*A部門入選作発表*

当季雑詠*全46投句(入選35句)


【特選】

一席
●涼風やレースのボビン繰るリズム=スライトリ・マッド


◎水、夏、五○君△メ、百、雪=14点
(夏:ボビンレース、編み上げていく手技が素敵で一度句にしたいと思いながら未だ果たせず!「繰るリズム」が良いなあ。 五:レースを編む涼しさに特選。 君:繊細で美しいですね。 葱:女性らしい句だと思いますが、なにぶん実感がなくて・・・、申し訳ありません。)


二席
●富士山頂郵便局から夏見舞=資料官


◎葱、雪○夏△砂、五=10点
(葱:この猛暑を吹き飛ばしてくれそうな、涼感のあるいい句ですねえ〜。 雪:雄大な景色が想像されます。郵便局があるんですね。 夏:夏の富士山は登山者で溢れるのでしょうか?!山頂からの葉書が届くと素敵。 五:涼しさに一票。)


三席
●唇の皺に語らせ立葵=水音


◎香○喋、雪△夏、メ=9点
(雪:何を語っているのか、過去の悲しい出来事でしょうか。)


三席
●ゼッケンは手書きの名前氷水=雪絵


○砂、白、二△葱、君、ス=9点
(白:まぶしいほどの若さが伝わってきます。子らを見る作者の愛情を感じます。 葱:抒情と懐古があります。)


【入選】

●悪童の千金の黙日雷=水音
◎白○五、ス△葱=8点
(白:子供が叱れているだけの意外とつまらない情景なんですが、それを語る口が優れています。口をへの字に曲げて、言いたいことが山ほどあるのにただ黙っている、まさに千金の黙。そこに轟く日雷。読み手の想像を押し広げる強度を感じます。 五:悪童は口数は少ないもの。ストーリーのある句。 葱:タモリがさんまに言ってたように、僕も「テンションの高い」人種は苦手やなあ〜、子供も「はにかんでいる」ような子が好き。)

●シトロンの夢見るやうに泡立ちぬ=葱男
◎ス○資、二△水=8点

●遠目にはレガッタ軽き水馬=秋波
○資、ス△砂、君、雪、白=8点
(資:アメンボの足の動きを良く見ている。 白:上の「遠目には」に少し違和感がありますが、水馬の動きをレガッタと形容した点を評価したいと思います。このレガッタはボートレースですね。 葱:☆軽妙洒脱。)

●幕間のピエロのまなこ星涼し=雪絵
◎砂○五、メ△二=8点
(五:ピエロと星に相性あり。 白:きっと何かうつろなまなこのような気がしますが、いろいろ受け取り方があるでしょうね。ピカソのピエロはうつろな中にさらにいくつもの感情が込められているように思えます。ちょっと決定打に欠けるように思えたので、残念ながら選外です。)

●2の指と5の指結び遠花火=葱男
◎メ○喋、雪△白=8点
(雪:どのように結ぶ?雰囲気でいただきました。 白:今年も今宿の花火に行ってきました。大濠公園の6千発に比して今宿は2千発、おのずと規模は知れてますが海上で見ると結構な迫力。しかし花火は遠花火の方が趣が出ますね。今もどこかの遠花火の音が聞こえています。これも発句の題になりますね。前置きが長くなりましたが、上、中の意味がよくわかりません。子供か誰かの何気ないしぐさなのでしょうか。しかし、それが割と効果的に遠い花火に結びついています。)

●籐椅子や進まぬページ愛おしむ=香久夜
○夏、メ、百△君=7点
(夏:避暑地の風景のよう。のんびりした時間が見えてくる。 葱:☆情景が浮かびます。 白:私のプルーストが似たような状況ですが、まだ全巻出揃っていないのでそれでもいいかと…。)

●ハンモックぎざぎざハートの夢を見た=メゴチ
◎喋○水、秋=7点
(秋:どんな夢?)

●海底の夢の続くと海月浮く=砂太
◎秋○葱△香=6点
(秋:深海のロマンを感じます。水族館の情景でしょうか。 葱:「海底の夢」と「海月」は直接関係ないけど、そこがまた俳句らしいところ、「浮く」が上手い。)

●炎昼や人浮遊するビルの谷=夏海
○砂、百△久=5点
(葱:よ〜く分かります。 白:中の句は、不安な〈あるいは不穏な〉強い夏の日差しを感じさせていい表現だと思われるのですが、下句のまとめ方がいまひとつ感性の訴えかけに欠けるように感じました。残念ながら選外。)

●男声魚河岸に梅雨明けにけり=砂太
○君、白△秋=5点
(白:上句の「男声」が、読者をぐっと引き寄せていますね。「女声」の対句が欲しくなります。 葱:☆佳い句ですね、ただ上五にもっと違う言葉がないかなあ〜、それが難しいけど。)

●籠枕汽車過ぐるたび夢を見る=資料官
○水△久、喋、二=5点
(葱:田舎に帰っているときにそんなことがあります。)

●少年の背負ふバットや西日中=雪絵
○葱、秋△香=5点
(葱:「背負っている」ところが絵になります。 秋:何か懐かしい感じ。)

●滝浴びのごとき犬どち痩せて見ゆ=スライトリ・マッド
◎百○香=5点

●梅雨晴間ただそれだけの海の色=砂太
◎資△百=4点
(資:この頃って強烈な青を空も海にも見ることがあります。ただそれだけに共感。 葱:☆もう一歩、なにか欲しい。)

●友来たり蘊蓄百花鱧祭り=秋波
◎君△香=4点
(君:”百花”と”祭り”が効果抜群で!!)

●熱中も国難らしと老婆言ふ=久郎兎
○香△夏、秋=4点
(秋:本当に今夏の酷暑といったら!)

●秋隣思惟のみ広がる四畳半=白髪鴨
△喋、メ、ス=3点
(葱:句がどうのこうのというより、今年は「秋隣」って感じが全然起こってきません、あと、二か月、この暑さが続くんとちゃう?)

●空蝉や気化熱うんぬんいふ漢=水音
○久△夏=3点

●戸開くやいっせいの蝉時雨かな=君不去
◎久=3点

●百物語美しきもの怖ろしく=夏海
◎二=3点
(葱:☆「百物語」が季語となるのでしょう、杉浦日向子の漫画は大好きで愛読書のひとつ、「二ツ枕」も好き。)

●片蔭の深き漆黒昭和かな=五六二三斎
△喋、資=2点
(資:まさに昭和の風景,じりじり照りつける日差しはあっても思わず涼しさを感じました。)

●タクトからヒッグス粒子夏の魔女=葱男
△秋、二=2点
(秋:ヒッグス粒子!難解だけど夏の魔女とはおシャレな表現。 白:ヒッグス粒子に取り組んでいる点は好感持てますが、あまりにおとぎ話的な気がします。で、残念ながら選外。)

●独立日蕎麦大鍋に茹であがり=ひら百合
△雪、ス=2点
(葱:☆三光に準ずる句でした。 白:結局選外でしたが気になる句でした。なぜだろう? 他の人の評を見てみましょう。)

●トマト熟れ暑中お見舞い申します=喋九厘
△葱、砂=2点
(葱:俳句らしくないけど肩の力が抜けていて気持ち良い。 資:強烈な季重だと思いました。)

●入道雲仏蘭西窓の見る景色=白髪鴨
△水、資=2点
(資:仏蘭西窓と入道雲の組み合わせが良い。)

●ようやっと出しつ仕舞ひつ夏座敷=君不去
△百、白=2点
(白:遅くなってしまった衣更えでしょうか。生活感のある情景をうまく表現しているように思います。)

●金色の満願成就夏の月=五六二三斎
△資=1点

●過ぎし日の売り子の声や氷菓かな=メゴチ
△久=1点

●台風の忍び寄る空秋隣り=白髪鴨
△水=1点

●取るまでは鬼の形相金の汗=香久夜
△五=1点
(五:オリンピック男には採りたい句。顔に自信がみなぎってましたね。葱:怖い〜、けど気持ちは可愛いんよね、スポーツの一流の人って不思議ちゃんが多いみたい、彼女は「麦茶の妖精」を見たことがあるって。)

●灯のともる熊楠のハス色は金=ひら百合
△五=1点
(五:熊楠はロンドンに居ましたし、タイムリーな句になりました。)


【無選】

●蝉時雨ヘルシンキよりロンドンへ
(葱:☆発想が面白い。)

●時よ止まれ氷柱の人魚姫
(葱:☆溶けちゃうもんなあ〜、気持ち分かる。)


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