*A部門入選作発表*

当季雑詠*全52投句(入選43句)

【特選】

一席
●返事来るまでの頬杖片時雨=雪絵


◎白、五、百、水○男、資△夏、砂、秋=19点
(白:この句を男性が読んだとしたら相当にキモイ。あるいはゲイ術的な詩情か…。ただ、とてもかわいいので俳句うんぬんではなくて選んじゃいました。〈でも、実際の作者は50代半ばのオバハンなんだよな〜きっと…〉 五:片時雨、片思い?ただ、ユーモアも漂う。佳句なり。 百:頬杖と片時雨がぴったり・・しすぎ? 水:携帯のメールでしょうか、季語により若い女の子の表情まで見えるよう。 男:何となく頬杖が。 夏:”携帯”とか”メール”とか言わないで判らせる技量が素晴らしい。 葱:昔「もうほおづえはつかない」なんてATGがありましたね。)


二席
●博多には機音ありき花八つ手=五六二三斎


◎資、香○雪、百、入、ス=14点
(資:博多織工場の花八つ手でしょうか。ははは・・・良いなあ。 香:懐かしいです。私の家の近くにも住宅街の中に小さな博多織り屋さんがあって、毎朝、機の音を聞いて通学してました。まだ、そちらは健在なんですね。「花八つ手」がその雰囲気にぴったりです。 雪:「は」の音が、とてもやさしい響きになっています。 葱:染織業界に関わるものとしては身につまされる句です。「花八つ手」に救いがあります。 百:なんかドラマがあってますね。 入:織機の音と八手の花、どちらも胸きゅんです。 ス:実家の近くに博多織の工房があったのを思い出しました。)


三席
●おでん鍋八十路姉妹のカウンター=水音


◎夏○白、男、前△久、ス=11点
(夏:「姉妹」が効いてます。おばあちゃん達のおでんは美味しそう。 白:砂太師匠の行きつけの店か…。哀愁と滑稽さの交じり合った感じでドラマツルギーさえ感じます。 男:落ち着く飲み屋でしょうね。 ス:わお!カウンターの向こう側に八十路の姉妹?! 葱:いい「出し」が出てそうですね!)


三席
●小夜時雨耳そばだてる膝小僧=五六二三斎


◎喋○久、資、入△メ、前=11点
(久:リューマチなんかの膝関節の病気を思わせますね。病名を入れて詠むのではなくさりげないところがよいです。)


三席
●蜂蜜に獣の匂い冬に入る=水音


◎葱、久○夏△砂、二、前=11点
(葱:「獣」は使える言葉ですね!! 久:なんかお伽話の世界のような。熊の手に匂うハチミツは現実にあるけど。頭の中で逆転したのかな?でも趣があります。 夏:「獣の匂い」、確かにそんな感じです。)


【入選】

●寒晴や大工は釘を銜へをり=スライトリ・マッド
◎雪○葱、香、二△白=10点
(雪:こんな光景もなかなか見られなくなりました。寒晴が釘の冷たさを一層、増しているように思いました。 葱:「銜」の字が屹立しています! 白:で、こちらはコテコテの日常…。でも、その日常の切り取り方がとても鋭いですね。光の使い方の上手い写真のような…。)

●車座を離れてもとの銀狐=葱男
◎君、ス○五△白、百=10点
(君:”もとの”がとても効果的。 ス:ファンタジーを感じました! 五:何とも言えない孤独感が滲んでいます。佳句なり。 白:どういう情景なのか? 幻想的なシーンか、それともさめた自我の表現か、どちらをとっても面白さのある句だと思います。 百:冬の怪。)

●水郷を三段跳びに杜氏来る=葱男
○白、砂、喋△夏、五、香、二=10点
(白:何かの漫画の一コマを彷彿とさせましたが、日常と非日常の差延が一瞬に迫る感覚に共鳴しました。 夏:三潴辺りかな? 五:名水に良い酒あり。川に島がいくつか見えるのか?ユニークな句ですね。 香:白川先生はじめ、遠くから、有難うごさいました。そして森山くん、ご苦労さま。お疲れ出ませんでしたか?)

●見えぬこと不幸であらず冬木の芽=スライトリ・マッド
○砂、百、メ△澄、男、香、君=10点
(百:不幸「に」あらずかな?とか思ったけど、意味に納得で。)

●薪ストーブ売らるる十(とお)の鉄びかり=夏海
  ◎二○雪、久=7点
(雪:実際に見たことはありませんが、新品ストーブ、よく見えます。 久:五徳ではないんだよね。十はなんだろう。 葱:佳句の予感あり!ですが、「十」がよくイメージできませんでした。解説して欲しい句です。)

●みかへりの阿弥陀も見しや冬紅葉=雪絵
◎澄、秋△メ=7点
(雪:京都 永観堂。)

●時雨忌のうしろに光つらなりぬ=葱男
◎砂○ス△五=6点
(ス:連綿と受け継がれてきた俳句の光でしょうか?! 五:願望でしょうね。そうありたい。「享年に目覚めて五年翁の忌 五」。 芭蕉の亡くなった年に始めた俳句。果たして、生まれ変わりが現れるか?)

●ゼロ系の抜かれ抜かれて秋惜しむ=資料官
△喋、久、男、水、香、君=6点
(資:新幹線初代の0系。 久:ダイヤグラムのスジの中を申し訳なさそうに横切る0系。ご苦労様でした。 水:こだまは駅ごとに長く停車するのがイヤだけど、秋を惜しむという感覚だと旅情が出てくる。 香:10月に博多駅で雄姿をカメラに収めました。)

●息白し帆(セイル)の下の目は吼える=白髪鴨
○夏、君△二=5点
(夏:冷たい冬の海、「目は吼える」の措辞が凄い。 君:緊迫感が伝わって・・。 葱:迫力ありすぎ!)

●龍馬見ぬ冬晴れ路地の土電かな=喋九厘
◎入△資、前=5点
(入:土竜のこと?訳わからないが、物語があって面白そう。 資:ご苦労様高知くんだりまで。 葱:「土電」は「土佐電鉄」?)

●秋月も色づきはじめ茶屋の餅=男剣士
○メ△澄、百=4点
(百:「餅」に弱い。 葱:旨そう!)

●シーソーは暫し仕舞はむ雪婆=夏海 
○二△白、入=4点
(白:上手な句だな、という感じ。しかしそのまま捨てるのは少し惜しい…。 入:雪婆とシーソー!対比が妙。)

●師にありぬ漢一文字冬構へ=五六二三斎
○葱△雪、ス=4点
(葱:「漢一文字」は「やからいちもじ」と読みたい! 砂太先生の事でしょう。 雪:身のピリッと引き締まる思いです。 ス:まるで両師匠のやう!)

●近寄りて影落とすまで浮寝鳥=水音
◎前△資=4点

●亡き父に羅漢は似たり冬ざるる=砂太
△夏、喋、久、君=4点
(夏:そういう羅漢さんも居そうですね。 葱:これもいい句には違いないのですが、「父」は特別の単語。使う時には金メダルを狙いたいですね! 入:迷いました。今度じっくり道祖神なども眺めてみます。)

●陽の当たるコントラストや森紅葉=前鰤
◎メ△澄=4点
(メ:美しいなあ、こういう風景が好きです。)

●煩悩を羅髪の塵に観て払ふ=久郎兎
○水、前=4点
(水:私も観て払いたい。)

●語るものなし語りうるものなし風花や=白髪鴨
○澄△葱=3点
(葱:中九がウィトゲンシュタインしています。)

●暮易しまだ帰りたくない二人=スライトリ・マッド
○君△砂=3点

●暮早し待つ人溢るる駅舎かな=君不去
◎男=3点
(男:筑肥線が似合いそうな。)

●愛(は)しきやし十一月の京の雨=入鈴
○喋△葱=3点
(葱:「愛しきやし」はなかなか出ません。愛しき語感です。)

●冬ぬくし夫婦の交わす京ことば=雪絵
○五△ス=3点
(五:確かに京都の言葉はあったかい。 ス:京都弁すきなんどす。 葱:よくまとまった句ですが類句がありそう。)

●冬日和更に高きを鶴の陣=砂太
○秋△資=3点
(資:そろそろ出水平野には鶴が来る頃でしょうか。 葱:格調高い句ですが、「高き」は地の「日和」よりも暖かいかどうか少し疑問。)

●夢色のプリズム透かす山紅葉=香久夜
○澄△メ=3点

●カトレアを一輪下げて師の墓参=白髪鴨
△雪、入=2点
(雪:「カトレア」がとてもいいですね! 入:たまたま出会った府立植物園の見事なカトレアと重なって。中句がさりげなくて、恩師の人柄が偲ばれます。 葱:「カトレア」の語感からすると、師はどうやら華やかな女性のイメージです。「越路吹雪」か「淡谷のり子」か。)

●茶断ちして夜長待つ母北の拉致=久郎兎
○香=2点
(葱:「茶断ち」という言葉に秘し、家族の深い「忍従」がよく表されています。)

●つかの間のスポットライト散る銀杏=ひら百合
○秋=2点

●母であり宇宙飛行士冬木の芽=夏海
○水=2点
(水:初めての日本人女性 がんばって欲しいなぁ。 葱:素直な時事句、「冬木の芽」は少し付き過ぎているかな?) 

●炉開や黒文字使いすまし顔=メゴチ
△雪、百=2点
(雪:色々勉強になりました。 百:すまし顔と黒文字のとりあわせ。 入:黒文字の楊枝とか使うの難しいからかしら。緊張感がぴったり。)

●エコ試し手ずから煎りし落花生=久郎兎
△秋=1点

●キッズより賑やかなりし落ち葉山=香久夜
△喋=1点

●この街は株価暴落黄落期=資料官
△水=1点
(水:実りの黄色ではなくわびしい黄落ですね。)

●先見えぬ居心地悪さや初時雨=君不去
△水=1点
(水:人生の秋から冬へ?それとも世相かな。)

●時雨止む見上げる甍六角堂=香久夜
△五=1点
(五:これは、京都の思い出として採用! 葱:同窓会の会場近くでしたね。見上げると「六角」の形が面白かった! 資:丘ふみの始まる前の暇つぶし。)

●0系や夢の花道ひかり冬=喋九厘
△秋=1点
(資:12月号には0系は残したいこの執念。)

●善男善女とならむ玉子ばかり七五三=砂太
△葱=1点
(上八、中九は白髪鴨さんを上回りました。)

●はりまやの路面電車に冬日ギラ=喋九厘
△男=1点

●洛北に小糠雨降り冬立ちぬ=君不去
△入=1点


【無選】

●玄海灘冬の訛に挑みつつ
(葱:「訛」が理解できませんでした。)


A部門入選作

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号