*A部門入選作発表*

当季雑詠*全40投句(入選36句)

【特選】

一席
●月面に地球昇れる神迎=夏海


◎葱、水、砂○木、雪△ス、香、二=16点
(葱:存在の不思議、宇宙の神秘、「神の秘密」を垣間見たのだから、「神迎へ」の道筋をバーチャルとして幻視したようなものかもしれません。季語が抜群だと思いました。 水:かぐやの映像を句にしたかったんですができなくて。この季語を持ってくるのかぁ、なるほどぉ。 雪:こんな映像を目にするとは思いもしませんでした。まさに神迎。 ス:かぐやから見た地球の出でしたか? 香:感動しました、「地球の青」という色ができそうですね。)


二席
●山寺の一段ごとに冬に入る=資料官


◎久、前○水、五△木、夏、男、雪、メ=15点
(久:紅葉を惜しんでいるのが伝わります。 水:山影の寺と、そこへ続く階段の様子が、季語で際立って身が引き締まる。 五:面白い発想ですね。着眼点がよい。 夏:山寺の高さと冬の冷気を感じました。 男:一段一段で変わるんですよ回りが。 葱:石段を昇るたびにぐんと冷え込む感じ、出てますね。 雪:高いほど寒さの厳しい山寺ですね。 メ:奥山はことに冷えます。)


三席
●初時雨人の道だけ透き通る=五六二三斎


◎メ○久、木、ス、資、二=13点
(メ:「透き通る」がいい、情景が眼に浮かびます。 ス:ファンタジーの世界みたいで素敵に感じました。 葱:「時雨」が野山に降っている時と、人が歩いている道に降る時で情景も変わるのでしょう。すごく面白い着眼点だと思いました、ただ「透き通る」がイマイチ実感できませんでした。)


【入選】

●小噺や足袋の鞐のすつと入る=スライトリ・マッド
◎雪○葱、水、喋△砂=10点
(雪:こんな小粋な句が「すつと」詠めたらなぁ、と。 葱:これも取り合わせの小気味良さ、で戴きました。 水:小噺の落ちと「すっと入る」が呼応してるのかな。)

●庭紅葉日めくり変化散るも良し=木陰
◎資○喋、男、メ△君=10点
(男:「散るも良し」の気持ちに参った。 メ:もっと広い庭がほしい。)

●冬の暮れカーブミラーの空焼ける=スライトリ・マッド
◎喋○夏△水、入、五、百、二=10点
(夏:カーブミラーに映り込んだ冬の夕焼けを捉えたところが面白い。 水:ミラーに一瞬映った小さな燃える空から、空いっぱいの夕焼けが浮かびました。  入:一瞬の光景ですが、小さなミラーに大きな景がよく捉えられて。 五:カーブミラーに映る冬の夕焼けですか?小さいものに大きい空のコントラストでしょうか? 百:一瞬を惜しむ。)

●絵のモデルもと野良であり初しぐれ=入鈴
◎男○香△水、喋、君=8点
(男:野良も1年経てば立派な風格。 水:今はぬくぬくと暮らしてる様子を季語が鮮明にしてる。 葱:元野良猫を絵のモデルにする、といった光景はとても面白かったし、いい発想だと思いました。 香:にゃんちゃんでしょうか、今は温かい部屋で幸せですね。)

●おでん煮るハツピイエンドの映画かな=スライトリ・マッド
◎木○砂△葱、水、雪=8点
(葱:おでんとハッピーエンドの映画、なんだかほっこりとする取り合わせですね。 水:何から何まで幸せって感じ。 雪:おでんに焼酎、寅さん映画・・・。)

●意のままにならぬ前髪室の花=夏海
○資、香、雪△木=7点
(資:意のままに咲かせようとする温室の花との対比が面白く。 雪:何気ない朝の出来事。決まれば一日ハッピーなんだけど・・。 葱:最後まで人位を迷いました。二句一章は取り合わせの妙と、季語の本意です。どちらも良いと思いました。惜しくも次点、今回は好きな句が多すぎた。)

●ひもすがら窓明りせよ七竈(ななかまど)=入鈴
◎夏○君△木、百=7点
(夏:窓ガラスに写る 七竈の真っ赤な色が見えるよう! 百:灯りになってくれっていってるのかな?)

●しみどうふ野池は柵に閉ぢてあり=葱男
◎五○ス△香=6点
(五:最近、池は利用価値がなくなっているようです。砂太先生宅に俳句を持って行きましたが、老司池も埋め立てられると砂太先生から聞きました。 ス:凍み豆腐、味があって好きなんです! 香:静けさ、寂しさがよくわかります。)

●神の留守土の鈴やく土の窯=夏海
○葱、五△二=5点
(葱:「月面に〜」とどちらを天位にするか迷いました。「神」という字が内包している「存在の不思議」感が好きなんです。 五:お正月の準備でしょうか?)

●それぞれの流儀の散歩小春空=水音
○久、男△五=5点
(男:散歩は自己流ですよ。 五:これも、おかふみ同窓会の翌日の一コマのようですね。)

●石蕗の花海を隔ててリツ子あり=五六二三斎
○二△葱、久、喋=5点
(五:能古島、檀一雄の歌碑にて。 葱:句姿の整った佳句だと思います。それが遠縁にあたる作者ならなおさらです。)

●のこのこと能古より拝む冬日かな=喋九厘
◎二○君=5点

●雪映す川瀬の音や山閉じる=君不去 
◎入○前=5点
(君:上高地で。 入:八甲田山あたりの湿原もそうかな、と思いが拡がる。 葱:そのままの句ですが、そのままの自然が気持ちの良い句ですね。)

●ぎんぎんと怒髪のをのこ冬に入る=水音
◎君△ス=4点
(君:勢いに引き寄せられました! ス:おる、おる!こんなヘアスタイルの子。 葱:「現在」を詠むリアリティに力を感じる句です。)

●父の忌の若き写真や帰り花=水音
○入△資、前=4点
(入:帰り花、躑躅でしょうか?桜でしょうか?今年は千日紅などまた蕾をつけ始めてます。 葱:「父」を詠む句にはすごく弱いのですが、「帰り花」が何か女性的な感じがして今回は無選としました。)

●同輩の流す老いた背窓の雪=久郎兎
◎百△前=4点
(百:そういうところに現れるとは切ない。 葱:心情としては大変共感するところがありました。「老いた」とまで言わなくても「同輩」という言葉の中に「老い」は感じられるのでは?「窓の雪同輩の背を流しけり」ぐらいではどうでしょう。)

●冬の鳥「〜食堂」てふ飯屋あり=葱男
○百△男、砂=4点
(百:どう読ませるのか?冒険に一票。 男:鳥?島?・・・飯屋っていい響きです。)

●山燃えて敦賀の海に落ちにけり=前鰤
○夏、砂=4点
(夏:山と海の美しい景色!!中七・下五の措辞がいい。 葱:「山燃える」は確かに紅葉を示すに適切な表現だけど、季語としては僕の歳事記では探せませんでした。 ただ、季感の伝わるものはりっぱに俳句であるとは思います。) 

●湯気たてて父の寝床の賑わへり=資料官
○入、前=4点
(資:実は新型加湿器・・・・。 入:少し離れて眺めると、湯気は人々の熱気のようでもあり。 葱:意味がよく分かりませんでした。病院?湯気は薬缶?)

●アマテラス夜神楽舞ひてオオミカミ=喋九厘
◎香=3点
(葱:上五と座五に天照大神を分けて持って来てカタカナ表記するアイデアは抜群です。是非とも高千穂峡観光のキャッチコピーにして、高千穂鉄道の駅舎に貼りたいものです。 写真は勿論・・・・ですよね。)

●丘ふみの笑みのあふれて島小春=資料官
△入、五、メ=3点
(入:島特有のこじんまりとした会を想像して楽しくなりました。 五:同窓会参加者として頂きました。 葱:真正面からバリバリの挨拶句ですね、この真正面から、というのが俳句! メ:よい日和でした。)

●七五三裾のさばきも勇ましく=君不去
△夏、香、雪=3点
(夏:これは男の子ではなく、女の子のことかな?微笑ましい。 香:子育ての頃を思い出します。 雪:私も気を付けましょう。)

●保育士をやめようかなと云ふ布子=葱男
◎ス=3点
(ス:誰か聞いてくれて、ウンウンと頷いてくれる人がいるだけで、いいんだよね。)

●立冬や都会の雀まるまると=喋九厘
△入、夏、メ=3点
(入:千鳥が淵あたりのおおきな並木には、烏などの天敵がいないせいか、福良雀のほしいままでした。 夏:つい頬がゆるみました。この雀達、グルメなのね。 メ:カラスもでかいよ。)

●板敷きの凍てし階段観音堂=雪絵
○メ=2点
(メ:板張りの廊下はホントに冷たい。)

●うつむくな凝(こご)りし紅の冬のばら=入鈴
△資、百=2点
(資:でもうつむいてしまう。 百:「うつむくな」というのは自分に言ってるような。)

●神の旅鉄腕ボール握りしめ=五六二三斎
△ス、君=2点
(ス:神さま仏さま稲尾さまでしょうか? 君:子供の頃ヒーロー、神様稲生様です。 葱:鉄腕稲尾への追悼の句ですね、ジーンときました。)

●小春日や母の着物で街に出る=木陰
△久、砂=2点

●晩秋の外地の夕餉煙冷ゆ=久郎兎
△百、前=2点
(百:煙も冷えてるというのが印象的。 葱:「外地」とは北海道のことでしょうか、それとも外国?) 

●霜月の能古に集うは古き友=メゴチ
△男=1点
(男:にぎわったでしょうね。 葱:「丘ふみ」同窓会、楽しそうでしたね。)

●石蕗花の日にお辞儀せり九年庵=雪絵
△葱=1点
(葱:お辞儀したのは石蕗花であり、「日」は「太陽」のことなのでしょうが、もし仮に「石蕗花の日」という記念日があるならお辞儀をしたのは「作者」自身という事になり、これまた面白い光景です。 俳句としては少し曖昧かなとも思いましたが、なんだか石蕗花と自分とでお辞儀を返し合ってるようなほのぼの感があり、「九年庵」という固有名詞もぴったりとハマりました。)

●柊の香り姿勢を正さしむ=木陰
△資=1点
(葱:たしかに柊の香りは少し強い匂いだったような・・)

●猟の間に三平汁や招く湯気=久郎兎
△喋=1点


【無選】

●小春空駅舎リュックの右往左往
(葱:若い旅人ほど共感し、また、我が身を顧みることによって郷愁にかられるものはないですね、今でも現役ばりばりの旅グラファーもいますがね。好きな句です。)


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