*A部門入選作発表*

当季雑詠*全46投句(入選38句)

【特選】

一席
●天の川秋は右岸にありにけり=白髪鴨


◎葱、メ○秋、二、香△砂、夏、百=15点
(葱:「右岸」と言い切るところに俳句らしき「断定」があるのでしょう。何故「右岸」なのかは分る人に分ればよいのだと思います。 秋:七夕行事は旧暦でやるべしという話があって、その方が晴天が多く星もよく見えるはずというのです。この句は河原で空を見上げているのでしょうか? 夏:右岸にある秋景色なのか?面白い句。 百:そういう見方もありですね。)


一席
●鍵盤にど・れ・み・の文字や青蜜柑=雪絵


◎砂、前○喋、君、二△葱、夏、白=15点
(葱:とても好感のもてる句ですが、「青蜜柑」はちょっと付過ぎでしょうか? 白:「ど・れ・み」が効いてますね。音と視覚の両方にリズムがあります。)


三席
●銀漢やくろがね光る船箪笥=スライトリ・マッド


◎夏、君、資○砂△喋、二=13点
(夏:「 船箪笥」という素材が良い! 君:”くろがね光る”にイメージが凝縮されて鮮やか! 資:天の河と船箪笥の豪華な組み合わせに惹かれました。 葱:☆色彩の強い句です。)


【入選】

●湖に向く櫓のあとや鳳仙花=入鈴
◎水○夏、香△五、秋、二、白=11点
(水:夏の終わりの侘しさの風情で選びました。 夏:「櫓のあと」なのが鳳仙花の儚さと良く響き合っている。その湖が見える気がします。 五:湖に向く櫓の跡。湖が大濠公園ならば、汐見櫓で海にしても良かったかも。どこの古城か?鳳仙花は現代的な感じがして、新旧がうまく織り成されていますね。 白:「うみにむくやぐらのあとや…」か「みずうみにむくろのあとや…」か。後者の方がドラマがある。なにか切ないドラマが…。 葱:☆「鳳仙花」にはなぜかしら「時間の流れ」のようなものを感じてしまいますが、それは中島みゆきの歌のせいかもしれません。)

●弟よ呼べばその子が門火焚く=砂太
◎五○入、ス△水、君、資、百=11点
(五:砂太先生句ではないか?弟さんが亡くなられたことを聞いていたのでそんな気がします。砂太先生の故郷の景色まで思い浮かべる句です。 入:大人のための童謡だと思います。 ス:私の実家も母の初盆で門火を焚いて玄関に提灯を下げました。「お母さん」と思わず口をついて出ました。 資:兄弟の初盆の風景でしょうか。甥を見る優しいまなざしを感じました。 百:弟の子ってことですかな。)

●新涼や眼鏡の曇り拭い去る=香久夜
◎雪、白○五△水、資=10点
(雪:何もかもすっきりと、秋を迎えましょう! 白:平凡な表現の中に非凡な視点がうかがえます。秋を含んだ風がDEFを効かせてくれたのか、風景の輪郭がはっきりしてくる秋の到来が着実に感じられますね。 五:眼鏡の曇りを取りたくなる秋。情感こもる句。 資:灯火親しむ新涼。老眼が進んだことに気が付かずにめがねを拭き取る。 葱:☆穏やかななんでもない句ですが、ある意味では大人の句と言いましょうか。)

●流れ星布の絵本の窓扉=夏海
◎二○喋△葱、水、ス=8点
(葱:綺麗にまとめすぎ、の感もありますが、『布』の絵本に着目したところに一票。 ス:絵本集めるのが趣味で、フェルトの絵本や紙のポップアップ絵本もいくつか残ってて、窓を開けると星があったりして、今でも楽しいものです。)

●白桃のパスタといふは風に似て=水音
◎入○夏△砂、二=7点
(入:はふはふとした歯ごたえ?あるいは香りなのでしょうか?謎々が面白いと思いました。 夏:さっぱりと爽やかな味わいなのでしょう!)

●活字のみ秋の立つこと教えけり=香久夜
○白、百△雪、前=6点
(白:残暑の中の立秋を詠んだ句ならおもしろくもない。私はむしろ作者がなにか書物の中に秋を感じていたと読みたい。 百:暑かったものね。 雪:ほんとに暦の上だけの立秋でした。)

●三味名手芸妓百歳秋祭り=夏海
○雪、資△砂、秋=6点
(雪:語呂がうまく連なって、お見事! 資:リズミカルな音感が良い。 秋:いっそ秋祭りを秋祭にしたらどうだったでしょう。)

●神仏共におはする出羽の月=君不去
○五、水△入=5点 
(五:資料官さんの出羽三山登山句か?実景句はいいですね。 水:修験道の山の神秘性を月で表すところがいい。)

●気まぐれな酵母の発酵処暑の雨=水音
◎香○白=5点
(白:発酵という化学作用がこの句の日常性を突き抜けている。発酵は生命の逃走線です。 葱:「酵母の発酵」を詠むところがいい。)

●廃れたる造り酒屋や稲の波=水音
△メ、喋、君、前、香=5点
(葱:☆「酒」と「稲」の相性ですね。)

●プランB庭のちちろの鳴き止みぬ=夏海
◎喋△葱、二=5点
(葱:「プランB」がいい。どんなプランなのか、庭の大幅な改築とか。)

●やおつりのくやしさ胸に盆用意=メゴチ
◎百△君、白=5点
(百:やおつりという方言がなつかしく。 白:意に沿わぬ転居の悔しさが下句の盆用意に表れている気がします。震災句でないことを願いますが…。)

●枯れ寺の枯れし添水や日も枯れぬ=白髪鴨
○メ△秋、前=4点
(秋:晩夏、昼下がり、無人の境内に立つ図。 葱:二回は心地よいけど三回の「枯れ」はどうか? 座五に一考ありか。季重なりですが「秋日向」なんて、だめですか???)  

●コカコーラジャズが切ない敗戦忌=砂太
○葱、百=4点
(カタカナ2単語は難しいと言いますが、「コカ・コーラ」は強くアメリカを増幅させるようです。)

●透し見る秋風と来し鳥の色=砂太
○メ、前=4点

●夏名残つつつつつつと月と蟻=喋九厘
◎秋△二=4点
(秋:つつつという擬態語がきいています。月と蟻という意外な取合せも 秋〈月〉と夏〈蟻〉を連想させて面白いと感じました。)

●メニューより野菜たつぷり涼新た=五六二三斎
◎ス△雪=4点
(ス:野菜たっぷりのヘルシー料理作りたい!食べたい!ですね。)

●秋雨の降れば光れり阿弥陀堂=雪絵
○水△入=3点
(水:雨に光ると見るところが良い。 葱:どうしても芭蕉の「五月雨の降りのこしてや光堂」を思い出しますね。)

●幾兆の小判の夢や猪名の虫=前鰤
○秋△五=3点
(前:我が町にある多田銀山で、ロボットによる豊臣埋蔵金探索が始まりました。 秋:小判とは色づき始めた稲のことかな。満天の星のようにも思えます。 五:無数のイナゴの大群。これが黄金に見えたということか?何処の花咲かじいさんだろう?滑稽な出来栄えです。)

●東北の花火揚がれり錦江湾=スライトリ・マッド
○入△香=3点

●鼻先のかなかな聞こす芭蕉像=君不去
△五、二、資=3点
(五:これも、資料官さんの旅句かな?芭蕉像に出会えて、きっとパワーを貰えたと思います。 葱:「聞こす」という詠み方、勉強になります。)

●踊子や簡単服のおみな満々=入鈴
△二、百=2点
(百:満々ってのはどう読むのかな。)

●辞世の句「たくさん桃をたべませう」=葱男
△雪、喋=2点
(雪:桃の大好きな御仁かな?)

●宿題のカウントダウンつくつくし=五六二三斎
○雪=2点
(雪:夏休みの終わりはいつもこの光景でした。 葱:☆中七下五のリズムが良いですね。)

●立つ秋のかすかな気配左見右見=メゴチ
○前=2点

●凌霄花をばの遺影のすまし顔=資料官
○君=2点
(葱:☆〜らしい句です。)

●白灯の無人のボクス蟲おくり=葱男
△夏、二=2点

●星ひとつ成層圏より秋は来ぬ=白髪鴨
○葱=2点
(葱:「星」と「成層圏」とがだぶっているようにも思いますが、季節の変わりを一段高い視点から感じているところが面白い。)

●盆提灯濡れ庭にまた花こぼる=香久夜
○ス=2点
(ス:雨の降った庭、故人を偲ばせるお花が毎年咲くのでしょう。)

●みんみん蝉みんなブルーの月曜日=資料官
○砂=2点

●山育ち水神様の残暑かな=喋九厘
△ス、香=2点
(ス:かごんまでは水神さまを「みずんかみ」と呼びますよ。源流は山なのでしょうね?!)

●蜘蛛の糸露に光るや盆の朝=秋波
△メ=1点
(資:その風景はわかるのですが,3つの季語ゆえに焦点が定まっていない。)

●初秋の出羽三山に祈り道=君不去
△ス=1点
(ス:山に登られる方でしょうか?!東北に住んでいたので山形にも親しみを感じます。)

●短夜のぐちも飲み込み遠花火=秋波
△入=1点

●虫の音もそぞろ歩きの夜の秋=秋波
△メ=1点


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