*A部門入選作発表*

当季雑詠*全68投句(入選48句)


【特選】

一席
●額より入れるバリカン燕来る=夏海


◎葱、十、砂、久、ラ、紅、ス△資、雪、ま=24点
(葱:ドラマ性、意外性を感じました。 十:とんと見かけなくなった毬栗頭ですが「額より入れる」がリアル。燕の滑空する姿とバリカンの動きが呼応している。 久:田舎の床屋さんを思い出しました。お客が男子中学生、庇に燕と言うところでしょうか。 ラ:坊主頭にするのでしょうか。野球部の少年かも。 紅:子供の頃の家庭での散髪風景が浮かびました。丸刈りでしょうね。長閑な様子に季語がぴったりです。 ス:直線的な感じで合っている。良い取り合わせ。 ま:季語がきいていてさわやかです。)


ニ席
●あんぱんのあんの片寄る余寒かな=まさこ


○十、久、メ、二△夏、喋、資、君、ス=13点
(十:この種の俳句は季語の納まり具合がすべて。「余寒」がピタリ決まって動かない。 久:気持ちの不安定さをよく表現していると思います。 葱:☆面白い発想、ラスカルさんっぽいかな? 「あん」は漢字の「餡」のほうが個人的には好みです。 資:N音の響きにつられて。 ス:アンパンの餡はたくさん詰まってる方がいいんですが、ときどきあります、少ないのが。季語とマッチしますね。)


二席
●円窓を酔はせて眺む春の月=葱男


◎メ○喋、資、前、百△五、香=13点
(資:上田丸子電鉄の別所線を走っていた丸窓の電車を思い出す。窓を酔わせてが面白い。 五:円窓から見る春の月は風流ですね。)


【入選】

●春きやべつぱりぱり咽青みけり=まさこ
◎喋、雪○砂、メ△久、夏=12点
(雪:一番春を感じさせる句でした。 久:まるで鳥の気持ちですね。 葱:☆楽しい句。)

●見晴るかす干潟や鳥のゐて閑か=十志夫
◎君、百○葱△ま、メ、阿=11点
(君:広々とした景ですね。 葱:鳥は杭かなにかにとどまって動かないのか、春駘蕩の風を感じます。 ま:春の気持ちの良い海、行ってみたくなりました。 阿:有明海でしょうか、なつかしい)

●口ごもるやうに鳩鳴く春の泥=雪絵
○ラ、二、君、ス△十、五=10点
(ラ:その鳩は、「春愁」の気分なのかもしれません。 ス:デデッポッポーと聞こえるあの声、ほんとうにモゴモゴした感じですね。 十:口ごもるやうに鳴く鳩が、「春の泥」を愚痴っているようにも思える取り合わせの妙。 五:鳩の鳴き声は確かに口ごもる感じ。 葱:☆のどを鳴らしてる感じがよく表現されています。)

●花の坂登りきつたる車椅子=五六二三斎
◎ま○君△ラ、資、メ、前=9点
(ま:登り切れて良かった! いろいろな想いが込められていますね。 ラ:「登りきつたる」に、力強さが感じられます。 資:坂も花も人生も,登りつきたるという言葉につながります。)

●打ち直す部室の釘や初桜=紅椿
◎二○ラ△砂、喋、満=8点
(ラ:ただ単に「打つ」のではなく「打ち直す」と表現したことによって、これから始まる春への期待感が伝わってきます。 満:春は何かと心機一転で、お部屋の釘を打ちなおしたり、障子を張り替えたり。暖かくなるとやろうと思ってたのかなぁ♪)

●朧月暮色をわずかに塗り残す=秋波
◎阿、前○夏=8点
(阿:墨絵を見ているようです。 夏:春の夕暮れの色には「塗り残す」がぴったり合うと思います。 葱:「暮色を」の「を」は要らないかも。)

●春風を入れよと車内アナウンス=久郎兎
◎夏○十、ま△葱=8点
(夏:率直な表現で、かえって強く春を感じさせられます。素敵な句。 十:季語「春風」の使い方が斬新。 ま:身も心もなごむ光景です。 葱:もし、本当にその通りのアナウンスがあったのならなかなか「粋な」会社ですね。 五:☆「しゅんぷう」と読みたい。「入れて」の方が優しいかも。)

●雉鳴くや内弁慶な農夫たち=水音
◎五、香△白=7点
(五:雉と農業は相性がいいですね。季語の本意によく合う。)

●春野菜のポトフふつふつ雨女=スライトリ・マッド
◎水△砂、夏、雪、前=7点

●春曉の時計はどれも眠たさう=十志夫
○砂、紅△ラ、水=6点
(ラ:時計も、「春眠暁を覚えず」なのでしょうか〈笑〉 紅:時計を主役にもってきたところが新鮮です。)

●迫りくる潮のやうに雪柳=葱男
○紅、雪△五=5点
(紅:とある場所で作者がわかってしまったのは残念ですが、うまいものはうまいです。 雪:潮に見立てたところが新鮮に感じました。 五:雪柳を潮に例えたのはうまい。)

●涙二分混じる門出や桜東風=夏海
○五△満、前、百=5点
(五:門出は別れでもある。涙二分、嬉しさ八分か。いい句だ。 満:若い頃は、春になると意味もなく、ツンとするような胸が痛い季節でした。。。)

●ランナーを迎ふる拍手花辛夷=雪絵
○水、白△香=5点


●串団子めく剪定となりしかな=紅椿
○喋△砂、ラ=4点
(ラ:「串団子めく」という比喩が面白いです。 葱:☆田舎の徳島の農家でもよく見かけます。)

●さんしゅゆの黄を滲ませて雨戸開く=香久夜
○百△喋、二=4点

●下萌やスケッチブックまだ真白=ラスカル
○ま△十、水=4点
(ま:ま白い画面にどのような色が入れられるのでしょう。気持ちの良い御句です。 十:本格的な春の到来を心待ちにしている作者の思いが「まだ真白」に表れている。)

●試し着る芭蕉布かろし春の宵=スライトリ・マッド
○香、阿=4点
(阿:春になって、気持ちも着るものも軽くなった。 資:やはり芭蕉布は夏の季語だと思う。)

●夢を見た頃や紫雲英の首飾り=砂太
△葱、紅、水、香=4点
(葱:この世はつかのまの夢まぼろし。 紅:懐かしい情景を思い出させてもらいました。)

●誘はれ座敷へ一歩雛街道=君不去
△久、二、白=3点
(久:街道と言うからには部屋に似つかわしくないほどの大きい雛壇なのでしょうか。)

●防人は膝を抱きぬ桜散る=白髪鴨
◎資=3点
(資:花冷えですね。一人寝の子守唄のイメージ。)

●三月は記号化されていろづきぬ=白髪鴨
○葱△ス=3点
(葱:春のとりどりの開花を記号化と見たところが新しい。 ス:花が今年は早く咲き始めました。記号化が面白い。)

●新物の釘煮を箸で透かし見る=久郎兎
○資△満=3点
(資:透かして見るその動作に共感。 満:春の旬の食べ物を煮付けているのでしょうか?美味しく炊けたかな?一つつまみ食いしちゃう!!! 私なら〈笑〉)

●花冷や新幹線に婚と葬=十志夫
○ス△紅=3点
(ス:取り合わせの妙を感じる。花冷えと新幹線、婚と葬、入れ子になってるような感じ。 紅:人の世の無常感を新しい感覚で捉えていて、惹かれました。 葱:☆視点は面白いのですが「婚と葬」の語感が馴染んできませんでした。)

●花ミモザ乳ふふみたき時のあり=葱男
○白△十=3点
(十:「ふふむ(含む)」には、「莟が膨らんで開き切らないさま」という意もある。早春と母の柔らかさを同時に表現。)

●春の雷女に電話して淋し=砂太
◎白=3点
(葱:☆言い切りましたね、すごい!)

●待ちきれぬ蕾を濡らす菜種梅雨=満癒姫
○阿△百=3点
(阿:ちょっと意味深。)

●行き着けぬ一本桜や凛と見ゆ=君不去
◎満=3点
(満:少し悲しい寂しいニュアンスもあり、でも、凛と立つ桜の姿に鼓舞されているような・・・そんな感じがしました。)

●若鮎の跳ねるがごとし新夫婦=メゴチ
△阿、君、ス=3点
(阿:そういう時期もあるんですねえ。 ス:躍動感がいいですね。お幸せに。)

●藁算で編みある数値籾蒔けり=スライトリ・マッド
○久△白=3点
(久:農事でこのようなことがあるのでしょうか。興味深いです。)

●黄水仙白装束の異星人=前鰤
○香=2点
(前:福島第一原発にて。 葱:☆オームも白装束でしたね、なんか無気味ないでたち。)

●切れ長に描く襖絵涅槃西風=雪絵
○五=2点
(五:切れ長という言葉のイメージが涅槃西風とよく合う。)

●桜日や野良猫集まる参観日=喋九厘
○満=2点
(満:人、動物、皆が春が来た喜びを隠し切れない感じがします。)

●朝食はクッキー二枚春の風邪=ラスカル
○雪=2点
(雪:風邪のときはまさにこんな心境ですね。)

●ツイッター流れ続けるおぼろかな=ラスカル
○紅=2点
(紅:今一番新しいであろう句材を使って、うまく詠まれています。 葱:☆これも現代的な風景。)

●花山の導線に列す乳母車=久郎兎
○夏、水=2点
(夏:この風景、私も詠みたくて未だ果たせずにいました。)

●福岡の桜見て思う福島を=喋九厘
○満=2点
(満:桜を観て沢山の人が沢山の気持ちを抱いています。忘れてはいけない。311。それこそが復興。)

●揺るぐまま馬酔木の花のみ咲きすすむ=香久夜
○前=2点

●河川敷は犬の社交場夕桜=秋波
△二=1点

●啓蟄や身も柔らかにこんにちは=満癒姫
△葱=1点
(葱:下五の「こんにちは」がなんともかわいい。)

●桜散り心に刃の忍かな=喋九厘
△メ=1点

●菜の花に吹く風さやか遠賀川=阿Q
△百=1点

●道端に残されてゐるすみれかな=五六二三斎
△阿=1点
(阿:よく気づいたね。)

●目薬の常備となりぬ春の雪=ひら百合
△久=1点
(久:雪と目薬の関係が今一つわかりませんが、乾燥のことを言ってるのかも知れませんね。 葱:☆朝、鴨川を散歩する人の数が減っています、それに反比例するように、マスクをしている人の数はどんどん増えています。あ〜、飛散三兄弟!)

●吉野川水温む面に眉山あり=満癒姫
△君=1点
(葱:☆大きな景で気持ち良い。)

●リクルートスーツ着古し卒業す=資料官
△雪=1点


【無選】

●主消へ今満開の庭の梅
(前:双葉郡大熊町にて。 葱:「消へ」は「消え」。)

●潮風が美味いぞ春の志賀島
(葱:☆実感あり。)

●百曲を携帯してをり青き踏む
(葱:☆バッテリーの持ちがもう少し欲しい。)


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