*A部門入選作発表*

当季雑詠*全46投句(入選33句)

【特選】

一席
●案山子立つ一日分の熱を溜め=葱男


◎男、二○久、君△木、夏、資、前、入、香、ス=17点
(男:ひとり案山子の苦労が滲んでます。 君:”熱を溜め”つつ立つ案山子、それも1日分の!が面白い。 夏:案山子、暑そうです。 入:私も案山子をなんとか詠みたいと思っています。ほてり溜めでは強すぎるんでしょうね。 ス:わかる、わかる、かかしさんの気持ち。)


二席
●秋めくや阿蘇にベンガラ色の牛=雪絵


○葱、水、夏、香、砂、二△五、ス=14点
(葱:阿蘇の雄大な景色の中にベンガラはいい配色かも。 水:夏には暑苦しい赤牛も豊かな感じがしてきますよね。 夏:「ベンガラ色」が良い。秋の阿蘇が目に浮かびます。 五:ベンガラ色がよい。 ス:のどかな感じが出てていいですね。)


三席
●つくつくし新刊図書を手にとりて=スライトリ・マッド


◎君○資、雪、入△葱、水、夏、百=13点
(君:読書の秋到来ですね。”新刊”に初秋の爽やかさが感じられて。 資:これはシャベ栗さんの「鉄道再発見の旅」のことだ。待ちに待ってつくつくぼうしの頃にようやく発刊。 雪:爽やかな風を感じます。そろそろ読書の秋! 入:新涼なのです、やっと本を手に取る気持ちになります。 葱:「つくつくし」の音感が「本の虫」というイデアに共鳴しました。 水:夏の終わりにはさぁ読書って感じになりますね。 夏:読書の秋到来。 百:読書の秋のはじまり。)


【入選】

●中空にとんぼ留まる風吹きて=男剣士
◎水○百、雪、前△久=10点
(水:風があるのにとんぼは一点にとどまっている発見。そう思ってみれば本当にそう。 百:デジャヴの景色。 雪:ほんの微かな、とんぼにやさしい風ですね。)

●夏背負ふ虫に葉影の避暑地かな=喋九厘
◎前、久○メ△木、男=10点
(久:うますぎ。暑さを背負うという発想。感激。 男:虫とて暑さは堪えるんですね。)

●汽車を待つむかし少年夏あざみ=資料官
◎葱、夏○喋△二=9点
(葱:夏あざみは恋あざみ、陽水の歌が聞こえます。 夏:写真の中の少年の笑顔が鮮やか。)

●ひぐらしやナツメグ色の子の走る=水音
○五、ス△木、夏、雪、入、メ=9点
(五:夏休みも終って、子供たちのこの光景が見られなくなりますね。 ス:ナツメグたくさん入れたハンバーグ好きです。 夏:「ナツメグ色」とは面白い! 雪:ナツメグ色がとても面白い表現ですね。こんな子、いますね〜。 入:ひぐらしの栗褐色とナッツメッグの褪せたオレンジ色で、色彩にも夏の終わりを感じます。 メ:夏休みも終わりだね。)

●立秋や一年かける砂時計=五六二三斎
◎メ○夏、ス△資=8点
(メ:時のたつのは早いものだが、砂時計だとゆっくりな一年のような気がする。 夏:砂時計の砂は既に半分以上零れ、私達の人生の午後とも重なるのかな?! ス:意味わかりませんでしたが・・。 葱:半年にして、立春もひっくり返したらどうでしょう?)

●会ふごとに老いゆく父よ赤カンナ=君不去
◎香、砂△喋=7点


●新涼や山の遂道煉瓦積み=夏海
◎資○葱△雪、五=7点
(葱:煉瓦造りのトンネルのひんやりとした風情が伝わりました。 雪:猛暑日もここだけは涼しそう! 五:昔のトンネルは煉瓦でできてましたね。太宰府から宝満山へ行くところのトンネルがそうでした。)

●萩零るレギンスの肢伸びやかに=夏海
◎ス○水、五=7点
(ス:最近の娘さんの足の長くてきれいなこと! 水:流行とはいえ夏は暑苦しげだったレギンスも颯爽と見えますね。 五:レギンスとは何か?知らないので、ネットで調べました。納得!最近、よく見かけます。)

●何もせぬ一日恵まれ秋の蝿=夏海
○入、君△久、砂=6点
(入:一茶の句のよう。)

●離合できぬ橋や川面に晩夏光=入鈴
◎喋○百△水=6点
(百:「離合できぬ」の着目。 水:橋の上で立ち往生した時にふと見下ろした川の光の柔らかさ。)

●秋蝶やいのちを急ぐ動きして=雪絵
○木、資△葱=5点
(葱:ひらひらがバタバタにも。 入:儚さの見せ方が惜しいと思うのですが。脚の動きなのか、翅なのか、あるいは鳥交るというような言葉があるのか。)

●風上に行きつ戻りつ秋茜=雪絵
○男、二△メ=5点
(男:その光景を詠みたかった。)

●終戦日アルバムだけが知る疎開=五六二三斎
◎雪△入、砂=5点
(雪:私達でさえ戦後生まれ。考えさせられるものがありますね。 入:父母に繋がっている思い出とか天災だったかのように語りたくないですね。 夏:もはや親のアルバムの中にしか残っていない「疎開」の記憶・記録。 戦禍の語り部が少なくなって不安でもあります。)

●露草やのびほうだいに瑠璃点す=入鈴
○木、久△喋=5点

●昼過ぎて火照るユンボの静かなり=男剣士
◎百△葱、久=5点
(百:昼休みの静けさ。 葱:近くの工事現場の大工さん達、流石に辛そうでしたもんね。)

●みかづきにすわりてちきゆうながむゆめ=スライトリ・マッド
○喋△雪、五、二=5点
(雪:メルヘンですね〜。 五:ひらがな句につい反応。ただ、この内容がかなにするのがいいのかな?と思いました。むしろ、カタカナはどうだろう?宇宙人っぽくなって面白いかも? 葱:テイタム・オニール?)

●秋めくや笑ひあふれる肩車=五六二三斎
○砂△水、ス=4点
(水:戸外で伸びやかに過ごせるようになった嬉さ。 ス:ほほえましい光景ですね。)

●蜘蛛の糸回り道させ夏の朝=ひら百合
◎木△君=4点

●ここぞとぞ時雨る蝉に立ち尽くす=ひら百合
◎入△資=4点
(入:サラウンド異次元蝉時雨。)

●夏草の夢まぼろしと現川(うつつがわ)=喋九厘
○男△百、君=4点
(喋:長崎本線の山深き駅を寝台特急「あかつき」が通過して、長いトンネルへと吸い込まれて行く。 男:まぼろしと現の組み合わせに参った。 百:夢かうつつかまぼろしか・・。 資:ややマニアックな駅名だけど,さくらも出島も夢のまた夢。)

●涙橋少女のもとへ流れ星=スライトリ・マッド
◎五△喋=4点
(五:涙橋が本当にあるのか?なくても、この句の本意は、光る涙の少女に流れ星が来て、少女の涙を癒すのが句意のように思いました。 葱:目薬の広告コピーにいいかも。)

●蜘蛛の巣にビーズちりばめ霧の朝=水音
○メ△二=3点
(メ:きれいな巣が目に浮かびます。)

●月蝕のむらさきの闇銀河抱く=君不去
△百、香、二=3点
(百:不安な闇夜。)

●たましひへ来て泊まりをり秋の猫=葱男
○香△二=3点

●地下鉄を登ればだんだん蝉時雨=資料官
△男、君、メ=3点
(男:外に出る前の心構えが必要ですね。 君:”だんだん”掛詞? メ:登ればだんだんの表現がいい。)

●切れ西瓜 日々味落ちて 夏行かん=久郎兎
△男、前=2点
(男:夏の終わりの寂しさが。)

●ニコライの片陰下り通ふ道=資料官
○前=2点
(入:字余りでもニコライ堂としたほうがいいと思う。ニコライ堂片陰となる道通ふ。)

●九重の空つなぐ夢吊り橋と=君不去
△香=1点
(葱:九重は久住山も暗示してる?)

●はたはたの食い残したるバジル摘む=木陰
△前=1点
(葱:「はたはた」って、飛蝗のことだったのね!)

●富士山を探す車窓の夏霞=前鰤
△砂=1点


【無選】

●世陸にも秋めく気配低記録
(葱:なかなか上手い川柳のような感じ。「低記録」は変化球ですね。)

●夏の風邪ゆるりぽっかりかたる雲
(葱:「かたる雲」は「語る雲」でしょうか?)

●鼻クンと 立秋ひなか 干しガレイ
(入:お腹がぐーってなります。鼻を言わなくて厨よりとかでも。)

●部屋の隅 炎天の午後に 虫の声
(葱:暑いのか涼しいのかどっちやろ?)

●法師蝉土を求めてビル庭園
(葱:虫のこゑ都心に土のあてどかな 。)


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