*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選42句)

【特選】

一席
●寒月の砕け散る夜獏がくる=水音


◎白、資、君○男、ス△久、澄=15点
(白:シャガール風なあるいはダリ風のキャンバスをイメージ〈それとも単に夢も見ずに良く眠れたという句…?〉。東京から帰る機内で無限と数学的帰納法の節を読みながら転寝し、無限のドアが連なる夢を見た。夢と現実の交差する境はマンデルブロ集合の狭間のよう。 君:不思議で魅力的な世界! ス:なんだかシュールですね。 久:冬の月は砕け散りそうな感じがしますね。)


二席
●寒菊に寒菊そへて父の墓=資料官


◎二、澄○夏、喋、小△百=13点
(夏:寒菊に託した悲しみが伝わってきました。 百:前に誰かもうお花あげてたのでしょう.同じ経験しましたから。 小:納骨堂が主流の中、羨ましくもあります。 葱:選には洩れましたが佳句だと思います。どなたかがつい最近、同じ墓をお参りされたのでしょう。)


三席
●掻き集む目鼻や街の雪だるま=久郎兎


◎夏、香○葱、雪、水=12点
(夏:街路樹の植え込み辺りに大人が作った雪ダルマだろうか。目鼻は空き缶とかペットボトル?  香:何を使ったのかな?炭や木切れはなかなかないですよね。 葱:「街の」がやや漠然とした感はありますが、きっと、自然の少ない街の子供は雪だるまの目鼻に使う枝や実を見つけるのが大変なのでしょう。ましてや「炭」は、今や高価すぎて遊びの材料には勿体無くて使えませんね!この句はB部門の「エコ」にも使えますね。 雪:この冬は福岡にも積雪。でもはかなく一日で消えました。 水:街ではのっぺらぼうの雪だるまになりかねませんね。)


【入選】

●鮟鱇や終を襤褸(らんる)と捌かるる=砂太
◎男○二△雪、香、白、君=9点
(雪:無残な姿でしょうね!想像しただけでぎょっとします。 香:「らんる」なんて言葉、知りませんでした。 久:襤褸、初めて知りました。国語辞典にもあり。 白:違う、違う…これではせっかくの中七が…。「捌かるる」ではただのスケッチ…。日常の中の非日常が見えてこない…。哲学が…。もどかしい…。)

●待春や梅ケ枝餅の焼くるまで=葱男
◎砂○メ△男、二、白、ス=9点
(白:平凡な日常に感じる気配を編み針で編んだような句ですね。本当はこういう感覚はあまり好きではないんですが、ここ数日の寒波で体が温もりを求めていたのかも…。 ス:食べたくなりました、梅ヶ枝餠。)

●着膨れの昭和の写真や動かざる=君不去
○百、資、小△久、メ=8点
(百:エコの方にもいける。 久:確かに生きたという証拠を見ているようでいいです。 葱:「や」が少し強い感じがしました。下五に一考ありか。)

●早梅へ児をさし揚げて撮る写真=夏海
◎五、雪△葱、砂=8点
(五:冬日向の躍動感が伝わってきます。俳句に動きがあるのが素晴らしい。 雪:お孫さんですか?自然な光景だけど、うまく捉えた感じです。 葱:高い、高い〜、で赤ちゃんニコニコ。 入:エネルギーいっぱいでB部門にしたらよかったのに!)

●曾孫より先に歩くぞ水仙花=香久夜
◎喋○五△入、メ、ス=8点
(五:曾孫が居られるのは、一人だけでは?と思います。少し早いか?フィクションだとしても、その気持ちが大切。 葱:季語の斡旋がどうなんでしょう? ス:ほのぼのした感じが出てていいですね。)

●牡蠣舟のありしあたりの重機かな=水音
○入、久△百、男、香=7点
(入:B部門でも充分点盛。蛎は水の清さのバロメーターだと思う。 久:残り香を感じさせます。 百:重機とどう関係するのかわからないけど 。)

●除雪車の夜明をつげて猫寝入り=入鈴
◎ス○資△夏、喋=7点
(ス:北国の風景ですね。)

●冬ざれに齢足るやう過ぎぬやう=久郎兎
◎入、メ△水=7点
(水:どういう意味なのか良く分からないのだけれど、、、)

●キリストの胸とぞ湯婆くるみけり=夏海
○砂、雪、白=6点
(雪:なるほど!言われてみれば・・・。 白:ピエタのごとく慈(自)愛に満ちた就眠儀式。何でこの句を選んだのだろう? きっと慈悲心からか…。 入:ヨーロッパの教会の磔刑像がすぐに思い浮かびます。)

●粉雪や猫毛氈に着地せり=葱男
◎小△砂、五、ス=6点
(小:迷いもなく◎でした。 五:猫毛氈と詠んだところが良い。 ス:情景が眼に浮かびます。)

●玩具のごと一両電車冬田行く=雪絵
◎百○喋=5点
(百:サブリミナル効果。 入:青森ではよく見る光景ですが、なかなかこうも上手く作句できません。)

●獣角のボタン大ぶり山眠る=夏海
◎水△葱、雪=5点
(水:「獣角のボタン」に目をつけたところがすごい。冬の山の冷たい硬質な感じと響きあってますね。 葱:大きなポエムが眠っていそう。 雪:そんなボタンがあるんですね。山眠るがいい。)

●春隣明日はあかるいふみ書こう=砂太
△水、白、資、喋、小=5点
(水:底を抜けたのですね。よかった。 白:句の良し悪しよりも、生きる姿勢がいいですね。 小:メールですか? 葱:「明日は〜」ということは今日は暗い手紙を書かなくてはならなかった、ということ。おそらく作者は、知人の訃報かなにか辛い報告を、誰か他の友人にしたのでしょう。一見、能天気に見える句ですが、裏に深い哀しみを秘めています。)

●マジャールの旋律に沿ひ雪半夜=白髪鴨
◎葱○ス=5点
(葱:マジャール人の音楽がどういうものかは良くわかりませんが、はるか昔に東洋から流れて来た遊牧民の姿を想像すると、「雪半夜」というイメージが幽然と沸き上がってきます。 ス:ハンガリーのですね?!)

●梅一輪萬の蕾の中にして=砂太
○メ△百、夏=4点
(百: 湯島天神か。 入:白梅を思い描きました。)

●写メール来鼻の罰点雪うさぎ=雪絵
○葱△入、二=4点
(葱:お孫さん?が作った雪兎かな? 苦労兎さんかもね! 入:ブルーナさんのみっフィーでしょ?)

●淑気満つ熊襲の絵文字動きけり=スライトリ・マッド
○白△葱、五=4点
(白:熊襲に絵文字あったとは知らなかった…。原始種族のパワーが時空を超えて伝わり、同時に歴史を歪ませていく。 葱:雄大な景ですね、太古の淑気か。 五:熊襲の絵文字に興味が持たれたこともさることながら、それが動くとは不思議な感じです。これは、フィクションではない実景句?そうだとしたら、実景句に学べということか?)

●新雪の調べに聞き入る脊振かな=男剣士
○夏、君=4点
(夏:「新雪の調べ」がいいなあ。 葱:「に」がやや口語的、ですが気持ち良い句。)

●新年の駅長拝命猫の夢=喋九厘
○入、香=4点
(入:ヤッター!お目出度い限りです。 香:駅長に昇格しましたね。貫禄でてきたような。 葱:拝命? 拝名???)

●屋台匂ふラーメンほどの小正月=白髪鴨
◎久△砂=4点
(久:小正月の存在の例えが絶妙、家の中のもので終わらないのがにくいね。)

●雪国と見まがう脊振しずかなり=男剣士
○五△水、小=4点
(五:背振山1055m。福岡近辺では最高峰。しかし、冬は雪に覆われて、まるで雪国の山の如し。 水:雪が深いことは殆ど無いのでしょうが、だからこそ余計静けさを感じるのでしょうね。 葱:文語だと「見まがふ」「しづか」になります。)

●凍てる道白き世界にナナカマド=喋九厘
○澄△メ=3点

●お見舞のみかんの生まれ紀州げな=五六二三斎
○久△水=3点
(久:げな」は方言?九州産でもいいのにわざわざ箱入り和歌山産のを、という思いかな? 水:「げな」でいただきました。)

●ドゥルーズは白く語りぬ春を待つ=白髪鴨
○二△資=3点
(葱:ガタリの言語論が理解できていないので、鑑賞力がありません、申し訳ありません。)

●托鉢の草鞋の爪先寒牡丹=水音
○香△二=3点
(葱:季語は動かないかなあ?)

●仲見世に新年祝うや江戸玩具=君不去
○男△小=3点
(葱:情景は正月らしくてとても良いと思います。中七はあっさり、「新年祝ふ」でいいのでは? )

●初ぴあの耳をすませばインコの目=入鈴
○砂△君=3点

●冬とんび館山湾の大き弧や=君不去
△入、二、香=3点

●筑波嶺のトトロの耳や冬うらら=入鈴
△二、久=2点
(久:大平野の中のふたこぶの山。大きく見えたんでしょう。)

●花ばなにこぼれるほどの雪かむる=香久夜
○澄=2点
(葱:助詞「に」の使い方がどうなんでしょう?)

●実万両ベッドの母から教へられ=資料官
○君=2点
(葱:「母に」ではどうでしょうか?)

●もひとつの遺影ほろほろ逝く蝋梅=ひら百合
△澄、君=2点

●雪鳥の生き物として生きにくし=葱男
○百=2点
(百:ほんと寒いときに外にいる動物大変だ。)

●赤信号僅かに紅き星凍る=香久夜
△喋=1点

●温暖化三寒四温も混然と=メゴチ
△澄=1点

●句評終え果して苦笑の雪の朝=久郎兎
△男=1点

●去年今年湯守勤めて半世紀=スライトリ・マッド
△夏=1点

●何処となく友の面影寒戻る=五六二三斎
△資=1点
(資:守夫君のことを思い出した。)

●亡き父のこと書き添へて寒見舞い=資料官
△雪=1点
(雪:このような寒見舞いをもらったことがあります。 葱:今年は私も喪中で、つい最近、寒中見舞いの葉書を出したところです。)

●雪折れに頭抱えし縦走路=男剣士
△五=1点
(五:今回は山の句を2句頂きました。この句も情景がよくわかる。)


【無選】

●四五輪の飛梅咲きて東風薫る
(葱:砂太先生の句「梅一輪萬(まん)の蕾の中にして」と比較すると面白いですね。太宰府にももうすぐ春が来ます!)


A部門入選作

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