*A部門入選作発表*

当季雑詠*全55投句(入選41句)


【特選】

一席
●靴音の右折してゆく寒の月=紅椿


◎十、砂、メ◯ぼ、喋、資△修、雪、久=18点
(十:靴の音が寒夜の静謐さをより感じさせる。中七の「右折してゆく」が秀逸。 ぼ:孤独な心が孤独な影を追う。 資:まっすぐ来ないで右に曲がる人。寒の月が効いている。 修:左折は寒と近すぎ? 久:伏線で右折は右傾化ですね。用心用心。世の中だんだん不寛容になっていくのですかね。 葱:キリコの絵のような。)


ニ席
●頸かしげ鶴は地球の軸となる=十志夫


◎紅、香、馬◯ラ、奈、メ△五、水=17点
(紅:鶴から地球の軸まで飛躍するとは!ここまで言い切られると納得しない訳にはいきません。 ラ:「地球の軸となる」というスケールの大きな発想が魅力的。 奈:単に鶴が地球の軸になるのではなく、頸をかしげた、というところに惹かれた。地球の自軸は傾いているが、まさか、鶴の頸のかしげだとは! 五:何故、鶴は頸かしげるのでしょうか?地球環境とりわけPM2.5のことではないでしょうか? 葱:作者独特の感性が窺えます。)


三席
●自転車の影に轢かるる冬の猫=十志夫


◎雪◯紅、水、香、久△修=12点
(雪:猫のこと、よ〜く観察していますね。影でよかった! 紅:視点が素晴しく、最後まで◎と迷いました。 水:野良猫ちゃんですね。影が長いとはいえ近寄りすぎですね。 久:自転車ぐらいでは猫はどかないのでしょう。猫さん。車には気をつけて。 修:ワンシーン。)


【入選】

●よごれなき雪ひと椀を供へけり=葱男
◎ま、ぼ、水△砂、紅=11点
(ま:雪もお供えするのですね。そのお気持ち真似したいです。 ぼ:遺影に語る今朝の白雪、しんみり。 水:大切な方を思いながら素手で雪を掬っているところを想像できます。 紅:じんとくる優しいお句でした。)

●歌留多とり母の素顔を見てしまふ=香久夜
◯ま、修、淳△砂、ぼ、雪=9点
(ま:ありますね、こういう時! 修:見てるあなたも見られている。 ぼ:母よ、あなたは、実は強かった。)

●寒明くるジグソーパズルぴしと嵌め=十志夫
◎奈◯喋、ラ△紅、水=9点
(奈:最後のひとつだったのだろうか。ピースが多いパズルほど、嵌めにくい。それをぴしと嵌めた指先の力と、寒が明け、これから春になると動き出す生命感がぴったり。 ラ:「ぴしと」という一語が決まっています。 紅:季節の節目を大切にする俳人の姿勢と重なりました。 葱:景が季語にぴったりと嵌ってますね。)

●いつからかブラック珈琲春隣=雪絵
◯修、紅、阿△十、水=8点
(修:苦い深い味の人生? 紅:季語が動くようで、動かない。オシャレなお句です。 十:大人への第一歩か、糖尿病対策か(笑)。「春隣」がやや動くかも。 )

●風邪の子の口にいつまでもストロー=奈々
◯ま、十、雪△葱、香=8点
(ま:熱くてだるそうな様子がよく表れています。 十:熱にうなされる幼子の気怠さが伝わってくる。 雪:破調がかえって風邪のけだるさを感じさせます。 葱:句またがりに新しいリズム感覚があります。「ストロー」の具象がリアルな景を生み出しています。)

●左義長の炎の中に達磨の目=ラスカル
◯砂、資△ま、十、香=7点
(ま:火の中の達磨の目は印象的ですね。 資:よくぞ見つけたり。 十: もだえ苦しむ達磨の目がさらに見開いて。)

●失恋の山と盛りたるきやべつ鍋=まさこ
○葱、五△淳、喋、雪=7点
(葱:恋句なのに肩に力の入っていない軽妙な味わいとなりました、やはい「きやべつ鍋」がいい。 五:失恋の数がきやべつ鍋に盛り込まれたきやべつの葉だけある。草食系男子ですね。たまには、肉食系男子でやってみて下さい。)

●つつつつと四温の雨の高笑い=喋九厘
◎久◯メ△葱、奈=7点
(久:春の幕開けを愉快に表現しているのがいいです。つつつつ、がいいです。オノマトペですかね。 葱:暖かい雨の感じと春を迎えるうきうきとした心が読むものにも伝わってきます。 奈:高笑いだから、もっとトーンを上げてもいいのに、思慮遠慮深い「つつつつ」と堪えている笑いがその方の人柄を現している。四温の雨も寒さではなく、やわらかな雨であろう。)

●お年玉このをばちやんはだれやねん=紅椿
◯久△葱、砂、ラ、馬=6点
(久:子供が口に出さず嬉しいとも何とも言えない表情が目に浮かびます。  葱:きっと御自分がこの「をばちゃん」なのでしょう、遠い親戚の子供の表情を楽しんでいる作者が窺えて好感が持てました。関西弁も面白い、軽み、諧謔の句です。 ラ:関西弁ならではの味わいがあります。 資:知らん人からもろたらあきまへん。)

●追憶の父の笑顔や屠蘇の底=砂太
◯淳、馬△十、阿=6点
(十:こんな風に詠まれる父親でありたい。)

●西行のやうに待つ春筑紫富士=五六二三斎
◯ぼ、阿△喋=5点
(ぼ:放浪の歌人に添わせる心情。 資:加也山か浮岳か,なんて考えてしまった。)

●どんどの火映るや保健室の窓=ラスカル
◎修△五、資=5点
(修:物の提示だけで学校生活が感じられる気がする。 五:小学校の校庭でのどんどの火。校庭に近い所に保健室がありますよね。 葱:「保健室」にドラマがありそう。 資:風邪か引きこもりか保健室,どんどの火が回復の力になるか。)

●ねんごろに練墨溶いて初仕事=ラスカル
◎喋△ぼ、淳=5点
(ぼ:清澄な空気が伝わってくる。)

●御下がりの振り袖譲り小正月=久郎兎
◎阿△資=4点
(資:女三代伝わる振袖をうまく言い表わしている。)

●寒の雨ティッシュにくるむ裸菓子=葱男
◯十、水=4点
(十:お喋りが終り「では失礼」という客に対してか、子供のお手伝いへのお駄賃なのか。鮮やかな日常の一場面。 水:雨で少し寒がゆるんで、湿った感じのティッシュに裸菓子。身に纏わりついてくるような寒さですね。)

●葱たちは男性名詞首に巻く=水音
○葱、五=4点
(葱:そうでしたか、葱は男性名詞でしたか、フランス語? 女性ならではのインテリジェンスと可愛らしさの両方が垣間見れる句、男性の作でないことを祈ります。 五:弘法大師が大へびに追いかけられたとき、ネギ畑に隠れて難を逃れたという逸話が残っている。=Wikipediaより。それと関係あり?英雄を助ける葱?)

●ひらがなにハングル混じる寒見舞い=まさこ
◎ラ△久=4点
(ラ:おそらく、ハングルが母国語なのでしょう。一生懸命に、ひらがなを書いているところに、「心」が伝わってきます。久:多分初級韓国語学習者なのでしょう。どちらも表音文字なので。)

●寒昴涙のあとのページ繰る=まさこ
◯雪△メ=3点
(雪:何とも言えない表現ですね。)

●寒の鯉恵比寿の竿に身動かず=資料官
◎五=3点
(五:恵比寿様の浮かない表情までリアルに想像できる句です。)

●子ら去りて置き土産かな風邪心地=香久夜
◎淳=3点

●参拝の正しき作法冬の梅=紅椿
◎資=3点
(資:天神様に初めての神頼み,ここで作法を覚えてるのですね。)

●春を待つ細胞のありペトリ皿=葱男
◯香△修=3点
(修:細胞レベルの生死の時代を実感。 資:万能細胞発見快挙ですね。面白い。)

●鼻どこにつけやうか待春の犬=奈々
◎葱=3点
(葱:春の萌えを待ちわびる犬の様子がとても生き生きと伝わってきます。この句の「またがり方」も見事!金原まさ子さんにちょっと通じるか。)

●ひそやかに育む恋や冬すみれ=ぼくる
△五、香、阿=3点
(五:甘い句なんですが、残りました。久々の恋句だから?)

●熱燗を友とし何年太平楽=白馬
△ぼ、久=2点
(ぼ:と言いつつ、ちょっぴり侘びしさもあり。 久:人生残りわずかです。太平楽、久しぶりに出会った言葉です。)

●ストーブの火気や読み継ぐゲド戦記=ぼくる
◯奈=2点
(奈:ゲド戦記は大抵の学校図書館、公立図書館においてある。しかしその分厚さからか、倦厭する子も多い。そんななか、先生と児童生徒が数人ストーブを囲んで読むのだろう。ストーブの火気のように、青い声、オレンジの声。ストーブの熱にほだされた耳にはここちよい。)

●裸木のいちぢく見得を切つてをり=雪絵
△ま、ラ=2点
(ラ:なるほど。そう言われれば見得を切っているように見えます。)

●繭玉や手水に並ぶ白髪髭=資料官
◯砂=2点

●雪灯り障子に鈍き青の海=久郎兎
△奈、メ=2点
(奈:「雪灯り」「障子」は同じく冬の季語だが、この場合、障子は家具として捉えた。雪が積もるような町なのだが、山間部ではなく海に近い。海だけでなく、町の暮の早さ、しずけさもここに集約されていて、惹かれた。)

●ウィルスを洗い流して春を待つ=水音
△紅=1点
(紅:まさに共感致しました。でも次は花粉が・・。〈苦笑〉)

●末枯れをそのままにして神在りぬ=白馬
△喋=1点
(資:良い句だと思ったけどやはり晩秋の句ですね。)

●「エリーゼ」弾くポニーテールや春近し=ぼくる
△ラ=1点
(ラ:「ポニーテール」で、少女だと分かります。)

●傘させばネオンに光る寒の雨=淳一
△メ=1点

●悲しみよさらば真白き水仙花=五六二三斎
△淳=1点

●新年に来年こそはと誓ひ立て=メゴチ
△阿=1点

●ちつぽけな人間社会日脚伸ぶ=五六二三斎
△奈=1点
(奈:ちっぽけな人間社会に住む私たちもやはりちっぽけなのだろう。しかし暗いだけでなく、きちんと日脚が伸び、未来の明るさを暗示している。)

●向かひにも貸農園のブロッコリ=雪絵
△資=1点
(資:取れ過ぎた野菜を配ってまわる風景が良いですね。我が家もお世話になっているので良く分かります。)

●老境に我が本性を知るや春=久郎兎
△ま=1点


【無選】

●鰹菜や畑の空気も送らるる
(資:福岡の正月でしょうか。)

●大寒をレッドアローが運びをり
(資:西武レッドアロー号ですか。秩父の山から運んできたのでしょうか?)


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