*A部門入選作発表*

当季雑詠*全45投句(入選38句)

【特選】

一席
●箸先の白魚に出自問はれけり=砂太


◎君、二、喋、ス○葱、メ△百、久、白=19点
(ス:白魚と目が合ったのでしょうか?! 葱:こうして毎年その季節になると、なんらか「白魚」の句を読むところが俳人の「出自」です。なんだか愛おしい。 君:こういう瞬間ってもっと必要なのかも、と考えさせられました。 発想に感服。 百:やっぱ、事実を詠んだだけより、どう関わったかってのが,響いてきます。 久:極まったときに思いが廻ったのでしょうか。 白:ライプニッツは存在するものをコンポシブル(共可能的)という概念から定義していたが、さて人間と白魚はコンポシブルなのだろうか? 逆に白魚に問われている自分とは何だろう?)


二席
●惜春や博多ことばの弔辞よむ=資料官


○五、砂、香、入、小△夏、水、雪、喋、ス、久=16点
(五:K君の父上の葬式のシーンでしょうか?無法投区に「丘を越えて」を書きました。 雪:普段の会話のように、でしょうか。余計に悲しいです。 ス:よそいきでなく普段の言葉で話されると、それもまたもらい泣きしそうですね。 葱:「博多ことば」での弔辞、きっと心がこもっていて泣けると思います。 久:惜春というところに思いが広がります。)


三席
●下北の鉞(まさかり)のさきわかめ干す=入鈴


◎五、砂○葱、君、雪△香、ス、資★二=15点
(五:確かに、下北半島は鉞の形ですね。面白い句。地図を見て、実景を思い出しているのか?二六斎宗匠が反応されるかも楽しみ。 葱:「まさかり」は常套句なんだろうけど、「わかめ」が来て「緊張と緩和」が成立。 君:うん、確かに"鉞”です。 雪:わかめ干す光景、見たいですね〜。 ス:うまいなあ! 資:確かに下北半島は鉞の形,みちのくは若布の春ですね。)


【入選】

●打たせ湯の痩せたる背中昭和の日=五六二三斎
○雪、香、資△葱、君、メ、ス、入、小=12点
(雪:激動の昭和を生きた人の背中でしょうか。 葱:身に沁みますねえ〜。 ス:温泉に行くと、女湯では圧倒的に痩せてない背中が多いです。エレジーがあっていい!)

●花時を酒の二合とおもひけり=葱男
◎小、資○百△雪、喋、白=11点
(小:楽しいお酒もセーブしたいお年頃!ですね。 資:1合でもなく3合でもないほどよさが良い。 百:自分の心に決めたほろ酔い時? 雪:二合のお酒で桜をめでる?? 白:最後を「さだめけり」としなかったのは、作者の酒に対する愛情の表現と解釈したのだが…。)

●踏切を吾と歩むや花吹雪=久郎兎
◎百、入○喋、澄△小=11点
(百:一緒に風に吹かれるように飄々と。)

●洋館の鍵穴歪む春の暮=雪絵
◎香○二、ス、白=9点
(ス:ミステリっぽいですねえ。 白:ちょっとシャイニングなイメージだが、春の暮れに似合った情景かもしれない。薄暮の視野の歪みが洋館の堅牢さを溶かしていくようだ。)

●かごめかごめ背なに寂しきもんしろちょう=水音
○五、喋、澄、久★二=8点
(五:俳句には唄の要素もあるようです。蕪村の句には民謡に素材を求めたのも多いと聞きます。掲句にもその要素が含まれています。何とも言えない懐かしさが感じられます。 久:文字余りがありますが、情趣ありです。)

●山葵田のひと畝ごとのカノンかな=君不去
◎メ○資△五、二、砂=8点
(五:カノンが清らかな水の流れを暗示していますね。)

●蘊蓄の多き美容師つばくらめ=雪絵
◎夏△久、入、白=6点
(夏: そんな美容師さん、居るなあ!と納得。美容室の軒先には燕が子育て中で。 久:個人的に昔を思い出してしまいました。 葱:いるよねえ〜〜。美容院、入ったことないけど・・・。「つばくらめ」の音にちょっと煩わしいと思っている作者の心情がよく出ています。 白:すごく日常の情景〈草枕の床屋のシーンを思い出す〉だが、句の持つ安心感が感じら れる。)

●影絵劇の裏おもしろき暮春かな=夏海
◎白○水△二=6点
(白:「裏」にはいつも人に知れないものがある。決して表に出ないものだからこそ面白いのだが、本当はそれは折りたたまれた「表」に等しいものかもしれない。 水:裏を覗くと色々仕掛けがあるんでしょうね。)

●春愁や筑波の影の定まらず=入鈴
◎水△五、小、資=6点
(水:格調高い句だと思います。 五:山は畏敬の対象でしょうが、筑波山が何故か淋しく見えるのでしょう。それが春の愁いなんでしょう。葱:「筑波」の地霊が効いているんですかねえ、何故だか納得の句。)

●花冷えの指を丸めて赤子抱く=久郎兎
○入、小△前、香=6点

●春飛魚(はるとび)来南十字の海より来=葱男
○二、砂△君、澄=6点

●待ち惚け伸びに伸びけり藤の花=五六二三斎
◎雪○前△メ=6点
(雪:時間の経過を、花が咲けば咲くほど伸びる藤の花にたとえる、すごい!)

●八重桜今日といふ日の失せ易き=夏海
○メ、ス△前、砂=6点
(ス:たしかなものなんてないのですね?!)

●マドンナの身の上話花水木=五六二三斎
◎葱○夏★二=5点
(葱:それは是非、聞いてみたい。こうなると俳句云々というより、「マドンナ・フェチ」です。 夏:どんな身の上話でしょう?)

●昔の人の写真破ろか春の風=小夜女
◎久△葱、砂=5点
(久:昔の人の」をまとめたほうがいいとは思いますが、いろんな思いをさせてくれる句です。 葱:女流だからこその情とロマン。)

●去りゆきし春はすみだの川下る=資料官
○百△水、前=4点
(百:これも踏切の句に似た感覚ですが、吾と離れて彼方へ。 水:まさに下って行きそう。)

●季を罷る卯月の雪に花黙す=久郎兎
◎前=3点

●タンポポに見入り踏み行く利かん坊=君不去
◎澄=3点

●水鉢に水張りて待つ日永かな=スライトリ・マッド
△五、夏、入=3点
(五:水のリフレインがいいですね。)

●魚の腹ぷつくりとして春たけなは=スライトリ・マッド
△葱、水=2点
(葱:「ぷつくり」と「たけなは」が気に入りました。 水:「腹ぷっくり」がまさに「春たけなは」な感じ。)

●山椒喰おじゃみの目玉弾みけり=夏海
△君、喋=2点
(君:”おじゃみ”って何?わからないけど楽しくて。)

●春愁や鯛めしに鯛ひとかけら=水音
○久=2点
(久:弁当だったら仕方ないけど、なんだか切ないですね。)

●春昼の深きソファーの珈琲館=雪絵
○水=2点
(水:春の昼下がりのけだるさ。

●白鹿の十頭に乞ふ上千本=葱男
○前=2点

●白牡丹に勝る色なし金の蕊=砂太
○君=2点
(葱:着眼点に句歴を感じます。)

●春服や等高線で知る鮮度=水音
○白=2点
(白:等高線で知る鮮度なら、風、光などの自然を持ってくるのが普通だが、あえて服で感じているところがいい。)

●藤房は虹を真似たり雨あがる=喋九厘
○夏★二=2点
(夏:藤の花が棚の上にアーチ状に盛り上がっているのをよく観察しているなあ、と感心。)

●桃咲けば華やぐ丘の無人駅=資料官
△夏、澄=2点

●風光る道迷いてもルンルンと=小夜女
△澄=1点

●霧雨もしくしく泣くや山桜=喋九厘
△メ=1点

●桜絵巻繰りつつ行くは700系=君不去
△資=1点 (葱:「桜絵巻」と「700系」のなんともかけ離れた取り合わせの奇妙が好ましい。)

●末黒野(すぐろの)も命芽吹ひて阿蘇の野と=喋九厘
△百=1点
(百:「末黒野」勉強になりました。)

●野遊のにがての母や犬懐(なつ)き=入鈴
△香=1点

●nomadic夢に裂かれし欝金香=白髪鴨
△百=1点
(百:「欝金香」前にも出てきたかな?忘れっぽいし、無知蒙昧。 葱:「nomadic」の意味が分からず、レコード会社???)

●春風やライン引き終へ野球場=砂太
△雪=1点


【無選】

●三春をのみほしながら海走る
(小:私の理解では豪華?客船の旅で三か所で桜の身頃を楽しんだ!羨ましい生活ですねエ。)

●春灯に狂ひし女のヒール鳴る
(小:身にしみる若気の至り〜それも良し!)


★印は宗匠の入選句、つまり、三光以外の佳作で、点盛りはありません。
この、「佳作★印制度」については皆さんと少し、議論したいと思いますので、またのちほど、「談話室」で!(^0^)


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号