*A部門入選作発表*

当季雑詠*全48投句(入選35句)

【特選】

一席
●初夏の風畳の上に母の椅子=五六二三斎


◎資、メ○葱、百、夏△久、男、前、君、ス=17点
(資:椅子だけがそこにある、そういう風景。 メ:父のありし日を思い出しました。 葱:お母さま、きっと足がお悪いのでしょう。母を見守る暖かい親子の情愛がうまく捉えられていますね。 百:畳に椅子の取り合わせが新鮮。 夏:お母さまは年齢とともに膝や腰に悩みが・・・それを労わる家族の優しさ。 男:寂しさを表わすこの手に弱い。 ス:やさしいお母様の思い出でしょうか?)


一席
●ほうたるやすくふてのひらさちひとつ=スライトリ・マッド


◎前、喋、水、雪○五△二、資、夏=17点
(前:欲の少ない人ですね。 水:小さな光は希望に見える。 雪:やさしさと謙虚さと穏やかさが伝わってきます。 五:ひらがな句のやさしさが幼い子をイメージします。 夏:「さちひとつ」が良い感じ。)


三席
●早苗田に湛へて青き空の底=夏海


◎香○久、木、二、資、入△百、喋=15点
(香:空の底という表現に大きさを感じます。 資:空の青さが写し出されているようで。 百:着想はすでにありましたよね。 入:車をちょっと走らせると、印旛沼でこんな光景をなんと詠んだものかと。モヤモヤ解決。 葱:美しい写真のような光景です。)


【入選】

●ランドセル少し汚れて柿若葉=水音
◎五、入○ス△久、前、雪、君=12点
(五:5月になって一年生のランドセルが少し汚れている。取り合わせがよいです。 入:柿若葉の未来にぽちぽち霜の中った赤さ、無意識にとってしまいました。 ス:学校生活慣れてきたころね。楽しいといいね! 雪:そろそろ学校にも慣れて来たところでしょうか?)

●夏衣(なつぎぬ)やいにしゑごころかよひける=葱男
○喋、資、雪△五、前、香、メ、ス=11点
(雪:「いにしゑごころ」 いただきました! 五:いにしゑごころが何故湧くのか?知りたいです。 香:夏衣こそですね。 メ:今年は衣替えが早かった。 ス:「いとうつくしきもの」の世界ですね。)

●新緑の色重なりて山を成す=香久夜
○木、前、メ△男、二、雪=9点
(メ:絵的ですねえ。 男:緑といっても様々な色彩がありますね。 雪:新緑も色とりどり!色重なる、という表現がいいですね。)

●夏柑の花匂う朝母の声=木陰
◎葱○喋、香△百、資=9点
(葱:さらっと表現しているけど、かけがえのない母に対する深い愛情を感じます。 香:お元気なお母様の声に清々しさを感じます。)

●四葩咲く金平糖に角(つの)幾つ=夏海
◎二、砂○葱=8点
(百万遍「緑寿庵」の金平糖の値段の高いのには、違う意味、角が出ます!)

●早苗田や浮島となる滑走路=水音
○男、夏、砂△ス=7点
(男:広々とした様が浮かびます。 夏:空港の周辺は広々と水田なのでしょう!景色が目に浮かぶようです。 資:何処の空港かなあと思いつつ。 ス:鳥になったみたい!)

●ボクサーの華奢な拳や新樹立つ=水音
◎君○ス△葱、夏=7点
(君:詠者のまなざしに”パンチ”されました。 ス:ふうんと、おもしろくて。 葱:リアリティを感じさせる句、ボクサーの拳って案外そんなものなのかもしれません。 夏:逞しい拳でないところが初々しく 新樹という季語がピッタリ。)

●竜頭巻く父の横顔ぼんかずら=スライトリ・マッド
◎夏○二△葱、水=7点
(夏:長年愛用の手巻き時計のネジを丹念に巻いてお られるお父様。誠実に生きてこられた半生が凝縮された17文字。 葱:「ぼんかずら」という花があるのでしょう、「ぼんかずら」の音が「凡」にも繋がり、老境を迎えた父の姿にペーソスを感じます。 男:古い物を大切に。)

●カラー抱きすっくと立つ娘や光なか=君不去
◎木○久=5点
(葱:中七の「すっくと立つ娘や」の字余りが気になりました。佳い句なのに残念です。「すくと立つ娘や」「すつくと立つ娘」ではどうだったでしょうか?)

●きはめればけものみちありほほのはな=五六二三斎
◎ス△資、夏=5点
(ス:ひらがな句に弱く・・。朴の花の持つ孤独さと合ってる感じ。 資:白川先生の油山吟行のイメージかな。 夏:ショート・ストーリーが一つ書けそうです。 葱:意味としては「窮(極)めれば獣道有り朴の花」になるのでしょうが、上五の「果てまで来れば」の意味、「なんの極み」なのかがよくわかりませんでした。山道や谷の果て?)

●天窓にフン眺めおり雨安居=ひら百合
○水、雪△久=5点
(水:黙って座ってじっと見上げるものがフンとは。どんな悩みがあるのでしょうか。 雪:ピーんと張りつめた静寂。)

●花栗の夜道そろりと歩みけり=資料官
○入△木、喋、砂=5点
(葱:作者は何故栗の木の下を「そろり」と歩いたのか? 毬が落ちるには早いしなあ〜。よく前が見えないから?)

●若楓インクラインの錆び朱し=葱男
○香、君△雪=5点
(香:桜だけじゃなく、楓もいっぱいあるんですよね。緑との対比がきれいです。 君:人気のないひっそりとした水辺でしょうか? 雪:緑と朱の対比がいいですね。インクライン、辞書で調べました。)

●踊り子の傍かすめけり夏蕨=五六二三斎
○前△香、君=4点
(香:伊豆での句ですか?雨の多い山道ですよね。)

●旧友に逢う日 車窓の走り梅雨=久郎兎
◎百△砂=4点
(百:男が選ぶ男の句?)

●濡れ髪をゆるく結わへて多佳子の忌=スライトリ・マッド
○五、砂=4点
(五:情念の俳人、橋本多佳子!うまく言い当ててます。 葱:忌日を詠む句は、その人の作品、あるいはを如何に深く愛していたかにかかっていますね。 橋本多佳子の多くは知りませんが、僕が好きなのは「『月光にいのち死にゆくひとと寝る』『雄鹿の前吾もあらあらしき息す』です。 資:杉田久女の手ほどきを受けたとか,清張の小説に登場したとかは聞いたのですが・・・・。)

●夕焼けにげんまんのゆびそまりけり=雪絵
○男△二、メ=4点
(男:明日も遊ぼう、見なくなりましたね。 メ:歌が聞こえてきそう。 葱:幼子ふたりのラブシーン、綺麗な絵です。)

●母の日やメールの隅のありがとう=雪絵
○メ△水=3点
(メ:ほのぼのとした文面が浮かびます。 葱:修辞のない単純な句なんだけど、詩情は深いですね。)

●ホッパーの影と光の夏来る=ひら百合
◎男=3点
(男:過去の栄華と影ですか。)

●つらき日に植えしつる薔薇陽に溢ふる=木陰
○君△葱=3点
(君:つらい時に花を植える気持ち、わかるな〜。 葱:まさに人生はそんな事の繰り返し。)

●切支丹み胸に小さきサクランボ=葱男
△木、二=2点

●しのびのもの足跡光りてなめくじら=入鈴
△男、木=2点
(男:忍びですか、さすが。 葱:楽しい句、思わず笑ってしまいました。)

●地下鉄や地上のりかへ薄暑の夕=入鈴
○百=2点
(百:雰囲気はでてますが、「薄暑」の音が・・ちょっとと、いってました。 葱:東京メトロは田舎者にはややこしくて、むずかしい、どの線を選べばいいのか迷う時あります。)

●葉桜や同期入社と酌み交わす=資料官
○水=2点
(水:年齢が葉桜で表されてる。)

●楓若葉たたみてそそとたたずめり=君不去
△香=1点
(香:若楓と読むのですね、まだ小さな葉ですね。以前見たとき細かい真赤な花が咲いていました。 葱:17音におさめるには「若楓」「青楓」でもよかったような気がします。)

●しゃくなげや墨絵の前に活けられり=香久夜
△五=1点
(五:立派な座敷のようですね。しゃくなげの生けられた座敷。少し山の田舎を想像します。)

●新緑の道3時間日本海=前鰤
△喋=1点
(葱:ドライブ、楽しかったみたいですね!、京都から日本海の小浜に出る鯖街道も高雄、周山、美山と美しい緑が続きます。)

●蚕豆やかさ半分の篭の中=君不去
△五=1点
(五:付き過ぎかもしれませんが、かさ半分にどんな意味があるのでしょう?取り過ぎないように小分けしてということなのか? 資:そらまめの句には惹かれましたがかさ半分の篭が良く分からなくて。 葱:大きな籠の半分ほどもそら豆を収穫したのか、それとも籠いっぱいのそら豆の皮を剥いたら、半分の量になった、って意味かな? うちの田舎からもそら豆送ってきますが、剥いたら三分の一ぐらいになります。 入:それがどしたの句だと思うけど最後まで惹かれました。)

●梅雨を待つダム湖に映る森の影=前鰤
△メ=1点
(メ:空梅雨でないことを願います。)

●花あふちあふるる農家ごごさんじ=入鈴
△水=1点
(水:せんだんのことですか?見たことがないな。 葱:音読してみると、リズムがとても楽しい句。)

●またひとつ齢重ねて五月尽き=喋九厘
△百=1点

●夕暮れてスイカズラ咲く木戸くぐる=木陰
△入=1点


【無選】

●関門をはしか渡る日流行り来ぬ
(資:はしかは夏の季語か?冗談ではない。)

●夏来たりカートの籠に氷の茶
(葱:自前で買い物に持参するの?)

●母の日の嫁の手料理圧力鍋
(葱:一見、手抜きのようで実は料理上手の嫁ですね。)


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