*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選41句)

【特選】

一席
●前髪のこころもとなき祭の夜=葱男


◎五、小、雪、ス○資、久△夏、前、秋=19点
(五:祭りの男女の逢瀬が伝わってくる。「こころもとなき」が若い男女を思わせる。ヒット句だと思う。類句や類想句のないことを祈る。 雪:浴衣姿の少女が目に浮かびます。こんな繊細な心根の持ち主は? ス:女心ですね?! 久:女性の心境でしょうね。なにか怪しい感じもあります。先生の句でしょうか!?)


二席
●素潜りの足が空打つ夏の磯=砂太


◎葱、水○前、雪、喋、百、君△香、メ=18点
(葱:子供達のはしゃいだ様子が鮮やかに浮かんできます。 水:子どもの頃の夏を思い出しますねぇ。いや30過ぎてもやってましたもん。 雪:こんな映像を見ました。まさに「空打つ」ですね。 百:目に浮かぶよう。 白:夏の磯をとてもいい視線で描いているが、それだけで終わっているので残念ながら選外。)


三席
●風の名を思い出せずにハンモック=水音


○砂、夏△葱、五、資、白=8点
(夏:「風の名」ですか?視点が面白い。ハンモックも心地良さそう。 葱:夏の風にはたくさん名前が付いてますからねえー、「白南風」「黒南風」「いなさ」「ながし南風(はえ)」「青嵐」、「節の西風」なんてのもある。いったいこの風はなんて言うんだっけ? 五:風の名?何のことだろう?というのが面白い。 白:風を感じさせる句は好きだ。乾いた夏の風だろうか。福岡に来て東風がよく吹くのに驚いている。関東では東の風はめったにない。余談だがライアル・ワトソンの「風の博物誌」(河出文庫)には300以上の風の名前が記載されている。)


三席
●縄文の匂ふ貝塚大南風=雪絵


◎砂○五、水△喋=8点
(五:掲句も、古代への誘いみたいな雰囲気が良い。 水:はるか昔、南国の人が小さな船で渡ってきたことまで想像させます。 葱:佳句ですが、類句もありそう。)


【入選】

●雨音や蛙と暮らす花菖蒲=喋九厘
◎香○澄△前、久=7点
(葱:のどかでいいなあ〜。 久:主人がカエルというところが面白い。)

●黒南風やどっしり構ふ蔵の町=雪絵
◎資○メ△水、小=7点
(水:鬱陶しい季節にしっとりとした町が見えてきます。 葱:これも「黒南風」と「蔵の町」の取り合わせ、上手い!)

●昼寝覚め頭の中の設計図=夏海
◎百、久△資=7点
(百:とぼけたような,まじめなような・・。 久:夢でできたことが目覚めて紙に書いてみると書けないことがよくあります。)

●ポケットはぜんぶ空つぽ夏の浜=葱男
◎白○水△砂、メ=7点
(白:とてつもない空しさが夏の浜を覆いつくす。アルジェリアの乾いた浜辺を歩むカミユを髣髴させたのは、想像しすぎだろうか。 水:これからいろんな物を詰めていくのでしょうね。)

●青空を薄く剥ぎとり冷そうめん=水音
◎喋○白△久=6点
(白:作者の奔放な想像力に脱帽。青空を薄く剥ぎとる技をぜひ知りたい。 葱:その感覚、分かるような分からないような・・・夏の爽快感はあるけど、冷そうめんの色はブルーじゃないし。もし剥ぎとり」で切れるなら上五と中七の「剥ぎとる」行為のイメージが伝わってきませんでした。 久:青空が見えているくらいだからソーメンが漂ってるんでしょうかね。)

●鬼虎魚皿の上にて吾を笑ふ=君不去
◎秋◯葱△雪=6点
(秋:いかつい顔の虎魚が目に浮かびます。格闘の末美味しく食べられたのでしょうか。最後は吾笑ふ? 葱:ユーモラスで俳諧味のある可愛い句ですね。)

●さみだるる稲荷の森のGゆらぐ=白髪鴨
◎君○ス△葱=6点
(君:古語と理科語の同居が面白くて。 ス:音楽用語のゲー?それとも物理のジー? 葱:「G」の一字が新鮮。)

●夏茱萸やありつたけ干す靴の数=夏海
○雪、君△水、百=6点
(雪:ナツグミってあるんですね。ありったけの靴がぴったりイメージできます。水:子どもが何人? 百:私も靴洗わなきゃ。 葱:「靴」の好きな女性って多いんでしょうね、おそらく女の人に多くの共感を呼ぶでしょう。)

●南吹くクロワッサンの層の中=水音
○砂、白△夏、雪=6点
(白:まるでフランス映画のような美しさ。それだけなら選外だったが、風の行方を繊細な目で見つめている点に趣を感じる。層の中に吹き込む風はそれだけで新たな逃走線を作り日常を脱していく。夏:クロワッサンには如何にも南風がピッタリ。 葱:「今っぽい」句。)

●古代地図新羅へ夏蝶飛びにけり=雪絵
○夏、香△五=5点
(夏:スケール壮大! 五:字余りに難あるも、夏蝶に身を任せて、時空を超えたいという大きさがある。 葱:歴史ロマンが香ります。 白:歴史と地理への大きな思いが夏蝶に化身して大きく描かれている。しかし大きすぎる。ふくらんだエクリチュールが中の空洞をより目立たせてしまった。)

●夏休み爺の来た道孫立ちぬ=久郎兎
◎前△砂、香=5点

●ゆるーりと逆さ紫陽花水鏡=喋九厘
◎メ○秋=5点
(秋:きれいです。)

●青芝に星をちりばめ采配す=香久夜
○メ、喋=4点
(白:詩の一節になりうる情を感じさせ、最後まで選に残っていた。さながら魔法のよう。しかしこの句だけで語りきっていないもどかしさが残ったため、残念ながら選外。)

●あれもないこれもない日の夏燕=入鈴
○香△水、秋=4点
(水:なんにもなくて心は虚脱なのに燕はエネルギーに満ちているようで、対比が面白いです。 葱:なんか佳い。こちらはなんだかんだともたもたしてるのに、燕はさっさか巣作り、子育てに邁進しているもんね、その対比かな。 白:日常がブラックホールに陥って同時に飛躍している。ただ非日常にまで昇華しきっていない。かなり気に入っていたのだが、結局、他との比較で選外。)

●かりりかり氷と遊ぶ思案かな=砂太
○百△白、秋=4点
(百:氷噛んじゃいます。 白:擬音での入り方、そして氷と遊ぶ思案はおもしろい。けど氷だけで季語になるんでしょうか? 部長、教えてください。 葱:角川書店編、夏の歳時記によると、涼を口にするものとしての、氷水、削氷、かき氷、夏氷、氷小豆、氷苺、氷菓、氷菓子、などは夏の季語。そして氷店、花氷も季語になっています。「氷飲みつ夏も白ら息して憩ふ」という大野林火の句が例題にありましたが、ここでは巧妙に「夏」を詠みこんでいます。「氷」一語だと冬の季語で、氷点下、氷張る、結氷、初氷、厚氷、氷面鏡などはその傍題です。「かりりかり〜」の句は氷を食べているのが明白なので、夏の季感がありますから俳句としてはちゃんと成立していると思います。ただ、それが無季俳句なのかどうか、判断の分かれるところでしょう。いずれにせよ、それが無季俳句だとしても句の味が落ちるということではないでしょうね。これは「ぶっかき氷」ですな! 作者は何を考えているのか? 高校野球の監督が次の作戦を考えてたりして。)

●姿なき蜂不穏なる菩提花=ひら百合
○澄、秋=4点
(秋:蜂の羽音の表現が見事だと思いました。)

●父の日や浪人からのバーバリー=五六二三斎
○前、久=4点 (久:これは父となった自分のことですね。丘ふみの句だから40年近くの物持ちの良さと言うところでしょうか。)

●あぢさゐや雨ニモマケズアキラメズ=資料官
◯葱△砂=3点
(葱:本歌取り、成功とちゃう? アキラメズが決まっています。)

●幾億万声かけられし「オーイ,雲」=ひら百合
○小△葱=3点
(葱:人間が「言語」を獲得して依頼のことだから、確かに。)

●かわほりの宙返りして相合傘=白髪鴨
○ス△喋=3点
(ス:矢野顕子の「相合傘」♪を思い出しました。 葱:面白い。ひとつ言うと、かわほりと傘はやや付きすぎかもしれません。)

●濃紫陽花かくしゃくとして父独り=資料官
△小、香、久=3点
(久:毎年咲きますね。しっかり。独居の様子がみてとれるようです。 葱:う〜〜ん、泣かせてくれますなあ〜。)

●さくらんぼ小さき中に甘き夢=メゴチ
○小△澄=3点

●サッカーの酸いも甘いも金銀花=メゴチ
◎澄=3点

●代掻いて広田に風を溢れさせ=砂太
◎夏=3点
(夏:広々とした風景と風を感じる佳句。「溢れさす」と切れたら更にパーフェクトかと。 葱:「溢れさせ」の措辞が上手い。)

●炭鉱住宅消ゆる日の汗の顔=夏海
○五△小=3点
(五:破調であるが、汗の顔に長年の炭鉱夫の皺が滲む。)

●唐黍の青根踏ん張る雨上がり=久郎兎
△資、前、雪=3点

●ポスターの弾ける赤字山笠来=五六二三斎
○資△ス=3点
(ス:赤字がなんとも目立っちゃうんでしょうね?)

●あじさゐの白耀(かがや)ふて印旛村=入鈴
△君、ス=2点
(ス:印旛沼は紫陽花の宝庫なんでしょうね?! 葱:「耀(かがや)きて」では音的にダメなん? 「ふやふやっと」した印旗沼にしたかったのでしょうか?)

●魂の闘いは夢六月尽=前鰤
△澄、君=2点
(葱:日本人なら気持ちはみんな同じ。)

●訛りある人の集いし山開き=小夜女
△五、百=2点
(五:東北の山開きに参加?Sさんの句であろう。日本百名山巡り?いくつまで来ました? 百:全国から集まるでしょう。)

●曾じいの差し出す苺丸かぶり=香久夜
△喋、君=2点

●浮人形二十歳もちがふ女と合ふ=葱男
△白=1点
(白:浮人形と女との出会いの関係がよく分からないが、そのずれがおもしろい緊張感を持つ。「会う」ではなく「合う」だから、すこし艶っぽい雰囲気もかもし出す。)

●梅の実の落つ音雨の降るを聴く=小夜女
△メ=1点
(葱:まっぷたつに分かれてしまった感あり。)

●父の日や佐世保海軍カレーかな=スライトリ・マッド
△夏=1点
(葱:取り合わせの妙。)

●梅雨晴れの一期一会今遺影=資料官
△百=1点
(百:そんなこともある年齢になりました。)

●ほどけゆく真白き心やくちなしの=君不去
△澄=1点

●短夜をさらに短くブブゼラ音=君不去
△ス=1点
(ス:私も見ました@@。 葱:あの音はただだらだとしていてうるさかった。もっとメリハリがほしいけど、それがアフリカの文化なんだろうか?)


【無選】

●新たなる予感さへ満つ黒南風の
(葱:最後がちょっと「思わせぶり」。)

●風薫る島田写楽のサイン会
(葱:ミステリー作家の島田荘司さん(61)が、浮世絵師・写楽を題材にした小説『写楽 閉じた国の幻』(新潮社)を刊行したそうですね、そのことなのでしょうが、島田荘司さんがそんなに爽やかな人だとは・・・。)

●黒南風や海賊船で島巡る
(葱:合いますね、「黒南風」と「海賊船」。)

●白栄えてかりゆしのシャツ着たる人
(葱:夏らしい句ですねえ〜。)

●短夜や母の齢は五十八
(葱:「58才」ということは今の我等の歳。母が亡くなった歳に自分の歳が追いついたなあ、という感慨なのでしょうが、これは我等が同級生で58才だから分かること。一般化するには「短夜や母の齢の五十八」としたらどうだったか。)


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