*A部門入選作発表*

当季雑詠*全58投句(入選41句)


【特選】

一席
●田舎家は闇多かりき花南瓜 =十志夫


◎水○阿、久、砂△葱、ラ、夏、雪=13点
(水:ひんやりとして薄暗い室内と、外の黄色の対比が鮮やかで心地よいです。 阿:どことなく風通しがいい。 久:闇=影、なのでしょうか。お化けが出てきそうだし、物語も生まれそう。 葱:昭和の時代の田舎の民家の裸電燈を思います。暗くひんやりとして、そして神秘的。 ラ:「闇多かりき」に、実感がこもっています。 夏:南瓜の黄色い大きな花と、田舎家の小暗い感じとの対比が良い。 雪:花南瓜が効いてます。)


ニ席
●白鷺のともす句点や千枚田=入鈴


◎久、メ○資、喋△砂=11点
(久:田植えをしたばかりの光景が目に浮かびました。句読点の句点としたところが、田んぼの端に佇んでるんだと、最高ですね。 資:能登の千枚田でしょうか。句点と言い切ったところが良いですね。 葱:☆このように、風景の中に一点の「遊印」を捺す手法はとても俳句的です。)


二席
●なんじやもんじやの花の入口小児歯科=雪絵


◎砂、夏、ま△資、ス=11点
(夏:景が目に浮かぶ良い句。「なんじゃもんじゃ」は魅力的な句材で私も何とか一句、と志すもまだ果たせず。 ま:小児歯科にこの花があるのが意外ですし、明るくとても好きです。 資:花の白も良いけど,小児歯科にたどり着くまでの上五の長さが面白い。歯医者が好きな子供はいない! 葱:☆「なんじやもんじやの花」、なかなか楽しくて綺麗な白い花ですね。小児科と合う。 ス:真っ白な花できれいですね。鹿児島にもあります。たしかヒトツバタゴと教えてもらった。)


【入選】

●回文の名を持つ少女若葉風=五六二三斎
◎葱、十△メ、ス=8点
(葱:偶然だろうが面白い発見に出会ったものですね、名字と名前でいりろと回文を考えてみたけど、なかなか難しい。 十:例えば、今瀬舞、小池恵子・・・偶然の場合と名付け親の遊び心の場合もあるかも。若葉風との取り合わせも絶妙。 ス:そんな名前があるんでしょうかね?小さい頃よく逆にものや人の名前を言って遊んでました。)

●魚釣る子に子の寄り来こどもの日=雪絵
○葱、水、夏△砂、メ=8点
(葱:写生の素直な詠みがいい、中七座五の「子に子の寄り来こどもの日」のk音に注目。 水:防波堤の様子が見える。 夏:活き活きした生活実感があって、子供の日らしい句。)

●念入りに髭剃つてゐる更衣=ラスカル
○水、砂、雪△五、紅=8点
(水:面白い。可笑しい。 雪:デートのお約束でも?目から鱗の更衣でした! 五:更衣に顔の髭まで気になるのか?男性の句でしょうが、果たして、誰の句か? 紅:デートでしょうか?糊のきいたシャツとかが見えてきます。)

●俎板の穴子行書の一を書く=十志夫
◎君○ラ△五、阿、資=8点
(君:゛行書の゛が効いてます。 ラ:楷書ではなく、行書というところに、納得です。 五:料理句はかく詠むべしの手本のような句ですね。 阿:うーん新発見!)

●罌粟の花満場一致で頷けり=十志夫
◎雪○夏△資、喋=7点
(雪:一面の罌粟畑、その満開の花が風に揺れるさま。納得です。 夏:中七・下五が面白い。資:風になびく様をうまく表現。)

●水中花ためらひながら開きけり=ラスカル
◎紅、資△葱=7点
(紅:中七で、すっかりやられてしまいました。 資:ためらいながらという逆説的な表現に面白さを感じました。 葱:水中花が水の中でゆっくりと開いてゆくさまには不思議なエロチシズムがありますね。)

★目の奥に銀幕の雨初蛍=葱男
◎喋○十△雪、入=7点
(十:古いフィルムに走る斜線を雨に喩えているようにも、最後に流れるエンドロールを雨と見立てているようにもとれる。劇場を出てなお網膜に流れるエンドロールの残像に蛍の飛び交う姿を重ねていると考えたほうが新鮮ではある。)

●椎落葉使いまはしのパスワード=水音
○十、メ、ス=6点
(十:PC犯罪の多い中、盗まれたっていいようなものばかり・・・と開き直る作者の諧謔の句〈使いまはし〉の表記は〈使ひまはし〉としたほうが。 ス:忘れないようにと、いつもの数字とか使っちゃうんですよね。今橋渡クンが浮かんでぷは!)

●一歩づつ地球に着地昼寝覚=ラスカル
○葱、ス△十=5点
(葱:水音さんの句かと思いました。この自我と客体との距離感が独特のペーソスを生み出している。上等な諧謔の底には、存在の小ささ、儚さが潜んでいるものだ。 ス:地球に着地とは?なんだかおもしろい。 十:宇宙遊泳のごとき午睡からの目覚めを面白く表現している。)

●海抜を標す立札大南風=スライトリ・マッド
○君△十、ラ、水=5点
(十:確かに東北の津波被害の教訓から、この種の表示が目立つようになった。 ラ:「大南風」という季語が、ぴたりと決まりました。)

●実印のぶれし卯の花腐しかな=紅椿
○ま、雪△君=5点
(ま:季語がぴったり合って、お気持ちがよく表れていると思います。 雪:実印を押したことって、あるようなないような?ぶれるとこんな気持ちかな! 葱:☆感覚的に同調できる句ですね。)

●父母の想ひ出遠く田を植うる=砂太
◎入○紅=5点
(紅:地に足の着いた、ちょっと寂しい、良いお句だと思います。 葱:☆万丈の人生を振返って、という感慨があり、現実の「田植え」があり・・。)

●トンネルの先の新緑立ちすくむ=メゴチ
◎阿△久、君=5点
(阿:昔、天城隧道で出合った景色に似ている。 久:トンネルの出口が緑で塞がれている光景、いいですね。 葱:☆座五の表現が効いている。)

●「あ、この風…五月が好き!」と君笑う=阿Q
△ラ、砂、メ、喋=4点
(ラ:とても爽やかな風だったのでしょう♪)

●蔵壁の町の「銀巴里」梅雨に入る=夏海
○阿、ま=4点
(阿:しっとりした雰囲気がいい。 ま:しっとりとした風情と季語が ぴったり合って素敵です。 葱:☆街道添いの城下町にある「シャンソン酒場」かなにかでしょうか?)

★皐月晴ときどき眩暈する日かな=水音
○君△紅、夏=4点
(紅:私も最近めまいがしますので、共感いたしました。確かに晴れの時の方がしますね。 夏:共感です。が、フィジカルな眩暈だけでない心の眩暈なのかとも。)

●五月雨に恋の辻占聞こえけり=阿Q
◎五△雪=4点
(五:古風な句。恋の季節はやはり初夏ですね。)

★水面を砕く光や青葉闇=秋波
○ラ、メ=4点
(ラ:「光」を「砕く」という表現が新鮮です。)

●夏燕のよな友の泊りける=入鈴
○久△阿、君=4点
(久:還暦過ぎたらこんな感じになりたいものです。 阿:こんな友達もいいね。)

●本棚の栞紐揺れ若葉風=スライトリ・マッド
○資△水、入=4点
(資:書斎の風景をうまく描写。)

●五月晴れコーラ喉鳴り空開く=久郎兎
◎ス=3点
(ス:コーラ、明るくて苦い青春の味。初夏の空と合う。)

●味噌こしの網目詰まれる薄暑かな=紅椿
◎ラ=3点
(ラ:「味噌こしの網目」を詠んだ句は、初見です。お見事!)

★Calling you 海を思へば東風=葱男
○入△喋=3点

●遮断機の揺れに優しき夏の蝶=君不去
○久△入=3点
(久:蝶が揺れに合わせて舞ってるんですね。「優しき」がこの句のポイントでしょうね。)

★彼逝きし蕗むく吾のいたりけり=水音
○入=2点

★玄海に慟哭の涛あいの風=秋波
○紅=2点
(紅:「あいの風」を勉強させていただきました。)

●十薬や良妻賢母口苦し=資料官
○喋=2点

●袖口のボタンは四つ夏来る=五六二三斎
△水、ま=2点
(水:夏に四つのボタンは暑苦しいと思うけど、なんとなく気に入りました。 ま:一見何気ない視点なのですが、麻の真っ白いシャツが目に浮かび、夏をとても感じ魅力的です。)

●薔薇園やお疲れ気味のプリンセス=資料官
○五=2点
(五:薔薇祭りがあってて、薔薇の女王はお疲れ気味ですね。明るい仕上がりです。)

●蕗の香の紅さし指でありにけり=紅椿
△五、夏=2点
(五:上手すぎる。引いてしまう上手さ。 夏:調理して指に香りが移ってる、女性の実感。)

●妖艶の牡丹の奥に近未来=メゴチ
○五=2点
(五:「ん」音の3連発。上手い。花のいのちの短さを詠んだものか?他に何か言いたいのだろう。何かは分かりません。)

★青時雨ベンチに濡るる野球帽=雪絵
△葱=1点
(葱:この句には寂しさが深く漂っている。濡れた野球帽には作者の少年時代への郷愁が感じられる。「青時雨」の「青」色彩感が一層、哀切なるものを助長している。)

●姉とゆく夏手袋の新天町=入鈴
△ま=1点
(ま:夏手袋もあったのですね! 仲の良い姉妹の御姿羨ましいです。)

●親を待つ嘴六つつばくらめ=香久夜
△紅=1点
(紅:六羽も孵ったのですね。巣から落ちないか心配です。)

★五月病と呼ばずにおこう魚焼く=夏海
△ス=1点
(ス:それがいい!と思います。)

★五月晴れあの世この世も紙一重=喋九厘
△阿=1点
(阿:一木君、また会いたかったな。)

●3D画像の胎児白海芋=まさこ
△十=1点
(十:クローン人間の時も感じたが、文明が行き着く処まで行くときの恐怖を思う。季語の〈白海芋〉は動くかも。葱:☆ちょっとリアルすぎるぐらいの喩えかも。)

●竹落葉掻く人も無き家一軒=君不去
△久=1点
(久:もう誰も住まないのだろうなと感じます。)


【無選】

●一夜干し鰈焦がして暑気払い
(資:春の季語で暑気払いは双方のインパクトが強すぎると思いました。)

●おさな髪カサブランカの記憶かな
(葱:☆おしゃれな語感を感じます。)

●ジャスミンの香り纏はる宅配便
(葱:☆日常のちょとした「癒しの一齣」。)

●筍や天を目指すや光の箭
(喋:箭=矢。 葱:☆「箭」の文字には「篠竹の矢」の意味が含まれています。)

★ポセイドンに召されし魂首夏の海
(葱:白鴨忌、追悼句。)



A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号 93号 94号 95号 96号 97号 98号 99号 100号 101号 102号 103号 104号 105号