*A部門入選作発表*

当季雑詠*全46投句(入選37句)

【特選】

一席
●山眠る眠らぬ水を抱きつつ=水音


◎葱、資○二、夏、五、男、小、砂△久、入=20点
(葱:山懐をゆっくりと流れている雪解水をイメージできました。 資:浅間山も噴火したし,決して眠っていない。眠らぬ水はマグマそのもの。 夏:幻想的! 五:技巧的で迷いましたが、結局、採用。類句がありそうです。問題提起の意味もあります。季語と正反対の言い回しにして、何かを語らせる手法は、これまでにもありそうな句。水も付きすぎか? 久:眠る山を一度詠んでみたいですが難しいですね。水=春の命と考えましたがどうでしょう。そういえば笑う山もありますね。 入:豊かさ、何が起こっているかなどと想像します。)


二席
●荒れし手の母が春着のしつけ取る=小夜女


◎香、雪○君△久、百、資、男、砂=13点
(香:絹糸はちょっとの手荒れにもすぐにひっかかるんですよね。お正月の新しいきものと、お母さん《おばあちゃん?》の働き者の手が見えるよう。久:荒れた手に着物で何かホッとするところがあります。 雪:娘に作った着物のしつけを取る、そんな光景を想像しました。 百:親心の切なさ。 葱:モチーフはすごく良いと思うのですが、惜しいかな、「母が」の「が」が気になりました。「手の荒れし母や春着のしつけ取る」でどうでしょうか。)


二席
●墨薄き孫の吉書の牛の貌=砂太


◎メ○香、百、雪△葱、久、水、入=13点
(メ:孫からの年賀状でしょうか。 香:吉書、貌…このようなことばで、まとまりがつくのですね。 百:吉書という言葉が日常にあろうとは・・・。 雪:「吉書」、初めて知りました。 葱:墨が薄いのは墨を摺るのにすぐ飽きたのかな? 牛の顔もなんだか間延びしていそう。 久:実体験なのでしょうか。吉書や貌など俳句を勉強していないと出てこない言葉。薄⇔吉の取り合わせも妙。達人かな?好みで選んでいるので△ですが高得点が期待されます。 水:かわいい牛の絵なんでしょうね。 入:大吉の丑の相が立ち上がってきます。)


【入選】

●雪化粧柩に母の顔施かな=葱男
◎百、五○澄、入△雪、ス=12点
(百:顔施という救いがあったのですね。 五:雪化粧に母上の白いお顔を想像します。命日は雪降る京都だったのでしょうか? 澄:ご冥福をお祈りいたします。 雪:何だかジーンときますね。 ス:やさしいお母様だったのですね。)

●海神(わだつみ)に恋の御籤と的始=夏海
◎二、澄○香△砂、メ=10点
(夏:志賀海神社・歩射祭に。 澄:なんか良いですね。)

●一日に一つの童話春隣=夏海
◎砂○百△水、香、五、喋=9点
(百:一つづつ増えていくのが成長に。 水:親子の暖かい感じがいい。 香:毎晩読んであげたよなー。 五:お孫さんですか?成長の様子が伝わってきます。 入:静かな毎日を感じます。)

●さらさらと雪の音して倦怠期=砂太
◎君○水△葱、五、資、喋=9点
(君:”さらさら”と”倦怠期”が妙にあっていて。 水:ドライに割り切った感じがして、もしかしたら素敵な二人かも。 葱:「さらさらと」が夫婦間のやるせない、わびしい愛の形をよく言い表わしています。 五:倦怠期を表現するには、ややあっさりすぎるか?他の言い方もありそう!)

●臘梅や八十路の箸のすすみおり=香久夜
○小、メ、君△百、雪、入=9点
(百:祖母につながる臘梅です。 メ:いくつになっても食欲があるのはいいことだ。 入:蝋梅の香りまで感じられます。 葱:佳作。「臘梅」が「老廃」と重なり、ちょっとシュールな面白い句。最後は「をり」でしょうね。)

●路地に入るまだ逃がさぬと寒の風=小夜女
◎入○久△夏、男、ス=8点
(入:路地をゆくのも、さりげなく俳味の感じられて。 久:路地と寒と風、追われる夢を見そうです。 夏:風の冷たさ。 ス:ホラー映画みたいで、おもしろい! 葱:佳作。「寒の風」と「の」が入ることでよく擬人化ができていると思いました。)

●水仙は少女の香り玉手箱=五六二三斎
○久、喋、メ△砂=7点
(久:野の花だからかな?昔詰めた香りを久々に嗅いだら加齢の臭いかも。)

●冬ほほづき転校する子おみおくり=葱男
◎ス○二△雪、男=7点
(ス:引越ししたときのことを思い出しました。 雪:「冬ほほづき」に惹かれました! 男:自分も小学校中学校複数替わりましたんで。)

●着ぶくれの肉まん売りの声張りて=雪絵
◎小○男△資=6点
(資:旧正月の横浜中華街,肉まんが着ぶくれのイメージを醸し出す。 男:こんなの好き。寒さの中で生きている。)

●毛糸編む赤子の背幅倍ほどに=香久夜
○水、雪△喋=5点
(水:成長の早さに驚きますよね。 雪:お孫さんの成長を願って、でしょうか?)

●ちぐはぐな父との会話ちやんちやんこ=雪絵
○資、砂△水=5点
(資:そういう世代だと思うが,この句は明るさが漂う。 水:まっ いいかぁの感じが「ちゃんちゃんこ」から滲みでてる。 葱:佳作。「ち」の音が韻を踏んで、軽快でユーモラスな句になりました。)

●真っ暗な家に帰省す冬銀河=資料官
○夏△澄、小、君=5点
(夏:あるべき人の不在が寒さと共に身に沁みます。 入:帰省が夏の季語?だから惜しいです。)

●松過ぎや深酒諌められもして=砂太
○入、ス△五=5点
(入:頃合とか程よさのある句ということに、思いが至ります。 ス:そうですよ!あんまり飲みすぎないでくださいね。 五:砂太先生、お元気で何よりですね。これは、作者がわかりました。)

●息白しゴジラも歳をとりました=葱男
◎水△夏=4点
(水:ゴジラが吐くのは炎でも気炎でもなく、白い息になったのかぁ ゆるい感じが好き。 夏:吾が身になぞらえて肯きました。)

●ツクツクと樹氷の刻む空のあり=入鈴
◎喋△葱=4点
(葱:オノマトペの成功例ですね! 喋九厘さん、負けるな!)

●ロープウェイ先は霧氷の花の森=夏海
○澄、五=4点
(澄:私も乗ってみたい! 五:別府の鶴見岳?雲仙岳?私は前者かなと思いました。風景句としてはよく練られてます。)

●老いし身を三寒四温追いしけり=メゴチ
◎久=3点
(久:最近、寒いならずっと寒いほうが、暑いならまたそうであるほうがいいと思うようになりました。歳のせいなのでしょうか。)

●街道の始まる處うすら雪=五六二三斎
○ス△香=3点
(ス:薄雪、街道の言葉が効いていて、さびしげだけど美しい光景が目に浮かびました。)

●とんととと雪音んとんかぶく闇=ひら百合
○喋△メ=3点
(メ:なんか楽しい句なので。 葱:「雪音んとん:ユキオトントン」がちと苦しい。)

●初釜の棗光りて足袋白し=久郎兎
◎男=3点
(男:おろしたての足袋はいて…その気持ちが伝わります。)

●分校のリンクみしみし冱て始む=スライトリ・マッド
◎夏=3点
(夏:保護者手作りのスケートリンクかな?子供達は幸せ!)

●寒蜆ほっと温もる釣りのあと=メゴチ
△夏、君=2点
(夏:本当にホッとします。)

●角筈の角のみせ屋に去年今年=入鈴
○葱=2点
(葱:「角筈」の地名がよく効いています。江戸の粋を感じる句。)

●冬靄にすれ違いざまアルトのおー=入鈴
○葱=2点
(葱:知り合いに出くわしたのでしょうか?約束はしていたのかも、でも靄から急にびぃーっくり!)

●万両をルビーたわわと夢見たり=メゴチ
○資=2点
(資:覚めないでほしい夢ですね。冬ざれた庭の万両はルビーのようなものかもしれませんね。)

●サーファーとトンビ群れたり冬うらら=小夜女
△百=1点
(百:そんな冬もあるんですね。 葱:暖かい冬の日の浜の風景、ほっこりしますね。 入:子育て中九十九里や稲毛浜で、寒風の中彼らを見ていると、何故か腹がたってきたものです。)

●水仙を活けて母の帰宅待つ=資料官
△小=1点
(葱:中七が六音のような?「母」にオモニかマンマのような3音があればいいのにと思いました。)

●大寒や梅が枝にもホコホッコリ=喋九厘
△澄=1点
(澄:目に浮かびます。)

●地下鉄に振り返る人振り袖女=ひら百合
△小=1点

●闘牛のぜんといち決む三日かな=スライトリ・マッド
△香=1点
(葱:「ぜんといち:全島一」って意味でしょうか?)

●初夢や見た夢忘る富士の山=喋九厘
△澄=1点
(澄:初夢に富士の山をみたのですね? 葱:美しい冠雪の富士だったんでしょうね、こいつぁ〜は春から縁起がいい〜。 入:夢のような風景の力ってありますでしょう。)

●日脚伸ぶ病室の窓電車来る=五六二三斎
△ス=1点
(ス:入院されている方にとって、電車や太陽は希望の象徴なのでしょうね。)

●山師植う苗の千年初がすみ=スライトリ・マッド
△メ=1点
(葱:初春にふさわしい佳句ですね、美しい! 入:今の地球に優しく響いてくるのですが、山師?って使わないと思う。「木を植える人」でよいような。)

●夜通しのマイコプラズマ咳ふたり=ひら百合
△君=1点
(君:お大事に。)


【無選】

●青空に天の橋立雪景色
(葱:凛として気持ちの良い景色! 資:まだふみも見ず,行ってみたい)

●通路まであふるるチョコや春隣
(葱:佳作。あの、チョコの山を見ると、自分までワクワクしてきますね!今年はいくつゲットできるか、なんちゃって。)


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