*A部門入選作発表*

当季雑詠*全42投句(入選32句)

【特選】

一席
●みちのくのこけし加へて雛祭=資料官


◎二、喋○五、ス△水、前、雪、君=14点
(五:こけしを見ると東北のことが思い起こされる。鎮魂句として素晴らしい。 雪:いつまでも忘れないように、小さな思いやりですね。)


二席
●桜桃の人肌ほどの花咲けり=葱男


◎白○夏、雪、君、秋△二、メ=13点
(白:句の盤石さを感じます。妙に凝っているわけでもないが、すんなりと腹に入っていく、薬味の効いたおいしいうどんのような句ですね。 夏:「人肌ほど」が良い。 雪:何だか艶っぽさを感じますね〜。)


三席
●銀色の手形足形卒園す=夏海


◎水、香○喋、雪△二、ス=12点
(水:こんなに大きくなって と、こんなに小さなとの両方の感慨がありますね。 雪:かわいい手足、いい記念です。 葱:匂いはあったのですが、「銀色」の正体がよく見えませんでした。)


三席
●古雛指の欠けをる月日かな=雪絵


◎君○久、水、二△葱、ス、資=12点
(君:欠けた指に重ねきた月日、人生まで感じさせられて。 水:それだけの月日が経ったと実感とため息。 資:でもキリリとした顔立ちが浮かびます。 葱:痛々しくもいとおしい。)


【入選】

●青麦の青さらさらとそら涙 =君不去
◎五○メ△久、二、夏、白、資=10点
(五:ひらがなの「さらさらとそら」が流れるようなリズムがあり、秀逸でした。そら涙とは何なのでしょう?偽りの涙?意味深なのも色々な風景を想像を逞しくしますね。悲しそうで意外に愉快。秀逸な出来映えです。 白:最初「青麦」を「青春」と読んでしまって、この年で青春を読むのはすごいなと思ったんですが、よく見ると「青麦」でした(笑)。でも中句の素直な表現が下句の「涙」をあまり感傷的なものにしていない点に好感が持てます。 資:妙に明るいリズム感が良い。)

●詩人とは未来読む人よなぐもり=水音
◎資○五、白△香、雪、秋=10点
(資:李伯も杜甫も未来を読んだか。詩人と黄砂の取り合わせが面白い。 五:「よなぐもり」の季語を使った句は丘ふみ句会では初めてでは?上五中七も斬新です。 白:詩人とは本当に未来を読む人なのでしょうか。その点は疑問がありますが、その種の断定は俳句のもの。ただ配置した季語が「よなぐもり」では少しその断定が曇ってしまいそう。 雪:私は詩人にはなれません。)

●春うれひ風上に向くフラミンゴ=雪絵
○水、香、夏、ス△二=9点
(水:春うれひが効いてる。片脚で立つのフラミンゴが儚く見えてきた。 夏:「春」はどこかしら憂いの陰が付きまとう。)

●朧月夜ブリキのジープ飾りをり=スライトリ・マッド
◎メ○香△砂、君、白=8点
(白:「朧月夜」を何と読ませたいのでしょうか。「おぼろづきよ」では字余りでリズム感も損なわれてしまうようです。朧月とブリキの玩具のアレンジはとても効果的に配置されているのに、その点が惜しい気がします。)

●白杖のさぐる大地や風ひかる=水音
◎久○前△香、五、君=8点
(五:白杖に光る風。大地は舗装のために硬そうです。老人を風が励ましているようです。 葱:失礼しました、「白杖=はくじょう」の音でした。)

●クリークに行き交ふ櫂も春の聲=夏海
◎雪○資△水=6点
(雪:櫂の音を「聲」にとらえたところがいい。 資:櫂のしずくも花と散る♪春の音感に浸れる。 水:春の声、音の中に櫂の音も混じってるってことでしょうか。)

●半身は影を好めり雛の櫃=葱男
◎前○二△秋=6点

●三日月の舟漕ぎ出すは春隅田=君不去
◎夏、ス=6点
(夏:春らしい空気感まで伝わって来る句。)

●聖堂は畳敷きなりつばめ来る=雪絵
○君△葱、砂、ス=5点
(葱:裕明の「教会の冷たき椅子を拭く仕事」が良すぎるのか、俳句に「聖堂」はややマンネリを感じてしまいますが。)

●朧なる大気の境花菜立つ=秋波
○葱△香、前=4点
(葱:「朧」に「境」を持って来たところ。)

●酒蔵を訪ふ筑後路の山笑ふ=砂太
◎秋△雪=4点
(雪:雄大な耳納連山、お酒も進んだことでしょう!)

●白梅や墨絵を走るレールバス=資料官
○白△二、夏=4点
(白:新藤兼人監督の映画「北斎漫画」、そして巨匠黒沢の「どですかでん」が頭の中をよぎりました。静止画と動画の絶妙な組み合わせがこの句の中にはあるようです。そのバランスの良さが選の主因です。)

●卒業式脱けて仏蘭西パンかじる=葱男
○砂△喋、白=4点
(白:高校も大学も卒業式は脱けていたので、この句と私の経験はシンクロしています。ま して仏蘭西パンをかじっているのですから、なおさらです〈あのとき、仏蘭西パンをかじっていたのは八尋信明だったような気もしますが〉。それはともかく俳句としてのまとまりの点からは△にとどまりました。)

●母の部屋今もそのまま雛飾る=資料官
○砂△水、五=4点
(水:ひな祭りなのにちょっと寂しい。 五:亡くなった母上の部屋?昨年の雛が飾られたままなのか?)

●日を透かしステンドグラスの春のミサ=砂太
○資△二、夏=4点
(資:春の明るい色彩が目に浮かぶようで惹かれました。)

●Blowin’ in the wind さくらさく=白髪鴨
○喋△久、資=4点
(資:風に吹かれて桜咲く,まさに今。)

●Calling you 星をならべて弥生尽=白髪鴨
◎葱△五=4点
(葱:「バグダットカフェ」の高音域の乾いた冷たい映像感覚が被災地の空とも重なります。 五:英語入りの句を1つ採りました。41よりも42の本句が秀逸。41の句は付きすぎでしょう。)

●ヴイオロンの溜め息蝶は翅開く=砂太
○メ△喋=3点

●丈くらべ一番のつぽ春の月=五六二三斎
◎砂=3点

●菜の花の黄の宇宙にも犬の尻=喋九厘
△久、メ、秋=3点

●笑う顔洗う車の水温む=メゴチ
○秋△砂=3点

●梅上げの紅白餅や牛の舌=喋九厘
△二、メ=2点

●さしすせそ味合い深き土筆かな=喋九厘
○久=2点
(喋:砂糖塩酢醤油…。)

●ロシア産まれ日本育ちの猫のどか=スライトリ・マッド
○葱=2点
(葱:「猫」の句は作者とペットの距離があまりに近すぎて大概閉口しますが、これは距離がある。)

●燕来るトンバイ塀と石畳=夏海
△前=1点
(資:有田のトンバイ塀に惹かれましたが,石畳との並列がやや物足りなく。)

●弾けむと身構へてをり蕾梅=白髪鴨
△葱=1点
(葱:梅の蕾みの「固さ」が感じられました。)

●蕗の薹小さき里の砕氷船=秋波
△前=1点
(資:砕氷船といえばしらせとかオーロラとか大きなものを想像して蕗の薹との組み合わせがピンと来なかった。)

●古雛や昭和時代と名付けらる=香久夜
△喋=1点

【無選】

●明日から幸せになろう三月尽
(葱:やはり「大震災」を思い起こします。「三月」という言葉の意味が震災以後は変質してしまったのでしょう。高野ムツオと小澤實がそのようなことを誌上で語り合ったとか・・聞きました。大阪百鳥の句友の松重幹雄さんが先日の朝日俳壇で金子兜太特選をとった句に「三月の十一日よ人類よ」があります。「人類よ」は決して大仰な物言いではない、との句評だったそうです。)


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