*A部門入選作発表*

当季雑詠*全66投句(入選51句)


【特選】

一席
●弛びたる空の結び目蕗の薹=十志夫


◎百、ス○ラ、資、砂△二 、紅=14点
(百:「ゆるぶ」 という言葉、なかなか思いつきません。 ス:蕗の薹が冬の空の割れ目から顔のぞかせてるような感じがしました。 ラ:「弛びたる空の結び目」というレトリックが巧いです。 紅:「弛びたる空の結び目」、何ともお上手です。)


ニ席
●円空の像の鑿跡日脚伸ぶ=スライトリ・マッド


◎ラ、砂○葱、夏△水、ま=12点
( ラ:確かな写生の眼が感じられます。 葱:円空の彫りの荒削りな鋭角が、「日脚」を想像させてくれる。 夏:鑿跡の残る円空像の伸びやかさと 日脚が伸びる感じが共鳴。 ま:粗削りな鑿のあとが生命の息吹を感じさせるようで、日脚伸ぶと響き合います。)


二席
●鏡餅割れば氷河の崩れ落つ=十志夫


◎二○ラ、水△五、雪、喋、秋、ス=12点
(ラ:スケールの大きな発想に、心惹かれます。 水:こういう風に言い切っちゃうところが面白い。 五:季重なりですが、鏡餅が勝ってますから、問題なし。プロの句ですかね?勉強になります。 雪:鏡餅から氷河を連想する頭のやわらかさ!?恐れ入ります。 秋:白くて固いもの。氷河とは面白い。 ス:鏡餅と崩れる氷河の取り合わせがおもしろい。)


【入選】

●二月のくるんくるんとフラフープ=まさこ
◎雪、夏○喋、ス△二=11点
(雪:本番の春に向かってゆっくり回るフラフープ。「二月」という季語に 納得です。  夏:「くるんくるん」に春を待つわくわく感。 ス:一年の内一番寒くて短い月、2月とフラフープ、合いますね。 葱:☆リズム感がとてもいい。けど、「二月」の季語の本意との相性はどうなんだろう、「にんがつ」の「ん」は「ン」を付けるべきかどうかも悩みます。)

●春近し精養軒の銀の匙=スライトリ・マッド
○十、紅、雪、ま△五、ラ、資=11点
(十:俳句では度々詠まれる銀の匙ですが、「精養軒」としたことで上野の不忍池の景を巻き込むことに成功している。 紅:お料理の名前は出てきませんが、老舗洋食店でのわくわく感が伝わってきます。 雪:冷たそうだけど柔らかい光沢を放つ銀の匙、まさに春近し! ま:春めいてくると出かけたくなりますね。上野の精養軒、懐かしい〜です。 五:高3の夏に母を亡くし、卒業の春に母の兄、伯父が姉と2人、精養軒に連れて行ってくれた。銀のナイフ、フォーク、スプーンに驚いた。伯父の涙が忘れられない。●ナフキンで涙拭く伯父涅槃西風 五。 ラ:「春近し」と「銀の匙」とが、響き合っています。 資:上野散策の途中,銀の暖かさが良い。)

●デパ地下に摘む七草でありにけり=紅椿
◎久、水○阿△十、雪=10点
(久:「摘む」の表現は大変良いですが、「摘む」状況をもっと言葉豊かに表せたら、と思います。 水:「デパ地下に摘む」が新鮮。「ありにけり」とすっきり切ったのも良いです。 阿:「でありにけり」というのが都会に住む者の諦めや、悔しさ、でも正月を迎えたうれしさがそこはかとなく漂ってくる。 雪:鏡餅から氷河を連想する頭のやわらかさ!?恐れ入ります。)

●ひたすらに人待つ息の白さかな=ラスカル
◎紅、ま△阿、メ、白=9点
(紅:先月に続き、また甘い句をとらされてしまいましたが、この一途さが好きです。 ま:一心に大切な人を待っておられるのでしょうか。凛とした心を感じます。ただ「息白し」のこういう使い方は知らなくて迷ったのですが。 阿:待っている時間が充実している。)

●見晴るかす屋根屋根春は足元に=砂太
○五、入、メ△十、香、ス=9点
(五:リズム感がいい。まるで文部省唱歌みたいですね。「春は足元に」は冬の季語とみてよいでしょう。 十:小高い丘からの景。一転して下萌への視点の移動がいい。 香:俳句王国観ましたよ。先生、さすがです。屋根屋根のリズムが楽しいです。 ス:俳句王国の砂太先生のいでたちに春を感じました。 雪:「俳句王国」見ました!!!砂太先生、凄い!でも私は選句したあとでした。先生、ごめんなさい 水:俳句王国見ました。砂太先生 すごい! 素敵な句です。テレビ映りも良い!最高!!)

●声高くぶつけ合ふ雪君がいい=満癒姫
◎十○君△葱、久、夏=8点
(十:気持ちのいい青春句。好きな子を狙う雪は真っ白、恋は盲目。下五の「君がいい」という意外な措辞が新鮮。 君:”君がいい”がいい! 葱:「君がいい」がいい、俳句に必要な「断定」の、新鮮な遣いかた。 久:なかなかの日活青春もの、頂きました。 夏:「君がいい」は微笑ましい。)

●ユーミンの声の真つ直ぐ冬帽子=雪絵
◎葱○ま△入、資、砂=8点
(葱:「冬帽子」がぴったりとはまった感じ、苗場も想い起こします。 ま:私も大好きで今も聴きますので、まつすぐが実感として伝わってきました。 資:春よ,来いという声ですね。)

●約束は奈良で某日春隣=水音
◎白○五△十、夏=7点
(五:早春の奈良でのデート!でも、某日というから空想のように感じます。でも、願いは通じる。 十:意味深な句。池田澄子さんの「本当は逢いたし拝復蝉しぐれ」のリズムを髣髴させる。 夏:”奈良”が良いな。春が待遠しいですね!)

●金の歯朶ひと葉纏ひぬ黒漆器=君不去
○久、百△二、ラ=6点
(久:普通は平板にしか見えないのに「纏ふ」と言う発想が新鮮。 百:目に浮かぶ当たり前のものですが、「纏う」で詩になる。 ラ:金と黒の、色の対比が鮮明です。)

●じくじくと心を濡らす寒の雨=白髪鴨
◎喋○満△香=6点
(香:寒いいやな雨の感じがよく出ています。)

●身長差四十センチ日脚伸ぶ=五六二三斎
◎資○雪△水=6点
(資:成人の日のばあちゃんと孫娘のツーショット。 雪:何と言っていいか解らないおもしろさ!)

●転轍のカンテラ初電見送りぬ=久郎兎
○香、資△夏、君=6点
(香:香:転轍なんて、専門家しか知らない言葉ですね。 夏:線路のポイントが凍らぬよう点されたカンテラか。見守られている安心感があり、良い一年となる予感も。)

●遠富士やダイヤモンドのひかり冴ゆ=資料官
◎入、メ=6点

●ぴんと張る織機の糸や寒椿=雪絵
◎香△二、紅、ま=6点
(香:香:寒椿がびったり。 紅:着物大好き人間ですので、とても惹かれました。 ま:冷たく澄んだ空気感が伝わります、冴え冴えと咲く寒椿がぴったりです。)

●雪ん子の冬といふ字で歩みけり=十志夫
○二、夏、喋=6点
(夏:面白い!確かに雪ん子の姿に見えます! 葱:☆ 「二の字二の字の下駄のあと」を連想しました。)

●玄奘の辿りし道や初暦 =紅椿
△二、水、秋、資、砂=5点
(秋:ロマンですね。 資:思わず平山郁夫の絵を想像した。)

●代筆の母は元気と寒見舞=資料官
○久、入△メ=5点
(久:父親が亡くなって間もない遠方の兄弟姉妹への葉書でしょうか。中の句は平凡ながら、この位置でないと、と思いますね。)

●ドーランを落としてすする夜鳴き蕎麦=阿Q
◎秋△君、白=5点
(秋:役者の素顔に戻る瞬間ですね。彼の表情は明なのか暗なのか、色んな空想をしてしまいました。)

●どんど火へ炙りの竹の環となりぬ=夏海
◎阿○十=5点
(阿:観察眼のおもしろさ。 十:樽の箍(たが)なのか、「環となりぬ」がリアル。)

●いとせめて茄子の夢など二日かな=砂太
◎五△満=4点
(五:古語をこんなにうまく使うとはいとおかし(^^)小さき願いは叶ったのでしょうか?)

●おいそれと近付けぬ地や冬満月=君不去
○香、白=4点
(香:福島のことでしょうか?故郷なのかもしれないですね。)

●カメラ手の鉄男と小鉄四温の日=スライトリ・マッド
○紅△ま、香=4点
(紅:最後まで◎にしようか迷いました。中七がとても好きです。季語が説明になってしまったのが残念、もっと良い季語があったのでは? ま:いかにも温かい風景で、おもわず微笑みました。 香:最近は親子でカメラを構える姿、四温の日がいいですね。)

●寒椿二項展開紅乱る=白髪鴨
◎満△百=4点
(百:「二項展開」ねえ。)

●初神籤末吉とある笑顔かな=砂太
◎君△葱=4点
(君:お正月らしく、また滑稽味もあって。 葱:めでたさが「中ぐらい」なのが俳句かも。)

●また一人追い越されても背に冬日=香久夜
○メ△喋、秋=4点
(秋:お日様は暖かい。)

●街灯のそこだけ白し蒼き雪=秋波
○阿△百=3点
(阿:情景がきれい。 百:夜になると雪が青くなるんですよね。)

●ガンダムに変身したし冬の蝶=水音
○ス△久=3点
(ス:ガンダムになれたら怖いものなしですもの。 久:戦隊ものにたとえるのも興がありますね。参考になりました。 葱:☆新しい表現への挑戦を感じます。)

●五指の見ゆ手袋憩ふ囲炉裏端=久郎兎
○砂△満=3点

●さきを染め筑波の耳や冬夕焼=入鈴
△喋、君、メ=3点

●潮風とお汁粉鍋と寒稽古=夏海
○秋△二=3点
(秋:寒いけど温かい。そこに集まる人々の交々の顔まで浮かんで来そうです。)

●大吉は誡めピンクの初神籤=資料官
○秋△二=3点
(秋:おみくじなんて当たるわけないと思いながら、やっぱり気になるんですよね。)

●手袋の祈るかたちに置かれをり=ラスカル
○二△紅=3点
(紅:「祈るかたち」はよく見かけます。でも、手袋をもってこられて成功されたと思います。)

●明けましておめでとうさて寒き朝=君不去
△葱、久=2点
(葱:「明けましておめでとうございます」の挨拶のあとは「それにしても今日も寒いですねえ〜」の御挨拶。新年とはいえ、日常もまた生活のうちにある。 久:頓智のきいた、言葉が流れるような口語調、頂きました。)

●熱燗の酔えぬ肴や寒の月=メゴチ
○白=2点

●小春日のぷかりぷかりと雲の汽車=喋九厘
△阿、入=2点
(阿:汽車が好きなんですねえ。)

●水仙によく似合ひたる雪降りぬ=白髪鴨
○葱=2点
(葱:「水仙の香やこぼれても雪の上 千代女」なんて句もありますね、雪と水仙の取り合わせは類想も多いだろうけど「、似合う」が「富士と月見草」みたいでなんだかすごく惹かれました。)

●疎開地は今は被災地雪の声=葱男
△二、五=2点
(五:戦時中に東北は疎開地としてお世話になった。それが今は被災地。季語にやや問題あるかも。もっと復興を感じさせる季語はないものか?)

●冬木立朝日迎える凛として=秋波
○満=2点

●冬薔薇花束にしてライブ待つ=雪絵
○水=2点
(冬薔薇は厳寒の中にあるものだとばかり思っていた。)

●冬萌えの土の畦にも神の道=喋九厘
△阿、入=2点
(阿:情景がきれい。)

●桃色のいろとりどりを初荷とす=葱男
△ス、白=2点
(ス:春色の初荷、明るさがあっていいですね。)

●リヤカーに冷凍まぐろ雪催=ラスカル
○百=2点
(百:「雪催」がいい。)

●忘れれん優しい君の雪兎=満癒姫
○君=2点
(満:『忘れれん』は徳島弁で『忘れられない」という意味です。)

●寒ざらし人生模様一区切り=五六二三斎
△百=1点
(百:還暦で誰もが初心に返る。)

32●超新星日本にふれば細雪=水音
△満=1点

●何事もなきかの賀状いただけり=香久夜
△砂=1点

●冬の薔薇造花のやうに咲いてをり=メゴチ
△ラ=1点
(ラ:確かに。造花のように見える時があります。)

●をみなごの梯子の技も出初式=夏海
△雪=1点
(雪:当世、女の子が元気!)


A部門入選作〈back number〉

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