*A部門入選作発表*

当季雑詠*全48投句(入選39句)

【特選】

一席
●さくら湯のほどけるやうに万華鏡=夏海


◎小、二、水、資、雪、前○葱、砂、五、香△喋、白、ス=29点
(小:桜湯には入った事ありませんが、万華鏡の魅力と重なりますね。 水:塩漬けの桜が「ほどける」という言い方、万華鏡と合わせること、とても美しいと思います。 雪:なんと綺麗な句! 葱:うまい比喩ですね。「さくら湯」と「万華鏡」の出会いはシュールもダダも超えた松岡正剛的「日本力」によるものでしょうか。 五:桜を見ながらの露天風呂。いいですね。万華鏡が、満開を暗示しているのでしょう。秀逸。 白:つまらないほど簡単な仕組みの万華鏡だが、その変化の相がわれわれをとらえて離さない。湯のほどける相と万華鏡の変化の相がうまく絡み合って響く。 ス:桜の花びらの入った温泉?風情がありますねえ?!)


二席
●潟の灯の瞬きはじめて蜆汁=入鈴


◎香○二、資、メ、白=11点
(香:句のうまさ、蜆汁の旨さも感じます。 白:「最初にともった光はカイユボット島の灯台であった。一人の少年が私のそばに立って、うっとりして呟いた。「ああ、灯台だ!」そのとき私は自分の心が、大いなる冒険の気持ちでいっぱいになるのを感じた。」<サルトル「嘔吐」より> …うむ、で、蜆汁は冒険かな…?)


三席
●土筆むく昔話や母の恋=小夜女


◎ス○入、久△香、前、喋=10点
(ス:おばあちゃんとて昔は乙女だったはず! 入:上手い!! 香:これくらいの年になると語ってくれるんですね。 久:時間がしなやかに流れるようでいい感じです。葱:「母もの」を、逆にうまくまとめすぎかも。)


三席
●通せんぼさるる夢見し春の風邪=雪絵


◎砂○百、白、ス△五=10点
(白:体調を崩したときの夢は本当に理不尽。私の場合通せんぼなんて生易しいものではなく、殺戮や逃走のサンバ。夢のかわいらしさで選。 ス:なんか風邪ひくと気弱になるなる! 五:通せんぼの句は、前に葱男部長の句にありましたね。また、部長の句かな? 葱:「好きな子にいじわる」の図ですね。 入:理解できます。 百:そういうのは悪夢というのだろうか。)


三席
●花片の最後の呼吸すべり台=五六二三斎


◎葱、メ○百△砂、水=10点
(葱:仏陀の最後の吐息を思います。「この世界は美しい。」 百:儚げな最後。)


【入選】

●去るといふ弥生の空に昼の月=ひら百合
◎入、久○澄△葱=9点
(入:家持のうらうらに照れる春日に〜ひばり〜ひとりかなしもという一首のイメージなのですが、思い出せない。 久:なんだかうまい!ありふれたことを難しい俳句文語を使ってなくて。 葱:この軽さが江戸前で佳い。)

●桃の酒盗みてわれを盗まざる=葱男
◎白○前△百、雪、メ、久=9点
(白:私なら桃の酒は盗んでいない。ただ黙って飲んでいただろう。しかし、われを盗まなかったかは疑問だ。自己偸盗は自己欺瞞のことだと感じたのはうがちすぎだろうか? 百:酒盗ってのは塩からのとこらしいですが,これとは関係ないんですよね、われを盗まざるって,どういう事?意味もわからず選んでしまった。 久:なぞかけのようで、実際は何もなかったのかな?)

●囀や堪忍地蔵の胸のうち=雪絵
◎夏○香△入、資、ス=8点
(夏:お地蔵様は何を堪忍しておられるのか?面白い句。 入:是非胸のうちを知りたいです。 ス:聞いてみたいところですね?!)

●春陰や使い込まれし塗の椀=水音
○夏、雪△砂、二=6点
(夏:塗りものの軟らかい手触りが春と響きあっているようで。 雪:春陰が効いてます。 白:私自身生活道具への愛着など感じることはないし、工芸品の美も感じることはないので選外としたが、きっとそこには作者の歴史があるのだろう。春陰と重なったときその歴史の幅が重さを増してくる。)

●地底より陽に湧き出づる雪柳=香久夜
◎喋○資△小=6点
(葱:雪柳の「旬」には圧倒されます。)

●初花や遮断機下りる子供汽車=夏海
○五△二、水、資、香=6点
(五:動物園の風景と思います。福岡ならば、南公園の桜ですかね? 香:初めての汽車ポッポ、パパさんが乗りたかったという話しもあります! 葱:うまい!、、これぞ「春」の景色。 入:取り合わせがぴったり。)

●花守となりし二宮金次郎=葱男
○雪、ス△五、喋=6点
(雪:昔の小学校の光景が浮かびます。お向かいの小学校にはこの像はありませんね〜。 ス:今の小学校では金次郎さん見かけなくなりましたね?! 五:めーる一行詩に出句されています。部長、二重投句は止めるようにと言ってませんでしたかね?)

●山笑ふ道に飛び出す放ち鶏=スライトリ・マッド
◎百△入、香、澄=6点
(百:放ち鶏がいい。 入:元気。 香:春らしいのどかさ。鶏で表したところがおもしろいです。)

●ひも解けば真白きけむり雛の櫃=葱男
◎五○前=5点
(五:アラジンの魔法使いのような不思議な面白さがあります。 入:これって、浦島太郎のお雛さまヴァージョン?面白いです。)

●生きいきて桜花の山にたなびきぬ=香久夜
◎澄△前=4点

●いぬふぐりまあるく空を見上げをり=雪絵
○砂、メ=4点
(葱:なんとなく可愛い。)

●啓蟄や生れ出づるもの皆哀し=砂太
○久△二、白=4点
(久:悲観的なのは評価されないけど、感じた通りでいいんじゃない!? 白:悲ではなく哀なので軽い春愁なのだろう。ちょっと上から目線が気になるが、自然界における生命の存在〈本当はあり得ぬものと思われてくる〉を考えると確かにそんな気にもなる。 小:皆哀しいのでしょうか?薄氷の幸を感じてる方もあるようです。元気出して生きましょう!)

●囀りやタイムカプセルいま開く=夏海
○水△二、ス=4点
(水:「囀り」に、より期待感が増幅される感じがいい。 葱:わくわくしますね。 ス:どこのタイムカプセルだったのでしょうか?)

●散瞳剤の視界一瞬桜かな=砂太
○二、夏=4点
(夏:一瞬桜が見えたというのが好い。 葱:なんでも句にしてしまうところがすごい!)

●春を打つボクササイズの拳かな=スライトリ・マッド
○水△夏、白=4点
(水:「春を打つ」のリズミカルな感じがいい。 白:50代初めのころ、ジムへ行ってボクササイズに挑戦したことがあるが、まさに年寄りの冷や水だった。相当基礎体力がないとついていけない。それだからか、春を打つと いう表現に若さが感じられて好感。)

●青空はエーゲ海より辛夷咲く=五六二三斎
○葱△雪=3点
(葱:「青空はエーゲ海より」がなんとも春ですね!ボッティチェリのゼフュロスを思い起こします。 雪:映像でしか見たことはないですが、納得!青と白の世界ですね。)

●親木より今盛りなり沈丁花=香久夜
○小△澄=3点
(小:介護される親と私達が重なりました。 入:沈という漢字のまのわるさを薄めてくれます。)

●のどけさや生命線ののびていく=水音
△夏、雪、メ=3点
(夏:つき過ぎかなあ?でも本音らしくて共感できました。 雪:心地いい句です。ほんとに伸びたらなぁ。 葱:能天気句も俳句のうち。 白:句の後半はとても興味深いのだが、のどけさで始まってしまうといまひとつしまりを感じなくなってしまうような気がして、残念ながら選外。)

●母からの短きメール梅一輪=資料官
○入△メ=3点
(入:牡丹でもないし、桜花でもないあたたかさがあり。)

●花韮のま昼の星のおどる跡=入鈴
△百、水、資=3点
(百:この花好きなので。 水:花韮は星のようで可愛いですよね。)

●家と墓並びて春の海眺む=スライトリ・マッド
△夏、久=2点
(夏:時々見かける風景ですが、句にできるセンスが素晴らしい。 葱:いろんなものを「並ばせてみる」のは良い俳句作法。 入:迷ったのですが、極まりすぎてない? 白:生と死はおそらく生命界では対立するものではなく、ともに生の側に位置し、死は人間の生活の中に取り入れられている。そして通常、海は人間の空間ではない。視線の対象はいいのだが、そうした意識のスケッチがあればなあ…。 久:歌謡曲の「エリカの花咲く頃」や「えりこ」を思い出させますね。)

●薄氷は指に弾けむ今朝の幸=白髪鴨
○小=2点

●桜花下の御母の膝に帰る母=久郎兎
○喋=2点
(入:悲しみより美しさを感じます。)

●言霊はたはむれをも許さず宗易忌=白髪鴨
△小、百=2点
(百:襟を正し教えに従う。)

●四苦八苦丸めてみせる桜花=小夜女
△砂、五=2点
(五:今年は花の冷えで、四苦八苦しているのか?面白い表現。)

●疎水脇そそとたたずむ黄水仙=メゴチ
○喋=2点

●満々と桜映して荒瀬ダム=喋九厘
○澄=2点

●暁の春嵐や小夜花灯り=久郎兎
△澄=1点 (葱:「しゅんらんやさよ」あたりの言葉遣いが妙に面白いです。)

●εなる極限おひて青き踏む=白髪鴨
△葱=1点
(葱:作者はεの概念に無限小である自分の姿を照らし合わせているのだろう、下五の「踏青」が美しい。)

●空港の柵の解れに土筆摘み=久郎兎
△入=1点
(入:地方空港ってけっこうおおらかですよね、蓮華や仏の座とか野良犬まで遊んでいたり。)

●草花は暦どほりに世は朧=水音
△前=1点

●卒業の歌に涙の今昔=メゴチ
△小=1点

●東京は霞遠富士なほ霞=資料官
△葱=1点
(葱:東京ー遠富士のT音、「霞」のくり返しが心地よい。)

●願わくばこれぞ最後の戻り寒=前鰤
△久=1点
(久:年を取ると実感。)


【無選】

●学問を離れてよりの雛祭
(葱:季語を何にするかでいろいろ楽しめる句です。)

●壺焼きの汁一滴まで集中す
(葱:実感の句です、いいです。)

●はいチーズ筑高生の桜舞台
(葱:下五が惜しい!「花舞台」では季語にならないのか、う〜〜ム。)


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号