*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選40句)

【特選】

一席
●没年は十二とありし赤のまま=雪絵


◎夏、香○葱、五、ス△入、君=14点
(夏:わずか12年の儚い生涯だと思うと胸が詰ります。「赤のまま」で切なさが一入。 葱:幼くして散った命、事情は分かりませんが「赤のまま」が「赤子=幼子」のイメージを呼び起こして切々。 五:俳句の持つ霊感が伝わってきた。地蔵盆と同じ作者なら納得。 ス:赤のままが効いていますね。)


二席
●初秋の山は幾重に子守唄=五六二三斎


◎葱、資○メ、前△砂、入、ス=13点
(葱:「子守唄」が抜群! 日本の風景と日本人の心を一言であますところなく伝えています。 これが「初冬の山は幾重に子守唄」なら史上に残る名句になるかもしれませんよ! さて、俳句史に残すとすれば「初秋」か「初冬」かどちらか? ス:山と子守唄が合いますねえ。どこの子守唄でしょうか?)


三席
●転校も風船葛のやうなもの=夏海


◎水、百○入△久、五=10点
(水:風船葛は軽くて、頼りなさそうなのに、しっかりとぶら下がっていて、猿顔の種が出てくるっていうのは、心ぼそくて、でもどこかワクワクする転校に通じるのでしょう。 百:個人的な思い出.転校が多かったもので。 久:意味がもう一つ分かりませんが、転校経験者? 五:昔、転校で受けた心の傷がわかる気がした。)


三席
●溝蕎麦やもともと小さき庵主様=葱男


○夏、水、雪、資、喋=10点
(夏:お年を召して益々ちんまりと、品の良い庵主様の姿が見えるようです。 水:溝蕎麦の花は小さくて地味だけど、その生命力はすごい。ますます小さくなったとは言え庵主様とはそういう人なのでしょうね。 雪:「もともと小さき」がいいですね。)


【入選】

●カナカナのどちらをとろう林途(みち)=入鈴
○久、君、喋、ス△砂=9点
(久:右かな?左かな?林の中でたまに迷いますね。カナカナと笑われているようでもあります。 ス:かなかなも考えるのかな?!)

●魂迎えけり先生のトラクター=五六二三斎
◎入、ス△葱、夏=8点
(ス:恩師が亡くなられ使われてたトラクターがあったのだろうか等想像しました。 葱:故人の使っていたトラクター、こ「稲刈り」の季節を前にして、今は乗る人もなく倉庫にひっそりと収まっているのでしょう。「迎えけり」は「迎へけり」がいいかも。)

●地蔵盆あの子この子も来ているか=葱男
◎五○君△入、喋=7点
(五:亡くなった子供達のことを言ってるのでしょうか?俳味の霊感を感じました。)

●誇らしく花火持つ手のちさきかな=小夜女
◎メ、前△百=7点
(メ:怖さを乗り越えた君はえらい。 百:そういう時もあった。)

●暗箱(あんばこ)カメラの逆立ちの秋山河=夏海 
○葱、久△水、雪=6点
(葱:思いきって七、五、五のリズムをとったのが良かったと思います。「逆立ちす暗箱カメラの秋山河」と比較してみて下さい。 久:上高地を思い浮かべました。地方自治60周年記念長野県千円硬貨のデザインはなかなかのものです。買わないけど。 水:きっと面白い色の面白い風景。もう少し語順や調子が整っていれば良い?これはこれで良いのかな? 雪:こういう時代もあったんですね。)

●無花果と白黒シネマ終わりまで=香久夜
◎雪、喋=6点
(雪:昭和を見ているみたい。無花果と白黒がぴったり。 葱:ドライフルーツの、所謂「カウチ・イチヂク」ですか? 面白い!)

●蝉時雨呑み込む苦言老ゆる母=ひら百合
○メ△喋、香、前=5点
(メ:体も声もだんだん弱ってきます。)

●手探りでたぐる布団や終わる夏=前鰤
◎君△久、メ=5点
(君:実感!がとても上手に切り取られていて。 久:よく分かりますが、手探りと手繰る、重なっているのが良いのか悪いのか、でも実感。 メ:めっきり冷えてきたからね。 葱:実感のある良い句ですね。)

●語り部の天使の詩や原爆忌=メゴチ
◎砂△雪=4点

●かなかなや阿蘇の夕日を急き立てり=雪絵
○五△メ、資=4点
(五:阿蘇のかなかなを聞いたことがあるので、ついつい。乗せられる句がいいのでしょう。)

●きつねのかみそりお世辞を言わぬセールスマン=スライトリ・マッド
○夏△香、百=4点
(夏:セールスマンを俳句に詠むとは独創的!! 百:なぜかひっかかる句。)

●船繋ぐ風の岸辺や秋深し=砂太
◎久△夏=4点
(久:何故だか心安らぎます。自らが求めている風景かもしれません。 )

●盆綱曳き真つ黒子鬼の目と口と=夏海
○砂△水、雪=4点
(夏:久富盆綱曳き、筑後市。 水:目と口が白い様が滑稽ですね。 雪:目と口以外は、ほんとに真っ黒なんですよね〜。)

●アマポーラ母へみやげのペンダント=資料官
○香△前=3点
(資:amapola:ヒナゲシ。 葱:「アマポーラ」は「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」の美しい挿入歌でもありましたね。曲は私の大好きなエンニオ・モリコーネです。「アマポーラ」が「ひなげし」とは認識していませんでした。夏のイタリアにもいたるところに咲いていてとても印象的でしたが、スペインにもたくさん咲いているのですね! 「一瞬を点描するや芥子の花 葱」。)

●絵の売れし日のかなかなや筑紫野や=入鈴
○砂△葱=3点
(葱:「や」を二回続けたところがこの句の眼目ですね。)

●音つむぐ器とならん青瓢箪=水音
○香△五=3点
(五:整った句ですね。漢字とかなのバランスもよい。意味はよく判りかねるが。)

●自転車に長手袋の日の盛り=ひら百合
○前△久=3点
(久:この夏よく見ました。みなさん腕のシミ増えましたか?)

●蝉丸を抜けて湖国は風白し=久郎兎
△夏、資、ス=3点
(香:逢坂の関ですか、蝉丸で4文字に? ス:よくわかんないまま採ってしまいました。)

●爪紅や忘れられない顔一つ=砂太
○水△百=3点
(水:花びらを揉んで爪を染めてくれた当時の母を思い出します。 百:思い出す顔というのがあるものですよね。)

●夏の果て病室の壁杖二つ=ひら百合
△君、五、前=3点
(五:お涙頂戴句ではあるが、採用。)

●ヒロインの芝居今朝から法師蝉=五六二三斎
○雪△砂=3点
(雪:何気ない日常に小さな発見!昨日と違う蝉の声。)

●二拍子のマーチ哀しき法師蝉=君不去
○資=2点

●ハーレーで風切る女人終戦忌=スライトリ・マッド
△水、君=2点
(水:戦後強くなったのは、、って。)

●人見知り子らを集めしお盆玉=香久夜
○百=2点
(百:人見知りだったもので。)

●盆棚の茄子帰途せかす走馬灯=久郎兎
○百=2点
(百:盆も終わるとまたさみしいものです。)

●老兵の絞り出す言(こと)終戦日=君不去
○入=2点

●海と秋とけあふほうへ漁火は=水音
△喋=1点
(葱:好きな句なんですけど、上五にもう一工夫、欲しかったなあ、惜しい!!)

●帰省して作る食事の二人分=小夜女
△ス=1点
(ス:ご自分と母(父)上の分用でしょうか? 葱:御両親は介護施設なのでしょう。寂しさ切なさがジンと伝わって来ます。)

●草刈られ草撫づ八月十五日=葱男
△資=1点

●竈の月焼野が原の虫の声=久郎兎
△メ=1点
(メ:自然のたくましさを感じます。)

●南京も西瓜も小さくなりにけり=君不去
△葱=1点
(葱:「南」と「西」をうまく揃えました。世相諷刺も効いています。)

●米寿の母や元気に小豆研ぐ=メゴチ
△香=1点
(香:お元気でおめでとうごさいます。ご自分でお赤飯を炊かれているのですね。)


【無選】

●秋めくや球磨の流れに汽笛ポー
(葱:「ポー」が良いなあ〜、詩情が溢れますねえ〜。)

●日暮やゴリラのこじん主義終わる
(葱:すごく面白くて興味をそそられるのですが、意味がもう少しはっきりとしません。 それはそれでいいのかもしれませんが。 動物園のゴリラが高齢で亡くなったとか、そういう事ではないですよね?)

●緋のカンナどっしり咲けし火災後
(葱:「咲けし」はおそらく文法的に無理なんじゃないか? 「咲けり」「咲くや」で良かったのでは・・・、良い句だけに惜しい!


A部門入選作

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