*A部門入選作発表*
当季雑詠=全57投句(入選40句)
【特選】
一席
●保線夫の短き影や雲の峰=秋波
◎喋、ぼ、雪△ラ、資、紅、メ、香、真、ス=16点
(ぼ:炎天下、黙々と。中七が巧み。 雪:じりじりとした真夏の暑さを感じます。 ラ:「短き影」で、日中であることが分かります。 資:炎天下の短い影と雲の峰の組み合わせ。どこかのローカル線の風景。 葱:夏の暑さがよく表現されています、野外で仕事する人たちは本当に大変なちかごろの極暑です。 紅:赤さびた長い線路に短い影、暑さが伝わってきます。)
一席
●泥まみれ汗まみれなる校歌かな=紅椿
◎香、修○十、ラ、ぼ、真、砂=16点
(十:いよいよ夏の甲子園がスタート。勝って歌う姿が眩しい。 ラ:高校球児でしょう。健康感が伝わってきます。 ぼ:勝っても負けてもよい、これが青春。 真:下五を、人でなく、「校歌かな」と結んで、のびやかな青春を感じさせます。涙も混じっているかも。甲子園や、皆様の高校生時代を思い出させる、120号を記念する句ですね。)
三席
●一万歩来て夕菅の花の中=ぼくる
◎十、真○資、雪、砂△五=13点
(十:山道を登ってきて辿り着いた世界。省略が効いていて景鮮明。 真:たくさん汗を流して歩いて来て、日も昏れかかった。句を読んで、一万歩目に出会った夕菅の黄の群落が、とても美しく感じました。また、余韻があります。「万歩計」と言わなかったことも、いいなと思います。
資:夕菅の花の色がにじみ出ていて良い。 雪:長い長い道のりの果に出会った夕菅。阿蘇山の風になびく夕菅を思い出しました。 五:夕菅に歩いて歩いて会えた。歩幅0.7mとして、7000mだ。十分歩いた。 葱:美しい。)
三席
●ピアノ弾くごと指動く昼寝の子=ラスカル
○淳、ま、香、ス△葱、白、ぼ、雪、砂=13点
(淳:まさにそんな動きですよね。ま:可愛いしぐさ!発見ですね。 香:それはすごい観察ですね。面白いなぁ。 葱:子供独特の動きをうまく表現しています。 白:幼い子のそんな風景よく分かります。 ぼ:愛情あふるるまなざし。)
【入選】
●夕焼やボトルシップの帆は揺れず=ラスカル
◎葱○ま、水、雪△十、紅=11点
(葱:ロマンがあり、一抹の寂しさがある、これぞポエム。 ま:ちょっと切なく思い出されますね。 水:ボトルシップの中が赤く染まり、記憶をたどる時間でもあるような。 雪:静かな夕暮れを感じます。 十:当たり前なことなのだが、俳句的には「なんでだろう?」という不条理表現の一つ。視点が卓抜。 紅:ちょとさびしいけど、雰囲気が好きです。 )
03●遺影にも来る誕生日百合ひらく=ぼくる
○紅、真、修△白、五、香、砂=10点
(紅:忌日は覚えていても誕生日となると・・。大事な方だったのでしょうね。はるかな人の誕生日を覚えていて、百合でお祝いしてあげるなんて、素敵です。 真:私も亡き父母の誕生日がくるたびに、この時期には一生懸命プレゼントを考えていたなあ、と思い出します。この句は、ご主人か奥様かもしれません。お気持ちお察しいたします。でも、「遺影」に「百合」が来ると、少し淋しすぎる気がします。 白:今日は命日ではなく、誕生日なのです。 五:遺影の故人にも勿論誕生日はある。誕生日と命日は、始まりと終わり。その人の生きた証。故人の誕生日は大いに祝ってあげよう。 香:百合のお好きな方だったんですね。)
48●みどり児の手足は言葉天瓜粉=十志夫
◎紅、砂○修△葱、水=10点
(紅:湯あがりの赤ちゃんがくびれのある手足を思い切り動かしているのでしょうね。確かに「手足は言葉」です。 葱:比喩が上手いですねえ〜、佳句。)
43●吹き出しのごとく風鈴鳴りにけり=十志夫
◎メ○葱、白△喋、ラ=9点
(葱:「吹き出し」がいかにも上手い! 白:チリンチリンと風鈴形の吹き出しの中に。 ラ:「吹き出しのごとく」という比喩が面白いです。)
56●買ふ人の無くて栄螺の大欠伸=砂太
○白、五、秋、ス△久=9点
(白:高いからか、放射能汚染が怖いからか、栄螺には分からない。 五:面白い。栄螺は高いし、売れないのかな? 秋:売れ残りはせつないけど、大欠伸というユーモアで救われます。 久:店の暇そうな感じが出ていていいです。 葱:楽しい海辺の風景です。)
06●ウエストのくびれの足りぬ竹婦人=ラスカル
◎水○ぼ△資、紅、雪=8点
(水:そうきたか! 面白い。 ぼ:ははは、いとをかし。 資:もしかして我が身のことを思っての句かと。 葱:面白〜い。 紅:思わず、笑ってしまいました。)
57●数式で解けぬ未来やかたつむり=雪絵
◎白、ス○メ=8点
(白:かたつむりの殻の形を数式で表わすことはできるか? 葱:解けませんねえ、なかなか、分かる。)
02●あと一歩縮まらぬ距離草いきれ=水音
◎久、資△真=7点
(久:夏のランニングなら体に気をつけてください。人生のことを言っているのかも知れませんね。 資:実際の距離と言うよりは心の中の話でしょうか。 葱:縮まりません、なかなか、、、分かる。)
●どこまでも原色の中夏の蝶=五六二三斎
◎ま○秋△修=6点
(ま:夏らしさが色鮮やかに描かれていて印象的です。 葱:鮮やかな真夏の風景です。)
31●濡れて来て母よ母よと水遊び=砂太
◎淳△葱、香、真=6点
(淳:水遊びの子供が振り返りながら母さんを見る光景が浮かびます
。 香:すぐに、お母さん、お母さん、ですよね。 葱:中七が可愛い。 真:ずぶ濡れになって、おかあさーん。「母よ母よと」に臨場感があり、元気な声が聞こえるようです。子供達の小さい頃を思い出しました。)
●また海に近づく列車虹立ちぬ=真弓
◎ラ、五=6点
(ラ:下五の展開が鮮やかで、臨場感があります。 五:綺麗な夏の景。海に近付いたり、少し離れたりしながら、列車は走る。 葱:美しい、江ノ電をイメージしました。)
●胡瓜葉に大雨粒の連打音=久郎兎
○淳、五△メ=5点
(淳:「連打音」という表現がいいですね。 五:きゅうりの生育には、水が必要。きっと喜んでいるに違いない。)
●仕事場兼車庫兼住居大西日=紅椿
○水△ま、真、ス=5点
(水:どんなに暑いところにお住まいか。 ま:全部漢字表記が効いています。 真:発想に魅かれました。ただ、言葉が詰め込まれていて、暑い。舌が回りません。そこを狙っているのかもしれませんが・・・)
●大暑かな逆さに見ゆる東京駅=資料官
○十、喋△修=5点
(十:都会の蜃気楼。乱暴な「中7」の表現も自然に思えてくる暑さだ。
葱:佳作に採りたかった句です、極暑の雰囲気がよく表現されていると思います。)
●ひまはりや厨道具のみな干され=紅椿
○香△ラ、秋、修=5点
(ラ:確かな生活実感が感じられます。)
08●青鷺や古墳の影の暮れてきし=真弓
○葱、ぼ=4点
(葱:風格を感じる句です、これがキャリアか! ぼ:静謐な景、心がしんとします。)
●こひびとのけんかみたいねあまりりす=葱男
○紅△喋、ま=4点
(紅:ひらがな表記の、口語体がきいていますね。そして何よりもすばらしい感性です。 ま:音から入る響きが良いですね。)
●先に老いて待つことにする籠枕=葱男
○喋△資、砂=4点
(資:老いたら待たなくてもいいだろうと思うが,籠枕がぴったりしていてなぜか面白い。)
●一ビットメモリ突き出て心太=スライトリ・マッド
○久△秋=3点
(久:文章の列が頭揃いしないということなのでしょうか。ところてん、いいですね。)
●七月の熱あつを食むカレーパン=雪絵
◎秋=3点
(秋:思わずカレーパンが食べたくなりました。)
●遠花火ひと日遅れのメール来る=雪絵
○久△ま=3点
(久:1日遅れということでしょうか。花火の音のことかも。 ま:気持ちの揺れがよくわかります。)
●万緑へ的を逸れたる二の矢かな=ぼくる
△十、水、砂=3点
(十:見事な流鏑馬神事の一瞬の景である。「二の矢」を深読みすれば「アベノミクスの失政」と読めなくもない?)
●向日葵や少女のままの声の色=まさこ
○メ△白=3点
(白:こんなに大きくなったけれど。)
●ラムネ玉喉で弾ける遠花火=秋波
△淳、久、ス=3点
(久:遠くで近くでシュパーですね。)
●夾竹桃野球の子等の空青し=砂太
○資=2点
(資:夾竹桃の花だけど,この組み合わせだと少し明るい夏になる。 葱:爽やかですが、類想類句も多々ありそうです。)
●西日さす塔の絵葉書トルコより=水音
○ラ=2点
(ラ:「トルコ」の一語が利いていると思います。)
●初蝉や隣近所をひと巡り=喋九厘
△淳、五=2点
(五:初蝉のご近所挨拶回り?面白い。)
●縁台と冷やしトマトのひと休み=メゴチ
△淳=1点
(葱:涼しげ〜。)
●蝉しぐれ烏は遠く声弱し=淳一
△メ =1点
●蝉時雨女人の一筆読み返す=久郎兎
△秋=1点
●食べないで土用鰻は可哀そう=白馬
△ぼ=1点
(ぼ:ハイ、そうします。みんなで保護しましょう!)
●熱湯で爆ぜる鱗や蝉時雨=まさこ
△雪=1点
(葱:生魚の「湯通し」?)
●羽根のなき扇風機よりゼロの風=スライトリ・マッド
△十=1点
(十:不思議な扇風機が登場したものだ。未だに理屈が分からない。「ゼロ(0)の風」が秀逸。)
●返事来ぬ子の既読とやきうりもみ=スライトリ・マッド
△久=1点
(久:)気を揉むとかけてあるのか知りませんが、インターネットの時代、既読のメッセージが来るだけでも、いいんじゃない? 葱:多分「LINE」のやりとりでしょう。)
●ゆらゆらと水母流れる朝まづめ=メゴチ
△喋=1点
55●緑陰の道長々と霊柩車=まさこ
△水=1点
(葱:ドラマのワンシーンのよう。)
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