*A部門入選作発表*

当季雑詠*全64投句(入選50句)


【特選】

一席
●パン種のぷくぷく秋の夜の更くる=まさこ


◎修、秋○紅、雪△資、砂=12点
(修:幸福な夜ですネ。 秋:パンの焼ける匂いまで匂って来そう。 紅:「パン種」の句はよく見かけますが、このお句は中七から下五への句またがりが魅力です。 雪:パン作りは手間が掛かりますよね。いつの間にか夜更けに。 資:静かな秋の夜のパン種の膨らんでいく様子がぷくぷくという言葉に表れている。)


ニ席
●しやかしやかと卵かきまぜ野分あと=ラスカル


◎紅、喋○十△水、ま、ス=11点
(紅:「ア」音の多用で、軽快で明るい句に仕上がっています。きっと台風も被害なく去ったのでしょうね。 十:野分が過ぎたあと、再びせわしない日常に立ち戻る様子が「しやかしやか」で伝わってくる。 ま:野分が去った後の爽やかな空気感が漂っています。)


二席
●豊秋の静かに細る歯ぐきかな=紅椿


◎十○葱、ぼ、香△馬、砂=11点
(十:豊饒の時代にあって、歯茎だけが静かに細り衰えていく現実。シュールな作品だ。特選で頂いておいてなんですが、耳慣れない上五の「豊秋の」が気になる。「豊の秋」または「豊年の」ではどうでしょう? 葱:「豊の秋」と「老い」の対比が際立っています、「歯ぐき」を詠む意思に敬服します。 ぼ:落ち着いたユーモアとペーソス。)


【入選】

●すれ違ふ母子石榴の実の割れて=まさこ
◎香○資、砂△ラ、雪、秋=10点
(資:思わず沢山の子を連れた母親を想像した。 ラ:ドラマ性のある句。)

●駅までの刈田横切る背広かな=十志夫
◎久○前△修、紅、秋、五=9点
(久:昔そうだったなあと思います。朝のラッシュ時には改札を通らずに踏切から線路づたいにショートカット、電車に乗ったことを思い出しました。人にせず背広にしたのがいいですね。 五:ユーモラスな句。私なら、靴が汚れるので刈田に入りたくない。タイムイズマネーか?)

●古酒酌むや逢ひたき人はみな遥か=ぼくる
○ラ、水、五△久、香、雪=9点
(ラ:切々とした情感が伝わってきます。 水:古酒が効いていますね。しみじみと寂しい。 五:逢いたい人とは白髪鴨さんのことか?1人2人と遥かな所へ。 久:もうすぐその心境の歳になるかも。)

●すぐ乾く子供の涙いぼむしり=砂太
◎雪○紅△ぼ、資、香=8点
(雪:確かにそう!長泣きしてても涙は出ていません。よく観察されてますね。 紅:上五、中七が絶妙です。 ぼ:子供好きでないと詠めない句。)

●亡き人とマシュマロを焼くもみぢ谷=二六斎
◎五○葱△香、喋、ス=8点
(五:亡き人は白髪鴨さんのことか?マシュマロに昔の思い出が詰まっているように感じる。 葱:マシュマロを焼くのは海外生活が長い女性だったからでしょうか、スヌ−ピーの漫画にもそんな場面がよく出てくるようです。きっと早逝されたのかな?どんなに素敵で悲しい恋だったことか・・・。)

●峡を去る老船頭やぬくめ酒=二六斎
◎馬○喋、秋=7点

●蔦紅葉ごと解かれゆくレストラン=雪絵
◎ス○五△ニ、砂=7点
(五:解体の句は何度か丘ふみ句にもあった。今回は、蔦の絡まるレンガ作りのレストラン。老舗だと分かる。贔屓がだんだん居なくなってのことか? 葱:オーナーが老齢化して跡継ぎもいないのでしょうか、きっと、趣味の良い店だったろうに、という感慨を呼び起こしてくれる佳句。)

●唐獅子の背ナで吠ゆるや文化の日=紅椿
◎ぼ△修、ラ、五=6点
(ぼ:健さんファンなのでつい。アイロニーともとれる句。 ラ:季語の斡旋がシブイです。 五:高倉健さん、おめでとうございます。東筑高校出身。丘にはタモリしかタレントはいないですね。)

●煩悩の数だけ咲いて曼珠沙華=ラスカル
◎メ○久△前=6点
(久:「咲いて」が効いてる。願いともとれるし、優しい気持ちが伝わってきます。)

●招き猫尻に〆の字秋日和=スライトリ・マッド
◎ラ○ニ△資=6点
(ラ:「尻に〆の字」というのは、初めて知りました。 資:よくぞ招き猫の後ろに着目。これでお金は逃げないだろう。 葱:楽しい句ですねえ〜。)

●朝寒や水戸納豆の正座する=水音
○喋△十、葱、メ=5点
(十:良くも悪しくも擬人化された「正座する」の意外性。 葱:俳諧味ありますなあ〜。)

●停車場で買ふ弁当の中の秋=砂太
◎ま○ラ=5点
(ま:ふたを開けたら思いがけず秋に出くわした、季節感のあるお弁当わくわくしますね。 ラ:松茸か栗か、それとも・・・。様々な想像が広がります。)

●あと一歩踏み出せずをり草の花=ぼくる
○ま、雪=4点
(ま:よくわかりますこの感覚。草の花が効いていますね。 雪:仕事のこと?恋のこと?想像は膨らむばかり!「草の花」が健気です。)

●魂はかりんの重さと思ふ曉凡=二六斎
○馬、ス=4点
(二:「ぎょうぼん」とは朝の読経のこと)

●稲架十基しかして農婦二十年=砂太
◎資△馬=4点
(資:10と20の対比が面白い。TPPの狭間に沈む農家を憂う。)

●一人また輪に加はりぬ秋の空=修治
○前△ま、五=4点
(ま:秋の空が効いていますね。 五:これも、秋の空に故人が加わるように感じる。)

●百年の孤独を愛でし秋の暮=メゴチ
○馬△秋、前=4点
(秋:このお酒はやはり秋が似合う。)

●水引草知覧の文の淀みなし=香久夜
○資、メ=4点
(資:水引と特攻隊の文を対比させたところが見事。淀みなしが効いている。)

●分けて食ふ秋刀魚一匹共に老ゆ=ぼくる
◎前△メ=4点
(葱:実感あり。)

●秋寒し五右衛門風呂と一尺八寸山(みおうやま)=喋九厘
◎ニ=3点
(葱:雄大な景だが、滑稽味もあって面白い句ですね。)

●色鳥の来たりごほうびかと思う=水音
◎砂=3点

●裏口で主待つノラそぞろ寒=秋波
○ス△久=3点
(久:餌を何回かあげたのでしょうね。簡単に主になれます。経験あります。)

●笑み栗やムーンウォークのハムスター=水音
△葱、ぼ、喋=3点
(葱:可愛い、哀しい、夜行性小動物への優しい眼差しとユーモアの感じられる句。 ぼ:メルヘンあり、微笑を誘う。)

●荻そよぐ知覧の兵の詫びる文=香久夜
○砂△前=3点

●下山して軍手に残るいのこづち=雪絵
○メ△水=3点

●午後の課は金木犀に目覚めけり=久郎兎
○水△葱=3点
(葱:「課」という省略の一文字が効いています。 水:嗅覚から現に戻ってる。金木犀の香なら気持ちいい。)

●刺股(さすまた)はお尻のかたち菊人形=十志夫
○秋△喋=3点
(秋:菊の骨組みや支えと連想が繋がった?刺股と菊人形の取合せが面白い。)

●天井の鏡の朝のかりんかな=二六斎
◎葱=3点
(葱:恋句が俗に陥らないのはそこに置かれた「かりん」がシュールな風景を演出してみせているからでしょう、ただ、そのもうひとつ奥にオノマトペとしての「カリン」、或いは女性名としての「果林、可鈴」などさまざまなイメージを躍起させる妖怪が隠れているような気がします。)

●二次会に必ず来る人衣被 =十志夫
◎水=3点
(水:衣被がいい。 葱:いるいる、そんな人。)

●羊雲出迎へに来てくれてをり=葱男
○ま△雪=3点
(ま:嬉しい気持ちがよく表れていて、温かい気持ちになります。 雪:思ってもいなかったことに対しての感情が、じんわり伝わってきます。)

●由布岳(ゆふ)よりの風に育ちし林檎かな=紅椿
○修△ラ=3点
(ラ:下五の展開に、意外性があります。 葱:果物の産地がどんどん南下しているようですけど、九州でも「林檎」が採れるんですか。)

●栗拾い狸親子と睨み合い=喋九厘
△修、ぼ=2点 (ぼ:ほんとかな? でも、面白い。)

●新聞をめくりつ欠伸小春かな=久郎兎
○修=2点

●スティック糊かたんと倒れ夜長かな=ラスカル
○十=2点
(十:21番句の「しやかしやか」と同じく、「かたん」と糊が倒れる音〈オノマトペ〉が効いている。秋の夜長に一体何をしているのだろうという興味がわく。 葱:硬質な夜のひとり居の雰囲気がとてもよく出ています。)

35●年の数だけの風船空高く=五六二三斎
○ニ=2点

●ハロウィンのお菓子の顔をひと舐めす=葱男
△紅、ま=2点
(ま:とても可愛くて、笑みがこぼれます。)

●藤袴マリリンモンローノーリターン=白馬
○ぼ=2点 (ぼ:みんな過去、遠ざかるものへの郷愁。)

●神輿舞う黒枝豆と一升瓶=前鰤
○香=2点

●味噌汁も少し濃いめに寒露かな=秋波
△十、馬=2点
(十:晩秋から初冬への季節の移りめを味噌汁の濃淡に託して見事。 葱:なるほど、主婦も達人ですな。)

●欄干を小さぎ歩める小春かな=修治
○久=2点
(久:「小さき」でなくて「ぎ」なんですね。達人の句ではないかと思います。幼子か老人か、「ぎ」が心もとなさを十分表現していると思います。 葱:兎さんの鑑賞、大変面白く拝見しました。まさに俳句は個個人の「想像力」の産物ですね。俳句は作者のものでもなく、読む側の人の人生が彩る物語でもあります、吟行はカメラのかわりに言葉で写す思い出写真のようなものであり、俳句を鑑賞するという事は他人の思い出アルバムを眺めるようなものでもあります。)

●秋空へシュプレヒコール脱原発=資料官
△久=1点
(久:心情ストレートでいいですね。この時期残したい句です。)

11●回文のひよいと出でたる栗名月=葱男
△水=1点

●中枢は緑の基板穴まどひ=修治
△十=1点

●撫子と言われ嬉しくない少女=白馬
△ス=1点
(葱:今どきの少女ですねえ〜。)

●見はるかす君住む対馬空高し=五六二三斎
△メ=1点

●鵙高音尼寺の松立ち枯るる=まさこ
△ニ=1点
(葱:鵙ー尼寺ー立ち枯れの松、何か雰囲気ありますね。)

●紅葉且つ散るや高尾のケーブルカー=資料官
△紅=1点


【無選】

●仕舞風呂桶の音あとは虫の秋
(葱:中七座五がとってもいい。上五の体言止めが少し堅い気がしました、「終ひ湯の」とかどうでしょう。)


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