*A部門入選作発表*

当季雑詠*全65投句(入選46句)

【特選】
一席
●お囃子を支点に夏の回りけり=十志夫


◎葱、砂、メ、阿◯五、淳△喋、ス=18点
(葱:「祭囃子」が夏が回り始める、「支点」という言葉がとても素敵です。 五:夏だ。祭りだ。これをこんな言い方で表現出来るとは。感心しました。これは文学です。)


二席
●ドライヤーのコードの捻れ梅雨に入る=まさこ


◎資、修◯ラ、紅、久、水△十、砂、ぼ、甲=18点
(資:梅雨の鬱陶しさと捻じれが絡み合って面白い。 修:すばらしい!ドライヤーしかも捻じれに目をとめるとは。 ラ:確かな生活実感が感じられます。 紅:とても共感できました。 久:梅雨→捻れ→いらいら、分かります。 水:うっとおしい気分がよく出ている。 十:素材として「コードのねじれ」は時々見かけるが、季語の取り合わせの巧みさで頂いた。 ぼ:このリアリティ捨てがたい。)


三席
●開きたる絵本の上のバナナかな=ラスカル


◎十、ぼ、雪、ス◯修△ま=15点
(十:なぜバナナがあるのか。読み手の数だけドラマが存在する。 ぼ: 好みです、バナナと絵本が一体。 雪:誰が?どんな絵本?なぜバナナ?と、色んなこと想像してます。 修:子育てのたのしい時間。バナナで現実感があります。 ま:可愛い!幼子はバナナが好きですね。 葱:シュールなのに可愛いくて面白い。梶井基次郎の「檸檬」とはまたちょっと違うかな。))


【入選】

●地球儀に豊かなる水夏に入る=甲斐よしあき
◎ま、香◯砂、喋、ス△水、入=14点
(ま:大きな視点で捉えられていて魅かれました。 香:裏に危機感も。)

初鰹土佐のをんなの飲みっぷり=ぼくる
◎甲◯紅、香、阿△ラ、修=11点
(甲:俳句は「詩」であるということを一番に、いつも選をしています。この句、中7下5がいいですね。季語の「初鰹」と付き過ぎという評も出てくるかと思いますが、私は余り気にならない。それ以上に、「をんなの飲みつぷり」が愉しくていい。土佐の明るい風土が目に浮かぶようです。こんな女性、私の知り合いにもいるいる。なお、「をんな」と書かれていますので、歴史的仮名づかいで表記される方だと思います。ならば、「飲みつぷり」です。 紅:とても好きな句で、◎にしたかったのですが、「をんな」なら「飲みつぷり」ではないかな?と・・。 香:ほんとに、よく飲まれるらしいですね。 ラ:「男」ではなく「女」というところが、現代ですね。 修:うちの組にも、いるんですう! 葱:ひとり知っています、「土佐のをんな」すぎょいです。)

●生垣に猫の抜け穴青嵐=ラスカル
◯秋、ス△十、紅、久、水、雪、資、入=10点
(秋:季語がちょっと強すぎるかなと思いましたが、着眼点が面白い。 十:トリビアルな視点。 紅:猫の姿が目に浮かびます。 久:ドラマが始まりそうですね。)

●彩りを食べて涼しきサラダかな=十志夫
◎水◯砂、雪△五、香、阿=10点
(水:夏野菜の彩りが目にとても爽やかで、気持ちがいいです。 雪:確かにサラダは色を食しています。なんと涼しげ! 五:赤、青、黄色、緑、カラフルな夏の涼しさ満喫のサラダ。 香:パプリカ?アスパラ?水菜?)


●棕櫚の葉の折れ線グラフ初夏の風=葱男
◎喋、秋◯水△メ=9点
(秋:折れ線グラフがいい。水:折れ線グラフに見立てたところがいい。)

●聖五月ピエロの涙大きかり=甲斐よしあき
◎紅△ラ、葱、ぼ、ま、ス=8点
(紅:ピエロの涙はいつも大きいのですが、季語の力で素敵なお句になりました。ラ:さだまさしの「道化師のソネット」を思い出しました。 葱:こんな感じのことを詠んだのですが、幼稚な句なので没にしました。「マリア月大人になれぬ大人かな」。ぼ:マリアの慈顔を連想。 ま:季語が私にはあまり馴染みがないのですが、引かれました。)

●星の衣に透けて涼しき女かな=葱男
◎白◯五、ぼ△入=8点
(白: 情緒のある風景が浮かびます。 五:星のワンピースが透けているのか?色っぽい句になりました。 ぼ:幻想的ムードあり、魅かれる句。)

●青梅の青より湖の広がれり=甲斐よしあき
◯ま、香△砂、久、雪=7点
(ま:点から面への広がりが素敵です。 香:清々しいですね。 久:初夏の生き生きとした中に静けさを感じます。 雪:そこに見える青梅の奥に大きな景が見えます。葱:母韻の心地よさ「AOUMEnoAOyoriUMIno」)

●トランペットの音渡りゆく青田かな=ラスカル
◯葱、ま、甲=6点
(葱:トランペットの颯爽たる高い音と青空のもとに広がる青田の美しさの組み合わせがなんとも新鮮でした。 ま:どんな人が吹いているのでしょう、とてもさわやかです。)

●草笛をぴいと鳴らしてボブディラン=スライトリ・マッド
◯修△五、久、ぼ=5点
(修:ボブデイランにぴったり合っています。 五:ボブディラン句は多いことでしょうが、佳句。 久:どちらの方向に行くのか分からないのがいいですね。 ぼ:自由でかっこいい)

●ケースごと氷菓買はれてゆきにけり=紅椿
◎ラ◯雪=5点
(ラ:何か、イベントでもあるのかもしれません。 雪:「ケースごと」というのが、想像をかきたてますね。)

●谷間にほのぼのとあり余花一樹=ぼくる
◯資△ラ、葱、淳=5点
(資:ほのぼのが良いですね。 ラ:「ほのぼのと」という表現が好きです。 葱:心がほどけてゆくようです。)

●蔓薔薇はハンモックのごと揺れてをり=秋波
◎淳◯ラ=5点
(淳:蔓からハンモックの連想がおもしろいですね。 ラ:「ハンモックのごと」という比喩が、とても楽しそう。)

●ベネチアングラスに潜むなめくじら=葱男
◎入△資、秋=5点

●面ざしは十二の頃や草苺=雪絵
◯ぼ△白、甲=4点
(ぼ:何年ぶりかでの再会、草苺がいい。 白:幼き頃の恋心が戻ってきた。 葱: どんなに歳を重ねても遊んでいたころの面ざしは残っているものですね、ただし、僕の経験から言うと、高校のころの同級生で割と仲の良かった男に30数年ぶりに会い、真正面から見つめて話しても話しても全く「面ざし」が見つからない!という奴がたったひとりだけいました。〈笑〉)

●鍵盤を照らす光よ夏に入る=五六二三斎
◯淳△十、阿=4点
(十:綺麗に磨かれた鍵盤の上の日差しが、日に日に高くなってくるのを感じている。夏の訪れ。)

●慎ましく生きて健やか麦の秋=五六二三斎
◯甲、阿=4点

●テイクオフ、見渡す限り、麦の秋=喋九厘
◎久△阿=4点
(久:官能的で最高です。飛びたいですね。 葱:「、」で数瞬を演出した意図はよく伝わりました。)

●年輪に死角なきかな雨蛙=久郎兎

(白: 雨蛙も「同感」と言っている。)

●病室の窓は開かずや梅は実に=紅椿
◯十、入=4点
(十:開かない玻璃を境にして、衰弱と成長の対比が見事。)

●青柿のややこのあまた土の上=紅椿
◎五=3点
(五:青柿の小さくかわいいこと。これを「ややこのあまた」と表現された。上手いです。)

●紫陽花や王墓の丘の雨の糸=砂太
◯メ△淳=3点
(淳:すごく高貴な感じの俳句ですね。)

●音の鳴るサンダル歩く立夏かな=雪絵
◯葱△香=3点
(葱:最近、つくづく若いっていいなあ〜とおじさんは思います。 香:かわいい光景が浮かびます。)

●逆光に撮る薔薇園のルネサンス=水音
◯資△甲=3点
  (資:逆光写真をルネサンスと評したところに惹かれました。)

●木漏れ日も力増すなり初鰹=秋波
◯久△メ=3点
(久:力増す、がいいですね。)

●薔薇園の香り絡まる木のベンチ=まさこ
◯メ△砂=3点
(葱:中七がいい。)

●満開の樗の大樹廓跡=修治
◯秋△白=3点
(白: 下五が佳いですね。)

●緑陰やからだ曲げたり伸ばしたり=修治
△葱、紅、資=3点
(葱:リアリティありありですね。 紅:ヨガでもしているのでしょうが、表現が面白いです。 資:太極拳をやっているのでしょうか。)

●円卓の脚どつしりと白海芋=まさこ
△喋、ス=2点



●白薔薇や路面電車の忍び寄る=資料官
◯十=2点
  (十:街中を走る電車は、忍び寄る〈ぬうっと現われる〉という表現がピッタリ。)

●捩花やそのまま天に届けかし=白馬
△雪、香=2点

●初夏日黄色い帽子の並びけり=秋波
◯淳=2点
(淳:子供たちの帽子が揺れていますね。)

●ひばり鳴き病む友笑ふ志賀島=淳一
◯白=2点
(白:こんな遠くまでお見舞に来てくれて。嬉しい。 葱:「病む友笑ふ」に救われます、「志賀島」は療養にはいい所かもしれませんね。 )

●細道の故郷(ふるさと)思ひ栗の花=喋九厘
△入、秋=2点

●屋根のなき二階建てバス街薄暑=資料官
△水、修=2点
(五:子供は腕白がよろしい。昔、チャンバラで近所の子に怪我させた思い出が蘇りました。)

●金婚や四葩は淡き紅を刷き=砂太
△白=1点
  (白:身だしなみの佳い奥様の姿が-----。)

●卯の花や垣根なきごと咲き誇る=五六二三斎
△紅=1点
(紅:花の見事さが伝わってきます。)

●ごいさぎの目にさす薄暑淡水河=入鈴
△喋=1点
(入:台湾にて)

●どんたくは杓文字たたくも芸のうち=阿Q
△修=1点
(修:うきうきした気分がいいな。 葱:なあるほど、「杓文字」に眼をつけたところがいい。)

●夏の朝葉裏に何者かの卵=修治
△秋=1点

●蕗をつむ問はず語りを聞きながら=水音
△ま=1点
(ま:なにげない生活の一こまに、充実感が感じられます。)

●緑蔭の刻は流されつつ眠る=十志夫
△メ=1点


【無選】

●王の夢吾の夢墓陵夏となる

(葱:句が堂々としていて気持ちがよい。)


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