*A部門入選作発表*

当季雑詠*全51投句(入選43句)

【特選】

一席
●観音の千手より散る紅葉かな=五六二三斎


◎夏、香、水、小、澄○久、資△砂、雪、前、君、秋=24点
(水:静かで綺麗ですね。 小:屋外に安置されている千手観音は見たことがありませんがどちらでしょうか?美しい! 久:紅葉の塊は千手のようなものですね。発想が面白いです。 雪:外にある観音さまですか?ちょっと情景がつかめなかったのですが、とてもきれいな句ですね。 葱:「千手より」紅葉が散るように見える情景には少し無理があるように思いました。「さもありなん」と手を打つか、作為的だと感じるかの分かれ目です。)


二席
●標識の文字ゆがませて氷雨かな=ひら百合


◎久○砂、前、ス△香、小、秋=12点
(久:還暦前の身にはよくわかります。目の老化があり雨一滴で錯覚がありで、しかも寒い中。 ス:泣いても文字がゆがみます。)


三席
●石仏は目を閉ざしまま竹の春=小夜女


◎資○砂、香△喋、ス=9点
(ス:瞑想してるんですかね?! 葱:季節が戻るのはあまり気持ちよくないのは、すでにこちらが「俳句脳」になっているのでしょう。)


【入選】

●冬立ちてシェイクスピアを少しずつ =白髪鴨
○夏、百、二△葱、資=8点
(百:そういう気持になりますね。 葱:「冬立つ」に少し老いが滲んでいるようで、新しいものを追うばかりではなく、古典に還るのもそろそろいいのかな、なんて感じます。)

●留守中に子の来し気配冬帽子=雪絵
◎砂○水、小△二=8点
(水:母が子を思う気持ちが読み取れます。)

●落ち葉道逝きし人々遊びくる=香久夜
◎五○水△久、メ=7点
(五:落ち葉の舞い散る様は、あの世からの使者に会ったような錯覚に陥る。そんな気持ちを詠んだ句では? 水:枯葉の音に人の気配を感じることがよくあります。 久:振り返れば来ていそうだが、敢えて後ろを見ない。踏みしめる音で偲ぶさ。)

●畳まれし線路の果や鱈揚る=葱男
△夏、砂、白、喋、雪、君、ス=7点
(白:マラルメの夜は詩句のなかに畳まれ、複数の次元はスーパー・ストリングの中に畳まれ、ライプニッツの思惟は襞の中に畳まれる。畳まれた線路は「迷い」か。 雪:何だか寒々とした光景ですね。 ス:どこの光景でしょうか?)

●遠山にあたる薄日や初時雨=君不去
◎前○秋△澄、百=7点
(秋:狐の嫁入り!子どもの頃それだけで色々空想が広がったものです。 百:局所的な気候の変わりやすい季節 。)

●冬薔薇アーチの空を駆け上がる=水音
○雪、ス=4点
(雪:「アーチの空」がいい! 葱:薔薇にはアーチがよく似合いますね。 ス:なんだか明るくいい感じ。)

●ほほ染めし遠き小春のけんけんぱ=香久夜
◎喋○葱△夏、メ=7点
(葱:懐かしき昭和の遊び、「ほほ染めし」に詩情がたっぷり。)

●来れば寄る島の居酒屋吊し柿=砂太
○香、秋△水、前=6点
(秋:どこの島なのかわからないけど、お魚もおいしそう。 水:行ってみたい。 葱:意味は分かるのですが、「来れば」だと島民の側からの物言いのように感じがします。)

●月氷る月をウォトカに浮かべけり=葱男
◎ス○五△雪=6点
(ス:飲めませんが美味しそう!五:これは葱男部長句だろう。月と酒だし。 雪:冷たく張りつめた空気、黒と金色のゾクッとする世界。ちょっとオーバー?)

●柚子の茶のハングル文字と親しめり=夏海
○百△久、資、五、澄=6点
(百:韓国で柚がよく育つのでしょうかね。 久:3文字大きく書いてあるヤツですね。ユ・ジャ・チャ。 五:ハングル文字が読めないのを親しめりと表現したのがうまい。柚子は10月の季語みたいだが、良しとしよう。)

●街路樹の落葉やガロのしやがれ声=五六二三斎
◎雪△小、君=5点
(雪:「学生街の喫茶店」懐かしいなぁ〜。 小:耳に響いてきました。 葱:思い出しますね、ガロの「学生街の喫茶店」。この句の裏側には学制時代の喫茶店でのデートの思い出が潜んでいると読みました。)

●かさりとて団栗落ちて耳すます=秋波
◎百○澄=5点
(百:うちの近くにも柏の樹がたくさんあります 。 葱:「かさりとて」の「とて」に少しひっかかりました。「オノマトペ+〜と」なら決まるんじゃないでしょうか?)

●体重の乗らぬ言葉や霜の夜=水音
◎白○メ=5点
(白:「いつでも人は、話し言葉(パロール)の順序で始めるのであって、言葉(ランガージュ)の順序で始めるのではない」(ドゥルーズ)。私自身、パロールを忘れて言葉の重みを失っている。  葱:面白い表現ですね。)

●団栗をまだ拾ってる熟女かな=小夜女
◎君○久=5点
(君:「まだ」で決まり! 久:まだ、が執念でしょうか。 葱:雰囲気ありますね、熟女もいろいろですね!〈笑〉)

●ふりむけば索具(リギン)奏でる神渡し=白髪鴨
◎葱○澄=5点
(葱:「索具」を検索したら「マストや帆を支えるロープやチェーン類一式」とありました、なるほど、ヨットを楽器にみたてればこれは間違いなく「神渡し」。)

●誇らしく雪吊りされて松立ちぬ=君不去
○葱、小△百=5点
(葱:正統派の句です、美しい。 小:ホントホント。作者は健康であられるのでしょう! 百:金沢かな。)

●連綿と歩幅やさしき雪の浜=久郎兎
◎メ△葱、二=5点
(葱:「連綿」がいいですね。情景が浮かびます。)

●茶の花やうつむくあなたのひとりごと=君不去
△香、小、資、喋=4点
(小:昔を懐かしんでおられたのでしょうね。 葱:「茶の花」は大好きな季語です。「茶の花や寝顔を見せてくれしこと 」、文学の森博多句会で取締役専務、企画出版部長の「大津桃子」さんに褒められました。)

●初雪の真中へダンスするやうに=葱男
○白、雪=4点
(白:所作の切り取り方に共感。真中は「まなか」と読んでみると情景が変わって見えた。 雪:雪がめっきり降らなくなった福岡。この歳になっても雪を見ると、何だか心が浮き立ちます。)

●冬日和退院間近の母がおり=メゴチ
◎秋△百=4点
(秋:「冬日和」から侘しげだけど穏やかな温かさが伝わります。 百:入院退院をくり返します。 葱:文語ですから「をり」です。)

●水切りの石は川面へ冬紅葉 =夏海
○喋△五、秋=4点
(五:冬紅葉と川の冷たい水は合う。)

●立冬の宮座に集いて酒を注ぐ=喋九厘
◎二△前=4点

●山茶花のはらりはらりと母縮む=資料官
○喋△白=3点
(白:いつもなら選外とするような句だが、母と二人住まいをしている現在、母の「縮む」姿には共感してしまった。  葱:以前にも「母が縮む」、という表現があったように記憶しますが、実際腰も曲がり、身長も縮むのかもしれませんが、何故でしょう?「縮む」は物質的なものに対して使う用語のような気がして「精神性の母」を詠む句ではやや違和感がありました。)

●島墓地に遠き声あり木守柿=砂太
○五△夏=3点
(五:島は能古島だろう。砂太先生の吟行句であろう。実景句には叶わない。 葱:「島墓地」という言葉は造語でしょうか? 「島の墓地」のほうが丁寧な言葉遣いだと思いました。)

●生姜酒ふたつの時制を反転す=白髪鴨
○メ△ス=3点
(ス:生姜に私もはまってます。 葱:面白い言葉の汎用だと思います。この場合の時制とは「過去」と「未来」のことでしょうか?生姜酒は風邪気味の時に飲むものですから、余計に頭が朦朧としたのか。)

●今帰仁の盛衰知るや冬の蝉=雪絵
○夏△久=3点
(久:敗戦前の沖縄の歴史を殆ど知らない。冬に蝉がいるの? 葱:「琉球王朝」の歴史には世界平和実現のヒントがあるように思います。琉球王朝の外交は剣を置いてサンシンを持つこと、と何かの本にありました。)

●神渡しヴェールの襞をくすぐりぬ=雪絵
○資=2点

●枯野原セピアに輝く午後3時=秋波
△香、水=2点
(水:「午後3時」からすると東日本の情景のようですね。)

●大根干縄の向こうに孫の顔=メゴチ
○君=2点

●てんつくてん冬の皇帝ダリアかな=スライトリ・マッド
△砂、二=2点
(葱:「天突く天」ですね!面白〜〜い。)

●ドップラーの音を聞きつつ冬に入る=スライトリ・マッド
○白=2点
(白:確かに不思議と、ドップラー音は冬の町に似合う。調子を外された感官に、賑わいの影に隠れた空しさがある。)

●富士見坂のどれも急坂冬帽子 =夏海
○二=2点
(葱:前、スマスマでキムタクが東京23区の50の坂を駆け上がる、という企画番組を見ました、とにかく凄かった!尊敬します。)

●冬の星父母の年まで数へけり=五六二三斎
○前=2点
(葱:「父母」だとぼやけるように思います。ここは「父」か「母」に絞ったらどうでしょう。)

●目玉光る一両電車冬来る=スライトリ・マッド
○君=2点
(葱:頑張ってますね、一両電車。京都では出町柳から鞍馬までの「京福電車」があります。)

●秋の夕心うつして鹿のなく=秋波
△澄=1点

●落葉積む坂なり転ぶか転ばぬか=砂太
△葱=1点
(葱:意外な展開も一興。)

●落ち葉舞う水面に子らの声遠く=香久夜
△メ=1点

●鎌倉のままに紅葉す源氏山=小夜女
△白=1点
(白:鎌倉へは年に数度行っているが(観光じゃなくヨットレースで)、鎌倉には何か特別なものがある。同じ古都ながら京都や奈良とは違う。京や奈良は形容詞になるが、鎌倉は副詞になる。)

●ジグソーのピース集めて柿落葉=メゴチ
△水=1点
(水:突風が吹き込んで、一瞬でデパートの綺麗な床に落ち葉が散乱した。とても綺麗で何かのイベントかと思った。そんな情景のよう。 葱:これは二句一章の句ですから「集めて」と繋ぐより「集めし」と言い切る方法もありです。)

●檀ふみの家の落葉を踏みしめつ=資料官
△五=1点
(五:この実景句は資料官さんだろう。檀一雄の実家の傍にお宅があるとのことだから。檀一雄の母、高岩とみの母は原の家から嫁に行き、遠い親戚になる。高岩とみは「火宅の母の記」を書いている。檀一雄を捨てて出奔した。檀ふみには四回くらい会ったことあり。今回、無法投区に写真を掲載する。俳句はさておきになった。資料官さんも檀ふみファン? 葱:「檀ふみ」で「ふむ」かあ〜〈笑〉。)


【無選】

●暮易しメロスのごとし走る帰路
(葱:音的に「し」のくり返しはしっくりときませんでした。すんなりと「暮易しメロスのごとく走る帰路」でもよかったような。)

●タワー邸運河渡るや長き影
(葱:「タワー邸」というのがよく分かりませんでした、すんません。)

●初霜の露天風呂より愛ラブ湯
(葱:句風が変わらないなあ〜〈笑〉)

●冬薔薇卒業以来のクラス会
(葱:「丘ふみ」は毎年というのが素晴らしい。5年に1回ってなところが多いですもんね。)


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