*A部門入選作発表*

当季雑詠*全43投句(入選35句)

【特選】

一席
●大根引く城下町よりはみだして=水音


◎砂、夏、五、喋、資、ス○雪△葱、二、白=23点
(夏:城下町よりはみだす、とは面白い!勢いのある句。 五:城下町という言葉が遠い昔に思いを馳せます。いい句です。 資:スケールが大きい大根引きを感じた。 雪:城下町のはずれということでしょうか。おもしろい表現! 葱:「はみだして」がうまい、なんとも自嘲気味の俳味があります。 白:冬の情景でよくうたわれる大根引き、ポピュラーな題材ですが、中、下の句が気宇を大きくしているように感じます。スケールが一歩飛びぬけているように思いました。)


二席
●縄とびの縄のうちそと里の秋=秋波


◎久、香、雪○喋、君△葱、水、資、二、白=18点
(久:単純そうな句なんだけど、うち+そと=全体、秋を十分感じさせてくれます。縄が2回、「の」が3回出てくると言う人がいるかも知れないが、これでいいと思います。 雪:縄跳びもこんな見方があるんですね。うちとそとに何があるんでしょうか? 君:うまいな〜。 葱:下五の季語は動くか、動かないか??? 白:これもごく普通の写生句のようですが、回転する縄が区切る2つの空間が巧妙に対比されているように感じます。このあたりをもっと強調していれば、私としては◎の句になったと思います。 )


三席
●子の部屋に入れば子のこと冬林檎=雪絵


◎水、百○五、二、秋△砂、夏、香=15点
(水:目新しい表現ではないけれど惹かれるのは、感情を共有できるから。 百:いない子の事を思う。 五:「こ」音のリフレインがいいですね。子供さんの心配をする母親が思い浮かびますが、おそらく一人立ちされて今は居ないのではと思いました。 夏:親の思いの深さが伝わります。)


【入選】

●山国の山の雫や龍の玉=砂太
◎澄、君△夏、五、水、喋、雪、二=12点
(澄:雫が龍の玉、なんだか幻想的で素敵です。 君:透明な雫も含め、落ち着いた色彩が。 五:山のリフレインの寂しさ。龍の玉と雫の対比。龍の玉は1月の季語みたいです。季節の先取りは減点。 水:龍の玉には不思議な輝きがあるけれど、山の雫だったとは。  雪:そう見えなくもない、かな。 葱:☆飯田龍太風を感じます。短冊に欲しい句。)

●相伝の黒き丸薬冬座敷=雪絵
○夏、水、資△香、メ、百、君、ス=11点
(夏:風邪をひいたりお腹をこわしたりしやすい冬と、相伝の丸薬がぴったり! 水:広々と、寒々とした富山の旧家を思う。 百:私のツボ 。 葱:☆佳句ですが、ややステロタイプでもあります。類想もあり、ということかなあ。)

●金赤色(きんあか)の気難しさよ三の酉=夏海
◎メ、白○久△五=9点
(白:金赤という色名を知ったのは社会人になってからでした。それまでは単に「赤」と呼んでいた色が、そのとき急により鮮やかに迫ってきた記憶があります。その金赤を気難しいと見た作者の視点に感服です。 久:キンアカの色を安定して出すのは本当に難しいですね。 五:ルビありはあまり好きではありません。金赤では駄目でしょうか?気難しさという言い方わかります。気後れにも通じる日本人独特の謙譲の美徳でしょうか? 葱:☆佳句。表現の面白さ。)

●一の日も二の日も石蕗の花の色=夏海
◎二○水、香△資=8点
(葱:「一の日、二の日」が分りませんでした、「酉の市」のこと?)

●ひらけごま六十回目の冬に入る=水音
◎秋○澄△喋、資、白=8点
(秋:心意気を感じます。 澄:素敵な世界が開けますように! 資:たしかに60回目の冬でした。納得。 白:気合がいいですね。何が飛び出してくるか分からない年齢に踏み込んでいく不安を吹き飛ばしてくれます。  葱:☆佳句。面白い、楽しい。)

●小春日や豆腐屋来れば歌う犬=スライトリ・マッド
◎葱○白△喋、雪=7点
(葱:「や」が来ているので「歌う」は「歌ふ」ではないか。吠えるのではなく歌うというのが眼目。 白:これといったこともない日常句なのですが、「歌う犬」が効いてます。吠えるでもなく啼くでもなく、歌うとしたところに楽しさがあるようです。  雪:豆腐屋の鳴物に反応するのかな?)

●大根干す撓みし竿の頼り無く=君不去
◎前○久△百、秋=7点
(久:水分が抜けていくので少し安心ですが。 百:重そう 。 葱:☆佳句。大根の重み、大きさを実感できます。)

●初しぐれ店番の居ぬ悉皆屋=スライトリ・マッド
○夏、五、雪△久=7点
(夏:不思議な、静かな時間を感じます。 五:悉皆屋は読めないし、意味を知りませんでした。染め物着物絡みですから、部長の句か? 雪:ふとしたことだけど、色々想像を掻き立てられます。 久:着物の直し屋さん、遠くなるなあ。)

●火を埋めて余分なことはよしにして=葱男
○百、白△砂、夏、秋=7点
(百:還暦ですもん。 白:本当に「余分なこと」ばかりしている毎日だと感じている今日この頃、すっきりと切り捨てていけるものをいつまでも抱えている自分に苛立ちを感じているときに、タイミングのいい句でした。 秋:「火」は二人の間の怒りの感情でしょうか? )

●錆鎌をしかと日向のいぼむしり=砂太
○資、メ、秋=6点
(資:晩秋のカマキリを良く観察していると思った。 葱:安心して読めるのは、基礎がしっかりしているということと同時に、類想もあり、ということか。)

●合いの手で見栄を張りたし酉の市=メゴチ
○砂、前△久=5点
(久:合いの手はやり取りということでしょうね。財布と相談したくなります。)

●還暦に届く日もあり日記買ふ=資料官
○二△君、前=4点
(葱:☆佳句。実感ですね〜!)

●波野から銀杏転げ外輪山=喋九厘
○君△葱、水=4点
(葱:ひと粒の銀杏の実から「外輪山」という壮大へパーン。)

●花ひひらぎ目隠しつけし女神像=夏海
○葱△二、ス=4点
(葱:美しい取り合わせです。「目隠し」の意外性がスパイスになって、三ツ星の味になりました。俳句もまず「素材」、そして「料理」。)

●日溜まりを独り占めする石蕗の花=五六二三斎
○メ△澄、前=4点
(葱:☆佳句。石蕗の葉の、太陽光発電パネルのような形を思い起こします。)

●百段の花ときものと冬日和=メゴチ
○澄、前=4点
(葱:ファッション誌「美しいきもの」や「きものサロン」を想起しました。例えば麻生裕未の黄八丈。)

●気丈なる母の煮豆や小六月=雪絵
○砂△香=3点

●実の内をさらけ出しなほ石榴かな=香久夜
○喋△秋=3点

●朝時雨味噌汁の香にて送り出す=君不去
○百=2点
(百:せめて,寒い朝できること? )

●鐘冴ゆる月型卍くずしかな=葱男
△久、メ=2点
(久:2つ別々のものだと思うけど、境内の心象、いいですね。)

●ケットルの湯気でほぐれるそぞろ寒=秋波
○ス=2点

●寂びさびと白し広野の冬桜=砂太
○葱=2点
(葱:「寂びさびと白し」には痺れました、まさに俳句味。)

●冬晴や大きな見出し日本一=五六二三斎
○ス=2点
(葱:年の瀬でんな〜。)

●群れ鳥の行方定めし鷹一羽=君不去
△五、前=2点
(五:鷹一羽の攻撃が群れ鳥の行方を変えたのでしょう。一瞬の空のドラマ。)

●丘ふみてふ帰る家あり秋の暮=資料官
△ス=1点

●川霧に五位鷺止む氷雨かな=秋波
△百=1点
(百:定型俳句って感じ。 葱:☆佳句。「止む」は平仮名でもいいかも。)

●きつぱりとこれが最後の賀状書く=資料官
△雪=1点
(雪:何か大きなことを決意した証しでしょうか?その潔さに感服です。)

●月齢をかさねて来たる木枯しかな=白髪鴨
△澄=1点

●旅憶ふ果物籠のもみぢ山=葱男
△砂=1点

●初鱈や月は西から欠けていく=白髪鴨
△澄 =1点

●蒲団雲掛けて眠れり冬の峰=スライトリ・マッド
△メ=1点

●忘れ物届けし父や冬紅葉=五六二三斎
△君=1点


【無選】

●一勝地や秋を見届け百歳余
(資:一勝地や大畑や波野とその風景に惹かれるが,地名を入れるところで終わっているのが惜しいと思う。)


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