*A部門入選作発表*

当季雑詠*全61投句(入選41句)


【特選】

一席
●味噌蔵の梁の太さよ夏来たる=砂太


◎紅、ま、入、秋、香○水、ス△ラ、雪=21点
(紅:肌寒い日が続いているので、実感が湧かないのが残念ですが、季語が効いていて秀逸なお句だと思います。 ま:薄暗い味噌蔵と夏の対比が鮮やかで、梁の太さが効いています。 入:味噌のかぐわしさも漂ってきそうで、豊穣さを感じます。 秋:仄暗い蔵のひんやり感が心地いい季節になりました。蔵の骨太さが夏という語感の強さを受け止めているのがいい。 ラ:「夏来たる」という季語が、ぴたりと決まりました。 香:静かな、そして涼しげな蔵が、おおらかに味噌を熟成させるのでしょう。 ス:普通の工場より美味しい味噌ができそうですね。 水:薄暗い味噌蔵と外界の対比。梁の太さに注目したのがいい。「よ」なのか「や」なのか?)


ニ席
●藤棚の下に無数の日のかけら=ラスカル


◎五、夏○メ、資、砂、君△久、十、紅、二、香=18点
(五:観察眼に◎。藤の花の咲き具合はどうでしたか? 夏:「日のかけら」上手いなあ。藤棚の下の木漏れ日、綺麗です! 資:日のかけらに共感。見上げた時の藤の明るい色が何ともいえない。 久:細かい木漏れ日ですね。「かけら」という表現、いいですね。 十:花の隙間からの木漏れ日を「日のかけら」とした。景が見える。 紅:藤の大きさ、見事さが伝わってきます。 香:「日のかけら」という表現が素敵です。)


三席
●つばくろや無人の駅の小座布団=紅椿


◎ラ、阿、ス○メ、二△砂、百、秋、前=17点
(ラ:「小座布団」に、存在感があります。 阿:旅で出合った風景です。列車を待つ時間と言うのが、近頃は無くなった。新幹線ばかり使っているとかえって余裕がなくなる。 ス:田舎の駅にありそうな光景。なんだかあったかい。 百:小座布団がいい 。 秋:懐かしい風景です。)


【入選】

●朧夜のするりと抜ける玉結び=まさこ
◎水、二○十、夏、秋△メ、前=14点
(水:心ここにあらずですね。 十:何ともいえない「エロティシズム」。 秋:朧夜というのが何か妖しげ。こじれた人間関係を暗示するようで 面白い。)

●貝がらの裏のにじ色昭和の日=紅椿
◎資、雪○砂、ま△水、二、香=13点
(資:平成も四半世紀も過ぎ,今思う昭和はキラキラ輝いていた記憶がある。 雪:あわびの貝殻を思い浮かべました。ついでに「片想い」も。やっぱり昭和の出来事、ですね。 ま:この方の昭和はこのようだったのでしょうね。)

●場所取りのオタフクソース桜時=水音
○夏、二、ス△十、砂、紅、葱=10点
(ス:焼きそばソースが陣取ってるとこが面白い。 十:花筵にポツンと置かれるオタフクソース。何とも滑稽な姿。 紅:固有名詞が効いています。おおぜいで焼きそばでもするのでしょうね。 葱:具体性の力。)

●巻き戻す時計の軋み昭和の日 =十志夫
◎メ○君△五、雪、阿、水=9点
(君:”軋み”が効いています。 五:時計はアナログな古時計か?平成も25年まで来ましたね。 資:アベノミクスよりアベノリスクですね。昭和の日は「貝がらの裏のにじ色昭和の日」を採りました。 雪:昭和も遠くなりにけり、ですね〜。 阿:「軋み」が効いています。なんだか時代も撒き戻っていく感じがして、大丈夫かい、この国。 水:自分が感じている以上に世間では昭和は遠いものらしい。「軋み」がキモですね。)

●遠足や星のバッヂの副級長=葱男
○紅、雪、喋△ラ=7点
(紅:「副級長」、懐かしい言葉です。女子でしょうか?星のバッヂが保安官風でいいですね。  雪:なんか西部劇の保安官のバッジを思い出しました。ちょっと誇らしげな様子がかわいい! ラ:「星のバッヂ」という具体性がいいですね。)

●春笋へ面打の如く鍬を打つ=砂太
◎喋○前△資、君=7点
(資:たけのこを掘る様をうまく言い表わしていて面白い。昔濱地さんの家の裏山でたけのこを掘ったことが思い出されました。)

●背丈越す楽器ケースや暮の春=雪絵
○十、紅、前△秋=7点
(十:大きさからしてコントラバスか? 開演前の長閑な日差しの中に重低音の響きが聴こえてくるやうな。 紅:近所に音大生のアパートがあるので、よく見かける風景です。進学から1ヶ月、学生さんの練習音も段々うまくなってきています。)

●庭に出て五十歩の春惜しみけり=十志夫
◎前△紅、五、夏、君=7点
(紅:歩ける事は素晴しい事です。リハビリを頑張って、来年は百歩になりますように。 五:今年の春は寒いまんまに夏に突入です。それをこんな表現に出来ることに感心しました。)

●初言葉は「まんま」と「トトロ」豆の花=夏海
◎砂○葱△十=6点
(葱:「トトロ」が入るのがリアルで面白い。十:理屈抜きに可愛い。)

●鯉のぼり四十路に入りし子の事を=紅椿
◎君○入△ま=6点
(君:息子への親の想い(きっと心配)がひしひしと。言い切っていないところがいい! 入:子が三十路までは頑張ろうと思うけど、色々考えちゃう深い句。 ま:このように思うのだろうなあと感じました、お気持ちのこもった句です。)

●ぶらんこに放り出さるる赤リュック=まさこ
○喋、香△五、夏=6点
(香:ぶらんこ「に」が、おもしろいですね。 五:リュックをからったまんまのぶらんこ跳びか?)

●青き灯の東京タワーや桜冷え=資料官
○雪、阿△ス=5点
(雪:「や」がなくてもいいような・・。今年の春はいつまでも冷えました。 阿:照明を変えるのはどういう決まりで変えるのか判りませんが、武蔵小杉の稽古場から遅く帰る時に、ちょうど慶応の交差点を曲がると東京タワーが真正面に見えてきます。そう、こんな感じだった。 ス:大都会のクールさが感じられる。)

●あの世でも酒酌み交わそ花筏=喋九厘
◎百△砂、ス=5点
(百:こんな事が多くなっていくのはつらいです。 ス:亡くなられた方と作者の友情を感じる。)

●汽罐車の汽笛秩父の山笑ふ=資料官
○葱、ま△香=5点
(葱:俳句刷新派としてはう〜ん、この句を地位に選ぶかなあ〜、と思うけど、なんだか癒されるんだなあ〜。 ま:しっかりとした景が浮かんできます。)

●くるぶしの風清やかにつばくらめ=まさこ
○五、百△夏=5点
(五:若い女性のくるぶしでしょうね。 百:くるぶしが季節を感じさせる。)

●喧騒を風にかはして花楓=香久夜
○資△水、秋、二=5点

●桜しべ赤ネクタイに着地せり=五六二三斎
△久、ラ、百、喋、君=5点
(久:赤の上に付いたなら人間の錯覚で白色でしょうか。 ラ:「着地せり」という表現が面白いです。 百:しべも華やか。)

●モザイクに山施して山笑ふ=雪絵
○久、五△喋=5点
(久:新緑の山、僕もいつも表現したく思っていました。確かに薄い濃いさまざまな緑がありますね。「山」がダブっているのを良しとするか意見が分かれるかと思います。 五:今、どこの山も樟若葉や椎若葉でモザイクに。季語の山笑ふはやや遅いかも。樟若葉で夏の句にした方が良いかも。)

●先輩の東北訛り花見酒=秋波
○ラ△入、ス=4点
(ラ:僕も、その先輩とお話ししてみたいです。 入:こげなお花見ってよかあ〜〜。 ス:岩手に10年ほど住んでいたが、東北弁いがった!満開の桜に雪が積もったこともあったべ!)

●「お花さん逃げて行くよと」幼子の=阿Q
○秋△葱=3点
(秋:可愛い!子どもの素直さに脱帽です。 葱:新感覚の修辞法に一票。)

●通ひ路のふと華やげり濃山吹=資料官
○久△百=3点
(久:「ふと」と「華やげり」を直接つないだところがいいです。 百:いつもの道がちがってくるのが春です。)

●長考や濃山吹の揺れており=入鈴
○水△資=3点
(水:硝子越しに見える山吹によって張りつめた室内が鮮明になっている。)

●白木蓮は生クリームの色かとも=ラスカル
◎久=3点
(久:確かに濃い白色です。薄い白と濃い白はどうやって人間は見分けているのでしょう。)

●ぴよんぴよんと跳ねてホームへ風光る=十志夫
◎葱=3点
(※十:祝・国民栄誉賞  葱:生涯「長島=背番号3」派としては全く迷う余地なしです。)

●JR切符六枚囀れり=水音
◎十=3点
(十:中7の「切符6枚」にいろいろな想像が掻き立てられる。三世代の家族旅行か? 学生時代の仲間との小旅行か?俳句の吟行か? いずれにしても楽しくも騒々しい。 資:なぜ6枚,青春18きっぷは5枚だけど。)

●朝練のキャッチボールと囀りと=スライトリ・マッド
○ラ=2点
(ラ:健康館溢れる句。)

●うす紅の浮かれ心やしだれ花=前鰤
○阿=2点
(阿:いいねえ肩の力が抜けるねえ。)

●蛙の子尾振り過ぎてや一回り=君不去
△久、入=2点
(久:「や」の意味がよくわかりませんが、観察力はすごいですね。 入:力が漲っているってこういうことでしょうか。)

●黒ゆへに子等烏追ふ花畑=久郎兎
○香=2点
(香:ハッとさせられる内容です。なるほどそうかも。)

●げんげ田の一閃山路の幾曲がり=夏海
△資、阿=2点
(阿:春ですねえ。ゆっくり歩いてみたい。)

●霾ぐもり駅のポストの中に夢=砂太
○入=2点
(入:何を投函されたのでしょう?てっちゃん関係者?こちらまで楽しくなります。)

●花過ぎの循環バスは西廻り=雪絵
△ま、入=2点
(ま:バスの廻り方を考えたことがありませんでした。着眼点が素敵。 入:ハレの桜ばかりでなく、ケの桜をさりげなく一句にされたと感心。 資:循環バスに乗って時間つぶしの花見をすることは好きです。今年は花が早かったから残念な気持ちがにじみ出ている。)

●ふらふらとついふらふらと春の宵=阿Q
○百=2点
(百:わかります。)

●行く春にまた会おうぜと手を上ぐる=葱男
△メ、雪=2点
(雪:ほんとに、そう約束したいものです。そのつもりだったんですけどね・・。)

●くりくりと毛刈り羊の痩せっぽち=夏海
△前=1点

●木漏れ日に笑み見え隠れ老夫婦=久郎兎
△阿=1点
(阿:こんな時がいつ来るかしら。)

●四月馬鹿四角まんじゆう喰んでみる=スライトリ・マッド
△喋=1点

●湿気帯ぶ若葉を嗅ぐや初蛙=秋波
△葱=1点
(葱:写実の実践的看破に敬意、ちょっと泥臭いところがまたいい。)

●タンポポを差し出す頬やさわりたし=香久夜
△メ=1点


【入選】

●山寺に桜花舞い散る芋煮会
(葱:「芋煮会」はやっぱり紅葉=秋が似合う。)



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