*A部門入選作発表*

当季雑詠*全53投句(入選42句)

【特選】

一席
●ひぐらしへ葉書一枚出しに行く=夏海


◎入、砂、白、二○ス△喋、百=16点
(白:本当に何気ない日常の所作だが、何故か非常に季節感を感じる。時は行く、夏と秋の狭間に否応なく生活は送りこまれ、そこに作者が見ているものを涼しげに伝えている、あるいは暢気?  ス:ふしぎな句ですが惹かれました。 百:ヒグラシを聞きに外へでる気持分かります。)


二席
●四万十をうつして余す天の川=葱男


◎ス○五、前△入、砂、喋、香、百、秋=13点
(ス:しまんと」って言葉の持つ響きがよいですね。 五:天の川が川で四万十が星?のような逆転の発想が良い。「ま」音の三連発も決まってる。 百:逆のようですが・・・。 秋:都会にいると天の川どころか名の通った星座さえ見つけるのが困難です。これぞ天の川というのを私も見てみたい。)


三席
●納豆の糸伸ぶ朝や敗戦忌=砂太


◎資○入、白、雪△五、二=11点
(白:戦を知っている人の句のようだ。われわれの世代ですら8.15を実感として思い描けない。その日を日常のうちに読み取っている感慨は静かにかつ重い。 雪:暑い日だったようですね。 五:敗戦の日に、日本人は65年前と同じく納豆を食べていた。ノスタルジックな一句。)


【入選】

●立ち枯れて葉脈硬き素秋かな=君不去
◎澄○水、メ△香、百、前=10点
(水:実りの秋なのに。 百:葉脈よく残ってますよね。)

●どこにでも水売っている原爆忌=水音
◎五、百○砂△入、ス=10点
(五:原爆の犠牲になった人々が水を欲しがって死んでいきました。せめて、この日くらいは水をたっぷりと地面にしみこませてあげたいですね。 百:隔世の感。 ス:いつでもどこでも自販機で水が買える平和をなくしちゃいけんぜよ。)

●鰯雲焼ける地球を蹴ってみる=君不去
◎喋、前○五、ス△砂、水=9点
(五:鰯雲に地球を蹴ってもらって熱気を遠ざけてほしい。ユーモアの一句。 ス:ほんとにそんな気分の夏でしたよ。 水:鰯雲が出ている秋なのに焼ける地球!いつまで暑いの?)

●掌で乙女の如し茗荷かな=小夜女
◎葱○喋、香△五、君=9点
(葱:感性の瑞々しさに感嘆しました。これぞポエム。 五:茗荷を乙女に見立てたところが面白い。)

●音たてて肺の崩るる残暑かな=水音
◎夏○久、君△二=8点
(夏:上五・中七が上手い。猛烈な残暑がよく表されています! 久:残暑の比喩にしては怖いですが。)

●露草を濯ぎて蒼き海となす=水音
○葱、秋△雪、君、メ、前=8点
(葱:青花ですね。美しい情景ですが、ひとつ質問。作者は露草を濯いで何をつくっているのでしょう? 秋:一寸法師の目線が新鮮。 雪:きれい!)

●板チョコを割る手にちから秋に入る=雪絵
◎香○メ△水、白=7点
(水:早く力を入れてチョコを割る季節になって欲しい。白:この残暑ではまだチョコレートに触れる気にもならないが、秋の気配をチョコレートの硬さに感じた目線が素敵だ。 葱:冷蔵庫のチョコでしょう。その、他愛無さがなんだかかわゆい。)

●新涼や足袋誂えの裁ち包丁=夏海
◎雪○水、二=7点
(雪:少し涼しくなった心地!裁ち包丁というのがあるんですね。 水:いかにも切れ味が良さそうな裁ち包丁に涼を感じます。)

●つぶやきに応ふるごとし桐一葉=君不去
◎水○資△メ、前=7点
(水:これはツイートじゃなくて実際につぶやいているんですね。風も無いのに葉が一枚、、、)

●望の月シャンパンロゼの萼(うてな)かな=入鈴
○葱、秋△小、夏、澄=7点
(葱:よく分かりませんが、この際、意味を深く問うことはやめておきましょう。〈望の月〉と〈シャンパンロゼ〉、月と酒の取り合わせが見事です。萼はシャンパンのコルクを覆うアルミ箔でしょうか? 秋:おしゃれです。シャンパン片手の観月でしょうか。それともほんのり赤い月なのでしょうか。)

●立待の月手をつなぐ程のこと=入鈴
○雪、二△葱、ス=6点
(雪:それ以上でも、それ以下でもなく・・・、そんな恋? 葱:ま、仲が良ければ手ぐらい繋いでもよろしいんじゃないでしょうか?これが居待、寝待、臥待となると問題が起こるかもしれませんが。〈笑〉 ス:誰と誰が手をつなぐのでしょう?!)

●年老ゆる母の乳房や木槿咲く=スライトリ・マッド
◎小○夏△入=6点
(夏:かつて赤ん坊だった自分を育んだ母の乳房、命のリレーの切なさ!)

●成層圏へ膨らみ上る残暑かな=白髪鴨
○小、澄△秋=5点
(小:今日空一面にうろこ雲!二歳の子が空を指差しアーー!異様な美しさでした。 秋:今年の残暑はほんとにこの通り。 葱:ほんまに本当に南半球は冬なんだろうか? 疑います。)

●0と1の近く遠く爆心地=スライトリ・マッド
○白△葱、久、夏=5点
(白:0と1の間には無限がある。無限は人間にとってある意味で忌まわしいものである。カントールのように無限を数えることはおもしろい知のゲームだが、人間の現実はそれを恐れる。 葱:0が爆心を示す値でしょうか。数字が恐怖の符牒うを感じさせる句です。 久:何かの記録フィルムなのかな?見たことがないけど。 夏:被爆という悲惨な体験の有る国無い国、有る世代無い世代、0と1との大きな違い。)

●鳩吹くや十四代にのぼる墓誌=葱男
○夏△水、五、雪=5点
(夏:古い家柄に纏わる歴史のあれこれ・・・。 水:鳩吹くという季語を始めて知りました。この取り合わせがどうも分からない。 五:鳩吹くの季語の使い手は葱男部長でしょう。葱男さんのお父さんが14代目?350年は経ちますね。江戸時代前期?いずれにせよ、我々の遺伝子は生命誕生の時点にまで遡れます。)

●人絶えて地に潜りたる狂暑かな=前鰤
○小、百△資=5点
(百:「狂暑」今年の言葉になるかも。)

●立秋はポケット穴からこぼれ落ち=白髪鴨
◎メ△夏、君=5点

●還暦に夢無限らし蝉時雨=久郎兎
○澄、君=4点
(君:そうだといいな!)

●百日紅匂うなら好きにならない=入鈴
◎久△雪=4点
(久:思いが100%出ていて、型破りで、でも17文字は守っているんだな、これが。 雪:とても気になった句。 葱:不思議で難解な句。惹かれるものがありますが、どうもイメージが定まりませんでした。)

●田原坂吹き抜く風の赤とんぼ=雪絵
○喋△砂、資=4点
(資:九州新幹線が開通すると田原坂もさびしくなる。)

●暑かろか子の名も忘る母背負ふ=久郎兎
○香△小=3点

●元気かな猛暑酷暑も山ガール=喋九厘
◎秋=3点
(秋:山に登るのは…そこに山ガアルから…なんて。歴女の次は山ガール。乙女の好奇心と行動力に脱帽です。)

●白壁に薔薇赤あかと長崎忌=砂太
◎君=3点
(君:色の取り合わせが率直で印象が強烈でした)

●英彦山の向かうに久女秋立つ日=五六二三斎
○砂△二=3点

●立秋や父亡き朝を迎えけり=香久夜
○入△秋=3点
(秋:あるべき人がそこにいない。一抹の寂寥感。)

●炎帝のほほゑみお天気お姉さん=資料官
○久△二=2点
(久:なんだか怖そうな。)

●月光に蒼く照らされ@秋気配=喋九厘
△白、澄=2点
(白:いまだ30度以上の部屋だが、差し込む月の色はすでに秋を物語る。それ自体では平凡な句だが、@が効いている。@を「アットマーク」と読んだら律が崩れてしまうので、これはただ目で見るだけの記号のようだ。それとも単なるミスタイプ? 葱:@がうまくはまっています。)

●新涼や熱闘俳句甲子園=メゴチ
○資=2点
(資:たしかに色々な甲子園がある。さわやか。)

●逃げ水を銀鱗が追うロードかな=秋波
○前=2点

●ファミリーのマネキン皆でサングラス=小夜女
○百=2点
(百:なんだかおもしろい。)

●鳳仙花ふと友の言ふシュイサイド=五六二三斎
△白、ス=2点
(白:日常のバランスが崩れる瞬間がある。その緊張感はあまりにさりげない。suicideを句の中に盛り込むのは禁じ手のような気もするが…。 ス:昔ラジオで“suicide is painless〜♪"っていう歌が流れてたの思い出しました。)

●湯となりて蛇口に出ずる八月尽=前鰤
△小、香=2点

●稻の花誘ふやうに風の道=五六二三斎
△資=1点

●桐一葉邪馬台国に沖縄説=葱男
△久=1点
(久:沖縄は新説ですね。)

●蝉しぐれ網の幟が行進す=秋波
△久=1点
(久:今、こんな風景はなさそう。)

●空へ流す精霊舟の焔いま=夏海
△喋=1点

●墓地下る青松毬の眠る陰=香久夜
△メ=1点

●ヘリコプターの音遠ざかる残暑かな=雪絵
△葱=1点
(クラクラするような猛烈な暑さをうまくヘリのプロペラ音に喩えています。)

●星月夜風が目にしむ通夜帰り=メゴチ
△澄=1点


【無選】

●星飛ぶや池塘春草の夢未だ
(葱:少年老い易く學成り難し 一寸の光陰輕んず可からず 未だ覺めず池塘春草の夢 階前の梧葉已に秋聲 ですね。)

●マイルスの音こだまして秋に入る
(葱:マイルス・ディビスのトランペットは地下のコンクリートにこだまする感覚です。


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