*A部門入選作発表*

当季雑詠*全45投句(入選38句)

【特選】

一席
●クレソンの沢ごとバケツに持ち帰る=葱男


◎水、夏、ス○二、澄、秋△小=16点
(葱:水音さんへ、手元にある山本健吉の「季寄せ」では「クレソン=和蘭芥子」は三春の季語です。「クレソンの花」は夏の季語。 夏:「沢ごと持ち帰る」気持ってことですよね。その感性に拍手。 水:クレソンは無季なんですね。でも春の瑞々しさがあって、「沢ごと」がバケツの中に光を放っているよう。 ス:クレソン泥棒?!かくいう私も天然のクレソンもらったことありますが・・『沢ごとバケツ』がユニークですね。 秋:水と香草のひんやりした爽やかさが伝わります。 雪:好きな句です。ただ中七が字余りなので、沢まるごとに、ではどうかなあ?と。 白:感覚はよく分かるのだが、もう少し推敲があれば…。)


二席
●廃校舎花散る里の道しるべ=秋波


◎資、前○五、小△メ、喋=12点
(五:廃校の庭にはきっと大桜があり、里の道しるべなのだろう。 小:風景が浮かびました。有難う!)


三席
●浅蜊汁ざらつと棘のある言葉=水音


◎雪○白、秋△夏、君=9点
(雪:「ざらつと」が効いています。砂の残っている浅蜊をかんだ時のあのいやな感覚を思い出しました。 白:異形のことばをつかまえるその感官がおもしろい。 秋:何を言われたのか、気になる。 夏:浅蜊の砂を噛んだ感触と棘のある言葉、どちらもあるあると共感。)


三席
●あたたかしパン一斤の重さかな=スライトリ・マッド


◎砂○葱、メ△雪、白=9点
(葱:重さを暖かさに置き換える感受性。 雪:パンを買って帰る時、少しあたたかさが残っていれば、何だか得した気分になるのは私だけ? 白:TVコマーシャルのような日常句だが、そこにやさしさがあった。)


三席
●海に背を向けることなき桜かな=五六二三斎


◎メ、入○小△白=9点
(入:希望のみちのくに咲く桜かな。 白:桜の咲き方の有様を、いい視点から見ている。  葱:桜に正面と背後があるという考え方が面白い。)


三席
●をりふしの想いからめて四月咲く=水音


◎秋○五、メ△小、喋=9点
(秋:百花色とりどりの季節。思いも色々。特に今年は。 五:「をりふし」という古語?がいいですね。花咲くじゃ当たり前過ぎるので、四月咲くになったのでしょう。想いは想ひにして欲しかった。 小:「桜道レースのごとく透ける空」と迷いましたがこちらを選択!思いはそれぞれでしょうがホットな気持ちに。 葱:「四月」のところに何か具体性のある季語季語を持って来れれば、とも思います。)


【入選】

●うづ潮は時計まはりに春惜しむ=雪絵
○水、夏、君△ス、入=8点
(水:「時計回りに」が止められない時を表していて 春惜しむの感覚を際立たせてる。 夏:今にも引き込まれそうな大渦が見える。 ス:鳴門の渦潮ですかね?まるで急ぎ足で春が去るような感じもしてうまい。 入:春を惜しむ、時間を深く思う。)

●藤棚やふるさと偲ぶハーモニカ=五六二三斎
◎喋△澄、砂、メ、入=7点
(葱:唱歌が聞こえてきそうです。個人的には上五は「藤の花」のほうが字面も音も好きかも。 入:筑後平野の武蔵寺でしょうかね?私はピアノです。)

●フランスへ行きたし夜の恋猫よ=砂太
◎葱、白△ス=7点
(葱:「フランスへ行きたい」のは作者なんだろうけれども、「恋猫」に託した心情の奥には、若き肉体〈恋愛年令〉に回帰したいという願望も見てとれます。アツイ! 白:饒舌なフランス思想、奢侈なフランス芸術、老いた今も惹きつける。よし、夜のガスパールを買いに行こう。 ス:フランスと恋もの、定番っぽい感じもしますが、作者の心情も合わさって来るとおもしろい句だなあと。)

●山吹や瞬く生徒還暦へ=五六二三斎
○白、喋、入△水=7点
(白:先生の句かな…?。 入:山吹と還暦なんて素敵だあ。 水:うわぁ 「実のひとつだになきぞ悲しき」ですかぁ、、、私自身のことですが。)

●若楓賛成賛成大賛成=葱男
◎二○入△資、喋=7点
(入:正しい形態表現てどうしてパンクなんでしょう。)

●藤の花甘く父子をくすぐりぬ=喋九厘
◎小△メ、秋、前=6点
(小:母と子でなく父子の肩車でしょうか? 秋:父と子というのがいいですね。 葱:「藤棚やふるさと偲ぶハーモニカ」と対の句みたいですね。甘くせつない。)

●思わずも花弁わき立つつむじ風=秋波
◎澄○前=5点

●キャンディーの青きセロファン花しづめ=葱男
○雪、夏△二=5点
(雪:スーちゃんのこと、思い浮かべました。「花しづめ」がいいですね〜。 夏:巧みな句!キャンディーズは我々の妹世代で「スーちゃん」の訃報に寂しさ一入。)

●ご褒美のように木苺咲いており=夏海
○砂△澄、ス、入=5点
(ス:人目につかぬ場所に咲く木苺発見!やった〜!って感じしますよね。「や、を」の旧かな使ったらどうでせうか? 入:小さい頃木イチゴの赤はまさにプレゼントでした。)

●写楽絵の寄り目の向こうに風光る=メゴチ
○資△葱、二、秋=5点
(葱:モチーフが面白い!新境地の開拓ですね。ただ、「向こうに」の「に」は省いて「写楽絵の寄り目の向かう風光る」ほうが俳句的。 秋:写楽の目力! 白:感覚はよく分かるのだが、もう少し推敲があれば…。)

●惜春の青き背広や都府楼趾=砂太
◎五△葱、君=5点
(五:青い背広に惹かれました。青春となるのも面白い。 葱:「青き背広」という表現は句の背景にある「空の青さ」だと解釈しました。)

●子を叱り眠れぬ夜のシクラメン=雪絵
○二、砂=4点
(葱:シクラメンのうつむいた表情に作者の心情が重なります。)

●桜道レースのごとく透ける空=秋波
○ス△葱、前=4点
(ス:レース編みのレースですね。そういう見方もあったのかと再発見しました。 葱:「レースのごとく」が感性。)

●放たるるシェパードの群れ風光る=スライトリ・マッド
○葱△二、雪=4点
(葱:これはやはり「ダックスフンド」や「チワワ」や「マルチーズ」より「シェパード」が一番ですね、「放たるる」の開放感が爽やかです。 雪:一気に駆け出すシェパードの姿。その毛並みが太陽に輝いている光景。)

●リラ冷えの街懐かしみだれかの名=入鈴
○君△五、砂=4点
(五:変わった句だが捨てがたい措辞です。 葱:「だれかの名」のあとの余韻を愉しむべきなのでしょうが、ぷっつりと切れてしまう感じがしました。逆にしたらどうでしょう、「だれかの名リラ冷えの街懐かしみ」、これも口語的かなあ。)

●春更けてリヴァイアサンの表紙の絵=スライトリ・マッド
△資、夏、白=3点
(夏:海蛇とか? 白:見ているもの〈リファイアサンの表紙〉のおもしろさで選んだが、やはりもう少し推敲がほしかった。 葱:「海の魔神」はどんな表情なのでしょう。)

●姫辛夷にわかに雨の降る中に=香久夜
○水△前=3点
(水:「にわかに」が効いていると思う。 葱:「にはかに」だと姫がもっと綺麗。)

●宝満の麓うるほす穀雨かな=資料官
△五、水、秋=3点
(五:宝満は福岡の人間にとって馴染みある山。喋九厘さんの本も出ましたね。宝満は潤しますね。 水:「宝満」という字が穀雨により豊かさをプラスしている。 ス:宝満山、名前がいいですよね?!季語とぴったり。)

●牡丹園人つれづれに親しくて=砂太
◎君=3点
(君:長閑さと滑稽さが共に感じられます。)

●街粧ひにわかにZontag始まりぬ =白髪鴨
○喋△夏=3点
(夏:Zontagは「どんたく」と博多流に読むんですよね?! 葱:仮名遣いを「粧ひ にはかに」と揃えた方がいいでしょう。)

●病みてなほ瞳の端に花の塵=入鈴
○資△五=3点
(五:目が悪いのですか?心の病のように感じました。「愁ひなほ」かもしれません。)

●汐まねき愛の証にハサミ振る=メゴチ
○雪=2点
(雪:汐を呼んでいるようなあの動作、「愛の証」に見立てたところがおもしろい!)

●芝桜やうやう咲いて里霞む=香久夜
○前=2点

●ジャスミンやみな揃わねば咲かぬのか=ひら百合
○ス=2点
(ス:植物にも感情があるって聞いたことあります。震災追悼句にもとれそうですね。)

●花すもも真水をそそぐ津波の地=入鈴
○澄=2点

●遠足子電車の中を神妙に=雪絵
△君=1点
(葱:先生から「車中は静かに!」と諭されて、はしゃぐ気持ちを押さえている子どもたちの可愛らしさが感じられます。)

●かつお幟の縞鮮やかに鰹基地=夏海
△雪=1点
(雪:今年は大漁でしょうか。港の活気を感じます。 葱:「鰹基地」という言葉が効いています。)

●桜蘂ふる外堀の通学路=資料官
△水=1点
(水:赤く染まった道を色とりどりのランドセルが行く色彩感。)

●芝桜隠れた名所庭の隅=メゴチ
△澄=1点

●氷河期の亀は鳴くなり水曜日=水音
△資=1点
(葱:なぜ「水曜日」なのか、もうひとつピンと来ませんでしたが、「氷河期の亀」という発想が斬新でとても愉快でした。 雪:おもしろい句と思ったのですが、「水曜日」がどうしても解釈できませんでした。)

●まだ降るかまだ降らせるか雪四月=香久夜
△小=1点

●やまなしや何処も彼処も桃の花=資料官
△砂=1点


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