*A部門入選作発表*

当季雑詠*全50投句(入選39句)

【特選】

一席
●空をいで空にとびこむ夏つばめ=水音


◎百、メ、喋○入、香△夏、男、久、二=17点
(百:素早いです。 メ:「空にとびこむ」がいい。 夏:燕の俊敏さが上手く表現されています! 男:空に飛び込むんですねぇ。 久:ツバメの飛行をこのように表現するとは流石、匠です。ソラと読まずにクウと読むのかもしれませんネ。ちょっと憎さも。 葱:間違いなく佳句です。今月は佳句が多すぎました。)


二席
●硝子ペンの孕む言の葉聖五月=夏海


◎砂、雪、ス○葱△水、喋、君=14点
(雪:硝子ペン、てあるんですね。「孕む言の葉」、うまいなぁ。 ス:メールでない手書きの文字には気持ちが込められますね。 葱:モチーフがすごくいいと思います。「孕む」の表現も「硝子ペン:聖五月」の取り合わせもいい。 水:ガラスペンと聖五月で、それはすっきりとした詩ではないかと。)


三席
●子育てに真面目な燕道祖神=砂太


◎五、君、入○香△雪=12点
(五:これは思い出のなせる業の天位です。旧筑紫中学の道沿いに道祖神がありました。その風景がふとこの句を読んで甦ったのです。作者が同じ光景を想像しながら詠んだのなら、感激ですね。 君:う〜〜ん、確かに”真面目な子育て”ですね、面白くて。 雪:ほんとに真面目な感じ。 葱:面白い! 「道祖神」も意外な面白い取り合わせです。)


【入選】

●風薫る子らは遊具のてっぺんに=水音
◎夏○久△葱、小、二、前、入、香=11点
(夏:子供達の爽快な気分が伝わってきます。 久:自然な感じでいい句です。 葱:「遊具」は滑り台やジャングルジムのことでしょうね、一番上まで昇りたがった子供の頃を思い出します。)

●涅槃像の涙のすぢや朴の花=雪絵
◎澄、水○砂、資△ス=11点
(水:朴の花には繊細さを微塵も感じません。そこに涅槃仏の涙の筋と呼応するような悲しさがあります。 ス:どこの涅槃像でしょうか?)

●木苺に手の届かざる昔あり=小夜女
◎久○男△喋、前、入=8点
(久:刺々しい苦い思い出にひととき浸ってしまいました。 入:懐かしい!! 葱:△の最終候補でした。気負いもなく素直なところが好きです。)

●水張りて棚田嬉しや畔高し=久郎兎
◎男○資、喋△澄=8点
(男:田植えを待ち受ける棚田を見たんです。)

●身の中に薔薇咲いてゆく薔薇湯かな=水音
◎小○砂、雪△ス=8点
(雪:一度、浸ってみたい! ス:CMを見ているような気分に。 葱:色っぽくていいなあ。)

●外灯に螢を演ず草の露=前鰤
◎葱○メ△百、久=7点
(葱:この時期になって、そろそろ「蛍が・・」という作者の願望が草の露に名演技をさせたのでしょう。 メ:きれいだーね。 百:「演ず」がいい。 久:目の高さくらいにある草の雫でしょうか。)

●樟若葉尽きて端島の浮かびけり=五六二三斎
○二、ス△葱、砂、資=7点
(ス:長崎の軍艦島ですね?!テレビで見ました。 葱:「軍艦島」の威容と影がよく浮かび上がります。)

●先生の若き丸顔聖五月=資料官
○小△五、砂、夏、雪、君=7点
(五:若いメタボ先生の前途に拍手。日本の行く末はすべて教育にあり。 夏:若々しさ、初々しさが伝わります。)

●祭りあとA弦の音はなお狂ふ=白髪鴨
○百、前、君△葱=7点
(百:なんとなく。 葱:「音」は「ね」と発音して17音になりますが、好みとしては「A弦の音(おと)なお狂ふ」でした。)

●錦江の向こうの夏に桜島=喋九厘
○水△二、入、香=6点
(水:夏と桜島を逆にしたことで句に更なる広がりを感じます。)

●香に呆け抱く薔薇の押し返す=君不去
○メ、入△百、小=6点
(メ:呆け、押し返す がいい感じ。 百:「押し返す」という発想が実感。 葱:上五は「かにほうけ」の音でしたね。面白い句だなあと思いました。情景はよく伝わるのですがひとつ気になったのは「薔薇の」の「の」。この文脈だと薔薇みずからが押し返すという意味になります。かといって「薔薇を」だとその香りを嫌がっているようでもあり、これも助詞の使い方が難しいなあ。)

●苔庭の風の涼しと石の貌=砂太
◎資○喋△メ=6点
(メ:京都に行きたくなりました。)

●渓谷の緑に浸る露天の湯=香久夜
○澄○五△男=5点
(五:こんな露天を想像するのも楽しい。露天ファンの男剣士さんの作かも。 男:露天はよかです。)

●鯉のぼり兄の生れし日に逝し=小夜女
○雪、ス△久=5点
(雪:そんな偶然もあるんですねぇ。鯉のぼり、が効いてます。 ス:なんとも不思議で悲しい感じがします。 久:脳障害により意識不明で入院中の、以前お世話になった方の命日が自分の誕生日と同じでした。)

●手を合はす十薬父母の顔形=五六二三斎
◎前△百、資=5点
(百:ドクダミが顔かたちなのか? 葱:惹かれる句です。)

●アボカドの種を洗ひて卯月の夜=スライトリ・マッド
◎二△水=4点
(水:植えるんでしょうか?)

●陶工の手に土生るる万緑裡=砂太
◎香△五=4点
(五:陶工の仕事具合も万緑の下、よいペースか? 葱:上手い! ただ少し句に慣れた感じもします。)

●抽斗に子の合鍵や君影草=雪絵
○夏、君=4点
(夏:離れて暮らしている子供への親心! 君:きっと子を心配するお母さん!言外の気持ちが感じられて。)

●水に描く絵の具模様や新樹光=スライトリ・マッド
○夏△五、メ=4点
(夏:マーブリング?新緑が煌いている感じ、よく判ります。 五:新樹の水に映る様を絵の具に見立てたのか? 葱:実際のパフォーマンスを見ればきっと感動が伝わったと思います。)

●緑陰に真白きあんよ躍り出る=香久夜
○五△喋、前=4点
(五:B部門に出してもよかったか?「あんよ」にやられたあんよ〈笑〉。)

●紫陽花に人誘われて雨と逢ふ=久郎兎
○男△資=3点
(男:見返りの滝もそうでした。 葱:佳い句だと思いますが「人誘われて」の中七に一考の余地ありか? 体験を自分のものとして詠んだらもっとポエジーがある句になると思いました。)

●ジャカランダここはマフィアの島なりき=葱男
△夏、水、ス=3点
(夏:「マフィアの島」が面白い。 水:ジャカランダを始めて知りました。 ス:米西海岸にも咲いていると八島太郎が言ってました。)

●小満の南蛮漬けや子を待ちぬ=香久夜
○二△入=3点

●夏めくやデッキの椅子に母のをり=資料官
○百△メ=3点
(百:外が気持ちいい季節。 葱:お元気でなにより。)

●初鰹酔うほどに語るフィロソフィー=白髪鴨
○久△君=3点
(久:哲学一杯まあいいじゃないですかあ。 葱:モチーフだけで考えるなら人位の句。)

●石仏会釈し通る若葉道=雪絵
○澄=2点

●劇場の空うつくしき五月かな=葱男
△砂、雪=2点
(葱:森光子「放浪記」2000回公演。 雪:国民栄誉賞、おめでとうございます!)

●堂めざす「三」の鎖場大南風=夏海
△二、香=2点
(夏:修験の山の下より順に三つの鎖場あり。 葱:先の夏海さんのコメントが実際に本人から送られてきた前詞でした。思うところがあって、早速「修験の山」「三つの鎖場」でインターネット検索をしたら最初に「莇ヶ岳」の記事が飛び込んできて、時間もなかったので本人に確認もせず、承諾も受けないまま前詞を改竄したのが間違いでした。すぐに本人から事情説明があり、実際の現場は四国の「石鎚山」でした。彼女もさぞかしびっくりした事でしょう。全く知らない名前の山が自分の句の前詞 になっているのですから。 この問題はゆっくり「談話室」で話し合いたいと思っていますが、まづは夏海さんに「ごめんちゃい。m(__)m」)

●ふるさとの夏至の夕暮れ路地の子ら=久郎兎
○小=2点

●舞ふ螢解き放ちしはパンドーラ=夏海
○水=2点
(水:なるほど。悪いものは素早く飛んで行ってしまって、蛍はきっと“希望”なんですね。 葱:「パンドラの匣」とは巧い比喩ですね。)

●麦の穂を持ちたる少女スピカかな=スライトリ・マッド
○前=2点
(葱:「少女スピカ」のイメージが自分の中にありませんでした。アニメキャラかなんかと。調べてみたら、農業の女神デルメルの娘ペルセファネスがモデルの「乙女座」、その麦の穂先がスピカという一等星で、「とげとげした穀物の穂」なのだそうで、知らんかった。)

●めらんこりいめめんともりかぜはなつ=白髪鴨
○葱=2点
(葱:なんといっても最後の「かぜはなつ」がいい!「風は夏」ですよね? )

●休校も解かれ浮き立つ夏日傘=葱男
△小=1点

●五月雨や夜間工事の声聞きつ=小夜女
△男=1点
(男:夜の工事ご苦労さん。 入:何度も経験したことがあり、こんな句もありだと。)

●薔薇園の匂いに咽ぶ雨あがり=メゴチ
△澄=1点
(葱:あの薔薇の噎せるような匂いが感じられます。)

●山間の湯に浸かりたり五月かな=男剣士
△澄=1点


【無選】

●川辺と球磨清流逢ひて初夏の風
(葱:音感だけが惜しい! 情景はとても心地よい。)

●銀座八丁さまよふ憲法記念の日
(葱:古くからの商業地で多くの神社がある、「銀座八丁」という地霊が「憲法記念日」という厄介な事柄にうまく効いていると思いました。 入:東京って街への新たな思いがあります。)


A部門入選作

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