*A部門入選作発表*

当季雑詠*全52投句(入選40句)

【特選】

一席
●月天心まつすぐ跳ねるマサイ族=葱男


◎入、五、香、砂、君○二、ス△白、雪=21点
(入:貧しき町を通りけり→すっきりと元気変換。 五:ウサギではなくマサイ族というのが面白い。 君:取り合わせに意表を突かれ愉快です。 ス:蕪村句への挑戦か?!マサイ族がなんとも斬新。 白:わけの分からない面白さ。本当ならわけが分からない時点で終わっているんですが、ソレデモ面白さが勝っているから選んでいました。 雪:月とマサイ族、おもしろい発想ですね!)


二席
●藤袴菓匠の棚の招き猫=葱男


◎百、前○夏、雪△二、君、資=13点
(百:意外なようでぴったりくる取り合わせ。 夏:まるで”味覚の秋”を招く猫のようです。 雪:藤袴がとてもいい雰囲気を出している感じ。)


三席
●分け入れば落人伝説秋棚田=水音


◎夏、雪○澄、男△百、香=12点
(夏:物語があり、深い句。 雪:まさに内田康夫のサスペンス!ですね。 澄:美しい棚田が目に浮かびます。 男:五木の険しさを思い出します。いまはどうかな。 百:坂梨は平家の落人だそうです。)


【入選】

●秋すだれ隣家ラジオの英会話=君不去
○白、百、五、資△水、ス=10点
(白:朝ドラ的な情景なんですが、それでも何となくほっとする感性がよかったですね。 百:隣は何をする人ぞ。 五:遠きよき時代のことを思い浮かべる句。隣のAさんは勉強家だった。みたいな句ですね。 水:ラジオで英会話聞いてもなかなか上達せず。秋すだれの侘しさと繋がるようで。 葱:うちの隣家は大家さん夫婦の大口論です。ふたりともインテリなので、哲学、文学、音楽の話しでディベートするもんだから、これが結構聞いてると面白いんだよね! ス:ラジオの英会話と秋簾がよくマッチしている! 入:悩みました、のどかな秋の日、好きだなあ。)

●産着干す風のギャザーに金木犀=香久夜
◎二○水△久、白、喋、前、メ=10点
(水:風が香りを運ぶのか、香りが風になるのか。ギャザーとしたところが素敵。 久:入り込むとややこしいが匂いは今はなきシュエップス。 白:正直言って単純な句だと感じたのです、が、これって母(今は祖母ですか)の感じるすごく素直な情景かなって気がして選んでいました。 葱:「風のギャザー」がオリジナルですね。)

●からくりは闇の巷へ西鶴忌=五六二三斎
◎白、ス○香△雪=9点
(白:「からくり」と西鶴が同じ平面にあることの意外性、でもそれはじっと観照していると何となく自明なものになってくる。そして、それらをつなぐブリッジが「闇の巷」なのか。 ス:クールな感じがしていいなあと。 雪:なんだか怪しげな感じ。 葱:日本における「からくり人形」の歴史は江戸時代初期に始まる。 中でも茶運び人形は井原西鶴の本に登場するほど代表的なものであった、そうだけど。)

●衣被水面の光る夜となる=砂太
◎水○君△葱、夏、資=8点
(水:名月に衣被のお供えものでしょうか。「夜となる」で月の上っていく時が見えるよう。 葱:溢れる詩情で戴きました。 夏:美しい月夜なのでしょうね。)

●結婚は何故にするたうがらし=スライトリ・マッド
○白、水△夏、久、喋=7点
(白:深いですね〜、と、茶化すわけにはいかない重さがある句かと…。 水:自分の事か、子どもの事か?唐辛子が辛い! 夏:読者に投げているところが面白い。作者には「たうがらし」? 久:何故するのか消去法か。とうがらしが面白い。)

●サフランや悲母観音の細き鬚=葱男
○二、入、雪△五=7点
(葱:狩野芳涯の描いた悲母観音です。「婦女身得度者、即現婦女身而為説法」(女には女に変身して救う)とありますから、観音様は、本来「空」、男か女かの議論は、「色」(現象)次元の話で、戯論(けろん)ということになります。 入:サフランの韻が悲を、また花柱があご鬚を。 雪:サフランと細き鬚がよく呼応していると思います。 五:どこの悲母観音なのでしょう?) 

●天高し父百歳の生誕日=五六二三斎
○ス、前△水、喋、香=7点
(ス:もし生きておられたら百歳・・でしょうか?ご存命であればお目出度いこと! 水:おめでとうございます。 葱:もしまだ生きておられたら百歳のお誕生日だったのでしょう。大事な人が亡くなったら、その人の命日より誕生日のほうをよく覚えていますね。)

●葉月夜にさい帯裁ちて父となる=香久夜
○君、前△夏、入、砂=7点
(夏:喜びとともにこれからの責任の重さが。 葱:「葉月夜」は造語ですか? 九月生まれの赤子のへその緒をお父さん自らが裁つた、という意味なのでしょうか? 「へその緒を裁ちて九月の父となる」って感じかな?)

●たわたわと空に振る穂や黍熟れて=入鈴
○百、喋、男=6点
(百:たわわからの造語? 男:たわたわの柔らかさが。 葱:「たわたわ」のオノマトペは成功していると思う。)

●目の前に木の実が落ちたぱぴぷぺぽ=君不去
○久、砂△百、ス=6点
(久:驚き慌てている様子がパ行に表されているけど、今はやりの鼠先輩かな? 百:ぱぴぷぺぽが楽しい。ス:思わず笑っちゃいました! 葱:「ぱぴぷぺぽ」には[「め組」で苦い思い出があるんよねえ〜。)

●望月の独りの酒をほがひけり=砂太
◎喋○香△雪=6点
(雪:自分に乾杯!?たまにはいいですね、こんなお酒も・・。)

●たそがれの野に人と月待ちにけり=砂太
○五、前△メ=5点
(五:何でもない句のようにも思いましたが、味があります。)

●煙草に火点けて日なかの焼栗屋=夏海
○喋△二、水、君=5点
(水:大宰府駅前を思い出しました。暇そうでしたもんね。 葱:佳句、俳趣あり。逆に上手すぎるのがひっかかる。)

●雄魚(をいを)守る卵に眼玉磯の秋=夏海
△葱、澄、白、百、砂=5点
(葱:語彙の達人ですね! 「眼玉」がよく効いています。 澄:命の響き感じます。 白:この句と「目の前に木の実が落ちた…」の句と、どちらを選ぶかで最後まで迷ったんです。で、結局「ぱぴぷぺぽ」よりも「卵に眼玉」の方が勝ってしまいました。 百:こういう秋もあるのですね。)

●夜業果つ無音の音に目覚めけり=スライトリ・マッド
○入△五、メ=4点
(五:無音の音とは面白い。 メ:無音の音」の発想がいい。)

●秋雨や球磨川くぐり霞む谷=喋九厘
◎澄=3点
(澄:神秘的な景色ですね〜。)

●コンテナ船の読めぬハングル秋暑し=雪絵
△葱、久、二=3点
(葱:「コンテナ船の」の「の」は必要なのか不要なのか、そこらへんが俳句にとって一番微妙に難しい問題です。 久:ハングル、合理的な文字だから読んでください。)

●新涼や笑顔の間中赤子泣く=香久夜
△入、五、資=3点
(五:字が間違っていたので、没にとも思いましたが、微笑ましいので頂きました。)

●秋霖に木々静寂の古参道=久郎兎
◎資=3点

●染付けの陶器のかけら秋の海=水音
◎メ=3点
(メ:かけらの波ですね、うまいなあ。 葱:佳句です! ただそれだけに類句もありそう。)

●ナスカ絵と成すや白露の田んぼあーと=夏海
○久△メ=3点
(久:季節からすると少し早いけど、ナスカをイメージしたところが良いですね。 葱:発想が面白い! チャレンジが見えてしまうところが鑑賞する側には少し辛いか。)

●離れども同じ月見て機嫌問う=久郎兎
○澄△男=3点
(澄:地球上どこから見ても月は一つですよね! 男:単身赴任ですか)

●パレットの水彩絵の具薄紅葉=雪絵
○資△ス=3点
(ス:芸術の秋ですねえ〜。 葱:絵の具が水に溶けはじめる時の感じですね。)

●彼岸花去り行く父を見送りて=澄響
◎男=3点
(男:男というもの、先立たれたら哀れです。 葱:秋声の父逝く空に聞こへけり」)

●彼岸花触手伸ばしてなに求む=水音
◎久=3点
(久:彼岸花なぜにそこまで赤いのか、色ではなく長く伸びたものに目が行ったのですね。 葱:確かにそんな風に見えます。)

●瞬きぬをんなの頬に蘭一輪=白髪鴨
◎葱=3点
(頬の蘭は若い女の化粧でしょう。現代を詠んで、いかにも前衛的で素敵な句だと思います。)

●海渡る市電ガタゴト空高し=久郎兎
○夏=2点
(夏:何所の市電でしょう?市電が海を渡るというのが珍しくて。 葱:なんだか「千と千尋の神隠し」を思い出しました。)

●愁風秋霖われらすべてを愁殺するごとく=白髪鴨
○葱=2点
(葱:わが「丘ふみ」にもついに「自由律俳人」の登場か! 以前、一度だけ参加してくれた「裸猿」さんは自由律、一行詩というよりはキャッチコピーのレベルで終わりましたけどね。)

●シベリアの秋は深しと友の文=メゴチ
△澄、入=2点
(澄:シベリアの秋どんなかな〜。 葱:中西君、凄いなあ〜!)

●手を添えて庭を一周白芙蓉=資料官
○葱=2点
(葱:素晴らしい句だと思います。「白芙蓉」に「母」を語らせているのです。)

●秋鯖が釣れて嬉しい走水=メゴチ
△男=1点
(男:目指す魚が釣れればね。 葱:「走水」という漁場は釣り人にとってはよっほど良い海域なんでしょうね!)

●秋晴れや駅より天守閣の人=五六二三斎
△君=1点
(五:福山城。)

●海渡る大船小船や秋の潮=君不去
△男=1点

●雁の声かよい路高く朝夕に=ひら百合
△前=1点

●涼しさに目覚める朝の気配かな=男剣士
△澄=1点
(澄:ホントに急に涼しくなりましたね。)

●とろ箱を開けると小波さいらかな=スライトリ・マッド
△砂=1点

●飛蝗飛ぶ着陸地点戸惑ひつ=雪絵
△メ=1点
(葱:バッタ、かわゆいですね。)


【無選】

●赤いカマはやぶさ見送る彼岸花
(喋:カマ=機関車 資:最後の秋,気持ちはわかる。)

●歯に白きホワイトピュアの甘さかな
(葱:「ホワイトピュア」って北海道産の生でも食べられる白いとうもろこしのことなんですね、知らなかったし、食べたことない・・・。)

●笛の音にピエロのごとく月にくるふ
(葱:自分が狂うより、「月に」の「に」を消して「月」を狂わせたら面白かろうにと思いました。)


A部門入選作

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