*A部門入選作発表*

当季雑詠*全56投句(入選42句)


【特選】

一席
●キリン見る子の首伸びる冬の空=雪絵


◎水、ま○葱、砂、修、ス△久、紅、香=17点
(ま:とても可愛いらしい!、よく見ていらっしゃいますね。 水:かわいらしい光景ですね。まさにこの感じ。 葱:なんとも微笑ましい光景。 修:そうなんだ首伸びてるかも。 久:伸びる首2つ、いいですね。 紅:中七に優しい眼差しを感じます。)


ニ席
●ちんまりと屋根のクルスや島小春=紅椿


◎雪、ぼ、ス○ラ△十、修、秋=14点
(雪:能古島には、ともすると見過ごしてしまいそうな教会が山中にあります。屋根の小さな十字架でやっと教会とわかるくらいの。「ちんまり」という言葉と「小春」という言葉が何ともかわいらしく、優しげで。 ぼ:つつましく、穏やかな島の生活が窺われる。 ラ:「ちんまり」と「小春」が、照応しています。 十:隠れ切支丹の時代の名残りでしょうか。「ちんまりと」がやや俗な言葉のように思いますが、「島小春」が効いています。 修:ちんまりがいい。あたたかい。 葱:小さな幸せがそこにあるような。)


二席
●相槌の間延びしてゐる日向ぼこ=紅椿


◎資、久,前○雪△砂、ま、ス=14点
(資:老夫婦の姿が少し滑稽に表現されていて面白い。 久:老人の相槌でしょうね。自分自身もそのようにしているのに気がついてないときがあるようです。 雪:間延びしたあいづち、なんともおかしげです。 葱:あ〜ン、分るわ〜。)


【入選】

●声変はりせし冬の夜のシューベルト=五六二三斎
◎葱、砂○香△二、馬、ま、ス=12点
(葱:美しき十代、昔そんな歌がありましたね。ショパンは女子、シューベルトは男子って感じがします。)

●チョコレートの銀紙光る枯野かな=ラスカル
◎十○紅、ス△五、葱、雪=10点
(十:取り合わせの句。「銀紙」と「枯野」の関係性を無理に結びつけることなく、その二つを同時にとらえた作者の心の目に共鳴しました。 紅:私世代のチョコと言えば「ガーナ」です。銀紙のキラキラ感が伝わってきて、季語の斡旋が巧みです。 五:字余りだが、公園の枯野に落ちている銀紙によくも目が行ったものだ。よく吟行されている方が作者か? 葱:才気を感じる句です。 雪:何故だか外で遊びまわってた子供の頃を思い出しました。)

●こがらしや恋人たちは空に浮く=スライトリ・マッド
◎二○ま、前△久=8点
(久:宙に浮くとしないところがいいです。)

●旅人の覗く路線図神無月=雪絵
○五、砂、ラ△水、香=8点
(五:旅人は、おそらく出雲への旅路か?そうでなくとも、山陰線を見ているのではないだろうか? ラ:東京の地下鉄の路線図かもしれません。 葱:「神無月」が効いている。)

●短日や壁に二つのカレンダー=十志夫
◎メ○資、ぼ△五=8点
(資:そういう季節感が良く現されている。 ぼ:冬のわびしさが切々と。 五:前向きな家庭の風景が「二つのカレンダー」にて表現されている。)

●花石蕗や母の独り居はぁひふへほっ=資料官
○水、ま、喋△砂、雪=8点
(水:お母様の様子に、あたふたしながらも微笑ましい感じです。下五が面白い。 ま:下五のは行がぴったりですね。 雪:下五が面白すぎ。 葱:面白い!座布団、座布団!)

●添ひ寝して寒禽に耳澄ましをり=ぼくる
◎修○五、秋=7点
(修:やや子の寝息、外は寒くてときおり鳥が鳴く。 五:親の看病の添い寝か?病院に朝が来て、冬鳥の鳴き声がする。親が今日も生きている喜びを感じているように思う。)

●廃水の泡のきらめくクリスマス=ラスカル
◎紅○十△葱、二=7点
(紅:「廃水」と「クリスマス」の取り合わせに驚きましたが、奥の深いお句だと思います。 十:泡のきらめきは洗剤のきらめきか、それとも廃油による汚れの虹か。後者だとすれば作者の社会批判がにじみ出ている句。 二:聖と俗の取り合わせの妙と見せながら、過剰であることの失敗作。ある人はクリスマスに「金の泥と銀の泥」とイルミネーションの輝きをうたう。またある人は「大きな馬糞と小さな馬糞」の聖と俗の極みを組み合わせる。かがやく反吐と廃水とは同じ印象であるのか一考を要す。 葱:12月の投句なら◎かも。)

●坂道を上れば母校冬紅葉=五六二三斎
○十、阿△馬、ぼ=6点
(十:難しいことを何一つ言っていませんが、句の景がはっきりと見えてきます。 ぼ:冬紅葉で作者晩年と分かる。 葱:高校の坂を思い出します。)

●空混ぜて群れ飛びをりぬ冬の鳥=スライトリ・マッド
◎秋○紅△久=6点
(紅:上五の表現にドキッとしました。 葱:「混ぜて」がいい。 久:空混ぜて、の表現がいいです。)

●初雪の白髪(はくはつ)のごと君の墓=葱男
◎喋△雪、香、メ=6点
(雪:あれから、もう冬に入ったんですね。)

●海と空さかさまになる冬うらら=スライトリ・マッド
○二△馬、喋、前=5点

●詰襟の連れ立ちて来る冬紅葉=雪絵
◎五○阿=5点
(五:京都の修学旅行か?中七の「連れ立ちて来る」が秀逸。田中裕明句に同じフレーズがあったような?まあ、いいフレーズはいいものですね。 葱:田中裕明の「夕東風につれだちてくる仏師達」の句を思い起こしました。)

●人の逝くかりん蜜漬瓶に透け=まさこ
○水、修△紅=5点
(水:動かない、少しだけ透明感のある、冷たい花凜に悲しみが重なって見えます。 紅:日常を客観的に詠まれているところに惹かれました。 修:ホルマリン漬けの胎児を思い出しました。 葱:しみじみと沁みてくる句です。)

●藪柑子活けて茶室を諾へり=砂太
○資、ぼ△秋=5点
(ぼ:羨ましきゆとり。 葱:「諾へり=うべなえり」、いい言葉だ。)

●穴あきの食パンを食ぶ冬うらら=まさこ
○久△ラ、メ=4点
(久:カビが生えたところを取り除いたのかな、それともパンの耳のところか、意外性があります。 ラ:穴をあけたのは、お子さんのイタズラ?〈笑〉)

●女にも意地のあるらし返り花=資料官
○馬、香=4点
(二:類句が無数にあります。)

●風疾し落葉は隅を好みけり=十志夫
○前△ぼ、阿=4点
(ぼ:風は若さ、落葉は老いか。 葱:着物の図柄ではこれを上品に「吹き寄せ」なんて言います。)

●朽ちし木の倒るる先の枯木かな=十志夫
◎ラ△水=4点
(ラ:「諸行無常の闇の中」ですね。)

●恍惚と桜紅葉のベンチかな=修治
○メ△資、阿=4点

●能古渡船また寒月に発ちゆけり=資料官
○葱、雪=4点
(葱:夜の渡船場から陸へ帰る友人達を見送ったばかりだからなあ〜。 雪:同窓会の夜、泊り組の人たちに桟橋で見送られながらフェリーで帰る時頭上には満月に近い月が輝いていたこと、今も思い出します。まさにその光景ですね。「寒月に発つ」という表現がいいですね。)

●氷点の水にたゆたふ渡り鴨=前鰤
◎香△修=4点
(修:氷点の水が発見と思う。)

●冬うらら車窓の海を独り占め=紅椿
○メ△修、ぼ=4点
(修:冬の海だからそう思える? ぼ:ローカル線をのんびり一人旅いいね。)

●冬銀河イーハトーブへ続きけり=ラスカル
◎阿△葱=4点
(葱:分っちゃいるけど取らされる。)

●冬銀河ゲルを洩れくる馬頭琴=ぼくる
○秋△砂、喋=4点
(葱:実景でしょうか? モンゴルは一度は行ってみたい。)

●寒鴉ピエロのやうでさうぢやない=葱男
○久△水=3点
(久:なんだか弾けていていいです。 水:能古島のあの鴉を思い出しました。彼〈多分〉はまじめだったんだ。)

●転ぶ子に駈け寄らぬ母小六月=水音
△十、ま、秋=3点
(十:ふたつの解釈が成り立つ。一つは愛情のない母の姿。もう一つは子供に成長(自立性)をのぞむ母の思い。果たしてどちらか?)

●寒からふ転車場ポツリ島のバス=久郎兎
○喋△前=3点

●白蛇の赤き眼や冬の月=ぼくる
◎馬=3点
(葱:面妖な〜。)

●ポケットにチロルチョコあり一葉忌=水音
△十、ラ、ス=3点
(十:台東区下谷時代の一葉が荒物と駄菓子を売る店を営んでいたことによる季語のあっせん。カタカナ文字と一葉との組合せが新鮮。 ラ:チロルチョコと一葉忌の取り合わせに、びっくり! 葱:「チロルチョコ」と「一葉」の取り合わせが面白い。)

●血と風と霊をしづめて冬銀河=葱男
○馬=2点
(葱:最近何かの本で読んだのですが、「血」も「風」も「霊」も〈銀河=乳の海〉の「乳」も「ち=chi」と発音できるようです。この四つの文字の音が共通しているのはそれらのものがみな〈Soul〉の意味を含んでいるからだそうです。「風」は「東風〈こち〉」の「ち」、「霊」は「いかづち」「おろち」などの「ち」にあたります。)

●野菊の野のたりのたりの能古島=喋九厘
△資、阿=2点
(資:「の」の字のオンパレードが面白い。 葱:「の」がたくさん続きましたね、やや飽食気味か。)

●カキノタネカタキヲカジルカタヰカナ=修治
△喋=1点
(葱:ふむ、面白い。下五、ちょっと物足りない気がしました、「カキノタネカタキノゴトクカジリケリ」なんてどうでしょう? ん?今気がついたけど季語が「柿」だとすると「柿の種」って本物の?)

●傾ぐ陽(ひ)や玄関先に初ブーツ=秋波
△メ=1点

●彗星の行方肴に燗をつぐ=秋波
△五=1点
(五:タイムリーな句。結局、酒好きなだけかもね。 葱:なんにつけても酒の旨さよ。)

●捨て値かと終ひ天神馴染み客=久郎兎
△ラ=1点
(ラ:馴染み客は、捨て値をご存知なのですね。)

●三つ目のシンクロニシティ冬紅葉=まさこ
△資=1点

●ムートンに坐り毛皮の句をひねる=修治
△紅=1点
(紅:情景が浮かびます。 葱:「むむむむむ〜〜」、「トン」と句が生まれたかしら?)

●呼び込みに駆け引き勝ちて忘年会=久郎兎 △前=1点


【無選】

●木ぎの間の紅葉明かりやふと寂し
(葱:「木」は「不」の読み違いだったのかなあ〜、先生?)

●冬に入る新しきものみな古き
(葱:ほほう、そんな見方もあったのか、びっくり!)


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