*A部門入選作発表*

当季雑詠*全53投句(入選39句)

【特選】

一席
●調律は低き音より雲の峰=雪絵


◎資○二、夏、水、五△澄、ス=13点
(夏:確かに低い音から順に調律が進んでいきますね!高くなる雲の峰とよく響き合ってます。 水:低い方からだんだんと・・そして視線はドーンと空へ。 五:二句一章の典型。もしも、予定調和と言うなら、雲の峰は低音のイメージですね。 ス:ピアノの調律?)


二席
●電話より聞こゆ墨田の花火かな=スライトリ・マッド


◎砂、百○小、雪△五、メ=12点
(百:その微かさがいい。 雪:2,3日前、子供の携帯から、花火帰りの下駄の音を聞きました。 五:墨田の花火大会。音だけでも聞いてみたい。 葱:日常の一齣を切り取って佳句。)


三席
●虫干しや畳の裏に南の字=スライトリ・マッド


◎二、雪○葱△夏、百、メ=11点
(雪:子供の頃、庭で職人さんが畳を縫っている様子を興味深く見ていた記憶があります。床の裏には場所を示す白い文字が書かれていました。 葱:場所を間違えないように書いてあるのでしょうか? 「南」とう字の持つ言霊にも惹かれます。)


【入選】

●山笠発てり朝の博多を膨らませ=砂太
◎夏、白○資△小、秋=10点
(夏:祭りの朝の街のパワー!「朝の博多を膨らませ」が良い。 白:重力は空間を歪ませ〈あるいは空間の歪みが重力なのだが〉、ハレの時間は空間を拡大する。都市の相対性理論。半ケツのパワーの偉大さよ。 小:神輿はこの博多に勝るものなし!なんて思うのは私だけ? 秋:山笠の熱気が伝わってきます。 葱:あまりにも手だれた詠みで、上手いのが逆にちょっといや。)

●伊能図の故郷に立つ晩夏かな=五六二三斎
○水、喋、君、ス△雪=9点
(水:伊能図、故郷、晩夏の三つが響き合っているのがいい。 ス:もしかしてでっかい地図の上歩けるんですか?! 雪:あいにく行けませんでしたが、復元された日本地図、見事なものでしたね! 葱:モチーフは面白いのに、残念、季語が動きます。「晩夏」はあまりにも安易に流してるように思えます。)

●夏の夜の間のびしやすきトロンボーン=葱男
○砂、君、ス△二、水、秋=9点
(水:いかにも間延びしそう。 君:字余りのトロンボーンが間のび感にピッタリ。 ス:トロンボーンの形も音もそんな感じ! 秋:寝苦しい夜アンニュイです。)

●片蔭にまた戻さるる童かな=水音
○砂、雪△葱、小、前、ス=8点
(雪:暑さに強い子供でも、このところの猛暑にはかないませんよね。 葱:今の季節はここが要心、「熱中症」にだけは注意!! ス:熱中症に気をつけて!ですね。)

●この泥の深き願いや蓮の花=小夜女
◎喋、澄△資、秋=8点

●木洩れ日は箱型カメラ山帽子=白髪鴨
◎葱○百、メ△砂=8点
(葱:陽射しの束を「箱型カメラ」とした表現がいい。そこにスポットライトがあたり、景色や自然が念写されます。 百:ピンホールカメラね。)

●些事多し百万トンの雲の峰=水音
◎君○五、秋△二=8点
(君:「些事」と「雲の峰」の落差が面白くて。 五:百万トンがメガトン級で大きく響きました。些事との対比が良く出来ています。夏は心を大きく持たなければ。 秋:圧倒的な夏空と雑事に振り回される小市民と。 葱:白髪三千丈的な表現がおもしろい。)

●訃を伝う先ずは炎暑を見舞いけり=小夜女
◎水○百△砂、前=7点
(水:先方もご老人だったのでしょうね。 百:いかに暑いか 。)

●一尺の葉陰の胡瓜花涼し=久郎兎
◎秋△葱、夏、メ=6点
(秋:控えめな花を涼しとはうまい表現だと思います。 葱:「一尺の」はおまけ。夏らしい爽やかさのある句です。)

●日は空欄月下美人の招待状=ひら百合
○夏△水、資、久、白=6点
(夏:月下美人の花芽を期待感に満ちて眺めている様子。 水:空欄というところがいいですね。 久:最初は粋でいいかなと思いましたが、少し平凡のようで。 白:実はあまり背景が見えないのだが、何故か気になった一句。月下美人の招待状からいろいろなものを連想させたからか。)

●道を聞く人無く氷菓の溶けし跡=小夜女
◎メ○葱△百=6点
(葱:「氷菓の」の「の」は要るのかどうか? 百:何か,峠の茶やみたいな 。)

●列島に龍ののたうつ送り梅雨=水音
○秋△二、小、澄=6点
(秋:本当に今年の梅雨は大荒れでした。)

●硬券の学割きっぷや夏休み=資料官
○喋△雪、久、君=5点
(雪:昔は硬くて小さい切符でしたよね。「や」がいらないかも、です。 久:硬券はケータイの漢字変換候補にも出て来なくなっているね。切符の中央に学の赤の縁取り文字。今や切符切り達人も遠くなってしまいました。)

●夏鴨の代々盆地暮らしなり=葱男
◎ス△夏、五=5点
(ス:鴨に目をつけたところがユニーク! 五:夏鴨とは渡り鳥をやめた鴨でしょうか?何故盆地暮らしなのか?訳を知りたい。 葱:鴨川がよほど気に入ったのでしょう。)

●バスのドア開くたび増せり蝉時雨=雪絵
○メ、前=4点
(前:徐々に田舎へ入っていくのですね。)

●夜濯ぎに浮世の熱を漱ぎけり=夏海
◎五△前=4点
(五:技巧的だが、今回の句の中では出色です。濯ぐと漱ぐの使い分け。しかも、浮世の熱ですから、恋患いかもしれない。恋の熱中症?いいですね。この句は女性作であってほしいです。)

●iPadとやら現る雷の声=君不去
◎久=3点
(久:これは事件です。革命です。本の背落としの機械が売れているそうで、本の将来はダメでしょうね。!?)

●朝まだき木の香水の香梅雨明くる=砂太
△葱、五、澄=3点
(葱:最初、「香水の香」と読んでしまいました。「木」の香りの香水があるのかと・・・失礼しました。 五:梅雨明けの夜明けは香りから?K音の繰り返しが五回。俳句は音からですね。)

●朝夕にせっせと芙蓉咲き落ちる=香久夜
○小△君=3点
(葱:「せっせと」という措辞がなんか可笑しい。実のところ、作者の心情は如何???)

●荒梅雨や一人遅刻のランドセル=砂太
△百、資、喋=3点
(百:一人ってことはないでしょう。 葱:悪くはないのですが、詠みなれた感じがあります。)

●茅の輪の息災無病や茄子の花=喋九厘
○澄△君=3点

●チョロQのバイク動かし富士詣=スライトリ・マッド
◎小=3点
(小:バイクは見たことありませんが気持ち伝わりました。)

●日本地図燃え上がる色大暑かな=香久夜
◎前=3点

●向日葵の迷路に滅入り時止まる=メゴチ
○久△白=3点
(久:向日葵は揺れいるのに、あぁ〜、というところでしょうか。 白:ソフィア・ローレンが美人に見えたのは背景にあった向日葵のせいだったかも。時止まるという結び方が気に入った。)

●南風吹く塩屋に流木のオブジェ=雪絵
○二△水=3点
(水:暑さの中に爽やかな感じ。 葱:兵庫県の「塩屋」でしょうか? 同じ名で沖縄に「塩」の専門店があるようですが「まーすや」と発音するのでこのイメージは却下せざるをえませんでした。)

●仰向けにくま蝉の脚夕空を=五六二三斎
○白=2点
(白:死は日常にあり、時には美しくもある。生きるものだけがその悲哀を知る。 葱:これは喜劇なのか、悲劇なのか、最後の「夕空を」でなんだか滑稽劇になってしまいました。)

●一日の雑事終はりて桃齧る=君不去
△喋、ス=2点
(ス:女性の句かな?)

●昨日より一分短き薄暮かな=久郎兎
○前=2点

●七夕や風も汗だくフゥーフフフ=喋九厘
○白=2点
(白:もう笑うしかないほどの猛暑。汗だくの風だが、一瞬、秋の訪れも感じさせる。)

●月涼し友禅師の磨る墨青し=白髪鴨
○資=2点

●夏雲や成田に抜ける青と白=資料官
○久=2点
(久:スカイアクセスの車体の色ですね。一部区間を時速160キロで走るらしい。印西市は通過のようですから、白線まで下がる必要と言うことでしょうか。)

●豆球に蚊帳の家族を懐かしむ=久郎兎
△砂、喋=2点

●山鉾ともに打つ驟雨神もまた=白髪鴨
○澄=2点

●大阪の出張帰り冷コかな=メゴチ
△久=1点
(久:このビジネスマンは大阪の人?多分大阪出身で東京在住かな?)

●今日はいくつ穴ぼこ数え蝉しぐれ=秋波
△白=1点
(白:いくつかあった蝉しぐれを題にした句の中で、蝉穴からのぞきこんだ視線が光る。)

●雲の峰まぢかく東京スカイツリー=資料官
△雪=1点
(雪:一度見てみたいものです。)


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