*A部門入選作発表*

当季雑詠*全42投句(入選33句)

【特選】

一席
●すかんぽを揺らす少年変声期=スライトリ・マッド


◎資、水○砂、雪、白△二、メ、五、夏、百=17点
(資:土手のすかんぽジャワ更紗♪。昔の通学路を思い出させる秀句。 水:空洞の幹が変声期の喉を思わせる。食べれば美味しいことを考えると美少年なのかな。 雪:何か物語を感じますね。 白:少年、少女の姿を現在形で切り取る句はスマさんの得意技なので、きっとスマさんの作とにらんでますが(外れたらごめんなさい)、「すかんぽ」と「変声期」の組み合わせが絶妙でした。 五:ボーイソプラノであった私には分かる酸っぱい思い出です。声変わりは小学校6年に訪れ、中学1年の時に音楽の先生から、裏声で歌わないように指導されました。「裏声で歌はないやう飛花落花 五」  夏:体が変わる時の心の不安定さが伝わる。 葱:軽いノスタルジア。 百:技巧的な感じがしますが,雰囲気がいいので。)


二席
●小庭先タンポポの黄を苅り残す=香久夜


◎前○二、葱、夏、百、君△水、秋=15点
(葱:春に咲く黄色い花の中で一番淡いのが「菜の花」そして「ミモザ」、濃くなると「山吹」や「レンギョウ」、「たんぽぽ」はむしろ「強い」黄です。 夏:頑張って咲いていると残したくなります! 百:「小庭先」っていう,言い方もあるんだ。 水:絵としては様になる。けれど種はほぼ100%発芽すると思うので、私は一番先にむしりますね。 秋:私もそうします。)


三席
●逆光の二胡の音色や春の果=雪絵


◎メ、白○資、前△葱、喋=12点
(白:少し凝りすぎているような気もしますが、絲綢之路と重なる大きさを感じさせるとともに、季語「春の果」が百分の一秒を制しました。 葱:「逆光」であることが二胡という楽器にとって間違いなくプラスのシルエットとなっている。 資:胡弓のシルエットを思い浮かべた)


【入選】

●硝子ペンで描かれし楽譜春の風=スライトリ・マッド
◎秋○メ、雪、香△水、白=11点
(秋:硝子ペンというのがおしゃれ。 雪:音符までが透き通っていそう! 水:楽譜は「描く」のか「書く」のか ちょっと気になりました。 葱:ヨーロッパ風の格調が、良いともはまり過ぎともどちらとも。 資:硝子ペンの音符に惹かれたが,やはり字余りが気になった。 白:字余りがほんの少しだけマイナス要素となりましたが感性は素敵です。今月のA部門の私の選句ランキングはほぼみな同順位、百分の一秒差が◎○△を分けています。)

●夏隣り少女は爪を青く塗り=スライトリ・マッド
◎百○白、秋△メ、水=9点
(百:なんだか不安な予感も。 白:何かの期待、何かの不安が同時に立ち上がる思春期の感性がよく表現されていると思います。ムンクの「思春期」、ピカソの「鏡に向かう少女」を連想させます。ただ女性が爪を塗る事の意味はまったく理解できないので、ただの「うがちすぎ」かもしれません。)

●逆立ちのヨガの女や蝸牛=砂太
○ス、君△葱、喋、前、秋=8点
(葱:大胆さ、おおどかさ。 秋:蝸牛が効いてます。)

●春疾風歴史の外にある人よ=白髪鴨
○メ、五、水△ス、秋=8点
(五:意味はよく分かりません。おそらく名もなく貧しく美しい心の人のことでしょう。 水:歴史の外とは凡人のことかと思うけど、春疾風からすると非凡な人のことかとも思う。 葱:「歴史とは逸脱の歴史である。」という埴谷の言葉を思い出します。)

●一畑の蜆を好いて一人旅=喋九厘
◎香、君=6点
(君:出雲への旅ですか?一人旅の気楽な楽しさが”好いて”に 感じられて)

●「内祝・鰹節(かつぶし)」付きの仔猫来る=葱男
◎夏△二、砂、ス=6点
(夏:思わず、うふふと笑ってしまいました。楽しい句です。)

●葱坊主明日のことは明日決める=君不去
○砂、資、夏=6点
(資:葱坊主のその気ままさがなんともいえない。 夏:この考え方、好きです。)

●山吹や平家の姫の花結び=水音
◎喋△二、夏、香=6点
(葱:大河の「清盛」の一場面ですかね^^;)

●柳恕飛びたつ浮雲となるために=夏海
◎砂○百△白=6点
(百:言い切ったのがすがすがしい。 白:柳恕飛びたつ光景を読んだだけの句ならあまり面白くもないのですが、それが浮雲につながる感性がいいですね。浮雲にある哲学的側面がこの句の強度を支えているようです。 葱:俳句のお手本句のひとつの類型のような気がします。 資:なるためにと言ってしまうとちょっとくどいかな。)

●クローバー幼子の声転がりて=夏海
◎雪△香、前=5点
(雪:クローバーの丸い花からまさに、転がる声が連想されますね。)

●三椏の花別れ路に立ちつくす=君不去
○前△二、百、白=5点
(百:ミツマタが別れ道とダブります。 資:三椏と岐路を連想したのは良いが,上五中七をうまく処理してほしかった。 白:最初はこの句の味を感じなかったのですが、何度か読んでいるうちに立ちつくしているのが花なのか作者なのかと思い始めたら、上句の「三椏の花」さえも私の中で意味を持ち始めてました。さながらシニフィエがシニフィアンを規定するように。)

●ヤマトイバラの芽の掲げたる志=夏海
◎ス○秋=5点
(秋:句型にも素材にもとんがった意思を感じます。それが嫌みでない。)

●雪柳いつもの径がヴァージンロード=秋波
◎二○葱=5点
(葱:白の氾濫は光の極地ですね。)

●還暦の赤帽トリオ昭和の日=五六二三斎
○喋△資、雪=4点
(資:4月まで還暦到達鉄仲間に敬意を表し。昔駅には赤帽さんがいた。)

●虚子の句碑指でなぞりて春惜しむ=雪絵
○香△砂、君=4点
(葱:「闘志いだきて丘に立った」日が、懐かしく遠い過去のもののように・・。)

●四月馬鹿馬車鉄道の開業日=資料官
○二、ス=4点
(葱:そうなんですか、面白い!)

●連翹をまがれば村の小学校=水音
△五、雪、喋、ス=4点
(五:連翹は村の小学校の良い目印なのか?新入生は少ないことでしょう。)

●朝桜小中高のセーラー服=資料官
◎葱=3点
(葱:「朝桜」とい季語との取り合わせですね。特に「小学校の制服」には私立校の裕福な環境で育っている子供の「線の弱さ、品の良さ」を感じます。)

●夏近し十石舟の艫(とも)濡らす=香久夜
○五、△資=3点
(五:前回の報で部長ご指摘の五六二三斎の「俳句バンカラ」好みの句です。 資:京都伏見の十石舟ですね。 秋:青爪で勝負!女子の心意気。 葱:京都の岡崎公園の疎水でも十石舟の花見舟が再開されたようです。)

●揺蕩ふてやがて微睡む春おぼろ=秋波
◎五=3点
(五:古典的出来映えの句で、まるで芭蕉のようですね。「やがて」が芭蕉を想起させるのでしょうね。 葱:「揺蕩ふて」なんて言葉がおもしろい。)

●か細き枝小手毬乗せて挨拶す=君不去
△二、五=2点
(五:小手毬の花が密集して咲き、いかにもか細い枝は重そうですね。挨拶しているようにも感じますが、凛としているようにも思います。むしろ、「無口なり」なんていう下5もありかも。)

●さみどりにあゆみそめしか初ひ五月=葱男
○喋=2点

●三春は清き時なり潮をみる=白髪鴨
△メ、百=2点
(百:裏を読みたくなるような・・)

●葉桜や靄明けきれぬ伊賀の里=香久夜
○水=2点
(水:水:盆地であり、葉桜の陰には忍びの者もいそうで、、しっとりとした情景がうかびます。)

●晩春の海さすらひのてふてふよ=白髪鴨
△夏、香=2点
(葱:韃靼海峡ですう?)

●彫り深き飯盛山よ若緑=五六二三斎
△資、君=2点
(資:会津の白虎隊や野辺山高原のめしもりやまを思ったけど,福岡西部に飯盛山がありましたね。松の緑がまぶしそうだ。)

●駅ごとに桜吹雪のローカル線=資料官
△砂=1点

●カスミソウ陛下皇后合葬に=葱男
△雪=1点
(雪:カスミソウが効いています。)

●堂々と竹の子立てり神の庭=砂太
△前=1点
(葱:好きな句ですが、「神の庭」に具体性が欲しいところ。)

●漂着のサッカーボール桜山=五六二三斎
△君=1点

【無選】

●中国産きくらげ戻す春の水
(葱:詩情はなさそうだけど、類句はないんじゃない?)

●桃太郎若葉を供に吉備団子
(資:岡山に行った方の気持ちは分かるけど・・・)

●指の先嘗めてヨットの風を聞く
(葱:ゴルフプレーヤーも似たようなことしますね。 資:ヨットは夏だ,少々早い。)


A部門入選作〈back number〉

創刊号 2号 3号 4号 5号 6号 7号 8号 9号 10号 11号 12号 13号 14号 15号 16号 17号 18号 19号 20号 21号 22号 23号 24号 25号 26号 27号 28号 29号 30号 31号 32号 33号 34号 35号 36号 37号 38号 39号 40号 41号 42号 43号 44号 45号 46号 47号 48号 49号 50号 51号 52号 53号 54号 55号 56号 57号 58号 59号 60号 61号 62号 63号 64号 65号 66号 67号 68号 69号 70号 71号 72号 73号 74号 75号 76号 77号 78号 79号 80号 81号 82号 83号 84号 85号 86号 87号 88号 89号 90号 91号 92号