*A部門入選作発表*
当季雑詠*全46投句(入選37句)
【特選】
一席
●実石榴や女三人坂のぼる=入鈴
◎五、白○香、資、二△夏、雪、ス=15点
(五:実石榴と女三人の距離が離れていて物語があります。どんな物語か?甘酸っぱい物語でしょう。 白:ドラマツルギーを感じます。細雪か、告白的女優論か…。実石榴の季語が効いていて、そこに「女」の人生の重み、深みがこめられているようです。 香:かしましい旅の様子が目に浮かびます。私は女四人の旅でした。 資:食肉系熟女をイメージした。面白い。 夏:その坂の象徴するものを思います。 雪:きっと若くはない女性たち?色々想像が膨らみますね。 ス:下り坂でなくてよかった。季語も合ってますね。 葱:「丘メール」で見てたから迷ったけど、どうしても先入観があって、選びにくかったです、悪しからず。)
二席
●鬼の子の吹かれて空へ泣きゆくか=砂太
◎喋、雪○水、夏△五、君、資、前=14点
(雪:作者自身の心境でしょうか。 水:とても素敵な句だと思います。でも少し情緒的かなと。 夏:蓑虫は寂しそうに見えます。 五:鬼の子という季語を鬼に重ねて泣きゆくとしたところが上手い。鬼の子は泣き虫のイメージがありますね。 葱:☆韻律に「自由な風」を感じます。)
三席
●草もみじ池塘(ちとう)は空を引き寄せる=夏海
◎水、秋、資○香△白、二=13点
(水:雲の平を思い浮かべました。池塘に映る空の静謐な様。草紅葉が額。 秋:引き寄せるという表現が素敵です。池塘という言葉を辞書で引いたら、池塘春草の夢というのがあって青春のはかない夢とありました。澄んだ空の情景にさわやかさとはかなさが重なって秋らしい句と感じました。 資:鏡のような池塘にはきっと白い雲が浮かんでいる。 香:静かな池に青空が映る様子が、見えます。 白:引き寄せるというよりもむしろ吸い込まれるような感官がスケールを大きくしていると感じます。小さなものが大きなもののメタファーとなる▽の視点がいいですね。 葱:☆俳句的修辞をよく学んでいると思います。類想ありそう。)
【入選】
●花梨酒や水底深く元寇船=夏海
◎二○水、喋、雪、ス△葱=12点
(水:花梨酒が熱い冒険心や期待感を増幅させている。 雪:元寇船が見つかったようですね。ロマンを感じる句です。「花梨酒」が何ともいえずいい! ス:元寇船見つかりましたね?!ボトルシップも連想させよい。 葱:取り合わせの妙ですね。 資:花梨は秋の季語ですが酒となるとなんとなく冬のイメージが強くて。元寇船との関係がわからなかった。気になる句。)
●どんぐりとメンコ交換いたしませう=葱男
◎夏○喋、百△砂、入、君、雪=11点
(夏: 話し言葉が楽しく新鮮。 百:宮沢賢治にありそうな 。 君:宮沢賢治の世界を想いました。 雪:こんな子供心を忘れていないお方は?)
●露の上に天から星のこぼれ落つ=香久夜
◎百、ス○砂、澄=10点
(百:きれいです。 ス:星が映って光って見えたのでしょうか?!)
●近道が迷い道なり十三夜=秋波
◎前○メ△香、入、百、白=9点
(入:どんな迷い道なのか、ちょっと理屈? 百: 近道するなって事。 白:月はいつでも謎を秘めているのですが、特に十三夜は妖しの月。中の句の「迷い道」の一語に惹かれました。 葱:☆小さくまとまってしまったのが惜しい。)
●本郷の柿泥棒の伯父が来る=五六二三斎
◎砂○葱、二△喋、ス=9点
(葱:宗匠云うところの「地霊」が効いています。 ス:本郷が効いていますね。)
●爽籟や母書きし文字表札に=スライトリ・マッド
◎香、君○入△水=9点
(香:「爽籟」という高尚な表現に、お母様の雰囲気が窺えます。 君:すっきりと、またお母様への想いも滲んで上品な句。 入:とても哀しい句だと思います。 水:母を亡くし少し時間が経った事が「爽籟」から想像できます。 資:中七の書きしをうまく整理して表現すると良かったと思う。)
●秋桜や彩を乗じて水城跡=喋九厘
○秋△砂、五、君、資、雪、二=8点
(五:彩を乗じてという言い方が上手い。水城跡は福岡の誇りですね。一度も使われてないと思います。外国の侵略はなかったからですね。「使はれしことなき水城暮の秋 ご」 資:西鉄沿線のコスモス畑をうまく表している。 雪:遠目でしか見ていないのですが、とてもきれいでした。)
●錦秋や水に十字路野に隘路=水音
○メ、資△五、百、ス=7点
(五:水の十字路とは何か?野の隘路は分かりますが。もしかしたら、古城の風景かもしれませんね。 百:脳溢血を連想。 ス:本当に水路が張り巡らされ、畦道があって、田んぼってよくできてますよね?! 葱:イメージを結ぶことができませんでした。)
●をりとれぬほど逞しき芒かな=水音
◎入○五、白=7点
(入:をりとりての蛇笏の句に挑戦? 五:逞しい芒、秋たけなわから冬も近い感じも伝わります。 白:逞しさの実感がこもっていますね。少し単調な気がして○にはちょっと厳しいかなと思ったのですが、他の句との比較で○になりました。 葱:はらりと重いのが「俳味」で、逞しいなら「滑稽味」。)
●秋指すや参道カフェの風見鶏=喋九厘
○夏、ス△葱、香=6点
(夏:そんなカフェでお茶を飲みたいと思いました。 ス:おっしゃれ〜っ!秋指すがよいですね。 葱:いつもは「歌」や「ポエム」が得意の喋九厘さんとしてはめずらしい「俳句的修辞」がこの句にはあります。「秋指す」が「俳」。「風見鶏」は本当はただ風に従っているだけなのですが、それを「秋指す」と断定してしまうところが俳句の骨頂です。 「香:「秋指す」がおもしろいです。)
●秋冷と問わず語りの始発バス=秋波
○砂、百△前=5点
(百:何となく人恋しくなりますよね。)
●紅葉山小さきケルンは子等のもの=砂太
○五△葱、水、資=5点
(五:ケルンは山の遭難者に残すもの。紅葉山はそんなに高い山ではなさそうですが、子供たちが犠牲になったのでしょう。夏の落雷による死亡かもしれないし、冬の凍死かもしれません。大きなケルンもあるみたいで、決して侮れない山かもしれません。 葱:「ケルン」は子等にこそふさわしい道標です。 資:どんなところでもてっぺんにはケルンがある。)
●よみに落つ雁のまなこの狂気かな=白髪鴨
◎葱○前=5点
(葱:最初から「黄泉」だと読んでいました。江戸の版画家の粋な構図があります。)
●かりがねやゆきとかへりはちがふかを=葱男
○雪△砂、メ=4点
(雪:確かにそんな疑問が湧きますね。)
●サフランやモデルのやうな女子大生=雪絵
○葱、白=4点
(葱:オシャレですね〜、デザイン性に一票。 白:少し軽さを感じるのですが、何か滑稽感が感じられます。シニフィエ=女子大生がシニフィアン=サフランを規定しているからでしょうか。)
●長き夜と思いなしたる今朝の雨=ひら百合
○秋△メ、前=4点
(秋:ちょっと重い感じもしましたが、何となく共感できる感じも。)
●秋風と海ガメと我泳ぎけり=香久夜
◎澄=3点
●秋の浜目の離せぬ陽落つるまで=香久夜
○君△秋=3点
●あはれ知る深きに過ぎる空高し=五六二三斎
◎メ=3点
●ハロウィンや封じて枯れぬ花の筒=夏海
○前△秋=3点
●秋の海静かさここに集まりぬ=雪絵
○澄=2点
●落葉踏む音やはるけし夢をみて=入鈴
△澄、白=2点
(白:下の句のひと言が、何気ない語りの糸口を跳躍させているようです。視線ではなく心線のふくらみを感じます。)
●川底の丸石拾ふ秋まひる=スライトリ・マッド
△入、喋=2点
(入:日本画になりそう。)
●再会が木の葉しぐれの訃報とは=葱男
△夏、百=2点
(葱:吉田まり子さん逝く、悲しい。 夏:こんなに早く逝ってしまって!残念!! 百:美人薄命とはこのこと。 雪:高2の時の面影が浮かんできます。ご冥福をお祈りします。)
●灯火親し朝日俳壇まとめ読む=資料官
○入=2点
(葱:☆俳人たるものこのような句に一票投じるべきなんだだけど、惜しいかな、次点でした。)
40●北限の小みかん呉れし筑波山=入鈴
○君=2点
(君:香り高い”福来みかん”だったね。 葱:☆具体性のある写生句には説得力が備りますね。)
43●猫じゃらし風に吹かれて小海線=資料官
△水、二=2点
●アマテラス伊勢の曙光(あけぼの)神嘗祭=メゴチ
△澄=1点
●会心の当たりの先に秋の雲=メゴチ
△夏=1点
(夏:気分爽快で、1票。 葱:☆ゴルフかな?)
●すさまじきものかはかくも不吉な欲望=白髪鴨
△秋=1点
(秋:どんな欲?気になる。 葱:☆モチーフはいいのに、ちょっとくどい。)
●天井を離れふためく残り虫=ひら百合
△メ=1点
●猫バスやハイブリッドで木の実踏み=ひら百合
△喋=1点
●幕末へタイムスリップ萩は秋=雪絵
△香=1点
(葱:☆イメージが一貫していてまとまっています。佳句。)
●べったらの甘いにほひと腹の虫=メゴチ
△澄=1点
【入選】
●怖いもの見たさ知りたさ紅葉狩
(葱:☆楽しい句になりました。)
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