず思考をめぐらせますがこの方程式は解けません。)

●梅雨深く光恋しや森の主(ぬし)
(葱:森の主のイメージが特定できまっしぇんでした。)


A部門入選作

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