*A部門入選作発表*

当季雑詠*全62投句(入選41句)


【特選】

一席
●雛の貌褒めて担任帰りけり=十志夫


◎五、香、資◯葱、な△ラ、ぼ、水=16点
(五:田中裕明的俳句。先生ものに弱いのは何故? 資:家庭訪問の帰り際でしょうか。子供が褒められたような気分。 葱:ドラマがあり、平和があり、愛がある。 な:担任〈少し硬いかな〉じゃなくて先生だったら天に戴きました。素敵な景ですね。 ラ:担任教師の家庭訪問、懐かしい〜! ぼ:うまい切り取り。)


ニ席
●一目づつ空に刺し子の芽吹きかな=雪絵


◎ラ、喋、メ◯紅、前△葱、五=15点
(ラ:芽吹きのことを、「刺し子」と表現した句は初見です。 紅:例えが斬新で感心致しました。 葱:面白い比喩。 五:暖かさをこう表現するんだ。男性には詠めません。)


三席
●葦若芽(あしかび)や城址に高く鳶の笛=砂太


◎ま、前◯水、資△紅、喋、メ=13点
(ま:葦若芽という言葉、初めて知りました。大きな景が見えます。 水:格調高く、気持ちのいい春の情景です。 紅:「あしかび」と言う季語と教えて頂きました。気持ちの良い景です。)


三席
●春浅し姿のままの香の灰=水音


◯紅、ま、香△葱、阿、十、雪、資、メ、秋=13点
(紅:中七、下五に納得致しました。部屋にはまだ芳香が充満しているのでしょう。 ま:季語が効いていますね。とても好きな句です。 葱:浅春の危うい静謐がうまく描かれていると思います。 阿:観察眼! 十:燃え尽きても形を保つお香の最期。凍て返る空気感を感じます。)


三席
●春雨の音が鏡に吸はれけり=ラスカル


◎な◯五、十、修、香、メ=13点
(な:しっとりした音が鏡に吸い込まれる…怖いけれど魅力的でした。 五:鏡台に座る主婦は今、何を考えているのだろうか?物語の始まりのようです。 修:魂まで吸われそう。 十:無音の世界。やがて自分の顔も心も鏡の中に消え入り忘我の境地に。 葱:いろっぽい情景です。)


【入選】

●ジグザグの非常階段ねこの恋=紅椿
◎雪◯砂△久、ラ、ぼ、水、香、秋=11点
(雪:板塀や石塀ではなく、ビルやマンションの階段なんですね、今どきは。ジグザグ、がいいですね。 久:猫の気まぐれさがジグザグに出てていいです。 ラ:「ジグザグ」が、猫の恋を象徴しているような。 葱:この句、「ジグザグの非常階段ね、この恋」としあたらめっちゃ面白いセリフになりますね!季語なくなるけど。 ぼ:ジグザグがいいですね。)

●酒粕の匂ひ立ち込む春の雪=まさこ
◯阿、ラ、十、喋△修、雪=10点
(阿:行ってみたいねえ。 ラ:「春の雪」という季語が、ぴたりと決まりました。 十:雛の客への甘酒を作っているのでしょうか。ガラス窓の曇った様子までもが見えてきます。 修:よく匂つて酔いそう。)

●泥んこの叱られてをり蕗の薹=水音
◎紅◯砂、雪△ま、秋=9点
(紅:足も手もほっぺも鼻の頭まで泥んこな子供が浮かんできました。叱られちゃったけど、きっとお手伝いをしたかったのですよね。 雪:泥んこになって遊ぶこと自体、少なくなりましたね。懐かしい気持ちになりました。 季語が効いてます。 ま:とても可愛い!しゅんとしている子の姿が浮かんできます。)

●梅園の殊に一樹の人だかり=紅椿
◯五、前△葱、ま、水、秋=8点
(五:上手い。俳句という感じ。 葱:探梅の情景を上手くとらえていると思います。そこで初めて会う人同士でも話に花が咲きそう。 ま:立派な枝ぶりなのでしょう、ありますね。)

●恋猫の爪とぐ音のただならず=ラスカル
◎阿◯白△淳、前=7点
(阿:あやかりたいねえ。 白:怖い!)

●ロボットのあをざめてゐる半仙戲=なを
◎白、修△砂=7点
(白:不思議な句ですね。 修:半仙戯という古風なことばの斡旋に脱帽。)

●おてんばはトレードマーク草青む=雪絵
◎秋◯喋△メ=6点

●行列に割り込んでくる春の風=ラスカル
◎淳◯雪△な=6点
(雪:割り込んでくる、という表現がいいです。暖かい春風なら文句は言えないし。 な:素直に詠んでらして惹かれました。)

●アルペジオ指の先まで春来る=葱男
◎水△ぼ、資=5点
(水:春が来る様子は本当にアルペジオですね。「指の先まで」に若さを感じます。 ぼ:気持も指もほぐれて。)

●乳母車押すピンヒール春の風=雪絵
◎十△白、前=5点
(十:意外な組み合わせですが、颯爽とした現代の母親らしい姿。白:若いお母さんの溌剌とした姿。 葱:オシャレ。)

●梅咲きて母の句便り復活す=香久夜
◯阿△淳、紅、喋=5点
(阿:いいねえ。 紅:梅が咲くと、何かを始めようという気になりますね。 葱:正統派。)

●朧夜の回転木馬まで歩く=なを
◯修、ま△喋=5点
(修:とてもとてもやさしいかんじです。 ま:夜の遊園地というのがなんとも雰囲気があります。 葱:ドラマあり、最終選考まで残りました。)

●受験子の東京ばな奈さげ帰る=紅椿
◯ぼ△淳、ラ、十=5点
(ぼ:気持がほのぼのします。 ラ:ほのぼのとした気分になりました。きっと合格することでしょう。 十:その昔、「思い出受験」なるものがあった。自信は全くないが観光気分で受ける大学でしょうか。 葱:「東京ばな奈」が効いている!)

●春寒の生家の匂ひ近づきぬ=修治
◎久△白、十=5点
(久:匂いは言葉で表現しにくいですね。微妙な匂いは特に。 白:帰郷の感慨がよく分かります。 葱:嗅覚に訴える句にはプラスαの魅力が生まれますね。 十:生家に近づくと尿意を催すと詠んだのは草田男。独特の匂いなのでしょうね。「近づき来」としたほうが生家を訪ねる臨場感がより増すような気も。)

●春灯聖家族とはゆかねども=葱男
◎ぼ◯資=5点
(ぼ:すこやかでさわやか。)

●道草をいざなふ南風よ岬まで=久郎兎
◎砂◯メ=5点
(葱:情景的にはとても惹かれました。「よ」は「や」としたほうが大人な感じがして句がしなやかになりそう。)

●夕映えもほんのり温し梅見月=秋波
◯ぼ△白、阿、砂=5点
(ぼ:季節の変わり目をうまく表現。 白:柔らかい時間です。 阿:ちょっと寒いけど春の風情。)

●初めての男女別学いぬふぐり=五六二三斎
◯葱、水=4点
(葱:「別学」という視点が面白い、中学か高校か、「いぬふぐり」に少年の熱とペーソスと可笑しみがあります。 水:中学か高校への進学でしょうか。よいお友達と、楚々と、でもたくましくという願いが込められていますね。はじめ男の子かと思ったけど、女の子かもね。)

●雪降りて四方ふさがり甲斐の春=資料官
◯久、淳=4点
(久:山梨県は大変だったようで。四方が山をさりげなく表していますね。)

●石鹸玉悔いも未練も空へ消え=ぼくる
◯白△資=3点
(白:春の空に。本当にそうだと良いですね。 資:シャボン玉に託したこの割り切りが心地良い。)

●杖先にファソラの如く春うらら=久郎兎
◎葱=3点
(葱:「杖先」がやや苦しいが「ファソラ」の音階を「うらら」と捉えた感覚に参りました。「枝先」でどうでしょう?)

●春菊を入れて鍋の火落としけり=十志夫
◯な△紅=3点
(な:当たり前のことを詠んでいらっしゃるのだけど、お上手だなぁ〜と。 紅:これでお鍋の出来上がり。よい香りがしてきます。)

●豆菓子の止められなくて立雛=まさこ
◯久△香=3点
(久:ピーナッツはやめられません。子供のころからの好物。 葱:「のり巻きの端つこを選る雛の宵」と同じ温度を感じました。)

●かますごの日毎に太る雛の頃=秋波
△五△香=2点
(五:季重なりなれど、気になる一句。おそらく、確信犯?)

●草青む開幕を待つアスリート=五六二三斎
◯ラ=2点
(ラ:「開幕を待つ」という気分が、「草青む」に照応しています。 葱:ストレートな句。好感を持ちました。)

●この思いいかに伝えむ梅や咲く=阿Q
◯淳=2点
(葱:古語だと「この思ひいかに伝へむ梅や咲く」。)

●のり巻きの端つこを選る雛の宵=まさこ
△久、な=2点
(久:得した感じなのかな。子供が好きですね。 な:端っこ、美味しいですもんねぇ〜〈笑〉 葱:ほっこりしますね、決して背伸びしない等身大の日常を詠んでいるところに好感をもちました。)

●白地図の日本列島鳥帰る=十志夫
△五、修=2点
(五:地図ものは、くろううさぎさん句? 修:白地図つてさみしいな。)

●風生句碑春の心に触れもして=砂太
◯秋=2点

●病もち雪中歩くほかはなし=香久夜
△久、雪=2点
(久:北国の厳しさでしょうか。)

●居酒屋のおぼろ締めだす手動ドア=水音
△な=1点
(な:居酒屋の朧、なかなかチャーミングな措辞ですね。)

●峪深し片栗の花に出会ひたり=白馬
△修=1点
(修:こんなところに!とうれしくなります。)

●春時雨一雨ごとの暖かさ=メゴチ
△阿=1点
(阿:ゆっくりゆっくりの春。)

●前畑の春の霜踏む静心=砂太
△ま=1点
(ま:穏やかに何を想っていらっしゃるのでしょう。)

●霙来て茶屋に逃げ込み梅談義=秋波
△前=1点

●立春や青年の名に力あり=五六二三斎
△砂=1点


【無選】

●相棒のロケ地のベンチ余寒なほ
(葱:人気のテレビドラマの具体性が興味を惹いて効果的。)

●丹前に懐手してソチ五輪
(葱:実感がありますが、「懐手=冬」がやはりひっかかる。開幕は早春ですもんね、ここにも現代の季節の時差問題が露呈します。)


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