*A部門入選作発表*

当季雑詠*全57投句(入選38句)


【特選】

一席
●雨の名のたんとある国冷し酒=夏海


◎五、香○ラ、ま、紅、資、雪△砂、ス=18点
(五:この国は外国とは思いたくない。江戸時代までの国のことだろう。雨がよく降り、酒処。古風な俳句になった。 ラ:どこのお国でしょうか。想像が膨らみます。 ま:本当にそうですね、美味しくお酒をめしあっがていらっしゃる様子が浮かびます。 紅:言われてみれば、その通りですね。日本人に生まれてよかったと思いながら飲むとお酒も美味しいのでしょう。 資:酒の名もたんとある国,冷し酒が良いですね。 ス:うまい! 葱:素敵な句、雨にまつわる季語だけでもどれほどあるのか数え上げたらきりがない、水の多い、山の多い地にはどこにも旨い地酒が「たんと」ある。)


ニ席
●夏服を入れて箪笥の痩せにけり=十志夫


◎メ○夏、ス△砂、五、ラ、久、香=12点
(夏:毎年の衣替えの度に実感しています。「痩せにけり」が的確です。 ス:そうそう、そんな感じです。 五:上手い句だ。ついでにご本人も夏痩せしてほしい。 ラ:実感がこもっています。 久:それなりに詰め込むかなとも思うし、確かに空間は広がります。)


三席
●小町通りへはみ出してゐる氷旗=ラスカル


○五、資、雪△砂、水、香=9点
(五:氷は7月に詠んでほしい。ただ、昔懐かしい感じがして良い句。 資:鎌倉の夏の風景ですね。氷旗がはみ出している様が良い。)


三席
●散骨や海の色消す送り梅雨=葱男


○砂、ス△五、紅、喋、雪、メ=9点
(ス:涙で送られてるよう。 五:6月30日に白髪鴨さんの散骨式に参加してきた。詳しくは無法投区をご一読下さい。 紅:お好きな海に散骨されたのに、どしゃ降りで海の色が見えなかったのでしょうか。晴れてほしかったですね。)


【入選】

●木下闇神の遣ひとすれちがふ=水音
◎十○ラ、久△夏=8点
(十:神の遣いとは巫女さんのこと。その朱い衣装が木々の緑に映えている。 ラ:厳かな雰囲気の漂う紳士だったのでしょう。 久:福の神だったらいいですね。 夏:神の遣いは夏蝶でしょうか。)

●叱られし記憶いくつか浮いてこい=ラスカル
◎ま○十、水△紅=8点
(ま:季語がとても良く、またぴったり合っていて魅力的です。 十:誰しも褒められた記憶より叱られた記憶が鮮明なもの。季語の浮人形も効いている。 水:些細な記憶がふと湧きあがってくることがありますよね。季語がいいです。 紅:子供の頃の記憶って褒められた事、叱られた事はいつまでも残っていますね。季語がいいです。)

●一木の傾斜地(なだり)に青き胡桃の香=二六齋
○香、秋、葱△メ=7点
(葱:故一木正治君〈白髪鴨さん〉への追悼の一句、「なだり」と読ませて「傾斜地=転落→落水→死」のイメージが呼び起こされる、そこに青胡桃の清澄な香りが残っている、一木君の心にはいつも青年のような清新な固い志のようなもが漂っていた。)

●わすれ潮みづかげろふとなりゆけり=二六齋
◎秋○紅△資、葱=7点
(紅:並んでいる文字のきれいな事、声に出して読むとまたきれい。日本語のすばらしさを再認識しました。 資:忘れ潮という言葉に惹かれましたが,説明的なところで終わっていると思いました。  葱:「わすれ潮→みづかげろう」で白髪鴨さんへの美しい追悼句となった、彼の命日は5月1日。)

●空蝉の沖ゆくときを深ねむり=二六齋
◎ス△香、喋、葱=6点
(ス:詩的! 葱:「沖ゆくとき」の「とき」は「海上に漂っている無限の時間」のように思える。「深ねむり」という言葉に追悼の心がやさしく、深い。)

●友の子の育つ早さよ箱眼鏡=スライトリ・マッド
◎紅○砂△十=6点
(紅:本当にそうですね。まさに共感のお句です。季語がまた渋いですね。 十:我が子と違い久しぶりに会う友の子の成長の早さ。実感である。)

●肌透けるレースのショール合歓の花=秋波
◎水、資=6点
(水:やわらかく、やさしく、ふんわりと、甘い香りまで感じます。 資:透けるようなショールに合歓の花をもってきたのが良い。)

●梅雨寒のかまぼこ板の墓標かな=紅椿
◎ラ△久、雪、ス=6点
(ラ:子供の頃を思い出しました。金魚のお墓かも・・・。 久:子供が作った盛り土のお墓かな? ス:我が家の庭の隅にもある。)

●ぽよよんと皿のプリンや夏の風邪=紅椿
○十、五△ま、メ=6点
(十:プリンの揺れと夏の風邪の気怠さがピタリ合っている。 五:夏の風邪の弱り目をプリンのぽよよんが上手く表現している。佳句。  ま:ぽよよん、が効いていますね。)

●手のひらを蝉たつやうに逝かれしか=二六齋
◎雪△紅、葱=5点
(紅:手馴れた方のお句でしょうね。こんな句を詠んでみたいものです。 葱:生きたまま捕えた蝉を手のひらをそっと開いて逃がしてやる、蝉の命にとって人間の手のひらはまるで「神の仕業」のようでもある。蝉はみずからの命の翻弄されるがままに飛び立った。白髪鴨さんの落水事故にはどのような「神の介在」があったのだろう?)

●朴の花いろなき色を海中(わたなか)に=二六齋
◎喋○メ=5点

●ほうほたる火星移住の募らるる=夏海
◎葱○喋=5点
(葱:上五の「ほうほたる」が上手い!「ほう〜」で感心しているように、「ほたる」で話しの夢幻性を象徴するように。)

●紫陽花ややつとわらべとなりし雨=五六二三斎
○喋、秋=4点

●柿の花自販機にある鹿基金=水音
△夏、ま、秋、ス=4点
(夏:鹿基金の存在が面白い。使い道は鹿の保護なのか駆除なのか?? ま:初めて、知りました。どちらでしょう。 ス:奈良の自販機?鹿児島にはない。)

●ユニフォーム着ぬ子も交る雲の峰=雪絵
◎砂△十=4点
(十:昔なら野球。今ならサッカー。急ごしらえのチームの雰囲気がよく出ている。)

●枝折戸を過ぎて百花の百合に酔ふ=砂太
◎久=3点
(久:百×百=万のリッチな気分ですね。幽玄の世界に紛れ込んだような。)

●白南風や父の教へしこと三つ=五六二三斎
○ま△秋=3点
(ま:幾つになっても両親の教えは胸に残っていますね。)

●ベランダの水一桶や子は夏に=香久夜
◎夏=3点
(夏:日向水に母親の心遣いが見え、水遊びする子供のはしゃぎ声も!)

●短夜のおのころしんぺい繙いて=まさこ
○夏△喋=3点
(夏:おのころ心平、「・・・そうくるか!!」と。句材として興味深い。)

●夕焼や語り部の弾く手風琴=ラスカル
○水△雪=3点
(水:過去へタイムスリップしたような。)

●紫陽花の只中に入る蛇の目傘=久郎兎
○メ=2点

●海開き潮の香りの焦げてをり =十志夫
○葱 =2点
(葱:「焦げた香り」ではなく、「香りが焦げる」というレトリックの上手さが際立っています。)

●亀入水にはかに澱の匂ふ夏=葱男
○香=2点

●短夜の河畔のピアノコンサート=スライトリ・マッド
△五、ラ=2点
(五:綺麗な句。ショパンかグリーグのピアノ協奏曲か? ラ:「河畔の」がいいですね。心地よい風が感じられて。)

●寄り添うて片蔭をゆく歩幅かな =十志夫
○久=2点
(久:カーブの内側を歩いてる女の人かな?)

●ラベンダーかをりの記憶たちあがる=水音
△十、ま=2点
(十:昔訪れた北の大地の記憶。青春の思い出か。 ま:すごくよく分かります!)

●青葉茂りトライ重ねる女子ラガー=スライトリ・マッド
△夏=1点
(夏:最近の女子は頑張ってます!)

●雨蛙一歩前出て主張する=メゴチ
△久=1点
(久:気持ちが一歩前に出たのは詠み手のような。)

●会社にも寿命ありけり六月尽=資料官
△水=1点

●梅雨晴れ間産着の準備着々と=香久夜
△ラ=1点
(ラ:健やかな赤ちゃんが誕生しますように♪)

●梅雨や梅雨でんで蒸し蒸しあら晴れた=喋九厘
△資=1点
(資:鬱陶しい梅雨も楽しげなリズムで吹っ飛んでしまう。)

●てんとむしサンバを踊るやもしらず=雪絵
△水=1点
(水:踊ります〈キッパリ〉。)

●夏帽の会話してゐる園児バス=雪絵
△秋=1点

●レイバンのグラサンかけて躓きぬ=阿Q
△資=1点
(資:思わず何を見ておったのかと思ってしまう。躓くなよ中年。)



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