*A部門入選作発表*

当季雑詠*全53投句(入選39句)

【特選】

一席
●けふの月太古の星を食べつくす=水音


◎五、澄、メ、前○香、ス△夏、小、君=19点
(五:満月に星が食べ尽くされる?その発想に◎。「けふの月」がやや難点。俳句は今を詠むのでけふは要らない。まあ、その難点はあるにしても天位です。今回は他にこれという句がありませんでした(>_<)  ス:宇宙のロマン! 夏:あまりに満月が明るくて星は霞んでしまうのかも。 葱:雰囲気ありますけどね。)


二席
●窓いっぱい稲光して吾子のこと=入鈴


◎水、砂○葱、夏、君△久、小=14点
(水:心がざわめくような不安な感じ。 葱:「吾子」という表現には何か「文学的」な匂いが漂います。 夏:何か気懸りなことが?親心ですね。)


三席
●居待ち月舞の巫女みな腕細き=白髪鴨


◎夏、君、秋○澄、喋=13点
(夏:天満宮の大祭?巫女舞のたおやかさが見えるよう。 君:透明感がありながら妖しい! 秋:幻想的。袖からのぞく白い腕にエロスも。)


【入選】

●鶏頭の朱携へて父に会ふ=資料官
◎二○小、入、ス△五、百=11点
(ス:お彼岸の光景でしょうか? 五:鶏頭を父の墓前に手向けたのか?作者はSさんか? 百:朱がせめてもの慰め。)

●コスモスの揺るる数だけ寂しかり=雪絵
◎葱○久、砂、百△水、秋=11点
(葱:うー、やられた! コスモスでこれを詠みたかった! 「けれ」でなく「かり」のところもいいですね。 百:たくさんあっても寂しいです。 水:もの凄く沢山あるコスモスが目に浮かびました。 秋:秋の空気感とそれに共鳴する気分。)

●酔芙蓉路地行く猫と見つめあう=君不去
◎資○白、秋△香、喋、ス=10点
(白:動物は考えない、感じるのみ。では何を? おそらくは危険と安全だと思うのだが、その中間にあるのはやはり「思考」だろう。翻って人間の側にはその対峙に何を「思考」するのか。 秋:ユーモラスなワンショットです。 ス:今日猫と話してるおばあさんを見ました。)

●詮のなき身の上話こぼれ萩=五六二三斎
◎香○久△水、入、雪、秋、ス=10点
(水:こぼれ萩にすべてが凝縮してる。 秋:立ち話も気が緩むとつい長くなる。こぼれる話と萩をかけた所がうまい。 ス:こぼれ萩と合ってますね。読売新聞の人生相談おもしろくてよく読んでます!)

●蟷螂が坂道の真ん中で待つ=スライトリ・マッド
○白、入、二△久、水、五、君=10点
(白:思わずドキッとする光景の切り取り方。地上5cmの視点。1m数十cmの高さの視線には見えない世界を突きつけている。 水:この光景よくありますよね。道の真ん中で威張っているんですよね。  五:蟷螂の通せんぼ?句またがりが愉快。 葱:おるおる。)

●なで肩の遠くに見えて狐花=葱男
◎ス○小、五、雪△夏=10点
(ス:曼珠沙華でなく狐花にしたところがいい。 雪:なで肩と狐が妙に呼応した感じ。 五:私は撫で肩なもんですから、ついつい採ってしまってました。狐は狸に比べれば撫で肩でしょうか? 夏:遠くに立っているのはたおやかな女性か?いや美女に化けた狐かも、という怪しさ。)

●ルビをふる文字の小さし夜長かな=雪絵
○香、メ、秋△久、小、五=9点
(秋:秋の夜長の読書も年とともに不便に。悔しや老眼! 五:夜長の俳句勉強ですか?俳句にルビをふるのはよっぽどでない限りいけないというのが私の考えです。)

●われもこう屋号呼びあう邑の内=夏海
○葱、砂、雪△資、白、入=9点
(葱:「村」ではなく「邑」を使うことでうまく「現実感」を消し、句に「物語性」が生まれました。 雪:テレビでこんな光景を見たような・・・。今も残ってるんですね! 白:吾亦紅の似合う邑、そのひなびた趣が伝わる。外から来た人間にはその村の日常が非日常に映る。その断層はじわじわと心のうちに広がっていく。 )

●かなかなや机の上の昨日の句=砂太
○水、君△資、白、雪、百=8点
(水:上出来の句とは思えないところが、、。 白:秋のしめやかな書斎の雰囲気が漂う。「昨日の句」が時間を止めている。それは同時に逡巡を感じさせる。迷いを感じさせる。 葱:「かなかな」と切れ字の「かな」がシンクロしてちょっと面白い。 百:かなかなが哀しい。)

●老人と岩住む村や糸瓜垂る=スライトリ・マッド
◎入○五△香、前、百=8点
(五:面白い句。きっと岩山のそばの田舎が舞台?仙人がいそうな感じ。南宋画みたいな句ですね。 百:頑固そう 。)

●千年の風のみがあり古都の秋=白髪鴨
○メ△夏、香、澄、前=6点
(夏:しみじみとした奈良の秋。)

●グラニュー糖混ぜるな危険秋うらら=水音
◎白○夏=5点
(白:漂白剤などに大書してある注意書きが、滑稽な味覚を告げている。作者の暢気さとおおらかな感性はむしろ純粋でさえある。 夏:面白い!食欲の秋はカロリーオーバーが大変怖い・・・。)

●ディーゼルのホームに遊ぶ赤トンボ=香久夜
◎小△砂、喋=5点

●赤い靴姉妹の順に日向ぼこ=喋九厘
○前△砂、二=4点
(葱:「日向ぼこ」は冬の季語ですね。)

●赤い空その雲ちぎれ曼珠沙華=喋九厘
○澄、二=4点

●風あれど媚も売らずや彼岸花=秋波
◎久△前=4点
(久:確かに媚びは売ってないです。稲田を逆に食ってます。)

●月鈴子白馬の峰に響くらむ=君不去
◎雪△ス=4点
(雪:小さな虫の音が大きな景に響くさま!壮大ですね。 ス:白馬の峰いかがでしたか?! 葱:挨拶句、ありがとうございました。)

●稲の花カフェに紫烟のただようて=葱男
○資△澄=3点

●草滑り抱っこの先の青林檎=香久夜
◎喋=3点
(葱:情景はよく分かります。「草滑り抱っこ」ですか、う〜〜〜ン。)

●献杯というて掲げて曼珠沙華=夏海
○喋△入=3点

●冷ややかやパジャマの皺に肉球に=水音
◎百=3点
(百:皺もひんやり。)

●凛として重陽の菊風変える=秋波
○百△メ=3点
(百:風が変わる。 白:「風変わる」ではなく「風変える」という結び方がいい。凛とした菊の存在が主体性を持っている。非常に迷ったのだが、他との比較で残念ながら選外。)

●赤とんぼまぎれて遥かちぎれ雲=秋波
△メ、二=2点

●手のひらに残る温もりまんじゆしやげ=スライトリ・マッド
△メ、二=2点

●一息に絞り糸解く色なき風=夏海
△葱、白=2点
(葱:「一」ほど俳句的な文字はないですね。 白:流れる糸に風を感じる。色なき風ながら、それは糸の色に染まっている。そしてそれは意思をさえ持っているように感じられる。)

●山深く竹伐る音や杣の里=砂太
○資=2点
(葱:「山」と「杣」が重複してしまった印象あり。)

●雨に濡れ悔いてもどかし秋彼岸=メゴチ
△資=1点

●海越へてはるか奄美へ秋の蝶=資料官
△君=1点

●大向う唸らすほどの長十郎=葱男
△喋=1点

●古都の灯に宰府ゆるりと彼岸かな=喋九厘
△砂=1点

●白萩や姫様男出で立ちで=五六二三斎
△雪=1点
(葱:時代劇によく見る演出ですが、わかるよなあ〜、女だって。「龍馬伝」のときの「お龍」もそうでしたが、分かるよなあ〜。)

●爽籟や空(から)の餌場の旅の後=ひら百合
△前=1点

●ちぇんばろや敬老の日のたゆたひに=入鈴
△秋=1点
(秋:秋に似合う楽器です。 葱:「下五」に一考ありか。)

●仲秋はあと六日ばかりcome rain =白髪鴨
△葱=1点
(葱:下五の英語の命令形が小気味よい。)

●二人居に慣れても余る栗ごはん=小夜女
△葱=1点
(葱:「お茶の間俳句」の範疇ですが、上五、中七に機微のある人生を感じました。)

●行く夏の宗谷に立ちし武士の影=久郎兎
△澄=1点


【無選】

●えび色のグラデーションにすすきの穂
(白:えび色のグラデーションという色彩感覚は気持ちいいのだが、全体として凡庸な句に収まってしまったので残念ながら選外。グラデーションがもっと飛躍するような構成ができたような気がする。)

●蜻蛉や命短き羽音かな
(葱:命短し恋せよ乙女。)

●桃の実を頬っぺに当てたり堪忍や
(葱:なんだか面白い。)


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号