*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選43句)

【特選】

一席
●曼珠沙華ほきほきと折る少年期=砂太


◎入、水、ス○君、香△五=14点
(水:ほきほきがいい。 ス:ほきほきとがいい!でも折らないでね。 五:この詠み手は水音さんか?少年が曼珠沙華をほきほき折ってる様?エキセントリッ句です。 葱:「ほきほき」のオノマトペはグ−!)


二席
●木犀の香にくるまれて乳母車=夏海


○五、二、砂、メ△小、雪、前、ス=12点
(五:乳母車がベストか?迷います。キャリーカーなんかいかが?出来れば濁音なしがいいと思いました。ただ、傑作ではあります。 ス:幸せな赤ちゃんですね?!)


三席
●日の色を微分しながら山粧う=白髪鴨


◎メ、香△雪、久、夏、喋、ス=11点
(雪:おもしろい!微分積分、すっかり忘れましたが。 夏:「微分」なんですねぇ・・・。 ス:数学の微分積分は苦手ですが、こうやって使うと乙なもんですね。)


【入選】

●長き夜に星を繋ぎぬ道すがら=久郎兎
◎二、秋○入△メ、白=10点
(白:星座は、無-意味を象徴している。形のないものに形をつけるのは人間の性なのだろう。)

●四方山に七輪けぶる芋煮会=葱男
◎前○五、秋△砂、久=9点
(五:砂太先生句でしょう。句友と鍋を楽しまれてる実景句か?四方山はよもやま話なのか?それとも四方の山なのか?私は後者と解釈しました。)

●オリオンを見上げて一夜の城やよし=男剣士
◎澄○久、夏△前=8点
(夏:オリオンの雄々しさと「城」が響き合ってます。)

●柿紅葉窓に貼り付く茜色=メゴチ
○小、資△久、白、喋、秋=8点
(白:秋の色彩をうまく取り入れている点で選。ただそれ以上のものもそれ以下のものもないのが残念。 )

●交差する脚くっきりと田鶴渡る=入鈴
◎雪、砂○久=8点
(雪:一度は鳥の渡りを見てみたいです。鶴ともなれば壮大でしょうね!)

●一人づつ鯊釣る黙のありにけり=雪絵
◎夏○砂△入、二、君=8点
(夏:黙々と釣りをしている人達の、無言のオーラを感じます。 葱:なかなかの「黙」です。)

●栗落ちてびっくり箱のカフェ現る=君不去
◎白○喋、ス△入=8点
(白:どうということもない句の中におもしろい跳躍を感じる。びっくり箱のカフェが効いている。ただの玩具のメタファーなのか、それともホンモノのカフェなのか…。 ス:おもしろい。 )

●おかあさんとてもきれいねのちのつき=スライトリ・マッド
◎葱、五△水=7点
(葱:「のちの〜」がとても効いています。これが「月今宵」とか「望の月」ならただ平凡な句になったでしょう。「後の〜」のイメージは、ここには存在せず、すでに亡くなった母の幻影を呼び起こして哀感が極まります。ひらがな表記も儚くて、こわれやすい。 五:素直な詠みですが、ポエジーあり。やはり、句には盛り込み過ぎずに詠むことが肝要ですね。シンプルな句。おかあさんはもうこの世には居られない気がします。 水:ひらがな書きはあまり好きじゃないけど、この句は優しい雰囲気がいいですね。)

●町外れ香りかき寄せ野菊抱く=君不去
◎資○澄、前=7点

●隠れキリシタン金木犀香る=五六二三斎
○水、ス△二、夏=6点
(水:破調が内容とマッチしてるようです。 ス:句またがりですが、いいですね。 葱:おもしろい17音です。最後の「香る」がもっと鮮烈な3文字に変われば天位です。)

●ママチャリの縦列駐車草の花=雪絵
○葱、香△小、資=6点
(葱:「ママチャリ」で俗に堕さないのは「草の花」のおかげですね、季語はやはり、素晴らしい! 資:気ままな駐輪,カラフルな自転車。)

●流星や羽二枚舞ふ招待状=雪絵
○葱、二、夏=6点
(葱:結婚式の招待状でしょうか? 夏:結婚の招待状でしょうね。二人に素敵な未来がありますように!)

●錦秋や記憶容量いっぱいに=水音
○白、秋△夏=5点
(白:色彩は物自体の属性ではなく、人間の感覚に存するものだという。あらゆる色彩を感じる人間の感覚があるなら記憶容量もあるいは無限であるのかもしれない。  夏:物理的な記憶容量というよりも、ハートの容量のことかな? 葱:圧倒的な量の紅葉です。)

●子の拾ふ松ぼっくりと言ふ秋を=砂太
○喋△小、入、ス=5点
(ス:今でもきれいな松ぼっくり見ると拾いたくなります。)

●秋懐にカサリと泣きぬ油紙=葱男
◎喋△君、秋=5点

●すすき野や風に惑いて西東=秋波
○メ、前△澄=5点

●秋時雨足奪われて厨ごと=香久夜
◎久△水=4点
(久:歳をとると雨で意志薄弱になり予定をやめるのが多くなりました。 水:そういうことってありますね。)

●秋の雨ひと雨ごとの鬱模様=メゴチ
○資△砂、白=4点
(資:人生の秋をひしひし感じる。 白:やや少女趣味的な感傷だが、雰囲気はよく伝わってくる。いつもならこのような句を選ぶことはまずないのだが、中高年のおっさんにも秋の憂いが訪れているからか。 )

●コスモスと背丈を競う子どもの手=秋波
○雪△澄、メ=4点

●秋雨の霧を纏いて竈門山=喋九厘
○小△君=3点
(葱:「秋雨」と「霧」はダブりました。)

●空の田に色なき風のみちてをり=水音
○澄△葱=3点
(葱:「空〈から〉の田」と「色なき風」のマッチング。)

●刈穂田の子らよ転ぶな鬼ごっこ=久郎兎
○入△秋=3点
稲の切り株によく躓いて転んだ記憶がよみがえりました。ころんでも刈田の土はふわふわで怪我しなかったなあ〜。)

●木の実降る母に習ひし蒸しおこわ=スライトリ・マッド
○水△砂=3点
(水:おいしそう。 葱:栗御飯でしょうか? 季語の斡旋がいい。)

●卓袱台の湯気の向こふに手を合はす=久郎兎
◎小=3点

●べったらの市の灯やさしメトロ出づ=入鈴
◎君=3点
(君:甘く優しい雰囲気。なぜかメトロまで優しい。)

●曼珠沙華に影あり影と目を合はす=砂太
○白△二=3点
(白:シニフィアンは常に過剰でシニフィエは常に不足しているという。曼珠沙華という名が花のみでなく心の影も指すこと、詩のおもしろみかも。)

●秋曇りスケッチブックは白きまま=白髪鴨
△メ、香=2点
(葱:「秋曇りスケッチブック白きまま」でいいと思います。)

●秋深む読経の僧の倍音に=葱男
○雪=2点
(雪:ほんとはいつもどおりなのかも知れないけれど・・・。)

●あさつゆに濡れて横たふきりぎりす=男剣士
△葱、澄=2点
(葱:俳句としてはぎりぎりでしたね。)

●脅銃首をすくめる人と亀=スライトリ・マッド
○君=2点
(君:滑稽さに惹かれました。)

●かなしみの青空抜けて鶴来る=五六二三斎
△水、香=2点
(水:青空にかなしみを見るとは、とてつもなく深い悲しみを感じさせる。鶴ももの悲しい。)

●夢想流杖道極め寒露かな=喋九厘
△葱、五=2点
(葱:「夢想流杖道」、気に入りました! 五:詠み手は砂太仙人か?部長の句なら異議ありですね。杖突かない筈。ただ、砂太先生も杖を突いておられないはず。さてさて、詠み手は誰だろう?)

●一夜城まつりの後や秋の風=男剣士
△前=1点

●遺伝子の命ずるままに馬肥ゆる=水音
△五=1点
(五:思い付かない上五中七にびっくりしました。生物学的に言えば肥えるのは遺伝子の成せる業ですが。当たり前ですが、新鮮。)

●還暦の棺桶まぢか十月尽=資料官
△喋=1点
(葱:ははは〈笑〉、それはちょっと言い過ぎちゃう?)

●立ち濡れてなお香を放つ金木犀=秋波
△資=1点

●手作りのクッキーの山ハロウィーン=資料官
△雪=1点
(葱:「食の俳句」ってそそられますよね。)

●とびきりの器に盛りましょ衣被=小夜女
△資=1点

●モネ愛でしかの太鼓橋藤は実に=夏海
△二=1点

●ハブも人も逃げ惑ふとぞ秋出水=君不去
△香=1点


【無選】

●秋入日レースの疲れを金に染め
(葱:散文的な印象なので「レースの疲れを」をなんとかしたい。)

●朝寒や通勤電車のタンス臭
(葱:視点は面白いけど、「タンス臭」は直すぎるか。)

●雨空へ扉放てば冬の匂
(葱:冬の句は選からは外しました。先輩が言うには、俳句は「挨拶」であるので季節の先取りは良しとしても、季をまたぐのは良くない、何故ならそれは昼間に逢って「こんばんは」と挨拶するようなものであるから、だそうです。立冬が待ち遠しいですね、「歳時記」の次のページを開くことができる喜びは、俳句を詠むものの特権です。)


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