*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選36句)

【特選】

一席
●線香花火一幕三場閉ぢて闇=夏海


◎水、ス、雪、香○喋△久、資、入、小=18点
(水:一幕三場とは上手く表現したものですね。 ス:どんなお芝居なのでしょうね?! 雪:線香花火の火花はドラマ仕立てだったんですね! 葱:詠んで調子の良い句になりましたね、小澤昭一的世界。)


二席
●駄菓子屋の天井低し花石榴=雪絵


◎前、二○葱、百、資△水、砂、香=15点
(葱:「天井」に着目したところにオリジナリティがあります。 百: 石榴の花の朱が鮮やか。 水:映画に出てきそうな光景。)


三席
●短か夜や君逝きてなほ近くなる=砂太


◎夏、資○水、入△五=11点
(夏:「なほ近くなる」の哀切さ! 水:このような句に点数をつけるのにちょっと抵抗がありました。けどいい句だと思ったので。 五:今回は、楠喜博先生追悼句会です。私の無法投句の小文は、楠先生にお送りしてました。楠先生から、達筆のお礼状を頂きました。楠先生は丘ふみ句会を知る筑紫丘高校元教諭のお一人であったことをご承知おき下さい。砂太先生、沢山、楠先生思い出句を有難うございました。 葱:ここまで情に流れてもこの一句は「俳句」として立っているのか、それとも「短歌」的だと看做されてしまうのか? う〜〜ん、それが疑問だ!)


【入選】

●ことごとく古き鞄に古扇子=水音
◎メ○久、小△夏、香、君=10点
(メ:かあさん僕のあの古扇子どこに行ったんでしょう? 夏:懐かし〜い感じに一票。)

●夕涼や尾曲り猫の港町=夏海
○水、資、前△喋、君、二=9点
(水:尾曲りは西日本に、まっすぐなのは東日本に多いそうですよ。 君:ひとりだとつい!わかる・・。 入:尾曲りも二股しっぽも港町によく似合う。)

●夕蛍闇増やしつつ舞ひにけり=雪絵
◎葱○二△五、ス、前=9点
(葱:眼目は夕蛍が闇蛍になるまで「闇を増やして」ゆく時間の経過にあり。 五:夕蛍が闇を増やす。何とも情緒ある表現です。 ス:きれいな情景が浮かびました。)

●白蓮の紅入れし貝夏の萩=スライトリ・マッド
◎砂、喋△澄、雪=8点
(葱:「白蓮展」、京都高島屋で観て来ました。う〜〜ん、決まり過ぎててちょっと恥ずかしくなってしまいました。)

●薄衣なびかせ僧のスクーター=スライトリ・マッド
○二△夏、水、香、前、小=7点
(夏:お盆が近くなるとよく見かけますね。九州はもう少し先ですが。 水:金沢のお盆は7月ですから、そろそろですよ こういう風景。 葱:京都でもよく見る風景です。「仏教」にスクーターの似合わないこと〈笑〉。)

●笹舟に願い乗りたる蟻の客=久郎兎
◎五、君△澄=7点
(五:笹舟に願いを込めた小さな蟻の客。これには、人間も小さな希望を持つことという教えが含まれているように感じました。 君:どちらが願ったのかな?小景を切り取る温かな作者の目を感じます。 入:笹舟に願い?蟻のお客?二分されるのが惜しい。)

●紫陽花の小路かすめて車椅子=資料官
○久、澄△雪、入=6点
(雪:車椅子が効いています。 入:椅子の目線の高さで大輪の紫陽花を見つめることもできる。)

●白絣岩波文庫生一本=葱男
◎入○夏△ス=6点
(入:もうかっこいー!!岩波文庫頑張れ。 夏:納得の取り合わせ。 ス:昔の風情が漂って来ていい感じ。)

●刃物屋の土蔵造りの涼気かな=雪絵
○五△百、夏、久、二=6点
(五:刃物屋には、冷たい涼気が漂いますね。 百:ありそうだけど、刃物屋というのがありきたりでなくいい。 夏:土蔵のヒンヤリ感が伝わってきました。 葱:冷たいものが「刃物」「土蔵」「涼気」と揃い過ぎの感あり。)

●紅ひきし手にほの甘く枇杷香る=小夜女
○砂、メ、前=6点
(葱:なんだか色香の漂う句ですね。)

●蛍の夜君への弔詞もう書けぬ=砂太
○五、ス△葱、百=6点
(五:作者がどなたかはわかります。お通夜で一緒になりましたから。インター杯の時の私の母の危篤に際し、帰るように諭して下さった楠先生、そして、私を大阪駅まで送って下さった砂太先生。あの思い出を語ることが出来る先生一人を失いました。合掌、楠喜博先生。 ス:かなしみをそのまま表されているところに心打たれました。 葱:「俳趣」に対して「絶唱」は俳句のもう一方の振り幅だと思います。 百:蛍は君なのかも。)

●病みこもる娘愛しやかたつむり=小夜女
◎久○君△砂=6点
(久:永遠じゃないという詠み手の気持ちが伝わってきます。 入:シリアスな内容だが、仕事歌のような素朴さもあり不思議な魅力。)

●足もとの闇深くして平家蛍=水音
◎澄○メ=5点

●風死せりキネマ館あと駐車場=葱男
○百、雪△水=5点
(百:淋しいですね。 雪:昭和がまたひとつ消えてゆく寂しさ。)

●先生の居ない今夜の月見草=五六二三斎
○ス、君△資=5点
(ス:今回、先生へのお弔い句を2つ採りました。これは生徒からですね。 葱:月見草と言えば「太宰」を思いますが、もっと単純に「月見酒」のことも思います。俳句の先生が横にいれば楽しかろうに、まあ、ひとりで俳境を彷徨いながら酒でも呑もうか、という感じかな?)

●ひとり知る夜汽車の孤独蛾の灯り=久郎兎
○喋△百、メ、小=5点
(百:「ひとり知る」という言い切りが独断的で。 葱:モチーフに大変惹かれるものがありました。ただ「蛾の灯り」は「灯蛾」あるいは「火蛾」で詠んでほしかった気がします、趣味の問題ですが。)

●まな板のトマト頬ばる独り朝=ひら百合
◎小△君、入=5点

●事なきを得てほどほどのサングラス=入鈴
○夏、小=4点
(夏:”アラ・カン(還暦)”世代は「一病息災」のほどほどさを実感してます 。)

●師の叱咤梅雨どしゃぶりのハイジャンプ=五六二三斎
○香△砂、二=4点
(五:弔句−楠喜博先生へ。 香:厳しい練習を強いてくださった先生は有難いですね。 葱:状況を聞かせて頂いたので、客観的判断ができませんが、俳句は挨拶句、そういう意味では大変に意味のある句には違いありません。)

●日取虫ひとり迷ふて傘の内=君不去
○砂、入=4点
(入:これからは傘をさせば、口にふっとのぼりそう。)

●ブロンズの背中まろめり桜桃忌=スライトリ・マッド
○雪△葱、五=4点
(雪:銅像はどこにあるんでしょうか。今なお変わらぬ人気ですね。 葱:「ブロンズの背中」がインスピレーションですね! 五:太宰治のどんな像が残っているのか?よく知りません。「背中まろめり」が太宰らしいのかと思いました。「三つ峠背中丸めて桜桃忌 五六二三斎」。 井伏鱒二と登った三つ峠。登山靴姿のスマートな井伏とは違い〈体型はわかりませんが〉、太宰は着物姿の不恰好で登ったようです。)

●足の爪切る夏至の日の強さかな=入鈴
◎百=3点
(百:足の爪が気になります。)

●旅役者雨に重たきテントかな=葱男
○香△久=3点
(香:紅テントかな?)

●バリトンや畦劇場の牛蛙=前鰤
△澄、メ、喋=3点
(メ:最近聞く機会がないなあ。)

●ゆふぐれの百合より白しわが恋は=水音
○澄△喋=3点

●白南風や真珠の眠る惑星(ほし)一つ=夏海
○葱=2点
(葱:志摩の真珠がどうやら危機に瀕しているとか。対策としては同時に「海ぶどう」を養殖することだとも。これは遠回しに表現しているけれど、水の惑星=地球の海の危機を詠んだ句だと思います。美しい! 入:きれい。迷いました。)

●悪しき夢流して名越のひとがたや=メゴチ
△資=1点

●荒梅雨にソプラノ歌手のゐる救ひ=五六二三斎
△ス=1点
(ス:雨の日の鬱陶しさも美しいアリアで心洗われそう。)

●池囲む傘賑やかに花菖蒲=小夜女
△メ=1点
(メ:やっぱり傘が似合う。葱:この傘は雨傘もあり日傘もあり、でしょうか。「池囲む」に穏やかさがあります。雨が止んで陽射しが差し込み、雨傘を日よけに代用して花菖蒲を愉しんでいる風情を想像しました。)

●一点に立つ糸とんぼおっとっと=君不去
△葱=1点
(葱:実感句ですね、「おっとっと」が面白い!)

●代掻きの土くすぐるや阿志岐の子=喋九厘
△雪=1点
(雪:かなりローカルな地名!でも知ってます。子供らの笑い声が聞こえそう。)

●短夜に網戸の向こう眠りよぶ=香久夜
△前=1点

●由布岳のそっとかほ出す梅雨晴間=資料官
△二=1点


【無選】

●梅雨入りも祠のムササビつゆ知らず
(入:面白い童話になりそう。)

●車内での一人の時間額の花
(葱:取り合わせの「額の花」がポツネンとしていていいですね。)


A部門入選作

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