*A部門入選作発表*


当季雑詠*全46投句(入選33句)

【特選】

一席
●兄送る火の船消えて残さるる=葱男


◎香、喋○夏、資、ス、君、二△男=17点
(香:寂しさがひしひしと伝わりました。 夏:お兄様への惜別の思いが伝わります。 資:一度五山の送り火を皆見たいもの。ひとつひとつに誰かしか思い浮かぶのでしょう。 ス:やっぱりジーンと! 男:盆行事の穏やかさを感じました。)


二席
●釈迦力の声満ち満ちる蝉木立=葱男


◎五、里、資○水、百△入=14点
(五:釈迦力という表現が素晴らしい。蝉の一瞬の生命力は釈迦力という言葉によって何だか宗教めいたものに昇華された。 水:「しゃかりき」ってこういう字だったんですか!蝉の圧倒的な音量にぴったり。 百:「しゃかりき」ってこう書くの。 入:ただ蝉時雨としか表現できないのが、こんなにも力強いお句ができるんですね!満ち満ちて?  夏:近年、天神の真ん中でも蝉時雨なので、実感ありです。)


三席
●濁流の乾く爪痕稻の花=五六二三斎


◎葱、水、二○ス△夏、入=13点
(葱:「乾いた花」って映画があったっけ。 ス:確実に時は流れ、絶望のあとには希望も・・。 夏:台風の被害が出た水田は胸が痛い、でも回復の兆しに救われる。 入:作物への複雑な思いがします。)



【入選】

●CD盤吊られし庭の青ぶどう=葱男
◎砂、ス○資、喋△男=11点
(ス:きらきらの円盤と光る葡萄の球面がマッチしてて。 男:鳥脅しも近代化で様変わりですね。 資:鳥避けのきらきら光る物体に守られて房が熟れていく。 入:シルバーと青が違う風に揺れてる?)

●鳳仙花母に差しだす十(とお)の指=水音
◎夏○メ、喋△葱、前、香、ス=11点
(夏:染めた爪を見せたのかな? 微笑ましいシーン。 メ:子供の小さい手のひらいっぱいの鳳仙花? 葱:つまくれなゐの十本の指。 香:可愛い手が見えるようです。あなたのお母さん?昔、化粧花で遊んだことを思い出されたのでは? 水:幼い頃、夏休み初日に鳳仙花で爪を赤く染めてもらっていました。秋、学校が始まる頃にちょうど爪が生え変わるのです。 ス:母ものについ・・十の指って? 入:鳳仙花に弱ぐで、、、迷いました。)

●蝉転ぶ八月尽の並木道=ひら百合
◎男○前、香、入△メ=10点
(男:夏を生きた短い命の哀れを感じました。 香:蝉転ぶと表現できるのかー。 メ:息絶えた蝉がいて、もう8月も終わりなんだなあ・・・。 入:夏休みの浮かれが、徐々に生活感に押されて。 夏:落ち蝉が寂しい夏の終わりの景。)

●秋空に音無き機影吸われたり=夏海
◎前○百、君△五、水=9点
(前:UFOでは?高さを感じます。 百:音がしないぐらい高い空。 五:ちょっと、特攻隊の飛行機を想像してしまった。作者にもその意図ありやなしや?  水:秋空の圧倒的な大きさ、高さの中のちっぽけな機影とそれを見ている小さな自分の対比が気持ち良いです。 葱:秋空の澄みきるも人工の機体が何故か吾に悲しき。 入:空が高くなると、ジェット音が無音に近くて同感。)

●来る秋や海飛び越えよマダラ蝶=ひら百合
◎木○砂、里△ス=8点
(木:力強い自然賛歌。 五:蝶は春の季語なのです。悲しいことに。●秋の蝶海飛び越えよ故郷まで=これで、季語が1つに。マダラが出せなかったことは残念だけど、海を飛び越えて故郷に帰るのは、日本では1つ、アサギマダラである。 里:最近、飛来数が増え、マーキングも流行っています。先日も比良山で目撃した3頭中2頭に印が付いてました。 ス:渡りをするチョウもいるんですね。 入:どこの海峡でしょうか?飛び越えるというと、距離が短い印象がします。海渡り来よ?)

●伊吹山天も地も消え百合の咲く=香久夜
◎君○木△前、百=7点
(木:家の裏に、”たかさご百合”という、種から育つ、盆の頃に咲く白百合がたくさんあります。もともと野生種でこの百合のことかしら? 百:ウエッブでみたら、伊吹山っていいとこみたいですねえ。いってみたい。)

●朝顔やかさねの色目帯を締む=スライトリ・マッド
○メ△五、木、資、喋=6点
(メ:さわやかな浴衣の後ろ姿が目に浮かびます。 五:少し、涼しくなってきたことが窺える句。 資:私は紺が好きだけど,重ねの色とは。 香:かさねの色目が素敵で選びたかったんです残念。)

●蝉の声万物眠る昼下り=水音
◎百○木△資=6点
(百:懐かしいお昼寝。 木:言い得て、妙。 資:夏休みの終わり,宿題終わらない子,夏バテのお年寄り,皆昼寝する。 入:暑く気だるいけど至福の時。万物が大き過ぎる?)

●戯れてマニキュア一指星祭り=君不去
○葱、二△五、百=6点
(葱:「一指」ってところが好きでした。 五:一指はいっし?ティーンの頃の思い出か? 百:ペディキュアかな?素足で下駄だとしたくなるみたいだけど。)

●敗戦忌零戦横ノ珈琲テラス=スライトリ・マッド
○五、葱△夏、入=6点
(五:戦前を思わせるカタカナ使い。やや付き過ぎかもしれないが、この手法が時間を戻す効果を生んでいる。 葱:珈琲テラスからはどんな音楽が聴こえた? 夏:”珈琲テラス”に象徴される《平和》が永く続くように祈ります。 入:零戦のことがきちんと説明されていればいいですね。)

●ひとかけら溶けぬ吾が闇夏の果=夏海
○水△香、資、ス、君=6点
(水:我が心に同調するものがあって、この句を選べと囁くのです。 香:ひとには話せない悩みが? ス:暗い〜でも惹かれるものあり。)

●故郷(ふるさと)の遠きふたりの盆の餅=ひら百合
◎メ○夏△二=6点
(メ:なかなか帰れない故郷に想いを馳せてしまいました。 夏:しみじみとした郷愁を感じます。)

●青林檎食めば遠くの汽笛かな=資料官
○砂△メ、二、喋=5点
(メ:今月はまだ食べてません。)

●父母と二日添い寝の盆休=五六二三斎
△葱、メ、里、前、香=5点
(葱:盆に父母と添い寝する、またある人はそのたましひと添い寝する。 メ:いくつになっても親にとっては子供なんだよね。 男:ゆったりとした時間の流れを感じて好きです。迷いました。 香:二日というのが、現実的であり、情緒をさそいます。 入:こんなお盆休み、実現できたはずなのに。後悔しきりです。)

●朝顔も萎れて寂し夏日記=メゴチ
○男、香=4点
(男:夏を飾った朝顔お疲れさん。 香:絵日記ももうすぐ終わりですね。 葱:日記に綴る失恋の物語り?)

●押入れの奥に収める浮き輪かな=男剣士
◎入△砂=4点
(入:このミスマッチがよか!私などは、押入れの海(生活必需品の山)に沈める?翌年は新品を購入するはめに。)

●遠花火見て東京に戻りけり=資料官
○五△砂、水=4点
(五:福岡生まれで、東京に住まなければならなくなった者の楽しみにしていた花火。遠くで見るに終わってしまった。もう、博多は自分の故郷ではないのでは?という悲しさが伝わってきた。 水:遠花火の儚い美しさと、故郷に残して来た老いた親を思う切なさを思います。 入:花火に見送られていいですね。)

●虫の音に寝入る幸せ草庭なれど=木陰
○男、里=4点
(男:風流な味わいです。)

●有り明けや稜線黒く山を描く=五里
△木、君、喋=3点

●山小屋の寝床を照らす天の川=五里
○入△砂=3点 
(入:夢の中では天の川を泳いでいるかも。)

●落花生「ちろりん村」にて育ちけり=夏海
△男、葱、二=3点
(男:この歳じゃないと意味がわからないでしょうね。 葱:ちろりんってなんの音だったんだろう? 入:お家の近くにちろりん村があるのですね。)

●凌霄花(のうぜんか)気ままに咲いて散りにけり=資料官
△里、君=2点
(君:そうそう、ノウゼンカズラはいかにも気ままに見えます!)

●読み終へし長編携へ星月夜=入鈴
○前=2点
(香:読んだ後の愛着がよくわかります。)

●秋暁や天へひとすじ命の陽=スライトリ・マッド
△里=1点

●白鷺の巣に並びゐて案山子かな=入鈴
△木=1点

●洗車して手を伸ばす風葉月かな=入鈴
△夏=1点
(夏:何時の間にか微かに秋めいた風の実感が伝わる。)

●吊り革に羽を休むるトンボかな=男剣士
△水=1点
(水:冷房のないローカル線の列車、開け放した窓、昭和の風景ですね。 入:窓を開け放しの2,3両の電車でしょうか。)

●梅花藻の風爽やぎて二人旅=香久夜
△二=1点
(入:水の中の風に揺れている梅香藻。)

●故郷の山並近し墓参=五六二三斎
△百=1点
(百:平凡ですが、身に覚えありで。)


A部門入選作

創刊号 第二号 第三号 第四号 第五号 第六号・新年号 第七号 第八号 第九号 第十号 第十一号 第十二号 第十三号 第十四号 第十五号 第十六号 第十七号 第十八号 第十九号 第二十号 第二十一号 第二十二号 第二十三号 第二十四号