*A部門入選作発表*

当季雑詠*全49投句(入選38句)

【特選】

一席
●芽柳の風に曲線ありにけり=雪絵


◎資、砂、白、百○メ△前、秋、二=17点
(葱:風の視覚化、「曲線の風」が発見ですね。最初、「切れ字」がふたつありましたがご本人の申し出により、「芽柳や風に曲線ありにけり」を「芽柳の風に曲線ありにけり」に推敲しました。「切れ字」がふたつあったにもかかわらず砂太先生の天と26宗匠の人が入った「丘ふみ史上」に残る句となりました。資:枝の曲線を風のものとしたところがうまいと思いました。 白:風は直進しない。蛇行する。柳の描く曲線にその姿を見た目線に脱帽。曲線は詩の平面にある。ゴッホは「人生はおそらくまるく完全だ」と言ったと言う。 )


二席
●立雛に向かいて片言しきりなり=小夜女


◎前○資、水、香、秋、百△白、雪=15点
(水:幼子の可愛らしさに和みます。 秋:ほほえましい! 白:幼子の仕草、表情がありありと浮かんでくる。飾らぬ言葉がかえって情景を生き生きと伝えてくるよう。 葱:旧仮名遣いでは「向かひて」となります。)


三席
●雛祭り小さき町の膨らみぬ=雪絵


◎君、二○砂△小、白、ス=11点
(君:ホッとさせられる情景が浮かびます。 白:柳川の雛行列をニュースで見た。祭りのエネルギーは町を膨張させる。空間を膨らませる。  葱:公民館や体育館に地元の旧家から集めて展示されたおびただしい数の雛たちを思い浮かべます。圧巻です。町も膨らみますね、いい句です。)


三席
●広重を摺るあんばいの春夕焼け=夏海


◎水、喋○葱、白△ス=11点
(水:「摺るあんばいの」と見立てたところがいいですね。 葱:夕焼けがしだいに色を濃くする一時の、「広重を摺るあんばいの」、その表現の巧さが素晴らしい。 白:春の夕焼け色はどこか暖かい。それを広重の絵に見出しているのだろうか。色彩の暖かさを感じさせる。)


【入選】

●初桜空に一輪挿して来し=雪絵
◎葱○資、白、二△水=10点
(葱:下五の「挿して来し」に込められた気持ちに感動しました。これぞ俳句!という感じ。「初桜」を見て、それをもう一度心のなかで空に活け直したのでしょう。「活け花」のこころにも通じるものがあります。 白:〈想像の世界で〉桜の枝を手折り、それをひょいと空へ生ける。達人技です。)

●タンポポやしあわせいいえふしあわせ=葱男
◎香、雪△喋、砂=8点
(葱:旧仮名遣いでは「しあはせふしあはせ」でした。 香:簡単な言葉が並んでるのですが、言い得てると思いました。)

●三椏や軒丈低き武家屋敷=夏海
○雪△資、水、砂、五、二、ス=8点
(水:地方の小藩の武家屋敷の風情。)

●終の地へ旅の雛の終の旅=水音
◎メ○秋△資、白=7点 
(秋:流し雛の趣ある情景でしょうが、今はそうは読めなくてあまりにつらく、その重たさで◎に出来ませんでした。 白:言葉使いに意図を持った句だが、それがあまり生きていないように感じる。しかし雛の表象する世界は伝わってくる。葱:意味が正確には追いかけられなかったのですが、語呂といい、視覚といい、とっても気になる句でした。)

●紫雲英畑に大の形を残しをり=スライトリ・マッド
○葱、澄、百△二=7点
(葱:この時期にとっても癒される気持ちの良い句でした!!)

●春風や子に追ひつけぬ鬼ごつこ=砂太
○水、喋△葱、小=6点
(水:6歳児にでも決して追いつけない悲しさ。まさに子どもは春風。 葱:とてもいい歳の取り方ですね、私には子どもがいないので哀しいですが。)

●見返りの乙女椿の立ち姿=香久夜
◎澄○喋△夏=6点
(澄:りんとした感じ! 夏:「乙女」で切るか「乙女椿」で切るか迷いました。どちらで読んでも魅力があるので採りましたが、誤読させない工夫しどころもあるのかも。)

●両腕に抱くは菜の花色の島=夏海
◎五○二△澄=6点

●梅の香よ届け長きに病むひとへ=秋波
○夏、小△澄=5点
(夏:梅の香りは仄かで、病む人を力づけるのには程よい。作者の優しさも伝わる。)

●この風の名こそ知りたき山木蘭=白髪鴨
○五△喋、メ、百=5点

●菫野やギア入れ換える時来たり=水音
○君、メ△秋=5点
(葱:おそらく、ここから何十年と、私たちが死んだあとまでも「放射能」の除染作業は続けられなければならないのでしょう。何兆円という血税をかけて・・・。何百年に1回という地球規模での大地震にみまわれた我々の時代の<負の遺産>です。敦賀の「もんじゅ」の<炉内中継装置/落下事故>の回収もまだ見通しが立っていません。こちらの燃料棒は福島の比ではないそうなので心配です。)

●ぼんやりと彼岸桜の咲く都心=五六二三斎
◎小△葱、メ=5点
(小:本来ならば多くの視線を浴び誇らしい桜だったはず、人間だけでなく森羅万象を震撼させられてますね。 葱:今の首都圏のことを思うと、重い句になりますね。)

●畦消えて憤ろしき春のなゐ=ひら百合
○香、君=4点

●いしだたみいしがきに猫木の芽どき=葱男
◎ス△資=4点
(葱:自句自戒ですが、「石畳石垣」は漢字のほうが良かった。 白:残念ながら選外だが、好きな句でした。 )

●開花待つ石の六条橋ぬくし=香久夜
◎夏△葱=4点
(夏:開花を待つと言えば桜に違いないが、それを言わずに橋の温みを季語に据えた辺りが巧み。石のぬくぬくした感じが伝わって春らしい! 葱:「花待つ」に「ぬくし」が心地よいです。)

●クローバの海へ飛び込む仔犬かな=スライトリ・マッド
○澄△夏、秋=4点
(澄:メチャかわゆい^^。 葱:「クローバ」が砂浜であることは想像できます。情況は映画的シーンに美学がありますが、「クローバの海」という措辞にひっかかりました。)

●漂ひし魂ひ送り辛夷咲く=君不去
◎秋△夏=4点

●故郷と同じたんぽぽ江東区=五六二三斎
○ス△砂、雪=4点
(葱:詩情があります、たとえば谷内六郎さんのイラストのような。)

●みちのくに鉄路の響き花辛夷=資料官
△水、香、澄、雪=4点
(香:やさしさと力強さを感じました。)

●肩の荷を一つ下ろせる弥生尽=五六二三斎
○前△小=3点

●原初より連なる鼓動地震の春=水音
○雪△君=3点

●三月のやまとにささぐキリエかな=スライトリ・マッド
○夏△前=3点
(夏:過去も含めて なぜか三月には悲しい出来事が多い。憐みの讃歌を捧げることに共感。 葱:「キリエ」ってミサ曲なんですね。)

●春暁やひっそり祝ふ新幹線=資料官
○ス△香=3点
(香:ちっともニュースにしてもらえなかったですね。)

●震災に生まれし子らや春誓ふ=香久夜
○小△喋=3点

●大波や節目の春を持ち去りぬ=前鰤
△メ、百=2点

●おおなゐの後の暗闇冴返る=資料官
○砂=2点

●紅の薔薇の芽に愛問ひにけり=砂太
○五=2点
(葱:堂々として「愛」を詠むところが好きです。)

●春田ゆく流れの描きし絵一葉=君不去
○前=2点

●ガンバローと旅ぐらふぁーの春待日=喋九厘
△香=1点

●この花を見納めとする覚悟かな=前鰤
△百=1点
(前:原発作業員を思う。 葱:俳句としてというより、人間としていい。)

●亡き友の笑顔の向こうに黄水仙=メゴチ
△前=1点

●張り詰めた街に辛夷の花照らす=小夜女
△君 =1点

●春遠し地の雄叫びに声もなく=秋波
△君=1点

●雪解や線路の耳と貝の耳=葱男
△二=1点


【無選】

●灯り消え闇鍋嬉し春の夜
(葱:「闇鍋」は冬の季語です。わざわざ季の違う語を持って来たのは<この句の文脈から想像すると>、昨今の東日本の計画停電を詠んだものでしょうか?子どもなら突然の停電で寄せ鍋が闇鍋になったらちょっと嬉しいのでしょうが、今の時期、大人が単純い嬉しいとは思えるのかなあ。それとも、こんな時期こそ笑って元気を出そう!ということかしら。)

●亡き友や悔し涙の斑雪
(白:久々の便りは訃報くらいしかない歳になってしまった。斑雪がその悲しみを静かに表象しているが、「悔し涙」という表現が直載すぎる気がして選外。)

●轢かれたる栗鼠と掃かれて花楓
(葱:シュールな実景です。これを「花鳥諷詠」と云うのか、「客観写生」と云うのか、面白い句です。)

回りつつ落ちてゆく凧遠野原 (葱:これもまた、震災を遠くから詠んだ句でしょうか?)


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