*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選39句)

【特選】

一席
●オーボエの頬ふくらみて花木槿=スライトリ・マッド


◎入、前、資○白、雪、五、水、香△二=20点
(入:友人の花槿のような子が、中学生になった様子を想像してしまいました。 資:筑高ブラスはちきれそうな若さ。 白:槿の花ってそんな感じだっけ? と写真を探してみたけど、ちょっと違うみたい…。何か別の俳趣があったんでしょうか。でも句の感じがよかったので○。 雪:女学生の奏者かな? 五:俳句らしくてよい。コンサートの寸描として素晴らしい。 水:顔をまっかにして吹いているところが木槿と重なります。)


二席
●恐竜のおもちやの供物盆の月=雪絵


◎砂、喋○葱、夏、ス、入△久、二、君、資=18点
(葱:今様の盆迎えの風景。 夏:おもちゃが供物というと、子供が無邪気に祖父母?へ供えたものかそれとも幼児の仏前に父母が思いを込めて供えたものか・・・様々に読める深さ。 ス:残されたご家族にとっては時間は止まったままなのでしょうね? 入:結句の盆の月がいっそう深く思われます。)


三席
●手相見の暇にしてをり蓮は実に=スライトリ・マッド


◎雪○二、男、百、君△葱、水、香=14点
(雪:占い師と蓮の取り合わせが旨いですね〜。 男:情景が浮かんで。 百:手相見は冬繁盛しそうだもんね。 君:”み”の音が心地よく。 葱:太古の昔から「占い」はまるで神のお告げのように人間の心を支配してきました。「未来が見える」っちゅうことはつまり「蓮は実に」なるっちゅうことか。 水:よっぽど暇なんですねぇ。)


【入選】

●フェリー待つ港気怠く夏を解く=君不去
◎久、白、五△百=10点
(久:カタカナの船だけどどうして鉄道より詩情が豊かなのかなあ。 葱:港の夏の風を感じます。 白:この情景、好きですね〜。シンパシーを感じる景色が「解夏」でいっそう実感できる気がします。 五:季語にやや難ありも、旅の句として気に入りました。 百:解夏、結夏って言葉を知ってるからできる句でしょうね。)

●朝顔の仮屋に点つる男の茶=夏海
○澄、喋、君△砂、水、香=9点
(澄:しぶいですね。 水:男ばかりの祭りの仮屋かな?)

●稲の花死するはたれも道半ば=水音
◎香○二、砂△白、雪=9点
(白:達観した俳句って本当は余り好きじゃないんです。どちらかというとジタバタした句の方が好きなんですが、やはり年のせいか、選んじゃいました。 雪:とても悲しい、胸の痛むニュースでした。 葱:田中裕明さんの「空へゆく階段のなし稲の花」を思い起こしました。)

●花芒手話で伝はることのすべて=葱男
◎二○白、水△ス、資=9点
(白:最初は選外だったんですが、何度も読んでいるうちにだんだん味が出てきた句です。考えすぎかもしれませんが、ちょっと哲学的な気がして…。 水:何が伝わって、何が伝わらないのか、手話はいつも不思議です。 ス:下五の字余り気になりましたが、やさしい感じが伝わって来ました。)

●虫干しや父の上着の名刺入れ=資料官
○砂△葱、二、夏、百、水、入、メ=9点
(葱:「父母もの」はやはりグッときます。 夏:生前のままにある日用品を見ての遺族の思い! 水:つい見入ってしまう気持ちがよく分かる。 入:あまりにもわかり過ぎて△にしてしまいました、、、。)

●南溟の息嘯(おきそ)の風や敗戦日=砂太
◎君○百△久、入、メ=8点
(君:言葉が難しかったのですが大きな悲しみが伝わって。 百:息嘯(おきそ)という言葉に惹かれ 久:意味が分かりにくいけど敗戦日に1点入れました。 葱:語り告がれていく敗戦の日、「終戦」という季語はなし。 入:戦争をご存じの方の句と思われます。)

●何処にて秋立ちしかと風に問ふ=水音
○久、男、メ△白=7点
(久:問うたのは南風にか? 男:立秋は名ばかりで。 メ:今年はほんとに変な天気が続きますね。 白:最初に選んだ句でしたが、他の句と比較しているうちに△になってしまいました。ここまで暑いと風といわず波といわず、とにかく何にでも問いたくなりますね。 葱:名随筆の出だしの文章のよう。)

●母の呼ぶ暮るるに早き花野かな=白髪鴨
◎水○前△雪、砂=7点
(水:詩情があって素敵です。 雪:子供の頃を思い出しました。 入:懐かしいけれど、少し寂しいかな。)

●昼の虫鳴いて妻居ぬカレーかな=砂太
◎夏○五△二、入=7点
(夏:妻の用意したカレーを食べながらも、一人の昼食が寂しい夫。仲の良い夫婦像。 五:腹の虫も鳴いてのことでしょう。ユーモラスであり、ペーソスもあり。これが俳句! 入:しみじみとしていいな。)

●半身浴満ちくる月の齢かな=葱男
○資△雪、澄、夏、喋=6点
(雪:半身浴と月、おもしろい取り合わせの句ですね。 澄:お月さんを見ながらの半身浴私もしてみたい! 夏:「満ち来る」齢は自分の身にも重なるのかな?!)

●豆しぼり子らの額に秋暑し=入鈴
○雪、夏△砂、ス=6点
(雪:豆と子がマッチ! 夏:「豆しぼり」が雄弁。秋祭りの子供の姿が見えるようです。 ス:お祭りの光景でしょうか?)

●アフガンへ涙の雨か秋出水=君不去
○澄、香△ス=5点
(澄:ホントに尊い命が残念でした。 ス:ペシャワール会の日本人スタッフ、とうとう撤退に。何とも無念!)

●新凉や絹枝のメダル甦る=五六二三斎
◎ス△葱、香=5点
(ス:女子選手の活躍に拍手! 葱:男子400メートルリレーの銅メダル。最後の10メートル、あれは絶対奇跡的!どうやら朝原の足を守る神様がフィールドに降臨したようですね。)

●亡き父と逢へり机の夜の秋=砂太
◎葱△五、君=5点
(葱:「夏嵐カフカの机傷いくつ 浅井慎平」。 五:句における断定の大切さ。 入:気持ちがよく伝わってきます。私はゴルフ場でしたが。)

●青い灯を疑いもせず虫集い=前鰤
◎男△久=4点
(男:あの音ってむごいと思いませんか。)

●雨粒の一つひとつに遠花火=スライトリ・マッド
◎メ△五=4点
(メ:スローモーションが目に浮かぶ。 五:雨に強行の花火。雨粒に光。正に八月も終わり。)

●大玻璃をバスのアートのよぎる葉月=夏海
◎百△二=4点
(百:ガラス板に映る大きな景色が夏らしい)

●水琴窟葉月の女歩み寄る=夏海
○葱△澄、喋=4点
(葱:「葉月の女」なんてタイトルの水彩画でも描いてみたいなあ。 澄:葉月の女誰かな?)

●星飛びて子らの声聴く一本道=白髪鴨
◎澄△夏=4点
(澄:なんかメルヘンの世界ですね。 夏:田舎の暗い道なら流れ星もクリアーに見えそう。 入:はつらつとした一本の調子で貫かれて好感。声「する」は?)

●風鈴や忘れられたり秋の風=男剣士
○久△メ=3点
(久:よくある風景だけど風鈴の放置は迷惑かも。 メ:最近はとんと風鈴の音を聞いてません。)

●孫子らに気つかひつかはれ生身魂=君不去
○ス△百=3点
(ス:先生のお句?おやさしい句だなあと思いました。百:誰もが経験する夏休み。)

●足跡の北京の花火もやと消ゆ=メゴチ
△前、君=2点
(葱:北京五輪が終わって、人間はこの先もこのまま「祭の狂躁」を追い続けるために、どんだけ限られた資源エネルギーを浪費するのかと思うとゾッとしますね。)

●ガラス戸に手を当て夜明け秋を知る=久郎兎
○メ=2点
(メ:こういう気づき方もあるんだ。 葱:朝晩、少し空気がひんやりとして気持ちの良い日がありますね。)

●今朝咲きし蓮の花とも顔合わす=資料官
○喋=2点

●涼しさをせせらぎに呼ぶ風の盆=前鰤
△二=2点

●はや虫の鳴きて潮の満つを待つ=香久夜
△白、男=2点
(白:下の句の感性に共感しました。「満つを待つ」と「つ」が重なるのがいいのか悪いのか分かりませんが、そこで句が引き締まっているように感じます。)

●よもやまの憩ひの煙草残暑かな=五六二三斎
○前=2点
(葱:スモーキングトークなんていって、仲良くなったりして。)

●タップダンス軽やかにして秋暑し=雪絵
○入=2点
(入:秋暑しにぴったり。)

●朝顔や利休のしわざに千代女泣く=水音
△男=1点
(男:勉強不足でよくわかりませんが品がよさそう。 葱:朝顔が庭一面に見事な花というので見物に来た秀吉に、千利休はすべての花を摘み取り迎えました。床の間に生けられた一輪の朝顔をみて秀吉が感動したという「朝顔の茶会」の顛末です。)

●小豆煮て好物饅頭作る母=メゴチ
△喋=1点

●煌めきて闇に消え行く花火かな=男剣士
△澄=1点
(澄:はかない美しさです)

●こおろぎと蝉の日毎に鳴きくらべ=香久夜
△前=1点

●浄夜聴く大正浪漫霧匂う=白髪鴨
△資=1点
(葱:この「浄夜」がシェーンベルグの弦楽六十奏曲のことだというのは、白髪鴨さんから直接そのCDを戴いたことがあるのでよく分かりました。)

●鈴虫やなつめに青き光揺れ=入鈴
△前=1点

●大文字灯りて昇る京の夜=澄響
△五=1点
(五:昇るとあるので、京の月としたいところですが、夜と抑えた。それが成功したかも?推敲したらもっとよくなりそう。上るではいかが?北に行くこと上ると言いませんか?葱部長!)

●露草やすずめもはとも忙しい=入鈴
△男=1点
(男:それ見ました。)


A部門入選作

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