*A部門入選作発表*

当季雑詠*全52投句(入選41句)

【特選】

一席
●一番は母であること福寿草=水音


◎香、喋○入、メ、君△小、二、白=15点
(香:お母様への慈しみを感じました。また、母親であることの誇りと娘さんへのエール?ともとれます。葱:母は強し! そしてめでたし! 白:むすめ、おんな、つま、はは…男には分からぬ幸せの階梯を女性は生きているよう。雪の下から顔を出す小さな花がそれを物語っている。)


二席
●雪道の赤子のやうな無心かな=水音


◎葱、五、百△夏、秋=11点
(葱:不思議な感覚表現の句です。私の解釈では「雪道を歩くときの我が心の無心」、かと。 五:無心とは何か?たいへん気になる作品です。子供の無心ではないところが面白い。傑作だと思いました。俳句とはやはりユニークな視点に出会うことだと思います。 秋:わかります。気を抜くとあっという間に尾てい骨強打です。)


三席
●素っ気無き子の声今日も冬菜炊く=君不去


◎水、資○砂、秋=10点
(水:「冬菜炊く」とは、くたくたになっていく冬菜を見ていたり、菜箸でつついたり、母の気持ちですね。 秋:またかと言われても、冬はやっぱり煮物でしょう。)


【入選】

●着ぶくれてちよこんと顔や乳母車=雪絵
○葱、喋、秋△砂、小、君=9点
(葱:可愛い! 赤ちゃんのころは構い過ぎぐらいがいいでしょう! 秋:可愛らしさが伝わります。) 

●寒空に貴婦人のごと麒麟の背=雪絵
◎入○二、香△水、五=9点
(香:背筋、伸びてましたか? 水:麒麟の背の優美な曲線を見上げると背越しに冬空が。 五:冬の動物園でしょうか?設定がユニークなところに惹かれました。 葱:中七、下五の表現は好きです。ひとつ言うと、季語が動くかなあ〜。)

●冬晴れに雲より速く歩きけり=香久夜
○夏、水、百、白=8点
(夏:寒い中のんびりとは歩けないが、晴れ間を喜び楽しんでいる様子が伝わる。 水:寒いから?気持ちがいいから?とにかく速く歩き気持ちがよくわかる。「雲より速く」がいい。 白:おおらかな気持ちよさがすなおにしみこんでくる。このような散歩を私たちはするべきなのだろう。)

●女正月鍋へとぷとぷ足すミルク=夏海
◎砂○雪、ス△葱=8点
(ス:とぷとぷの語感がよい。ミルクと女正月も合ってますね。 葱:「女正月」と「とぷとぷ」の擬音がうまく呼応しています。鍋はシチューか?)

●臘月や六十四たび貧の文字=葱男
◎白○メ△二、資、雪=8点
(白:人生の重さを否応なく突きつけてくる。そのせいで最初は無視していた句だが、やはりその重さにひれ伏してしまう。)

●真空の帳にはりつく寒三日月=秋波
◎夏○澄△喋、百=7点
(夏:上五中七の措辞が冴えてます。)

●灯明を上げて四日の紅を引く=夏海
◎二○砂、ス=7点
(ス:三が日を終え、ハレからケへ戻る日がよく表されていると思います。 葱:四日の初出勤でしょうか?灯明を上げてからの出勤はちょっと危ないか?)

●春を待つ大きな時計博多駅=五六二三斎
◎ス○葱、水=7点
(ス:九州新幹線全線開通を待つにふさわしい句になりましたね。 葱:待春と時計はやや付き過ぎかもしれませんが、実景ならではの説得力が感じられました。 水:見たままの句のようなのに「大きな時計」に春を待つ気持ちが強く感じられる。)

●万年青生け生命というものをおもう=秋波
◎メ○白△資=6点
(白:生命というものはこの宇宙の空間、時間を通じて非常に稀有なものだと思う。そして生命を思考する精神はさらに稀有なものだ。しかしその精神ですら無限の有様が可能なのだ。 資:万年青を生けるのは難しいと聞きました。万年青の実は秋の季語ですが,あえて冬にその生命力を讃えたところが良かったと思う。 葱:「万年青」という字面からの連想でしょうか?)

●最強の冬靴なんでも踏みつぶす=葱男
◎小○五△メ=6点
(小:冬靴に限った事ではないでしょうがブーツを履くとそんな気持ちになりますよね。 五:冬も明るく楽しくないといけません。嫁さんだけには履かせたくはありませんが〈笑〉。)

●埋火や「東京/パリー」の汽車切符=夏海
○二△水、入、ス=5点
(ス:戦前シベリア経由のパリ行き切符が買えたみたいですね。季語とよく合う。 葱:よく分らなかったのですが、実際にそんな切符があるのでしょうか? 「埋火」とは願望か?)

●爺喜寿瓢ひようと有り去年今年=砂太
○喋△入、香、ス=5点
(香:お元気で。 葱:「喜寿」になっても飄々と俳句を詠んで生きていたいものです。 ス:ご本人かお知り合いかわかりませんが、挨拶句はお目出度い感じがします。)

●シェパードの肉球太し春隣=スライトリ・マッド
◎雪○香=5点
(雪:おもしろいところに、目が行きましたね! 香:なぜか、ほんわか暖かさを感じます。)

●丹頂と白煙残し冬の汽車=喋九厘
○夏、百△秋=5点
(夏:丹と白の色の対比が綺麗。 秋:雪の田園風景には哀愁を帯びた機関車の汽笛が妙に合うのです。)

●冬木の芽一輪挿しに綻びぬ=香久夜
○澄△夏、水、百=5点
(水:うちの花瓶にもほころびている枝が。生命感があります。 葱:佳い句だと思います。)

●雪をかき灰をかき生く弧列島=君不去
○入△砂、香、二=5点
(香:大変な冬になりました。猛暑の後は大雪、火山の爆発まで!)

●新燃のマグマ凍空に割り入る=スライトリ・マッド
◎秋△小=4点
(秋:本当に新燃岳の噴煙は息をのむばかりでした。)

●盲聾の子らの笑顔や春隣=君不去
○小△香、メ=4点
(香:生まれながらに、子供は無邪気な笑顔をもってます。)

●初東雲船首(ステム)をたたく硬き波 =白髪鴨
◎君△入=4点
(君:「硬き波」に厳寒を感じました。)

●大寒や風に微かな希望あり=五六二三斎
◎澄=3点

●灰色に染まる街並み室の花=五六二三斎
○資△雪=3点

●初山河母のいる場所わが山河=水音
○五△資=3点
(五:効果的な繰り返しですね。母上は亡くなられているようですね。)

●日脚伸ぶスカイツリーの先の先=資料官
○雪△秋=3点
(秋:地デジ化には冷ややかでも、かの塔には妙にワクワク感があるのは何故なんでしょう。)

●一隅に明かり並べる黄水仙=香久夜
○小△葱=3点
(葱:ここはやはり「いちぐう」の読みですね。)

●鷽替えや闇に溶け行く細き影 =白髪鴨
○資△喋=3点

●手土産と葉付き大根ぶら下げる=小夜女
△五、君=2点
(五:威勢のいい句です。砂太先生句かな?お宅の前の畑でつくっておられたようですし。 葱:意味としては「手土産に葉付き大根ぶら下げて」あるいは「手土産に葉付き大根ぶら下げ来」のどちらかのような。)

●歯が疼くそれでも雪見の長湯かな=秋波
○君=2点

●春を待つ鳥ヒト犬の水飲み場=スライトリ・マッド
△葱、澄=2点
(葱:並びを「鳥犬人」ではどうでしょう?)

●弾初のぴあの聞いていさふな父=入鈴
△メ、ス=2点
(ス:父親は煙たい存在。でもピアノを通して家族の絆を実感している子の気持がよく伝わります。)

●雪かきの早起き隣もお向かいも=ひら百合
△砂、喋=2点

●風花を追いし子犬や襟合わす=メゴチ
△澄=1点

●門松の打放しあり匝瑳(そうさ)の里=入鈴
△百=1点

●校内放送告ぐるチャイムや春隣=雪絵
△白=1点
(白:学校ほど季節を表す顔を持っている場はないだろう。それは記憶の中で次第に醗酵し味わいを濃くしていく。 )

●コート脇行き交う球や日脚伸ぶ=メゴチ
△夏=1点
(夏:何気ない日常ながら、ふと日が長くなっていることに気づく瞬間に共感。)

●タミフルや三寒四温夢の中=メゴチ
△君=1点

●初能や着物の波に越後聟=ひら百合
△白=1点
(白:越後聟をネットで調べていたら誰かのブログに突き当たった。初能の観劇記。獅子舞のすばらしさが書かれていた。着物の波は観客のそれではなく、踊手の動きにつれて波打つ衣装のそれだとしたら…。)

●よみがへるさくらはやぶさ春隣=資料官
△五=1点
(五:鉄ちゃん2人の喜びを感じて頂きました。滅多に鉄道モノは採りませんが〈笑〉。)

●冬三日月にやにや笑い肩越しに =白髪鴨
△澄=1点


【無選】

●かつぽ酒酌む除夜の炎を守りつつ
(葱:「かっぽ酒」は「かっぷ酒」? 博多ではそう言うのか?)

●三世代顔を炎に染め除夜詣
(葱:良い新年を迎えられましたね、おめでとうございます。)

●省エネの暖なきバスの寒さかな
(葱:「暖なき」→「寒さ」は当たり前なのでなんとかしたい。)

●ジョギングに雪の背振に朝日映ゆ
(葱:「に」の使い方に一考。)

●友にぎる蕪鮨食むひとり酒
(葱:「友にぎる」だと時が曖昧か。)

●流氷やオホーツク閉じて凍る息=喋九厘
(資:まさに北海道旅行者の句でしょう。気持ちはわかるが,流氷は春の季語だし凍ると重なっている。)


A部門入選作〈back number〉

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