*A部門入選作発表*

当季雑詠*全43投句(入選32句)

【特選】

一席
●口笛が追い越して行く春小路=夏海


◎砂、二、百○喋、入、メ△雪=16点
(百:口笛を吹きたくなる暖かさ 。 雪:そういえばこの頃、口笛を聞きませんね〜。)


二席
●冴返る耶蘇聖堂の畳床=夏海


◎水、ス○葱、雪、白△二、五、香=13点
(水:五島の小さな教会を想像しました。畳床の湿った冷たさが早春そのもの。 ス:昔の教会は和洋折衷だったのか?カモフラージュ用だったのか?興味深いです。 葱:「耶蘇聖堂の畳床」の語感ですね。 雪:神聖な空気がびんびん伝わってきます。 白:畳敷きの教会。そこにある祈りはどのようなものか。 五:上手い。春寒だが畳床に祈りの暖かさを感じる。)


三席
●お日様の音降りてくる猫柳=スライトリ・マッド


◎夏○二、五、資△雪、メ、澄=12点
(夏:「お日様の音」が良い。 五:O音の繰り返しが良い。猫柳を照らすお日様。光線の強さを音にしたのが成功。 澄:音と光 宇宙の源ですね。 雪:光を音にとらえたところがいいですね。 葱:抒情がありますが、「音」にすこしひっかかりました。)


【入選】

●叱らるる犬の上目や春一番=スライトリ・マッド
◎入、小○砂△喋、夏=10点
(葱:「春一番」がよく合いますね、好きな句です。)

●世のうねり地のうねり猛し浅き春=君不去
◎澄、香○水、小=10点
(澄:うまい! 香:どうにも抗えない自然の力強さと、どうにかしようとする人間の力を感じます。 水:「浅き春」というのは心象的にモノクロですね。)

●人去りて紅梅ぽつと匂ひけり=雪絵
◎前○ス△葱、秋、百、夏=9点
(葱:「ぽつと」で一輪咲きましたね。 ス:何か不思議な感じがする句。作者は透明人間のようにも思えてきます。 秋:梅の香はほんとに誰のものなんでしょうね。 百:しみじみとしてるのがいいです 。)

●桃の花ドラマはひとの目にふれず=葱男
○秋、水、メ、夏△砂=9点
(秋:いつの間にか桃の花が膨らんでいる。ドラマという表現がいいですね。 水:しっかりと見えるものと、目に触れない物の取り合わせが面白い。)

●天空に生まれしままの春の月=五六二三斎
◎喋○夏、資△百=8点
(夏:「生れしままの」に惹かれました。春らしい! 資:手を伸ばせば届きそうな春の月ですね。 百:つるっとまん丸い 。)

●春風を掴んで風車回りけり=雪絵
○葱、砂、澄△水、小=8点
(葱:「掴んで」と「掴みて」、「けり」で終わっているから文語的には後者なんだろうけど、勢いは前者にあるように思います。このへんが「俳句的」にはどっちなのか分らない。 澄:いいですね! 水:春らしい長閑さ。「掴んで」がいい。)

●ビリケンのブリキロボット春動く=スライトリ・マッド
○雪、喋、白△砂、水=8点
(雪:「春動く」が少し気になりましたが、どんな物か見てみたい! 白:春は不器用にやってくる。そのメタファーがうまい。 水:こんなのがあるんですか?ギクシャクした動き(多分)と春の胎動を思わせる。 )

●仏壇の祖母のほほゑみ雛飾る=資料官
◎五○澄△砂、雪、前=8点
(五:雛まつりに祖母の代からの雛が飾られているのだろう。歴史を感じさせる。 澄:ジ〜んときます。 葱:しみじみと佳い句だと思います。)

●献梅の札古り春は浅くのみ=砂太
◎白○資△入、ス=7点
(白:「古り」という言い方があるのか…。しかしここで切れて「春は浅くのみ」という表現が際立ってくる。 ス:どちらの梅の木なんでしょうかね?古語を使うと落ち着いた感じがしますね。)

●行人に川風ゆるむ猫やなぎ=白髪鴨
◎雪○百、前=7点
(雪:中七に作者のやさしい眼差しを感じます。いい句ですね。 百:漱石の「行人」 を思い出して・・。 葱:四条あたりの鴨川を思います。)

●春立つや恋色となり朱鷺の舞ふ=水音
  ○香△二、メ、資、前、白=7点
(香:「恋色」きれいな表現ですね。 資:佐渡の空を舞う朱鷺色が目に浮かびます。 白:恋の色は忘れてしまった。)

●目ぢからのゴッホ自画像冴え返る=雪絵
◎葱○ス△澄、夏=7点
(葱:「目ぢから=ゴッホ=冴え返る」、決まり! ス:たしかに目ぢから感じますね。ゴッホの不遇な生涯と季語が合ってます。 澄:ゴッホの絵、素晴らしいですよね。)

●水運ぶをんなの背すじ麦青む=葱男
○香△喋、入、水、ス=6点
(香:頭に載せて?「麦青む」の季語に惹かれました。 水:西洋の絵画のよう。「水運ぶ」とはどういう状況? ス:どこの風景でしょう?日本で見られますか?)

●春潮を地球に汲めば溢れ出づ=水音
  ◎資△五、香=5点
(資:春の水の地球を詠んだスケールが大きな句。 五:正木ゆう子風な句。 香:スケールの大きい句です。)

●荒東風に一歩ためらひ裾握る=君不去
◎秋△香=4点
(秋:思わずの仕草。裾の次は髪が気になる? 香:世の荒波に漕ぎ出せるかな?)

●早梅や母老いてなお多感なり=白髪鴨
○百△葱、秋=4点
(百:「なお」まだ枯れてない 。 葱:「多感」で老人を形容したところがいい。でも、切れ字がふたつ、「なお」は「なほ」ですね。 秋:母親のちょっとした仕草や表情に色気や可愛らしさを感じとる。温かい眼差しです。)

●ポケットに酒のフラスコ山覚むる=夏海
○前△秋、白=4点
(秋:早春の山歩きでしょうか。こういう時はウィスキーなんでしょうね 。 白:本当は飲みもしないのに酒をフラスコに注ぐ。そして山と一緒に春に目覚める。)

●足跡を連れて異国へ春の浪=水音
◎メ=3点 

●獺の小鼻ふくらむバレンタイン=葱男
○二△ス=3点
(ス:カワウソとバレンタインの取り合わせが面白い。)

●気の荒い老婆と知らず浮かれ猫=香久夜
○秋△入=3点
(秋:ユーモラスで楽しい句です。)

●春泥や無人駅まで急ぐ道=資料官
△五、前、小=3点
(五:無人駅だから、田舎の風景だろう。下五に一工夫欲しい。例えば「半里あり」とかどうだろう? 葱:下五になにか詩情がほしい。たとえば「春泥や無人駅まで手をつなぐ」みたいな。)

●沈丁も蕾ほどかず二月尽=君不去
○入△白=3点
(白:何かをやり残している。その感覚が奇妙な緊張を誘う。)

●ぼたん雪とけて昭和の色消へる=資料官
○五△メ=3点
(五:雪がとけて、カラフルな平成が見えてきた。)

●紅梅や風生句碑に弟子孫弟子=砂太
△葱、資=2点
(葱:「孫弟子」を付けたところがいい。 資:にぎやかな吟行風景が浮かんでくるようです。)

●白魚が小皿の中で生きている=メゴチ
○小=2点

●尋ねよう夫妻メジロと飛梅に=喋九厘
△小=1点

●土ほぐれ白梅の香を含みけり=香久夜
△百=1点
(百:土に落ちた白い花びらも清しい。)

●半島の嫗漁るあさりかな=入鈴
△喋=1点

●窓ごとにまだ降りしきる牡丹雪=香久夜
△澄=1点
(澄:建国記念日の雪凄かったですよね!)


【入選】

●二分咲きの梅園と言ふ静けさに
(葱:詩情がありますが、「に」の生み出す余韻はこの場合、俳句的であるのかどうなのでしょう。)


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