*A部門入選作発表*

当季雑詠*全62投句(入選46句、非選1 句)


【特選】

一席
●交差するエスカレーター春ショール=紅椿


◎砂、水○阿、資、雪、満、香△十、白=18点
(水:「交差する」流れるような人の動き、さまざまな色が見える。カタカナが多いので明るく開放的な感じがする。 阿:振り返りたくなる光景。 資:交差するカタカナが軽やかで良い。 雪:確かに遠目で見るとショールを連想させますね〜。おもしろい! 満:薄い色、パステルカラーのショールが欲しくなる季節です。女子力アップと私は思いますが、見る人からすると、春の訪れを感じて貰えるのかもしれません。 十:上下に交差する一瞬の景の切り取り。 白:何気なさがいいですね。そしてとても春らしさを感じさせてくれる。まるでジャック・タチの映像のよう。 葱:☆佳句なれど、「春ショール」の句は前回紹介した小田玲子さんの「春ショールピアノをすべり落ちにけり」が印象強くて。)


ニ席
●襤褸市のライカの蛇腹春の風=十志夫


◎五○二、雪、秋△ス、葱、資、水、百=14点
(五:実景が伝わってくる。「ろ」「ラ」「ら」「る」とr音の繰り返しが良い。 ス:骨董市とか見るの楽しいですよね。 雪:出かけてみたくなるような市の光景です。 葱:「役者が揃った!」って感じ。 )


三席
●初蝶は発光体を持つてゐる=ラスカル


◎ス、夏、白○水△砂=12点
(ス:神秘的な感じが春の到来にふさわしい。 夏:この句が発光体を持っているように輝いていました。素敵な句です。 白:たった17文字であるからこそ、ポエジーが必要なのです。この詩感覚すてきです。 水:春は様々なモノがキラキラ光ってるけど、そうか、蝶は発光体を持っていたのか。 葱:☆どこでみたのでしょう?おそらくネット上の「俳句誌」でどなたかがラスカルさんのこの句を取り上げられていたのを見たように思います。初見ではなかったので選外とさせていただきました。)


三席
●冬晴れは墨色五分を入れし青=久郎兎


◎メ、百○ス、夏△二、白=12点
(ス:入れし青で、過去を表すとすれば、誰かが描いた作品でしょうか? 夏:なるほど!と思いました。 白:二月に冬の季語が少し気になりますが、中七の表現が卓越していると感じます。)


【入選】

●和らふそくほほほほほほと二月尽く=雪絵
◎葱、喋○資、満△二=11点
(葱:「来た〜〜!」って感じです、坪内稔典さんの「ふふふ」を超えた〜〜かな? 資:ろうそくの燃え尽きる様をほほほとはうまい。 満:『ほほほ…』が面白いなぁと感じました。『おほほ♪』)

●後足の一本なくて恋の猫=水音
◎雪、君○葱△紅、白=10点
(雪:切なさ二倍の恋猫ですね。 君:哀しくて何だか滑稽、ともに感じられて。 葱:「後足」が一本なくても果敢に恋をする猫の勇気が好きです。ハンデを負ったものが前向きに頑張る姿に打たれます、乙武洋国氏みたいに。 紅:冷静に詠んでおられるところに好感をもちました。 白:異形であること。それが存在感を高めている。)

●春動くオーケストラの音あわせ=白髪鴨
○ラ、十、香△阿、夏、秋=9点
(ラ:オーケストラの壮大な音が聞こえてきます。 十:チューニング風景に対して「春めく」の傍題である「春動く」が効いている。 阿:その場に居合わせたい。 夏:コンサートへの期待感が盛り上がる。春へのわくわく感も一入。)

●通ひ猫fなる風の揺らぎかな=葱男
◎ラ○久、百△喋=8点
(葱:「f」は小文字のイタリック体で表記できればよかった、残念。 ラ:「fなる風」という表現が新鮮です。 久:猫が揺らいでいるのでしょうか。)

●春節や異国の獅子の長睫毛=夏海
○砂、君△十、資、雪、満=8点
(十:トリビュアルな視点。 資:上海からの一時帰国の某氏の眦と重なってピンと来た。 雪:長崎ランタンフェスタで私も見た記憶はあるのですが、見るだけで終わってしまいます。 満:お祭りや行事で季節を感じます。長睫毛に目がとまりました。幸運を呼んでくれそうな長い睫毛なんだろうなぁと。 葱:☆旧正月の風景でしょうか、異国の春の情緒あり、です。)

●早春の光孕んでシャボン玉=秋波
◎阿、満○メ=8点
(阿:子供のころに帰ったような…でも「シャボン玉の唄」は間引きの行われた時代に「風風吹くな」と生まれた唄であるとも聴きました。「孕んで」というのが効いています。 満:とっても爽やかで春が待ち遠しい気持ちが込み上げてくる感じがしました。 葱:「季重なり」が賛否両論あるでしょう、確信犯でしたか?)

●ほうれんそう平和主義なる濃緑=水音
◎久○十△ス、葱、香=8点
(久:インパクトがあっていいです。 十:下句の「こみどり」という4音が少しギクシャクしていますが、ほうれんそうの緑が平和の象徴という発想がユニーク。 ス: 赤い根っ子はまた旨し。 葱:ここは「はうれんさう」としないで正解だと思います。)

●春愁をジップロックに詰め込みぬ=ラスカル
◎紅○夏△ス、メ=7点
(紅:岡田准一君のCMのあの場面が浮かび、春愁も1秒で閉じ込められるのだと納得しました。 夏:ジップロックという日常的な言葉で編まれた詩が面白い。 ス:ついでに冷凍してしまいましょう!)

●鳥のきて鳥と目のあふバレンタイン=水音
◎二○葱△夏=6点
(葱:好感の持てる句。 夏:鳥も恋の季節でしょう。)

●はだれ雪ユトリロの筆なずらへる=ひら百合
○五、秋△ラ、満=6点
(五:はだれ雪はまるでユトリロのタッチ。うまい喩え。「なずらへる」で比喩がリアルに。 ラ:「ユトリロ」が、はまっていると思います。 満:私も模写でユトリロの作品をさせてもらったことがあります。ユトリロは、雪が降っている少し暗めの絵が多く春が待ち遠しいと思える凍てつく寒さをも伝わって来ます。)

●蕭白の龍うねりくる余寒かな=雪絵
○五、君△水=5点
(五:ボストン美術館展が九州国立博物館で開催されている。蕭白の龍見に行かなきゃ。 葱:☆蕭白の野太い鋭角な線は確かに「余寒ぶるぶる」です。)

●獺祭や俳句に残る絶滅種=資料官
○ス、砂△君=5点
(ス:かわうそって日本では特別天然記念物なんですね?!)

●告げたきやあの日の梅のまた咲くを=十志夫
○久△ラ、紅、百=5点
(久:切なくて下の句がまだ続きそうです。 ラ:やや短歌的ですが、作者の思いは伝わってきます。 紅:「あの日」が気になります。誰にもこんな気持ちがあるのではないでしょうか。)

●遠く凪ぐ元冦の海春が来た=砂太
◎香△水、秋=5点
(香:「春が来た」ストレートな表現が新鮮で、力強いです。 葱:☆下五のぶっきらぼうに惹かれます。)

●暗雲のただよふバレンタインの日=ラスカル
○紅△雪、満=4点
(紅:男性の口に出せない心理をうまく詠んでおられます。 満:近年、バレンタインなんてガチで〈すみません、死後で…〉関係ない生活をしており、羨ましいというか。女子ってこういう時、全意識がそこに行っていますものね。。。恐ろしくもあったりします〈笑〉。 雪:空の暗雲、心の暗雲、さーて、詠み手はどちら? 葱:☆後ろ向きの客観性がかわいい。)

●遠足のほんの小さな観覧車=夏海
○ラ△紅、君=4点
(ラ:小さいけれど、大きな幸せ。 紅:いじめなどとは無縁な、良い人間関係が感じられて、心が温かくなりました。)

●春寒や隕石空を割り来たり=雪絵
○紅△五、久=4点
(紅:まさにタイムリーな句、「空を割り来たり」に臨場感があります。  五:隕石の堕ちる様をうまく表現した句。切れ字2つとみなすか?衝撃的な出来事だったので、強調で良しとするか? 久:下の句がいいですね。 葱:☆タイムリーな句。)

●流されてみたくもありぬ春の川=葱男
○百△阿、砂=4点
(阿:いい季節、もう一花咲かせてほしい。)

●春や昼子等と渚と握り飯=砂太
○阿、喋=4点
(阿:幸せそうです。 葱:☆砂太極太俳句の骨頂。)

●霾晦火伏せ神社の猿の面=夏海
○メ△五、資=4点
(五:火伏せ神社は愛宕神社なのかもしれない。福岡の博多湾に面した愛宕神社に猿の面があるのか?博多は黄砂にPM2.5と散々な目にあわされている。猿の面も悲鳴をあげている。)

●急坂に櫛比の水仙背くらべ=久郎兎
◎資=3点
(資:さしすせのSSSSのリズムが良い。しっぴという言葉もよくご存知。)

●啓蟄や棚の奥より古写真=十志夫
◎秋=3点
(葱:☆ノスタルジック!)

●みやげ屋をひやかすことも梅日和=紅椿
△五、ラ、百=3点
(五:大宰府天満宮のみやげ屋の風景?ひやかしも居ないと店は儲からない。 ラ:「ひやかしてをり」の方がいいと思います。)

●むかしむかしで始まりぬ残る雪=スライトリ・マッド
○白△夏=3点
(白:情景としては「陰」なのですが、この句はそれをフリップしています。)

●麦踏やキリストの笑む絵画なし=葱男
○水△雪=3点
(水:本当にその通りですね。「なし」が良いのか?「なく」という選択肢もあり? 雪:「麦踏」という季語がすんなり入っていく感じです。 葱:水音さんの選択肢のほうがよかったな、そのほうが「キリストの笑む絵画」があってほしい、という心情が伝わったかもしれません。)

●揺りかごに線路のリズムつくつくし=スライトリ・マッド
◎十=3点
(十:窓ガラス越しの電車の通過音は、胎内で聴いた鼓動かのやう。下五の「つくつくし」は幼子の成長への願い。 葱:☆胎内感覚に訴えてくるものがあります。)

●朧なる月盈ち手酌進みおり=久郎兎
△満、喋=2点
(満:男らしさを感じました。女性作だったらごめんなさい。昔も今も、月は変わらず、先人達は月を見何を想い誓ってきたのか、、、今現代の私たちはあまりにも弱く。)

●立つ春が我が物顔で闊歩する=メゴチ
○白=2点
(白:擬人化が一歩突き抜けています。)

●春寒や癒えかけの疵人差しの=ひら百合
○喋=2点

●豆まきや恥ずかしそうな子らの声=メゴチ
△砂、君=2点

●雨後の朝野鳥の声や土筆伸ぶ=秋波
△香=1点

●額装の祖父の書若し春初め=君不去
△葱=1点
(葱:正統派の句ですが、我々の祖父の時代の「青春」は今のそれとは違う気がして憧れます。)

●今宵また甘き声して猫の恋=メゴチ
△阿=1点
(阿:春が来たなあと思う一瞬。)

●純喫茶白きカバーや二月尽=君不去
△香=1点

●春浅し水母の踊り鳩の胸=白髪鴨
△喋=1点
(資:クラゲの季重なりが気になった。)

●太宰府や還暦宮司も豆をまく=喋九厘
△久=1点
(久:いつも小学校マラソン大会でビリだった味酒ブーのことかも知れません。)

●轟けば春の兆しの時雨傘=ひら百合
△メ=1点

●渚来る裸足の姉妹春の歌=砂太
△メ=1点
(葱:☆少し俳句的なるものから離れている感がいい。)

●ませガキは後の先輩蕗の薹=五六二三斎
△秋=1点

●余寒なほ整形外科の予約取り=資料官
△十=1点
(十:足腰の痛み治らず本格的な春の訪れが待ち遠しい。 葱:☆面白い着想。)

●立春の厄を祓いて北まくら=喋九厘
△久=1点
(久:北まくらはおまじないでしょうか。)


【無選】

●オリエントの青き甑や猫の恋
(葱:☆猫の柄の甑や猫脚の椅子など、魅力がありますね、商業デザインの仕事をしていて、動物柄で売れるのはたったのみっつ、「猫:7」「兎:2」「梟:1」、すべての小物もふくめて売れる動物柄の割合です。が、近年、恐ろしい勢いで10〜20代の若者が「髑髏」「蜥蜴」「蜘蛛」を求めはじめました。今後は「水母」「蜻蛉」などのアールヌーボーに期待したい!)

●しまなみの島から島へ風光る
(葱:☆「風光る」はもう少し先の時節を思います。)

●垂れ幕の梅の御紋や春浅し
(資:大宰府参道でしょうか。2/3の俳句王国を見てしまったので春浅しがピンとこなかった。)


【非選】

●春暁や夢もよぢれて首冷ゆる=白髪鴨
(葱:私のコピーペーストのミスでノミネートできていませんでした、鴨さん、まことに申し訳ありませんでした。その、私のミスを指摘してこないところがまた君らしい〈笑〉。「春暁の編集末期首冷ゆる 葱」。)


A部門入選作〈back number〉

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